日本列島各地の旨いもの巡りの旅

黒蓬

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第1話 北海道の大地が育む味

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朝霧が薄く漂う新千歳空港の滑走路に、一機の飛行機が静かに降り立った。その中から降りてきたのは、30代半ばの女性、早瀬真希《はやせまき》。彼女は旅行雑誌の編集者として多忙な日々を送っていたが、今回の旅の目的は少し異なる。職場で企画した「日本列島各地の旨いもの巡り」を自ら体験し、それを連載記事にするという新しい挑戦だった。真希は自分の好奇心を胸に、北海道の空気を深く吸い込んだ。

「北海道…やっと着いた。やっぱり、空気からして全然違うなぁ。」

真希はそう呟きながら、待っていたレンタカーに乗り込んだ。目的地は札幌から1時間ほど離れた富良野市。道中、左右に広がる雄大な自然の景色に心を奪われる。広大な牧草地に点在する牛たち、遠くに見える山々、そのどれもが都会の喧騒とは無縁の世界を見せてくれる。

「北海道って、こんなに広いんだ…。」

思わず声に出たその言葉には、感動と少しの不安が混じっていた。これからの旅路が順調に進むのか、読者に楽しんでもらえる記事が書けるのか。編集者としての責任感が彼女を突き動かしていた。

富良野に到着した真希は、地元の農家が営むカフェ「緑の風」に立ち寄った。そこで出迎えたのは、60代半ばの朗らかな男性だった。彼は富良野生まれの富良野育ち。彼のカフェでは、自家製の野菜や乳製品を使った料理が楽しめる。

「いらっしゃい、遠くから来たのかい?」

「はい、東京からです。日本全国の美味しいものを巡る企画で来ました。」

彼はにこりと笑い、真希に席を勧めると、まずは名物の富良野オムカレーを勧めてくれた。

「富良野と言えばラベンダーが有名だけど、うちのカレーも負けてないよ。」

ほどなくして運ばれてきたオムカレーは、鮮やかな黄色の卵が美しく輝き、その下には地元産のじゃがいもと玉ねぎを煮込んだ特製カレーが隠れていた。一口食べると、甘さと辛さが絶妙に混じり合い、どこか懐かしい味わいが口の中に広がる。

「これは…すごく美味しいです!」

真希の心からの感想に、彼は満足そうに頷いた。

「富良野の土が育てた野菜だからね。この味が出せるんだ。」

料理だけではなく、彼との会話もまた真希にとって心温まるものだった。彼はこの地で生まれ育ち、家族とともにカフェを営む中で、地元の味を守り続けてきたという。彼の話からは、富良野の豊かな自然と、そこに生きる人々の誇りが感じられた。

次に真希が訪れたのは、美瑛町にある「青い池」。ここは観光名所としても有名で、エメラルドブルーに輝く水面が幻想的な景色を生み出している。池の周囲を歩きながら、真希はその不思議な色合いに目を奪われた。

「ここが…写真で見たままの青い池…」

彼女はカメラを構え、美しい風景を何枚も撮影した。自然が作り出した奇跡のような景色に、真希はしばし言葉を失った。

その後、真希は近くのジェラートショップで、地元産の牛乳を使ったバニラアイスを味わった。濃厚でクリーミーな口当たりは、都会では味わえない新鮮さがあった。

「北海道は、食べ物も景色も全てが特別だな。」

アイスを食べながら、真希はそう感じた。普段の生活では気づけない小さな幸せが、この旅には詰まっている。

夜は札幌市内のホテルに戻り、地元の居酒屋で海鮮丼を堪能することにした。新鮮なウニやイクラがたっぷり乗った丼ぶりを前に、真希は思わず目を輝かせた。

「これが北海道の味…。」

一口食べるごとに広がる海の香り。東京で食べるものとは比べ物にならない新鮮さに、彼女は心底感動した。店主との会話もまた、この土地ならではの温かさを感じさせるものだった。

「北海道は広いけど、まだまだ美味いものがたくさんあるよ。次はどこへ行くんだい?」

店主の問いに、真希は少し考えた後、笑顔で答えた。

「次は青森です。これから北から南へ、全国を巡るつもりです。」

ホテルの部屋に戻った真希は、旅の初日を振り返りながら記事の下書きを書き始めた。富良野のオムカレー、美瑛の青い池、札幌の海鮮丼。それぞれの体験が鮮やかによみがえり、文章に自然と熱がこもる。

「読者にも、この感動を伝えられるといいな…。」

そう思いながら、真希はペンを走らせ続けた。

北海道の広大な大地と豊かな恵み。それを肌で感じた一日は、彼女にとっても読者にとっても、忘れられないものとなるはずだ。
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