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第五話
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とある夜のこと。
「あ、恭介結構後だけどライブあるから。まだ情報公開前だから誰にも言わないこと。夜とか歌を歌ったり振り付けとかやるからうるさいけどよろしく」
「了解。じゃあやる前に机とか移動させてリビングに空間作っておくね。あと終わったら言ってくれれば後片付けとかやるから」
「なんでそんなに親切なのよ」
「家族だから協力するのは当たり前だろ」
「へぇ、家族ね……ありがと」
優花は腑に落ちていないような表情を浮かべながら箸を進める。俺は優花の雰囲気が若干柔らかくなったように感じた。今までの雰囲気が抜き身の刀ならば今の優花の雰囲気は少し刃こぼれした刀のようにほんの少しの変化だが。今まで緊張で味がわからなかった俺が作った料理の味がわかるようになり、緊張感なく、料理に舌鼓を打つ。
夕飯が終わり次第すぐに食器を片付け、家具も退けてライブの練習の準備を行う。
「手伝わなくていいから。というか少しでも休憩しといて」
「あ、うん」
手伝おうとする優香を止めソファーに座らせると準備の手を早める。
「それじゃあ頑張って。これからも出来るだけ優香の手助けはするから」
準備を終わらせてすぐに俺は自室へと戻っていった。後ろから優香の声がした気がするがまぁ気のせいだろう。特にやることなくベッドの上で寝転がる。
ある程度したら休憩用に差し入れでも渡すか。そう考え、俺は家を出る。
「はいよ、お疲れ」
「あ、ありがと。でも別にそこまでしてくれなくても」
優香が一つのブロックを終わらせたことを確認した俺は声をかける。コンビニで買ったピーチジュレを渡す。
「ピーチジュレじゃん。ありがとう。これ好きなんだよね」
いつもと違い物腰が柔らかで声音も弾んでいた。先程まで運動していたせいか優香の頰はうっすらと桜色に染まっていた。そのいつもと異なるその容姿に俺の胸は高鳴った。
おい、俺よ。少し待て。義理とはいえ家族相手に惚れるわけにはいけないだろ。危ない一線を超えてしまうその前に気づけて良かったぁ。こんな可愛さ反則だろ。いつもの様子だったら全然好きになるなんてことないのになんで今は違うんだ。
俺は雰囲気の違いに苦しみながら自分のために買ったコーヒーを飲む。その苦味は今の俺の苦悩と一緒に思えて仕方がない。
「ふぅ」
「なんか一人前の大人みたいに難しい顔してなんか変なの」
急に間近で声が聞こえその方向を向くとそこには俺の顔を覗き混む優花の顔があった。俺は驚いてコーヒーを少し自分の手に溢してしまった。幸い、手以外には溢れていない。
「あつっ! も、もう俺、部屋に戻るから」
「あはは! 逃げんなぁ」
そんな優花の声を背中に浴びせられながら俺は自分の部屋へと撤退した。手にかかったコーヒーの処理を済まし、部屋で少しくつろいでいると優花の歌声が聞こえてきた。それはCDと遜色のない歌声だ。俺はそのアップテンポなロック調の曲をBGMにして優花の練習が終わるまで待ち続けた。
深夜になった頃だろう、物が片付けられる音が聞こえて俺は部屋を飛び出した。
「俺が片付けるから」
家具を元に戻している優花の姿を見て、俺は苦笑しながら優花の元へと向かった。更に片付けようとする優花の行動を遮って、俺は家具を片付ける。
「早く風呂に入っておいてよ。その間に片付けておくからさ」
「むぅ、私がやるのに……ありがと。じゃあ入ってくるから。覗かないでよ」
「バッカッ! だ、誰が!」
優香が突拍子もないことを言ったため、俺は持ち上げていた机を自身の足に落とした。優香はそれを見ると愉快そうに笑った。その笑みは男ならば誰しもが魅了されるような可愛らしいものだったが笑った理由が酷い。
「ふふ、動揺してる」
「良い性格してんな」
俺はそう返すと、痛みを堪えながら机を既定の位置に戻す。そうしている内にここから遠ざかる優香の足音が聞こえた。額から垂れて来た汗を拭うと、その他の家具を元に戻した。
「あ、恭介結構後だけどライブあるから。まだ情報公開前だから誰にも言わないこと。夜とか歌を歌ったり振り付けとかやるからうるさいけどよろしく」
「了解。じゃあやる前に机とか移動させてリビングに空間作っておくね。あと終わったら言ってくれれば後片付けとかやるから」
「なんでそんなに親切なのよ」
「家族だから協力するのは当たり前だろ」
「へぇ、家族ね……ありがと」
優花は腑に落ちていないような表情を浮かべながら箸を進める。俺は優花の雰囲気が若干柔らかくなったように感じた。今までの雰囲気が抜き身の刀ならば今の優花の雰囲気は少し刃こぼれした刀のようにほんの少しの変化だが。今まで緊張で味がわからなかった俺が作った料理の味がわかるようになり、緊張感なく、料理に舌鼓を打つ。
夕飯が終わり次第すぐに食器を片付け、家具も退けてライブの練習の準備を行う。
「手伝わなくていいから。というか少しでも休憩しといて」
「あ、うん」
手伝おうとする優香を止めソファーに座らせると準備の手を早める。
「それじゃあ頑張って。これからも出来るだけ優香の手助けはするから」
準備を終わらせてすぐに俺は自室へと戻っていった。後ろから優香の声がした気がするがまぁ気のせいだろう。特にやることなくベッドの上で寝転がる。
ある程度したら休憩用に差し入れでも渡すか。そう考え、俺は家を出る。
「はいよ、お疲れ」
「あ、ありがと。でも別にそこまでしてくれなくても」
優香が一つのブロックを終わらせたことを確認した俺は声をかける。コンビニで買ったピーチジュレを渡す。
「ピーチジュレじゃん。ありがとう。これ好きなんだよね」
いつもと違い物腰が柔らかで声音も弾んでいた。先程まで運動していたせいか優香の頰はうっすらと桜色に染まっていた。そのいつもと異なるその容姿に俺の胸は高鳴った。
おい、俺よ。少し待て。義理とはいえ家族相手に惚れるわけにはいけないだろ。危ない一線を超えてしまうその前に気づけて良かったぁ。こんな可愛さ反則だろ。いつもの様子だったら全然好きになるなんてことないのになんで今は違うんだ。
俺は雰囲気の違いに苦しみながら自分のために買ったコーヒーを飲む。その苦味は今の俺の苦悩と一緒に思えて仕方がない。
「ふぅ」
「なんか一人前の大人みたいに難しい顔してなんか変なの」
急に間近で声が聞こえその方向を向くとそこには俺の顔を覗き混む優花の顔があった。俺は驚いてコーヒーを少し自分の手に溢してしまった。幸い、手以外には溢れていない。
「あつっ! も、もう俺、部屋に戻るから」
「あはは! 逃げんなぁ」
そんな優花の声を背中に浴びせられながら俺は自分の部屋へと撤退した。手にかかったコーヒーの処理を済まし、部屋で少しくつろいでいると優花の歌声が聞こえてきた。それはCDと遜色のない歌声だ。俺はそのアップテンポなロック調の曲をBGMにして優花の練習が終わるまで待ち続けた。
深夜になった頃だろう、物が片付けられる音が聞こえて俺は部屋を飛び出した。
「俺が片付けるから」
家具を元に戻している優花の姿を見て、俺は苦笑しながら優花の元へと向かった。更に片付けようとする優花の行動を遮って、俺は家具を片付ける。
「早く風呂に入っておいてよ。その間に片付けておくからさ」
「むぅ、私がやるのに……ありがと。じゃあ入ってくるから。覗かないでよ」
「バッカッ! だ、誰が!」
優香が突拍子もないことを言ったため、俺は持ち上げていた机を自身の足に落とした。優香はそれを見ると愉快そうに笑った。その笑みは男ならば誰しもが魅了されるような可愛らしいものだったが笑った理由が酷い。
「ふふ、動揺してる」
「良い性格してんな」
俺はそう返すと、痛みを堪えながら机を既定の位置に戻す。そうしている内にここから遠ざかる優香の足音が聞こえた。額から垂れて来た汗を拭うと、その他の家具を元に戻した。
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