アイドルと家族になるまで

岩崎翔也

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第八話

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 目を開けた優花は目の前が信じられないように首を振って、俺の方にやってくる。そして慌てて、鞄の中を漁る。多分、携帯を探しているんだろうな。でも俺が持っているから見つかることはない。



「しっかりしてよ! なんでこんなときに携帯がないのよ!」

「優花が、忘れていったからな……でも今この状況だと携帯は使えそうにないな。ハハッ」



 涙を浮かべて狼狽える優花を励ますために俺は気丈に振る舞おうとしても痛みで上手くいかない。そこで運転手が携帯片手に車を降りて俺の元に来た。

「きみ、大丈夫かい!」

「え、ええ。まあ生きてるんで大丈夫ですよ」



 そうは言うところ足や脇腹からは酷い痛みを感じている。更に顔面から着地したことにより、鼻血が耐えず出て、額も軽く割れているようで目の前が一気に真っ赤になった。



「優花、大丈夫だから。安心、しろよ」

「何が、何が大丈夫なのよ! そんな体になって……」



 優花は涙声になりながら俺に抱きついてくる。



「痛い、痛いって!」

「ご、ごめん」



 気落ちするよう声で優花は俺の体から手を離す。すると救急車のサイレンが鳴った。最近の救急車は来るの早いなぁ。



「大丈夫ですか!?」

「はい、意識はあります。でも足と肋骨が折れてるみたいに痛いです。あと鼻とかから血が出ているけど、そっちの痛みの方が弱いです」



 救急隊員が俺をタンカーに乗せる。



「一、二、三!」



 それに合わせて俺の体が浮遊感に包まれる。救急車内に収容された俺と共に救急車に乗った相手――俺を心配するその声から推測するにおそらく優花だろう――に降りるように促す。



「おい、優花だろ。早く降りて」

「な、なんでよ!」

「ライブがあるだろ」

「そんなのより私は恭介の方が大切!」

「俺は生きているから大丈夫。それに、ライブは優花の夢だったんだろ。そっちをしっかりやらなきゃ。俺の友達も、今日のライブ楽しみにしてたぜ。ファンの皆さんのために、ライブやってくれるか?」

「でも……」

「でも、じゃない。今日のライブきちんと行くから。約束な」

「う、うん」



 嗚咽混じりにそう言った優花を送り出すために俺は弱っている体に鞭を打って、声をかける。



「さぁ、行ってこい! アイドル内田優花の、本領発揮しろよ!」

「ふ、ふん。誰にもの申しているのよ。私は常に全力投球よ!」



 そう優花に発破をかけると、優花は涙声でそう言って、救急車を降りていった。それを確認した救急隊員達は救急車の扉を閉める。
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