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薬の効果が切れるまで後八日(2)
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クリスティアーノが迎えにきたのはソフィアが仕事をちょうど終えた頃だった。
「では、お先に失礼いたします」
「あ、ああ。お疲れ様」
去っていく二人の背中をじっと見つめていたレオン。扉が閉まると同時に部下たちから話しかけられ、我に返った。レオンの部下の中では一番の若手と一番の古株だ。
「……今なにか言って……いや、すまない。聞いていなかったのでもう一度話してくれるかな?」
普段のクリスティアーノを心掛けほほえむ。部下たちはその違和感に気づくことなく、話し始めた。
「もちろんです! 自分は先ほど殿下に『あの二人が気になりますか?』と尋ねました。食い入るように見ていたので」
「あ、いや、あれは……」
「大丈夫ですよ! 誰でも今日の隊長を見たらそうなりますから。ねえ先輩?」
「そうですね。正直、私も驚きました」
「ほら! 普段冷静な先輩が驚くくらいなんですから! 今日の隊長はやっぱりおかしい……女嫌いな隊長があんな行動を取るなんて……やっぱり、婚約者は特別ってやつなんですかねえ? あれ? でも、たしか昨日はかなり激しい口論をしてたって聞いたような……」
「だからこそ、でしょう。隊長は婿入りする身ですから。これ以上婚約者とその生家を怒らせてはならないと、ご機嫌伺いをしているのでは? 現に八日間も休暇を取っていますし」
「たしかに! 隊長がまとまった休みをとるのって初めてですよね?! それだけ切羽詰まってるってことか~。あ、そういえば、殿下ってあのお二人と昔からのお知り合いでしたよね?」
「あ、ああ」
「学院にいた頃のお二人ってどうだったんですか?」
「どうと言われても……学院にいた頃はまだ婚約していなかったから」
「ああ、そっか」
「どちらにしろ、隊長にとってソフィア嬢が大切な方であることと、この休暇中に関係を修復させなければならない、ということは間違いないでしょう」
(ソフィーと喧嘩したのは事実だが、別にそんな切羽詰まった状態なわけじゃねえ! あれはクリスが勝手にやったことだって言いたいけど、言えね~! だいたい、あいつどういうつもりでソフィーに……)
「なら、自分たちも隊長に協力した方がいいですかね?!」
「いえ、むしろ我々が勝手に動くのは悪手。今はそれよりも己の職務を全うし、隊長がソフィア嬢に集中できるようにするのが最善かと」
「なるほど~!」
「殿下もそのつもりでソフィア嬢に滞在許可を出したのでは? 隊長のことですから、殿下の側を八日間も離れるとなったら、ソフィア嬢に集中するどころではなくなるでしょうから」
「たしかに!」
「さすがは殿下だ」と称える部下二人にレオンは、「は、ははは」と笑って誤魔化すしかない。
「それにしても隊長のアレには驚きましたよね?!」
「アレ?」
(やっぱり、あの口づけか? 後でクリスに注意しておかねえと……)
「アレ……ああ、隊長が殿下のことをきちんと『殿下』呼びしたことですね?」
「それです!」
「普段からアレはちょっとどうかと思っていましたが……これもソフィア嬢効果ですかね。彼女は次期当主だけあってかなりまとも……いえ、仕事ができるようですから。もしかしたら、隊長に指摘してくださったのかもしれませんね」
「だとしたら婚約者様様ですよね。あの態度のせいで隊長、いらない敵を作りまくっていましたし」
「部下の私たちも同類とみられて難癖つけられることが多々ありますからね」
「ぇ……」
(ソフィーが言っていたことが、当たって、いた?)
「そうなんですよね~って、すみません殿下! 私語が過ぎましたっ。どうぞ、お仕事の続き、してください!」
「あ、ああ……うん」
再び視線を書類に向けるが、やる気は完全に削がれてしまった。主に今の会話のせいで。そんな彼を救うかのような絶妙なタイミングでノック音が鳴った。
◇
一方、ソフィアとクリスティアーノは婚約者としての交流を深めるという名目で、食事を楽しんでいた。
「先に私が」
と用意された飲食物にソフィアが手を伸ばそうとしたが、それより先にレオンが口をつける。
「そんなに気を回さないでいいよ。俺には不要だ。それよりも食事を楽しもう。ソフィーもこういうの、久しぶりだろう?」
「え、ええ」
クリスティアーノの言う通り、こうしてゆっくり食事を取るのは久しぶりだ。たいてい執務の途中で、軽く取るのが常。でも、それを言えば、クリスティアーノの方こそこうして食べるのは久しぶりだろう。いや、毒見なしという意味では初レベルかもしれない。
そう思って見やれば、心なしかただの食事も楽しそうに取っているようにも見える。
「……美味しい、わね」
「ああ、とても」
顔を見合わせ、ほほ笑みあう二人の間には和やかな空気が流れる。
ソフィアは食後の紅茶に舌鼓を打ちながら、そっとクリスティアーノを見やった。口調は普段のレオンに近いが、どうしても所作からにじみ出る優雅さは隠しきれていない。周りから見れば、それは婚約者を前にしてかっこつけているだけ、としか映っていないようだ。そのあたりも計算尽くだとしたらさすがとしか言いようがない。
「あ……」
「どうしたの?」
「いや、そろそろマルゲリータ様が訪問される時間帯だなと……」
「え?」
思わぬ言葉に固まるソフィア。我に返り、慌ててクリスティアーノへと顔を寄せた。
「そ、それってまずくないですか?!」
(クリスティアーノ王子殿下の婚約者を相手にレオンが騙しとおせる気がしないんだけど?!)
小声で話しかければ、同じようにクリスティアーノも小声で返す。
「まずい、かも……?」
「だったら、こうしている場合じゃないですよ! テキトーな理由をつけて加勢しに行きましょう」
「うん。そうしようか」
二人はうなずき合い、立ち上がる。向かうは執務室。
だが、その前に立ちふさがるは護衛騎士。扉の前にクリスティアーノの護衛と、マルゲリータの護衛がいる。
(ま、まさか中に二人きりなの?! 婚約しているとはいえ未婚の男女が……お二人はすでにそういう仲だったの?!)
雑念が頭を過ぎるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
中に入りたいが、護衛から止められそうだ。さて、どう言い訳をしようかと思案した時、クリスティアーノがさっと前に出た。
「急ぎ、殿下にお伝えしなければならないことがある。中に入らせてもらうぞ」
「な、中にはまだマルゲリータ様がっ」
「承知の上だ」
真剣なクリスティアーノの表情に、緊急性を理解したのだろう。護衛が全員、道を開けた。荒々しくノックをし、扉を開く。
「殿下! 至急お伝えしたいことが!」
「! な、なにがあった?!」
助かった!という表情のレオン。クリスティアーノは真剣な顔で告げる。
「詳しくは人払いをした後に。報告は彼女から」
彼女とソフィアを示す。レオンは物々しい表情を浮かべ、うなずいた。
「すまないマルゲリータ。そういうことだから」
「ええ。殿下、それではまた」
「ああ」
レオンに身を寄せていたマルゲリータは離れ、立ち上がる。しかし、レオンは座ったままだ。ソフィアは即座にレオンを睨みつけた。その殺気に気づいたのかレオンが慌てて立ち上がり、マルゲリータを扉まで見送る。
彼女が部屋を出ると、クリスティアーノは即座に扉を閉めた。
再び三人になるとレオンは緊張が解けたかのように天井を見上げ、口をぽっかり開けた。魂まで抜け出したかのような放心状態になっている。
「ちょっと……」
「これくらい許せよ。ありえないほど緊張したんだからな。あのマルゲリータ嬢相手だぞ?! 気を抜いた瞬間、バレるんじゃないかとひやひやした。はあ……」
しばらくぼーっとした後、レオンはソフィアたちの方を見た。
「で、至急伝えたいことって?」
「それは……」
ちらっとレオンを見やる。
「特にないよ。ただ、ちょうどこの時間帯にマルゲリータが来るだろうと思って助けに来たんだよ。彼女が来た際の指示を出してなかったから困っているだろうと思ってね?」
「ああ。おかげでえらい目にあった」
「……えらい目って?」
じっとレオンを見つめるソフィア。
「いや……別に……」
慌てて視線を逸らしたレオン。煮え切らない反応にソフィアは眉間に皺を寄せたが、これ以上聞きたい気にもなれず口を閉ざした。
代わりに、クリスティアーノが口を開く。
「あ、そうだ。それとは別に用事があったんだった」
「用事?」
「そう。明日なんだけど……一日僕たち王城にいないから、そのつもりでよろしくね」
不意にクリスティアーノに肩を抱かれ、ソフィアはバランスを崩す。
一拍の後、レオンとソフィアは声を上げた。
「はああああ?!」「ええ?!」
「い、いないってどうすんだよ?! 俺一人でやりすごせってか?!」
「うん。ああ、その代わり、事情を知っている暗部を派遣してあげるから安心して」
「なっ。暗部って……そこまでして何を……」
「何って休暇を楽しむに決まってるだろう。そのための入れ替わりなんだから」
当たり前だろうという態度のクリスティアーノに、レオンは苦々しい顔になる。
「いや、だからってソフィーを巻き込む必要はないだろ。それこそ暗部と一緒に行けば……」
「それじゃあ意味がない。暗部はあくまで暗部だからね。やっぱりこういうのは一緒に楽しんでくれる相手がいないと。その点、彼女は同行者にぴったりだ」
レオンは『おまえがどうにかしろよ』という目でソフィアを見る。
(いや、そんな目で見られても……私に殿下を止めるのは無理よ)
それにたとえ暗部がついているとはいえ、この状態のクリスティアーノを一人で行かせるわけにはいかない。最悪の事態が起きた時、責任を取る羽目になるのは自分たちかもしれないのだから。
(レオンを一人残していくのも心配だけど……)
今回は一人で頑張ってもらうしかない。と、ソフィアは首を横に振った。
「では、お先に失礼いたします」
「あ、ああ。お疲れ様」
去っていく二人の背中をじっと見つめていたレオン。扉が閉まると同時に部下たちから話しかけられ、我に返った。レオンの部下の中では一番の若手と一番の古株だ。
「……今なにか言って……いや、すまない。聞いていなかったのでもう一度話してくれるかな?」
普段のクリスティアーノを心掛けほほえむ。部下たちはその違和感に気づくことなく、話し始めた。
「もちろんです! 自分は先ほど殿下に『あの二人が気になりますか?』と尋ねました。食い入るように見ていたので」
「あ、いや、あれは……」
「大丈夫ですよ! 誰でも今日の隊長を見たらそうなりますから。ねえ先輩?」
「そうですね。正直、私も驚きました」
「ほら! 普段冷静な先輩が驚くくらいなんですから! 今日の隊長はやっぱりおかしい……女嫌いな隊長があんな行動を取るなんて……やっぱり、婚約者は特別ってやつなんですかねえ? あれ? でも、たしか昨日はかなり激しい口論をしてたって聞いたような……」
「だからこそ、でしょう。隊長は婿入りする身ですから。これ以上婚約者とその生家を怒らせてはならないと、ご機嫌伺いをしているのでは? 現に八日間も休暇を取っていますし」
「たしかに! 隊長がまとまった休みをとるのって初めてですよね?! それだけ切羽詰まってるってことか~。あ、そういえば、殿下ってあのお二人と昔からのお知り合いでしたよね?」
「あ、ああ」
「学院にいた頃のお二人ってどうだったんですか?」
「どうと言われても……学院にいた頃はまだ婚約していなかったから」
「ああ、そっか」
「どちらにしろ、隊長にとってソフィア嬢が大切な方であることと、この休暇中に関係を修復させなければならない、ということは間違いないでしょう」
(ソフィーと喧嘩したのは事実だが、別にそんな切羽詰まった状態なわけじゃねえ! あれはクリスが勝手にやったことだって言いたいけど、言えね~! だいたい、あいつどういうつもりでソフィーに……)
「なら、自分たちも隊長に協力した方がいいですかね?!」
「いえ、むしろ我々が勝手に動くのは悪手。今はそれよりも己の職務を全うし、隊長がソフィア嬢に集中できるようにするのが最善かと」
「なるほど~!」
「殿下もそのつもりでソフィア嬢に滞在許可を出したのでは? 隊長のことですから、殿下の側を八日間も離れるとなったら、ソフィア嬢に集中するどころではなくなるでしょうから」
「たしかに!」
「さすがは殿下だ」と称える部下二人にレオンは、「は、ははは」と笑って誤魔化すしかない。
「それにしても隊長のアレには驚きましたよね?!」
「アレ?」
(やっぱり、あの口づけか? 後でクリスに注意しておかねえと……)
「アレ……ああ、隊長が殿下のことをきちんと『殿下』呼びしたことですね?」
「それです!」
「普段からアレはちょっとどうかと思っていましたが……これもソフィア嬢効果ですかね。彼女は次期当主だけあってかなりまとも……いえ、仕事ができるようですから。もしかしたら、隊長に指摘してくださったのかもしれませんね」
「だとしたら婚約者様様ですよね。あの態度のせいで隊長、いらない敵を作りまくっていましたし」
「部下の私たちも同類とみられて難癖つけられることが多々ありますからね」
「ぇ……」
(ソフィーが言っていたことが、当たって、いた?)
「そうなんですよね~って、すみません殿下! 私語が過ぎましたっ。どうぞ、お仕事の続き、してください!」
「あ、ああ……うん」
再び視線を書類に向けるが、やる気は完全に削がれてしまった。主に今の会話のせいで。そんな彼を救うかのような絶妙なタイミングでノック音が鳴った。
◇
一方、ソフィアとクリスティアーノは婚約者としての交流を深めるという名目で、食事を楽しんでいた。
「先に私が」
と用意された飲食物にソフィアが手を伸ばそうとしたが、それより先にレオンが口をつける。
「そんなに気を回さないでいいよ。俺には不要だ。それよりも食事を楽しもう。ソフィーもこういうの、久しぶりだろう?」
「え、ええ」
クリスティアーノの言う通り、こうしてゆっくり食事を取るのは久しぶりだ。たいてい執務の途中で、軽く取るのが常。でも、それを言えば、クリスティアーノの方こそこうして食べるのは久しぶりだろう。いや、毒見なしという意味では初レベルかもしれない。
そう思って見やれば、心なしかただの食事も楽しそうに取っているようにも見える。
「……美味しい、わね」
「ああ、とても」
顔を見合わせ、ほほ笑みあう二人の間には和やかな空気が流れる。
ソフィアは食後の紅茶に舌鼓を打ちながら、そっとクリスティアーノを見やった。口調は普段のレオンに近いが、どうしても所作からにじみ出る優雅さは隠しきれていない。周りから見れば、それは婚約者を前にしてかっこつけているだけ、としか映っていないようだ。そのあたりも計算尽くだとしたらさすがとしか言いようがない。
「あ……」
「どうしたの?」
「いや、そろそろマルゲリータ様が訪問される時間帯だなと……」
「え?」
思わぬ言葉に固まるソフィア。我に返り、慌ててクリスティアーノへと顔を寄せた。
「そ、それってまずくないですか?!」
(クリスティアーノ王子殿下の婚約者を相手にレオンが騙しとおせる気がしないんだけど?!)
小声で話しかければ、同じようにクリスティアーノも小声で返す。
「まずい、かも……?」
「だったら、こうしている場合じゃないですよ! テキトーな理由をつけて加勢しに行きましょう」
「うん。そうしようか」
二人はうなずき合い、立ち上がる。向かうは執務室。
だが、その前に立ちふさがるは護衛騎士。扉の前にクリスティアーノの護衛と、マルゲリータの護衛がいる。
(ま、まさか中に二人きりなの?! 婚約しているとはいえ未婚の男女が……お二人はすでにそういう仲だったの?!)
雑念が頭を過ぎるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
中に入りたいが、護衛から止められそうだ。さて、どう言い訳をしようかと思案した時、クリスティアーノがさっと前に出た。
「急ぎ、殿下にお伝えしなければならないことがある。中に入らせてもらうぞ」
「な、中にはまだマルゲリータ様がっ」
「承知の上だ」
真剣なクリスティアーノの表情に、緊急性を理解したのだろう。護衛が全員、道を開けた。荒々しくノックをし、扉を開く。
「殿下! 至急お伝えしたいことが!」
「! な、なにがあった?!」
助かった!という表情のレオン。クリスティアーノは真剣な顔で告げる。
「詳しくは人払いをした後に。報告は彼女から」
彼女とソフィアを示す。レオンは物々しい表情を浮かべ、うなずいた。
「すまないマルゲリータ。そういうことだから」
「ええ。殿下、それではまた」
「ああ」
レオンに身を寄せていたマルゲリータは離れ、立ち上がる。しかし、レオンは座ったままだ。ソフィアは即座にレオンを睨みつけた。その殺気に気づいたのかレオンが慌てて立ち上がり、マルゲリータを扉まで見送る。
彼女が部屋を出ると、クリスティアーノは即座に扉を閉めた。
再び三人になるとレオンは緊張が解けたかのように天井を見上げ、口をぽっかり開けた。魂まで抜け出したかのような放心状態になっている。
「ちょっと……」
「これくらい許せよ。ありえないほど緊張したんだからな。あのマルゲリータ嬢相手だぞ?! 気を抜いた瞬間、バレるんじゃないかとひやひやした。はあ……」
しばらくぼーっとした後、レオンはソフィアたちの方を見た。
「で、至急伝えたいことって?」
「それは……」
ちらっとレオンを見やる。
「特にないよ。ただ、ちょうどこの時間帯にマルゲリータが来るだろうと思って助けに来たんだよ。彼女が来た際の指示を出してなかったから困っているだろうと思ってね?」
「ああ。おかげでえらい目にあった」
「……えらい目って?」
じっとレオンを見つめるソフィア。
「いや……別に……」
慌てて視線を逸らしたレオン。煮え切らない反応にソフィアは眉間に皺を寄せたが、これ以上聞きたい気にもなれず口を閉ざした。
代わりに、クリスティアーノが口を開く。
「あ、そうだ。それとは別に用事があったんだった」
「用事?」
「そう。明日なんだけど……一日僕たち王城にいないから、そのつもりでよろしくね」
不意にクリスティアーノに肩を抱かれ、ソフィアはバランスを崩す。
一拍の後、レオンとソフィアは声を上げた。
「はああああ?!」「ええ?!」
「い、いないってどうすんだよ?! 俺一人でやりすごせってか?!」
「うん。ああ、その代わり、事情を知っている暗部を派遣してあげるから安心して」
「なっ。暗部って……そこまでして何を……」
「何って休暇を楽しむに決まってるだろう。そのための入れ替わりなんだから」
当たり前だろうという態度のクリスティアーノに、レオンは苦々しい顔になる。
「いや、だからってソフィーを巻き込む必要はないだろ。それこそ暗部と一緒に行けば……」
「それじゃあ意味がない。暗部はあくまで暗部だからね。やっぱりこういうのは一緒に楽しんでくれる相手がいないと。その点、彼女は同行者にぴったりだ」
レオンは『おまえがどうにかしろよ』という目でソフィアを見る。
(いや、そんな目で見られても……私に殿下を止めるのは無理よ)
それにたとえ暗部がついているとはいえ、この状態のクリスティアーノを一人で行かせるわけにはいかない。最悪の事態が起きた時、責任を取る羽目になるのは自分たちかもしれないのだから。
(レオンを一人残していくのも心配だけど……)
今回は一人で頑張ってもらうしかない。と、ソフィアは首を横に振った。
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