見つけた、いこう

かないみのる

文字の大きさ
41 / 46

32

しおりを挟む
「相変わらず不用心だねー可那人くんは」



まとわりつくような不快な低音。

聞き覚えのある声だ。

瞼をこじ開け、顔を確認する。



ああ、お前か。川田五大。



立っていた男は木の棒を投げ捨てて、足元に置いていた五リットルの焼酎のペットボトルを手にした。



「透が世話になったな」



トオル?

あの公園にいた『トオル』のことを言っているのか?

なぜ川田がトオルの名前を知っているのか。

打撃を受けた脳では考えが及ばない。



「透はな───俺の姉ちゃんの子どもだよ」



トオルが甥?


川田はペットボトルの水を俺にかけた。

冷たい水に身体がビクリと反応する。

大きなペットボトルから出る水は、俺の身体を反応させるには十分の量だった。



「おお、本当に透明になるんだな。おもしれえ。透のおかげでお前が水を嫌ってた理由がわかったわー」



───トオルのおかげ?

「お前がどれくらい水を嫌いなのか確かめるためにさ、透にはちょっと悪かったけど、俺が投げた紙飛行機を追っかけさせて池に落ちてもらった。そしたら案の定お前が駆けつけて透を助けに池に飛び込んだ。遠くから見てたけど驚いたぜ?」



川田は持っていたペットボトルを俺に投げつけ、俺の衣服をはぎ取った。

抵抗しようと動いたが、すぐに殴られ、脱力してしまう。

靴や下着も奪われた。

周囲からは、俺の姿は映らない。



「これで誰にも気づかれないな。あ、ネックレスなんて着けてんのかよ。ま、いいか。めんどくせえし」



川田は「お、この靴プラダじゃん!」と言って俺の靴を履いた。

やめろ、それは奈菜からもらったクリスマスプレゼントだ!

やめろ!

しかし身体が動かない。

俺の靴を履いて、俺の衣類を抱えて、川田は去ろうとした。

追いかけたいが身体が言う事を聞かない。



「あ、それとな、いいこと教えてやるよ」


川田は振り返り、不快な笑みを浮かべて言った。



「奈菜は、俺の元カノだ。俺はこれから奈菜のところに行くから。じゃあな、臆病可那人クン」



奈菜?

元カノ?



身体は重くまだ動けない。

頭が正常に働かない。

気ばかり焦る。


奈菜が危ない。奈菜。奈菜。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...