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しおりを挟むそこは暗い暗い闇の中だった。
上も下も右も左も、見渡す限りの闇。
自分の居場所さえわからない。
俺はどうしてこんなところにいるのだろう。
考えたって仕方がないが、考えずにはいられなかった。
闇の中をもがくも出口が見つからない。
広大な闇の海に浸かりながら、俺は早々に出口を探すのをやめた。
そもそもここを出ようとしているのが間違いだ。
ここは、真っ暗だけど閉塞感はない不思議な場所だった。
ふと右の方を見ると、わずかに光が見えた。
俺はその光の方向へ、誘われる様に向かった。
足をばたつかせ、力の限り進んだ。
気がつくと、自分の周りに眩い光が散らばっていた。
俺はより明るい方へと向かっていく。
たどり着いた先にいたのは、一人の少女だった。
同じくらいの年齢だろうか。
少女が細かな光をまとい、光と戯れていた。
黒いワンピースが闇に溶け、淡くも眩い光に囲まれている様は幻想的だった。
細かな光、イルミネーションとは違って儚く繊細な、触れたら消えてしまいそうな光だった。
これは……星?
そうだ。星だ。
散りばめられているのは満天の星だ。
俺と少女は、星の川──天の川の中にいた。
夜空の一部となって闇に溶け込んでいた。
いるのは俺たち二人だけ。
物音一つしない静かで美しい世界だった。
星と戯れていた少女は俺の存在に気付いたのか、光を散らせながらこちらを向くと、ゆっくりと笑った。
どこかで見たことがある様な笑顔だった。
誰かはわからない。
でも、記憶の隅に引っかかるような笑顔。
俺は気づくと彼女に触れようと手を伸ばしていた。
もう少し、あと少しで彼女の身体に触れられる。
俺は目一杯彼女の方へ手を伸ばした。
彼女の細い腕に触れた瞬間、彼女の身体は光の粒となって霧散した。
淡い光放つ星となって、俺の指の先で天の川へ溢れ落ちていった。
はっとして、飛び起きた。
上半身を起こし、時計を見ると時刻は六時半。
目覚ましのアラームよりも三十分早い起床だった。
夢か。
まだぼんやりと靄がかかったような頭で夢で見た光景を反芻した。
万華鏡のように何度も覗きたくなるような不思議で美しい夢だった。
青いカーテンから漏れる陽の光に目を細め、もう一度横になった。
星と戯れる少女の姿がありありと思い浮かべられるほど、あの夢は鮮やかに俺の記憶に残っていた。
今日は一日集中できそうにないな。
模試があるのに大変だ。
大して危機感を抱いているわけでもないけど。
そんなことを考えながら眠気があるわけでもないのに目を閉じた。
瞼の裏で先ほどの光景を思い起こした。
しかし目が冴えてしまい、再度あの少女と会うことはなかった。
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