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3章
3-4 人生の分岐点(4) 教会最高峰の賢者様
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この大陸の教会権力の中で、一番偉い人は聖皇様と言う。
その次が、聖皇様の補佐である大主教様と主教様、次いで各教区を統べている司教様がいて、その下に各教会の長である神父様、さらにその下に修道士――つまり私達シスターやブラザーがいる。
この権力構造は、貴族と同じ完全な縦割りの構造で、原則として自分より職階が上の聖職者に意見を言うことは絶対に許されない。
ただし、教会の中にはこの権力構造の外にいる人というのも少なからずいる。
その代表的な職階が、神学者様だ。
神学者様はその名のとおり聖典を研究している人達で、恣意的な研究によって聖典解釈がゆがめられる危険を避けるため、特定組織への所属が禁じられている。
神学者様を名乗るためには、大主教様か主教様三名以上の推薦と、聖皇様の承認が必要で、大陸にいる教会関係者数十万人の中でも、神学者様はたったの十一人しかいない。
そのため、権力は一切持っていないにもかかわらず発言の影響力は絶大で、聖皇様に助言をしたり、主教様達にも意見をしたりすることが出来る。
つまり神学者様とは、教会最高峰の賢者様達なのだ。
「――そんなすごく偉い人が、来週、この教会に来るのですか?」
私と一緒にベッドに座っているファリンダが言った。
私は彼女のその言葉にうなづいて肯定をする。
「そうよ。だからシスター達は皆、そわそわしているの」
「へえ……」
ファリンダはあまり興味なさそうに呟いた。
「まあ、ヒラのシスターの私達には、ほとんど無縁の話だけれどね。出迎えの準備を手伝わされる以外は」
シスター・アーニャは言った。
「……シスター・アーニャは手伝ってないじゃないですか」
「だって、手伝えって言われなかったもの」
笑いながら言い訳するシスター・アーニャ。彼女の普段の行いからすれば、そんな大事な準備で手を借りたいなんて、シスター・アメルが思うはずもない。
その時、私の部屋の扉を誰かがノックした。
『シスター・オーレリア、いらっしゃる?』
「どうぞ」
入ってきたのは、私より二、三歳年長のシスターだった。
彼女は部屋に入るなり、テーブルにのったシスター・アーニャのワインに目を留めた。けれど、見なかったふりをして私へと視線を戻す。
「シスター・オーレリア、シスター・アメルがあなたを呼んでいるわ。仕事の件で話したいことがあるんですって」
その年長のシスターは言った。
仕事という言葉を聞いて、私は一瞬眉をしかめた。
神父様に反抗的な態度をとったと言われ、写本の仕事を辞めさせられて一ヶ月、私はずっと孤児院で子ども達の面倒をみて過ごしていた。
孤児院で働いている使用人達は私が来てくれて助かると言ってくれ、子ども達も最初は私の顔を少し怖がっていたけれど、最近はずいぶん気を許してくれるようになっていた。
ずっとこのまま孤児院で働くのもいいかな、
そんなことを思い始めていた矢先の出来事だった。
今さら何を、と私は少し苛立ちを募らせながら院長室に向かう。
院長室で待っていたシスター・アメルは、いつものように無表情で私を出迎えた。
「今さら何を、とでも思っていますか? ……その顔は」
会ってすぐに心のうちを言い当てられ、私はきょろきょろと目を泳がせた。
「司教様のご指示で、あなたの謹慎が解除されることになりました。明後日の労働の時間から、大聖堂で写本の作業に従事しなさい」
淡々と、シスター・アメルは言った。
「……司教様のご指示? 神父様ではなくて?」
「ええ。そのとおりです」
「……もしかして、神学者様がこの教会にいらっしゃる件と関連がありますか?」
私は尋ねた。
このタイミングで、それも司教様から直接の指示で……なんて、それ以外には考えられなかった。
シスター・アメルは小さくうなずく。
「察しが良いですね、そのとおりです。来週いらっしゃる神学者のサイード様は、教会内における男女同権論を支持されているお方です。ですから、あなたがブラザー達に混じって写本をしているところをサイード様にご覧になっていただき、この教区の先進性をアピールされたいのでしょう」
私は顔をしかめた。
それはつまり、司教様がサイード様のご機嫌を取るための手伝いをしろ、ということではないか。
「嫌です――とは、言わせませんよ」
私がそれを言う前に、シスター・アメルが先に言った。
「これは司教様が必要だと考えられた労働です。シスターであるあなたには従う義務があります」
シスター・アメルに完全に会話の主導権を握られ、私は仕方なくうつむいた。
そんな私をじっと見つめながら、シスター・アメルは言った。
「わかりましたね、シスター・オーレリア?」
それは、絶対に否定を許さない、いつもの確認の問いかけだった。
「……わかりました。シスター・アメル」
「よろしい」
シスター・アメルはうなずいて言った。
翌週。
聖アルメヌアス教会はちょっとしたお祭り騒ぎだった。
もちろん、お祭りと言っても教会なので、出店があったりするわけではない。神学者様に目撃されては不都合なものを隠蔽するのにてんやわんやという意味だ。
神学者様が寝泊まりをするのは男子修道院の方で、彼が絶対に中に入って来ないであろう女子修道院の方はあまりいつもと変わらない平和な様子だった。
シスター達は、ブラザー達が慌てて私物の酒などを隠しているという噂を話題にして笑い、シスター・アーニャはいつもどおり部屋でお酒を飲みながら絵を描いていた。
数カ月間に渡る女子修道院生活で、私はそんな女子修道院の、適度に堕落している――もとい人間味のある、のどかな日常風景がわりと好きになっていた。
そんなわけで、朝のお祈りと朝昼食が終わった後、私は穏やかな気持ちで大聖堂へと歩いていった。
しかし。
大聖堂に入った途端、神学者様を出迎えるために必死で隠蔽工作に奔走するブラザー達の姿を見て、次第に私の気持ちにもやがかかっていった。
結局、私の復職も、それの片棒を担がされるためなのだ。
どうせなら全部バレて、ブラザー達は全員、神学者様に説教されればいいのに。
そんなことを考えながら、私は写字室に向かった。
すでに写字室に来ていたブラザー達は、神学者様が写字室を見に来るということを昨日聞かされていたこともあり、とても緊張している様子だった。
一方、私は緊張よりも苛立ちの方が勝っていた。
そして、その私の苛立ちは、一ヶ月前、私を謹慎させた神父様が写字室に現れた時に最高潮に達した。
彼は写字室に来て私の姿を見た途端、あからさまに嫌そうな様子で眉をしかめた。
やがて写本の作業が始まり、ブラザー達と私は黙々と字を書き写し続ける。
神学者のサイード様が写字室にやって来たのは、私が手の疲れを少し感じ始めて休憩をしようかと考えていた時だった。
「サイード様、こちらへ」
白い法衣を着た司教様が、写字室にサイード様を招き入れる。
その声に気づき、私やブラザー達は横目で入り口の方に視線を向けた。
現れたサイード様は、少しよれよれになった法衣を着ている、ひょろひょろの体型をした気の優しそうなおじいさんだった。
全然凄そうなオーラを感じさせないサイード様の姿に、私は気が抜けてしまい、文字を書き写す手が止まった。
その瞬間、おほん、と神父様が咳払いをして、私に作業を止めないように無言で命令する。
私はそんな彼の仕草に苛立ちをおぼえた。
手は疲れていたし、少し休憩したかった。
けれど、彼は私に休まず仕事をしろと言う。
……自分達の点数稼ぎのために。
仕方なく、私は眉をしかめながら、書き殴るように字を写していった。
そんな私に、サイード様は興味深そうな表情をして目を留めた。
そして、私のところへやってきて、しばらくじっと私が字を書き写していく様子を眺めていた。
その日の写本作業が終わった後、私が修道院に帰ろうとすると、大聖堂の入り口で一人のブラザーが私を待っていた。
「シスター・オーレリア。司教様がお前を呼んでいる」
そう言われて、私が連れて行かれたのは司教様の執務室だった。
私を呼んだブラザーは、私を執務室の前まで連れて行ったところで、役目は終わったと言わんばかりに足早に去っていった。
正直、一人で司教様と会うのは気が重かった。
呼ばれたのはおそらく、聖典を書き殴るように写字したことの叱責だろう。
とはいえ、司教様の呼び出しを無視するわけにはいかない。
仕方なく、私は溜め息をつきながら執務室の扉をノックした。
「シスター・オーレリアです。お呼びでしょうか」
私は扉に向かって言った。
すると、扉の奥から聞こえてきたのは司教様の声ではなかった。
「シスター・オーレリア、扉は開いている。入りなさい」
言われるがままに私が扉を開けて中に入ると、
――そこには、神学者のサイード様がいらっしゃった。
その次が、聖皇様の補佐である大主教様と主教様、次いで各教区を統べている司教様がいて、その下に各教会の長である神父様、さらにその下に修道士――つまり私達シスターやブラザーがいる。
この権力構造は、貴族と同じ完全な縦割りの構造で、原則として自分より職階が上の聖職者に意見を言うことは絶対に許されない。
ただし、教会の中にはこの権力構造の外にいる人というのも少なからずいる。
その代表的な職階が、神学者様だ。
神学者様はその名のとおり聖典を研究している人達で、恣意的な研究によって聖典解釈がゆがめられる危険を避けるため、特定組織への所属が禁じられている。
神学者様を名乗るためには、大主教様か主教様三名以上の推薦と、聖皇様の承認が必要で、大陸にいる教会関係者数十万人の中でも、神学者様はたったの十一人しかいない。
そのため、権力は一切持っていないにもかかわらず発言の影響力は絶大で、聖皇様に助言をしたり、主教様達にも意見をしたりすることが出来る。
つまり神学者様とは、教会最高峰の賢者様達なのだ。
「――そんなすごく偉い人が、来週、この教会に来るのですか?」
私と一緒にベッドに座っているファリンダが言った。
私は彼女のその言葉にうなづいて肯定をする。
「そうよ。だからシスター達は皆、そわそわしているの」
「へえ……」
ファリンダはあまり興味なさそうに呟いた。
「まあ、ヒラのシスターの私達には、ほとんど無縁の話だけれどね。出迎えの準備を手伝わされる以外は」
シスター・アーニャは言った。
「……シスター・アーニャは手伝ってないじゃないですか」
「だって、手伝えって言われなかったもの」
笑いながら言い訳するシスター・アーニャ。彼女の普段の行いからすれば、そんな大事な準備で手を借りたいなんて、シスター・アメルが思うはずもない。
その時、私の部屋の扉を誰かがノックした。
『シスター・オーレリア、いらっしゃる?』
「どうぞ」
入ってきたのは、私より二、三歳年長のシスターだった。
彼女は部屋に入るなり、テーブルにのったシスター・アーニャのワインに目を留めた。けれど、見なかったふりをして私へと視線を戻す。
「シスター・オーレリア、シスター・アメルがあなたを呼んでいるわ。仕事の件で話したいことがあるんですって」
その年長のシスターは言った。
仕事という言葉を聞いて、私は一瞬眉をしかめた。
神父様に反抗的な態度をとったと言われ、写本の仕事を辞めさせられて一ヶ月、私はずっと孤児院で子ども達の面倒をみて過ごしていた。
孤児院で働いている使用人達は私が来てくれて助かると言ってくれ、子ども達も最初は私の顔を少し怖がっていたけれど、最近はずいぶん気を許してくれるようになっていた。
ずっとこのまま孤児院で働くのもいいかな、
そんなことを思い始めていた矢先の出来事だった。
今さら何を、と私は少し苛立ちを募らせながら院長室に向かう。
院長室で待っていたシスター・アメルは、いつものように無表情で私を出迎えた。
「今さら何を、とでも思っていますか? ……その顔は」
会ってすぐに心のうちを言い当てられ、私はきょろきょろと目を泳がせた。
「司教様のご指示で、あなたの謹慎が解除されることになりました。明後日の労働の時間から、大聖堂で写本の作業に従事しなさい」
淡々と、シスター・アメルは言った。
「……司教様のご指示? 神父様ではなくて?」
「ええ。そのとおりです」
「……もしかして、神学者様がこの教会にいらっしゃる件と関連がありますか?」
私は尋ねた。
このタイミングで、それも司教様から直接の指示で……なんて、それ以外には考えられなかった。
シスター・アメルは小さくうなずく。
「察しが良いですね、そのとおりです。来週いらっしゃる神学者のサイード様は、教会内における男女同権論を支持されているお方です。ですから、あなたがブラザー達に混じって写本をしているところをサイード様にご覧になっていただき、この教区の先進性をアピールされたいのでしょう」
私は顔をしかめた。
それはつまり、司教様がサイード様のご機嫌を取るための手伝いをしろ、ということではないか。
「嫌です――とは、言わせませんよ」
私がそれを言う前に、シスター・アメルが先に言った。
「これは司教様が必要だと考えられた労働です。シスターであるあなたには従う義務があります」
シスター・アメルに完全に会話の主導権を握られ、私は仕方なくうつむいた。
そんな私をじっと見つめながら、シスター・アメルは言った。
「わかりましたね、シスター・オーレリア?」
それは、絶対に否定を許さない、いつもの確認の問いかけだった。
「……わかりました。シスター・アメル」
「よろしい」
シスター・アメルはうなずいて言った。
翌週。
聖アルメヌアス教会はちょっとしたお祭り騒ぎだった。
もちろん、お祭りと言っても教会なので、出店があったりするわけではない。神学者様に目撃されては不都合なものを隠蔽するのにてんやわんやという意味だ。
神学者様が寝泊まりをするのは男子修道院の方で、彼が絶対に中に入って来ないであろう女子修道院の方はあまりいつもと変わらない平和な様子だった。
シスター達は、ブラザー達が慌てて私物の酒などを隠しているという噂を話題にして笑い、シスター・アーニャはいつもどおり部屋でお酒を飲みながら絵を描いていた。
数カ月間に渡る女子修道院生活で、私はそんな女子修道院の、適度に堕落している――もとい人間味のある、のどかな日常風景がわりと好きになっていた。
そんなわけで、朝のお祈りと朝昼食が終わった後、私は穏やかな気持ちで大聖堂へと歩いていった。
しかし。
大聖堂に入った途端、神学者様を出迎えるために必死で隠蔽工作に奔走するブラザー達の姿を見て、次第に私の気持ちにもやがかかっていった。
結局、私の復職も、それの片棒を担がされるためなのだ。
どうせなら全部バレて、ブラザー達は全員、神学者様に説教されればいいのに。
そんなことを考えながら、私は写字室に向かった。
すでに写字室に来ていたブラザー達は、神学者様が写字室を見に来るということを昨日聞かされていたこともあり、とても緊張している様子だった。
一方、私は緊張よりも苛立ちの方が勝っていた。
そして、その私の苛立ちは、一ヶ月前、私を謹慎させた神父様が写字室に現れた時に最高潮に達した。
彼は写字室に来て私の姿を見た途端、あからさまに嫌そうな様子で眉をしかめた。
やがて写本の作業が始まり、ブラザー達と私は黙々と字を書き写し続ける。
神学者のサイード様が写字室にやって来たのは、私が手の疲れを少し感じ始めて休憩をしようかと考えていた時だった。
「サイード様、こちらへ」
白い法衣を着た司教様が、写字室にサイード様を招き入れる。
その声に気づき、私やブラザー達は横目で入り口の方に視線を向けた。
現れたサイード様は、少しよれよれになった法衣を着ている、ひょろひょろの体型をした気の優しそうなおじいさんだった。
全然凄そうなオーラを感じさせないサイード様の姿に、私は気が抜けてしまい、文字を書き写す手が止まった。
その瞬間、おほん、と神父様が咳払いをして、私に作業を止めないように無言で命令する。
私はそんな彼の仕草に苛立ちをおぼえた。
手は疲れていたし、少し休憩したかった。
けれど、彼は私に休まず仕事をしろと言う。
……自分達の点数稼ぎのために。
仕方なく、私は眉をしかめながら、書き殴るように字を写していった。
そんな私に、サイード様は興味深そうな表情をして目を留めた。
そして、私のところへやってきて、しばらくじっと私が字を書き写していく様子を眺めていた。
その日の写本作業が終わった後、私が修道院に帰ろうとすると、大聖堂の入り口で一人のブラザーが私を待っていた。
「シスター・オーレリア。司教様がお前を呼んでいる」
そう言われて、私が連れて行かれたのは司教様の執務室だった。
私を呼んだブラザーは、私を執務室の前まで連れて行ったところで、役目は終わったと言わんばかりに足早に去っていった。
正直、一人で司教様と会うのは気が重かった。
呼ばれたのはおそらく、聖典を書き殴るように写字したことの叱責だろう。
とはいえ、司教様の呼び出しを無視するわけにはいかない。
仕方なく、私は溜め息をつきながら執務室の扉をノックした。
「シスター・オーレリアです。お呼びでしょうか」
私は扉に向かって言った。
すると、扉の奥から聞こえてきたのは司教様の声ではなかった。
「シスター・オーレリア、扉は開いている。入りなさい」
言われるがままに私が扉を開けて中に入ると、
――そこには、神学者のサイード様がいらっしゃった。
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