23 / 32
4章
4-4 5年ぶりの再会(4) レーアとアル
しおりを挟む
「……それで、レーア様はシスター・マドレーヌの共犯者になられたんですか?」
私は椅子に腰かけているファリンダに向けて、首を横に振った。
「いいえ、ならなかった」
「では……」
ファリンダが、私のベッドの上でごろごろしているシスター・マドレーヌを指さす。
「――なんであの方がここにいらっしゃるんですか?」
「は? 私がどこに居ようと、あなたの知ったことじゃないでしょ」
後輩で身分も下のファリンダに指をさされて苛立ったのか、シスター・マドレーヌは眉をしかめて言葉を返した。
「だって、私だけ秘密を握られているなんて公平じゃないでしょ! 弱みを握られているようで嫌なのよ! シスター・オーレリアなんかに!」
「……ずいぶんストレートに言う方ですね」
ファリンダは私に言った。
「悪い子ではないと思うんだけれどね」
私は自分に言い聞かせるように言った。
「いい? こうなったら、無理やりでもあなたとブラザー・アルバートをくっつけてやるんだから。そうすれば、あなたも否応なしに共犯者でしょ」
すごく悪そうな顔をして言ったシスター・マドレーヌ。
すると、ファリンダはその言葉にうなずき、再び私を見た。
「いいんじゃないですか。くっつけてもらえば」
「え?」
「だってレーア様は奥手だし、このままじゃ何の進展もないじゃないですか」
……忘れていた。
ファリンダも私に対してだけは、シスター・マドレーヌ並にはっきりと意見を言ってくるのだ。
「ちょっと待って。まだ、ブラザー・アルバートが私のことを好きだと言っているわけでもないんだし、無理やりくっつけるだなんて乱暴な……」
シスター・マドレーヌが鼻で笑う。
「あのねぇ、ちょっとあなたは恋愛に夢を見すぎよ。恋愛なんて豚の見合いと同じなの。とりあえず近づけてみて、反応が良ければつがいにさせればいいし、悪ければ別の雄を使って同じことをすればいいのよ。その繰り返し」
「……今のシスター・マドレーヌの発言には賛同できませんが、何にせよ、レーア様は、アルバート様ともっとちゃんとお話をされるべきだと思います」
ファリンダは言った。
ファリンダとシスター・マドレーヌは、私の反応を待ってじっと見つめた。
そんな二人に、私は溜め息を返した。
「……ごめんなさい。正直に言うと、私は怖いのよ」
『怖い?』
二人が口を揃えて、同時に首をかしげる。
「……だって、彼が私に優しくしてくれたのは、自分の兄が私に失礼なことを言ったと思っているからなのよ。彼と実際に仲良くなって、もし『私はあなたを恋愛する相手としては見られません』なんて言われたら、きっと私は立ち直れなくなってしまうと思う」
私は二人に言った。
二人は同時に眉をしかめた。そして、同時に叫んだ。
『会う前からそんなことを気にしていたら、一生前に進まないでしょうが!』
地下書庫には誰にも来ない。そのうえ、入るのには鍵が必要で、鍵を持っているのは司教様など限られた人物だけ……、密会場所としてこれ以上に適している場所はない。
『けれど、書庫に人がたくさん入ると、湿度が……』
アルバートとの密会場所としてその場所を選んだ二人に、私は地下書庫番として意見を伝えた。
『それはレーア様がなんとかしてください』
ファリンダは、そんな一言で私の意見を一蹴した。
そして、その日はやって来た。
私が地下書庫で待っているので時間が空いた時に来てほしい、という旨の伝言を、シスター・マドレーヌが恋人のブラザーを通じて、アルバートへ伝えてくれる手はずになっている。
あとは私が地下書庫で待っていれば、自然とアルバートがやって来るという手筈である。
何もしないで待つというのはいささか落ち着かなかったので、私は写本をしながらアルバートを待つことにした。
大陸歴史書全四十冊。この一ヶ月ほど、王室に献上をするために私が複本を行っていた、大陸でもたったの三組しか現存しない、貴重な歴史資料である。
私がひたすら写字に没頭していると、やがて書庫の扉がノックされた。
私は椅子から立ち上がり、扉を開ける。
そこには、アルバートがいた。
「ごめんなさい。急に呼び出したりして」
私はアルバートの姿を見た瞬間、彼に謝った。
アルバートは首を振った。
「いえ、むしろ私は嬉しかったです。シスター・オーレリアが普段仕事をしている場所を見られる上、そこが貴重な本がたくさんある書庫だなんて。おかげで写字がずいぶん捗りました」
「……まさか、まだ写本の労働時間中?」
「ええ。休憩をすると言って出てきました。しかし、安心して下さい。神父様から文句を言われない程度には写しましたから」
アルバートは微笑みながら言った。
そういえば四年前、私が写本の手伝いをしていた時に、ずいぶん長いこと休憩に行くブラザーがいた。彼が労働をサボっているのではないかと、いつも私は心のなかで目くじらを立てていたが――、なるほど、こういうことだったのか。
そんなちょっとした謎の真相がわかり、私は笑った。
「どうぞ。あまり居心地の良い場所ではないですけれど」
私は地下書庫の中へとアルバートを招き入れる。
書庫の中に入ったアルバートは、その蔵書の数に目を輝かせた。
「……素晴らしい」
アルバートはゆっくりと本棚の方へと近づいた。
「シスター・オーレリア、手にとって読んでもよろしいですか?」
「どうぞ。そのための本ですから」
私は笑顔を向けて言った。
すると、アルバートは本棚から本を一冊手に取り、我を忘れてそれを読み始めた。
私にこの地下書庫を任せた神学者のサイード様は、私を『こちら側』の人間だと言ったが、彼もどうやら『こちら側』の人間らしかった。
私はアルバートが夢中で本を読む姿を眺めているうち、自然と口元がゆるんだ。
その時、アルバートはようやく、自分が一緒に部屋にいる相手をないがしろにしていることに気がつき、慌てて本を閉じた。
「あっ、申し訳ありません。シスター・オーレリア」
「構いません。ブラザー・アルバートも本が好きなのですね。手紙では一度もそんなことを言ってくれませんでした」
私は苦笑いをして見せながら言った。
「それは。女性は本を好きな男など、あまり好まないかと思いまして……」
「そんなことはないです。他の女性はどうか知りませんが、私は好きですよ。私が教会で一番尊敬しているサイード様は、寝る時以外は本を読んでいるくらいの読書家ですし……」
アルバートは手紙の内容を思い出したのか、ああ、と小さくつぶやいた。
そして、私達はそれきりお互いに黙ってしまった。
私達は四年も手紙でやり取りを続けてきた。お互いのことはたいてい何でも知っている。
けれど、私が知っているのは手紙に書かれたアルバートの語るアルバートで、アルバート自身のことは何も知らないと思った。
きっとそう思っていたのは、アルバートも同じだった。
私達はお互い、に四年の間につくりあげたお互いの幻想に恋をしていたのだ。
そう考えて、私は途端に怖くなった。
アルバートが今見ているのは、手紙の中で美化された私ではなく現実の私だ。
彼にはいったい、私がどう見えているのだろうか。
私に彼がそう見えているように、彼は私を一個の尊敬できる相手として見てくれているのだろうか。
やがて、私がしばらく口を閉じたままでいると、アルバートは私を見て言った。
「オーレリア」
彼はそう私を呼んだ。
「私は君をずっとこう呼びたかった。私の帽子を君が自ら池の中に入って取ってくれたあの日から、私は君と対等に話がしたいと思っていた。しかし、私の方が身分が下だからと、君をそう呼ぶことが出来なかった」
「……」
「……私は君をそう呼んでもいいだろうか?」
アルバートはじっと私を見つめながら尋ねた。
私はしばらく考え、答える。
「ダメです」
「えっ……?」
「私はレーアと呼ばれたい。私と親しい者は皆、そう呼んでくれるから。あなたにもそう呼ばれたい」
私は微笑みながら言った。
アルバートはうなずいた。
「レーア。では、俺のこともアルと呼んでくれ。理由は君と同じだ」
アルバートは笑った。
そんな彼の姿を見て、私も笑った。
その日から、アルバートはたまにふらっと地下書庫に本を読みにやって来て、私と話をするようになった。
私達の話題はいつも、歴史や政治の話ばかりだ。
シスター・マドレーヌ達のような恋人らしいことは何もしなかった。
けれど、それでもいいと私は思った。
私達はお互いを知っているようでいて何も知らない。
これから長い時間を一緒に過ごして、自分達の関係がどうあるべきなのかを見つけていけばいい。
私とアルバートは二人で話し合い、そう決めたのだった。
私は椅子に腰かけているファリンダに向けて、首を横に振った。
「いいえ、ならなかった」
「では……」
ファリンダが、私のベッドの上でごろごろしているシスター・マドレーヌを指さす。
「――なんであの方がここにいらっしゃるんですか?」
「は? 私がどこに居ようと、あなたの知ったことじゃないでしょ」
後輩で身分も下のファリンダに指をさされて苛立ったのか、シスター・マドレーヌは眉をしかめて言葉を返した。
「だって、私だけ秘密を握られているなんて公平じゃないでしょ! 弱みを握られているようで嫌なのよ! シスター・オーレリアなんかに!」
「……ずいぶんストレートに言う方ですね」
ファリンダは私に言った。
「悪い子ではないと思うんだけれどね」
私は自分に言い聞かせるように言った。
「いい? こうなったら、無理やりでもあなたとブラザー・アルバートをくっつけてやるんだから。そうすれば、あなたも否応なしに共犯者でしょ」
すごく悪そうな顔をして言ったシスター・マドレーヌ。
すると、ファリンダはその言葉にうなずき、再び私を見た。
「いいんじゃないですか。くっつけてもらえば」
「え?」
「だってレーア様は奥手だし、このままじゃ何の進展もないじゃないですか」
……忘れていた。
ファリンダも私に対してだけは、シスター・マドレーヌ並にはっきりと意見を言ってくるのだ。
「ちょっと待って。まだ、ブラザー・アルバートが私のことを好きだと言っているわけでもないんだし、無理やりくっつけるだなんて乱暴な……」
シスター・マドレーヌが鼻で笑う。
「あのねぇ、ちょっとあなたは恋愛に夢を見すぎよ。恋愛なんて豚の見合いと同じなの。とりあえず近づけてみて、反応が良ければつがいにさせればいいし、悪ければ別の雄を使って同じことをすればいいのよ。その繰り返し」
「……今のシスター・マドレーヌの発言には賛同できませんが、何にせよ、レーア様は、アルバート様ともっとちゃんとお話をされるべきだと思います」
ファリンダは言った。
ファリンダとシスター・マドレーヌは、私の反応を待ってじっと見つめた。
そんな二人に、私は溜め息を返した。
「……ごめんなさい。正直に言うと、私は怖いのよ」
『怖い?』
二人が口を揃えて、同時に首をかしげる。
「……だって、彼が私に優しくしてくれたのは、自分の兄が私に失礼なことを言ったと思っているからなのよ。彼と実際に仲良くなって、もし『私はあなたを恋愛する相手としては見られません』なんて言われたら、きっと私は立ち直れなくなってしまうと思う」
私は二人に言った。
二人は同時に眉をしかめた。そして、同時に叫んだ。
『会う前からそんなことを気にしていたら、一生前に進まないでしょうが!』
地下書庫には誰にも来ない。そのうえ、入るのには鍵が必要で、鍵を持っているのは司教様など限られた人物だけ……、密会場所としてこれ以上に適している場所はない。
『けれど、書庫に人がたくさん入ると、湿度が……』
アルバートとの密会場所としてその場所を選んだ二人に、私は地下書庫番として意見を伝えた。
『それはレーア様がなんとかしてください』
ファリンダは、そんな一言で私の意見を一蹴した。
そして、その日はやって来た。
私が地下書庫で待っているので時間が空いた時に来てほしい、という旨の伝言を、シスター・マドレーヌが恋人のブラザーを通じて、アルバートへ伝えてくれる手はずになっている。
あとは私が地下書庫で待っていれば、自然とアルバートがやって来るという手筈である。
何もしないで待つというのはいささか落ち着かなかったので、私は写本をしながらアルバートを待つことにした。
大陸歴史書全四十冊。この一ヶ月ほど、王室に献上をするために私が複本を行っていた、大陸でもたったの三組しか現存しない、貴重な歴史資料である。
私がひたすら写字に没頭していると、やがて書庫の扉がノックされた。
私は椅子から立ち上がり、扉を開ける。
そこには、アルバートがいた。
「ごめんなさい。急に呼び出したりして」
私はアルバートの姿を見た瞬間、彼に謝った。
アルバートは首を振った。
「いえ、むしろ私は嬉しかったです。シスター・オーレリアが普段仕事をしている場所を見られる上、そこが貴重な本がたくさんある書庫だなんて。おかげで写字がずいぶん捗りました」
「……まさか、まだ写本の労働時間中?」
「ええ。休憩をすると言って出てきました。しかし、安心して下さい。神父様から文句を言われない程度には写しましたから」
アルバートは微笑みながら言った。
そういえば四年前、私が写本の手伝いをしていた時に、ずいぶん長いこと休憩に行くブラザーがいた。彼が労働をサボっているのではないかと、いつも私は心のなかで目くじらを立てていたが――、なるほど、こういうことだったのか。
そんなちょっとした謎の真相がわかり、私は笑った。
「どうぞ。あまり居心地の良い場所ではないですけれど」
私は地下書庫の中へとアルバートを招き入れる。
書庫の中に入ったアルバートは、その蔵書の数に目を輝かせた。
「……素晴らしい」
アルバートはゆっくりと本棚の方へと近づいた。
「シスター・オーレリア、手にとって読んでもよろしいですか?」
「どうぞ。そのための本ですから」
私は笑顔を向けて言った。
すると、アルバートは本棚から本を一冊手に取り、我を忘れてそれを読み始めた。
私にこの地下書庫を任せた神学者のサイード様は、私を『こちら側』の人間だと言ったが、彼もどうやら『こちら側』の人間らしかった。
私はアルバートが夢中で本を読む姿を眺めているうち、自然と口元がゆるんだ。
その時、アルバートはようやく、自分が一緒に部屋にいる相手をないがしろにしていることに気がつき、慌てて本を閉じた。
「あっ、申し訳ありません。シスター・オーレリア」
「構いません。ブラザー・アルバートも本が好きなのですね。手紙では一度もそんなことを言ってくれませんでした」
私は苦笑いをして見せながら言った。
「それは。女性は本を好きな男など、あまり好まないかと思いまして……」
「そんなことはないです。他の女性はどうか知りませんが、私は好きですよ。私が教会で一番尊敬しているサイード様は、寝る時以外は本を読んでいるくらいの読書家ですし……」
アルバートは手紙の内容を思い出したのか、ああ、と小さくつぶやいた。
そして、私達はそれきりお互いに黙ってしまった。
私達は四年も手紙でやり取りを続けてきた。お互いのことはたいてい何でも知っている。
けれど、私が知っているのは手紙に書かれたアルバートの語るアルバートで、アルバート自身のことは何も知らないと思った。
きっとそう思っていたのは、アルバートも同じだった。
私達はお互い、に四年の間につくりあげたお互いの幻想に恋をしていたのだ。
そう考えて、私は途端に怖くなった。
アルバートが今見ているのは、手紙の中で美化された私ではなく現実の私だ。
彼にはいったい、私がどう見えているのだろうか。
私に彼がそう見えているように、彼は私を一個の尊敬できる相手として見てくれているのだろうか。
やがて、私がしばらく口を閉じたままでいると、アルバートは私を見て言った。
「オーレリア」
彼はそう私を呼んだ。
「私は君をずっとこう呼びたかった。私の帽子を君が自ら池の中に入って取ってくれたあの日から、私は君と対等に話がしたいと思っていた。しかし、私の方が身分が下だからと、君をそう呼ぶことが出来なかった」
「……」
「……私は君をそう呼んでもいいだろうか?」
アルバートはじっと私を見つめながら尋ねた。
私はしばらく考え、答える。
「ダメです」
「えっ……?」
「私はレーアと呼ばれたい。私と親しい者は皆、そう呼んでくれるから。あなたにもそう呼ばれたい」
私は微笑みながら言った。
アルバートはうなずいた。
「レーア。では、俺のこともアルと呼んでくれ。理由は君と同じだ」
アルバートは笑った。
そんな彼の姿を見て、私も笑った。
その日から、アルバートはたまにふらっと地下書庫に本を読みにやって来て、私と話をするようになった。
私達の話題はいつも、歴史や政治の話ばかりだ。
シスター・マドレーヌ達のような恋人らしいことは何もしなかった。
けれど、それでもいいと私は思った。
私達はお互いを知っているようでいて何も知らない。
これから長い時間を一緒に過ごして、自分達の関係がどうあるべきなのかを見つけていけばいい。
私とアルバートは二人で話し合い、そう決めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。
完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、
家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。
そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。
「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」
契約だけの夫婦のはずだった。
お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。
静かで優しさを隠した公爵。
無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。
二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。
しかしその噂は王国へ戻り、
「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。
「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」
契約結婚は終わりを告げ、
守りたい想いはやがて恋に変わる──。
追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。
そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、
“追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。
---
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる