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3 宿敵あらわる(1)
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私が倉庫に鍵をかけた時、中からセージョは可憐な声で叫んだ。
「ザナ、やめて! どうして私を閉じ込めるの!?」
扉を何度も叩く私の愛しのセージョ。
「どうしてって、全てあなたのためなのよ。まともな服も持っていないあなたが社交パーティなんかに行ったって、赤っ恥をかくだけじゃない」
「いいから開けて! 私、お御堂の掃除だってしなくちゃいけないの!」
「大丈夫よ、セージョ。そんなのは夜やればいい。パーティが終わった後にね」
ホーッホッホッホ、とわざとらしく高笑いをする私。
私は思わず自分の過剰演技がバカらしくなり、セージョの見えないところで溜め息をついた。
――全てはこんな世界観を支持している神々のためである。
セージョはしばらく扉を叩いて泣きわめいた。そうして、どれだけ抗議しても出してもらえることはないと悟った彼女は、扉の奥で崩れ込んでしくしくと泣き始めた。
可愛いセ……可愛そうなセージョの様子に、思わず私は胸がきゅんとした。
そこへ、校舎の方からライフルを持った髭男がやって来た。
執事のアンソニーだ。
「お嬢様、お耳に入れたいことが」
アンソニーは私に近づいてから、耳打ちをしてそう言った。
私は扉の向こうのセージョに話が聞こえないよう、倉庫から少し離れてアンソニーに聞き返す。
「どうしたの?」
「……スーパーヒーローが現れました。銃撃が全く効きません」
アンソニーは少し緊張した面持ちで言った。
スーパーヒーロー。
一言でそれを説明するなら、超ビッグサイズのゴキブリである。本来、この世界はセージョの恋愛物語の世界だから、そんな存在がいる必要性は全くないのだけれど、創造主にも色々事情があるらしく、たまにそんな存在が現れるのだ。
通常のヒーローと違って何がスーパーかと言うと、ヤツらはことごとく厄介な異能を持っているのだ。東洋の刃物で大きな怪物を一刀両断出来たり、魔法で空を飛んだりするスーパーヒーローもいる。ヤツらはその異能で一緒に出現する敵からセージョを守ってフラグを立てる、クソ迷惑なマッチポンプクズ野郎どもなのだ。
「対象の設定は? 今どこにいる?」
私はアンソニーに尋ねた。
「明日からこの学園の転入生としてやってくるようです。現在、この学園の寮へと馬車で向かっています」
「わかった。では対物地雷の使用を許可する。それを使って馬車を爆破なさい。学園長の根回しは、あとで私がやっておく」
「御意。お言葉のままに」
淡々とそう返すと、アンソニーはふっと闇の中へ消えるように去っていった。
私はきびすを返して、倉庫の方へと戻っていく。
アンソニーは戦闘……というよりも殺しのプロだ。これまで彼が殺したヒーローは千を超えている。スーパーヒーローだって何人か殺している。
彼が殺すのをしくじる、ということはあまり考えられない。
しかし、万が一相手の異能との相性で殺せなかった場合、私が直接手をくださなければならない可能性がある。
(……そうなった場合のために、相手の異能は見ておきたいわね)
そう考えた私は、倉庫へと戻って下僕達に指示を出す。
「私は急用が出来た。あなた達はこのままここで、セージョの監視と護衛を続けなさい。もしセージョがあまりに気が滅入ってしまったら、私に内緒だと伝えて彼女を助けてあげなさい。いいわね?」
「はっ! かしこまりました!」
びしっ、と軍人のような一糸乱れぬ敬礼をする下僕達。
よく訓練されている。
この下僕達であればしばらくセージョを任せても良さそうだ。
「頼むわね。セージョを無事守りきってくれたら昇給してあげるわ」
私は下僕達にそう伝え、学園寮の方へと歩き始めた。
「ザナ、やめて! どうして私を閉じ込めるの!?」
扉を何度も叩く私の愛しのセージョ。
「どうしてって、全てあなたのためなのよ。まともな服も持っていないあなたが社交パーティなんかに行ったって、赤っ恥をかくだけじゃない」
「いいから開けて! 私、お御堂の掃除だってしなくちゃいけないの!」
「大丈夫よ、セージョ。そんなのは夜やればいい。パーティが終わった後にね」
ホーッホッホッホ、とわざとらしく高笑いをする私。
私は思わず自分の過剰演技がバカらしくなり、セージョの見えないところで溜め息をついた。
――全てはこんな世界観を支持している神々のためである。
セージョはしばらく扉を叩いて泣きわめいた。そうして、どれだけ抗議しても出してもらえることはないと悟った彼女は、扉の奥で崩れ込んでしくしくと泣き始めた。
可愛いセ……可愛そうなセージョの様子に、思わず私は胸がきゅんとした。
そこへ、校舎の方からライフルを持った髭男がやって来た。
執事のアンソニーだ。
「お嬢様、お耳に入れたいことが」
アンソニーは私に近づいてから、耳打ちをしてそう言った。
私は扉の向こうのセージョに話が聞こえないよう、倉庫から少し離れてアンソニーに聞き返す。
「どうしたの?」
「……スーパーヒーローが現れました。銃撃が全く効きません」
アンソニーは少し緊張した面持ちで言った。
スーパーヒーロー。
一言でそれを説明するなら、超ビッグサイズのゴキブリである。本来、この世界はセージョの恋愛物語の世界だから、そんな存在がいる必要性は全くないのだけれど、創造主にも色々事情があるらしく、たまにそんな存在が現れるのだ。
通常のヒーローと違って何がスーパーかと言うと、ヤツらはことごとく厄介な異能を持っているのだ。東洋の刃物で大きな怪物を一刀両断出来たり、魔法で空を飛んだりするスーパーヒーローもいる。ヤツらはその異能で一緒に出現する敵からセージョを守ってフラグを立てる、クソ迷惑なマッチポンプクズ野郎どもなのだ。
「対象の設定は? 今どこにいる?」
私はアンソニーに尋ねた。
「明日からこの学園の転入生としてやってくるようです。現在、この学園の寮へと馬車で向かっています」
「わかった。では対物地雷の使用を許可する。それを使って馬車を爆破なさい。学園長の根回しは、あとで私がやっておく」
「御意。お言葉のままに」
淡々とそう返すと、アンソニーはふっと闇の中へ消えるように去っていった。
私はきびすを返して、倉庫の方へと戻っていく。
アンソニーは戦闘……というよりも殺しのプロだ。これまで彼が殺したヒーローは千を超えている。スーパーヒーローだって何人か殺している。
彼が殺すのをしくじる、ということはあまり考えられない。
しかし、万が一相手の異能との相性で殺せなかった場合、私が直接手をくださなければならない可能性がある。
(……そうなった場合のために、相手の異能は見ておきたいわね)
そう考えた私は、倉庫へと戻って下僕達に指示を出す。
「私は急用が出来た。あなた達はこのままここで、セージョの監視と護衛を続けなさい。もしセージョがあまりに気が滅入ってしまったら、私に内緒だと伝えて彼女を助けてあげなさい。いいわね?」
「はっ! かしこまりました!」
びしっ、と軍人のような一糸乱れぬ敬礼をする下僕達。
よく訓練されている。
この下僕達であればしばらくセージョを任せても良さそうだ。
「頼むわね。セージョを無事守りきってくれたら昇給してあげるわ」
私は下僕達にそう伝え、学園寮の方へと歩き始めた。
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