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Part 9-2
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「持とうか?」
鳳乱が、まどかの胸に抱えている制服に手を伸ばした。
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「どうだった、今日?」
「研究室とか専門の機関は見られなかったんだけど、研修室とか一部屋が大きいね。山口なんか『移動で大変だ』ってこぼしてたよ。あ、あと外で演習を見たの! 飛行機のガレージみたいなあの巨大な倉庫から二機、パワードスーツ装備の人が跳ねてたよ。映画のセットみたいだった。それから、えーと、ロッククライミングの岩壁もあって……あれって、娯楽で誰か使う人がいるの?」
「まどか達がやるんだよ」
「えーっ、無理。すっごく高かったし」
「研修が本格的になれば、の話だから。取りあえずあと三ヶ月は心の準備に費やせば良い」
鳳乱の足取りはずいぶんリラックスしていた。ふっと片手を上げて、何となしにまどかの髪を後ろに梳いた。
そんな彼の、ちょっとした悪戯な仕草にもどきっとする。
「あ、それより今日はもう、仕事いいの?」
「ああ。明日から始める仕事の下準備と、あと、シャムのところで僕が留守にしていた間のバーシスの動きを話し合ってた。……今からルイのところに寄ろうと思うんだ。まどかには紹介しておきたいから。幼馴染みのなかでもルイは僕と一番気が合う。獅子とシャムは弟分て感じだけど、ルイは年も一緒だし、何しろここの回転が速い」
彼は頭を指した。
「私にしてみたら、シャムにしろ鳳乱、獅子王もみんな頭がいいと思うけど」
「んー、そうかな。まあ僕たち今名前の出た三人は利己的に使う分には随分効率よく頭が働くけど、ルイは他人の事も考えられるんだ」
わかる? と鳳乱は微笑した。
「ふうん……。あ、そういえば獅子王はどうしてるの? ここに来てから姿を見てないけど」
「ヤツは『実践』の方を仕切ってるからな。前線への戦力展開や、侵攻戦闘能力を高める訓練とか航空兵器、陸上兵器、海上兵器なんかを教えてる。一応全てに通じてるけど、あいつは陸上兵器専門。ま、これももちろん表向きは『武器の知識を高める』ものとして扱われてるけど」
二人は西棟へ戻り、先にミケシュと行った、地下一階に降りた。鳳乱が扉の横で瞳を照合させると、先ほどは開く気配すらしなかったそれが軽くスライドした。
中に入ると後ろでぴたりと扉が閉まる。
そこは、夜の病院を思わせる寂しさと、冷気が漂っていた。廊下は真っすぐに奥まで伸び、それに沿ってドアが両脇に等間隔で並んでいる。
まどかが体を少し鳳乱にすり寄せルト、彼はその肩を抱いた。
「大丈夫だ。ここで扱われる生物、微生物は光や温度にとても敏感だから、どうしてもこういう環境にならざるを得ない。……さあ、ルイはどこか……」
鳳乱は青白く光るドアの横に点灯している部屋番号に目を走らせながら奥へ進んだ。目当ての部屋を見つけると、ボタンを押す。
少し間があり、ボタンの横の小さなプレートが緑色に光ると、声が聞こえた。
「すぐに行くから、ちょっと待っててくれ」
鳳乱はまどかの肩を柔らかな手つきで二、三度撫でさすった。
緊張しているように見えたのかもしれない。
すぐに、しゅう、と開いた扉から、詰め襟の、強いて言えば白衣のような服を着た男性が姿を現した。
背丈は鳳乱と同じくらいか。怜悧で繊細な雰囲気のある、痩せぎすの人だった。濃い栗色の髪を一つに後ろでまとめ、目尻の下がり気味の目元はとても色気があり、右の泣きぼくろがさらに彼の魅力を引き立てていた。
彼は心から嬉しそうな笑みを顔に浮かべ、「鳳乱! 久々だな!」と言いながら、しかと鳳乱の体に抱きついた。鳳乱もまどかの肩から手を放して、友の抱擁に応えた。
それから二人は短く、笑いを交えて言葉を交わし、それが途切れると鳳乱はまどかを側に引き寄せた。
「ルイ、これが僕の……大事な人。まどか。金目まどかだ」
ルイは優しい眼差しでまどかを見つめると、手を差し伸べた。
「ルイ・イルマです。よろしく」
艶のある声だった。
まどかはそのかたちの良い手を取り、同時にハッとなって鳳乱を見上げた。
「ど、どうした?」
その表情が彼の予想しなかったものだったのだろう。鳳乱は動揺して訊ねた。
手を握ったまま、ルイも怪訝な顔をしている。
「……上から読んでも下から読んでも……イルマ、ルイ?」
まどかは首を傾げて鳳乱に言った。
「ぶっ」
最初に吹き出したのはルイだった。
「そうだよなあ、その通りだ」
「初対面でそれ言うか? まどか」
鳳乱も半ば呆れ、半ば楽しんでいる面持ちでまどかを見下ろす。
ルイはもう一度まどかに微笑み、再び鳳乱と話した。
それから、彼の腕時計に視線を落とすと、慌てた様子でまどかに言った。
「まどかさん、今実験の途中ですぐに戻らなきゃ行けないんだけど、僕の母は、実は日本から来たんだ。彼女はもう他界したんだけど、君に一つだけ大切なことを伝えておく。僕の母がいつも言っていたこと。それはイリア・テリオにいると、日本の記憶がどんどんなくなっていくこと。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』は、知ってる?」
まどかは、彼の早口な話についていこうと、慌てて首を縦に振った。
「ファンタージエンにいると、現実の世界の記憶がだんだんなくなっていく、それと同じことがここでも起こるって。だから気をつけて。記憶を出来るだけ守るんだ。人に話すのもいい、書き記すのもいい。とにかくここにいる間はそのことを頭に入れておいて。……感動は薄れる、思い出は色あせる、記憶は消え去る」
彼は至極真面目な顔つきで話し終わると、鳳乱の方に向き直り、もう一度抱擁した。
そして、「ちょっとバタバタして申し訳ないけど、またいずれ近いうちに」と再びドアの向こうへ消えてしまった。
まどかはこの短い面会の名残にしばし呆気にとられていたが、鳳乱が再び肩を抱いて促したので、現実の世界に戻ってきた。
街へ行くのに、バーシスから出ているシャトルを利用した。
街の建物のほとんどが恐ろしく高層だったが、それでも隙間無く建っているわけではなく、広々としたオープンスペースや公園なども在り、ビルの合間にぽっかりと空を見せていた。
街全体に清潔感と秩序があった。道を行く人々の表情は皆には満ち足りている。
宙を飛んでいる、見たこともない型の車や、不思議なデザインの服を着ている人たちをシャトルの中から見ていたが、それもしばらく眺めていると、非現実的なこの光景もやがて現実味を帯びてきた。案外すぐに慣れるものだ。
中心部へ行くにつれ、道の数も人通りも多くなる。三十分程乗って、大聖堂の前で降りた。ドーム型の屋根が、長い間外気によって酸化した青銅色で、他の建物に比べると、この大聖堂だけ時代に取り残された印象だ。
「美しいドームだろう」
鳳乱が頭を反らせて見上げる。
「うん」
何故かは分からないけど、懐かしい気がした。
大聖堂の前には噴水のある開放的な広場があり、そこには青いベンチが並んでいる。大きな木が植えてあり、ベンチの上にえんえんと広がった枝には、鳥の翼のような葉が生い茂っている。
芝生の上を、夕刻の、今日最後のエクスピダルの陽の下で散歩を楽しんでいる人もいれば、のびのびと寝転んでいる人もいた。
大聖堂から団体が出て来るのは、ここが観光名所的な存在なのか。
「さっきのルイの話で、この大聖堂を思いだしたんだ。昔、まどか達のようにやはりこのイリア・テリオに迷い込んだ他の星のものが、恐らく職人か、または建築家か、が自分の世界の記憶が無くなりつつあることに気がつき、技術をまだ覚えているうちにこの大聖堂を造り上げた、と言われている。ま、一部の噂だが」
鳳乱はそっとまどかを脇に抱き寄せた。たちまち彼の香りに包まれる。
「気にしてるんだろ。ルイの話。まあ、気にするな、という方が無理だろうが……」
まどかは鳳乱の顔を見上げて、出来るだけ気丈に言った。
「私は大丈夫よ。後でみちるたちに話さなきゃいけないけど。でも、今日は鳳乱がごはんを作ってくれるんでしょ。早く買い物に行こう?」
それを聞いて、彼は少しホッとしたようだった。
まどかは鳳乱の腕に自分のを絡め、店の並ぶ大通りへ足を向けた。
しかし、『大丈夫』と言ったものの、やはり脳裏にルイの言葉がこびりついていた。
ーー感動は薄れる、思い出は色あせる、記憶は消え去る……。
大量に買い物をしたため、帰りは『無人タクシー』で戻った。『個人タクシー』は知っているが、『無人タクシー』は始めてだ。
漆黒の流線型のそれは、やはり地面から浮いていて、全てが白っぽい街中街中に対してとても目立つ代物だった。
「タクシーは目立った方が便利じゃないか」
まどかの感想に対しての鳳乱の答えがこれだった。確かに。
車内の白い滑らかなシートに体が沈んだ。
「ピースがあればいつでもこれ、乗れるから」
そう言って鳳乱は使い方を教えてくれた。
『ピース』は、初日にミケシュから貰った小さなスティックだ。IDであり、部屋の鍵であり、財布である、と初日に獅子王から説明はあった。じゃあ、落としたら大変じゃない。と言ったら、このピースを一番最初に稼働させた人間のエネルギーをそれは覚え、認識するのだと言う。
まるでその人の『一部』のように。だから落としても他人には使えないそうだ。
タクシーの中は向かい合わせに三人ずつ、六人席だ。中央に小さな丸テーブルがあり、これに行き先を入力してピースを窪みに差し込む。ピースが無ければ動かないし、乗り逃げも出来ないらしい。
そして、無人タクシーは用が済めば、所定の場所まで勝手に戻るしくみだった。
鳳乱が、まどかの胸に抱えている制服に手を伸ばした。
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「どうだった、今日?」
「研究室とか専門の機関は見られなかったんだけど、研修室とか一部屋が大きいね。山口なんか『移動で大変だ』ってこぼしてたよ。あ、あと外で演習を見たの! 飛行機のガレージみたいなあの巨大な倉庫から二機、パワードスーツ装備の人が跳ねてたよ。映画のセットみたいだった。それから、えーと、ロッククライミングの岩壁もあって……あれって、娯楽で誰か使う人がいるの?」
「まどか達がやるんだよ」
「えーっ、無理。すっごく高かったし」
「研修が本格的になれば、の話だから。取りあえずあと三ヶ月は心の準備に費やせば良い」
鳳乱の足取りはずいぶんリラックスしていた。ふっと片手を上げて、何となしにまどかの髪を後ろに梳いた。
そんな彼の、ちょっとした悪戯な仕草にもどきっとする。
「あ、それより今日はもう、仕事いいの?」
「ああ。明日から始める仕事の下準備と、あと、シャムのところで僕が留守にしていた間のバーシスの動きを話し合ってた。……今からルイのところに寄ろうと思うんだ。まどかには紹介しておきたいから。幼馴染みのなかでもルイは僕と一番気が合う。獅子とシャムは弟分て感じだけど、ルイは年も一緒だし、何しろここの回転が速い」
彼は頭を指した。
「私にしてみたら、シャムにしろ鳳乱、獅子王もみんな頭がいいと思うけど」
「んー、そうかな。まあ僕たち今名前の出た三人は利己的に使う分には随分効率よく頭が働くけど、ルイは他人の事も考えられるんだ」
わかる? と鳳乱は微笑した。
「ふうん……。あ、そういえば獅子王はどうしてるの? ここに来てから姿を見てないけど」
「ヤツは『実践』の方を仕切ってるからな。前線への戦力展開や、侵攻戦闘能力を高める訓練とか航空兵器、陸上兵器、海上兵器なんかを教えてる。一応全てに通じてるけど、あいつは陸上兵器専門。ま、これももちろん表向きは『武器の知識を高める』ものとして扱われてるけど」
二人は西棟へ戻り、先にミケシュと行った、地下一階に降りた。鳳乱が扉の横で瞳を照合させると、先ほどは開く気配すらしなかったそれが軽くスライドした。
中に入ると後ろでぴたりと扉が閉まる。
そこは、夜の病院を思わせる寂しさと、冷気が漂っていた。廊下は真っすぐに奥まで伸び、それに沿ってドアが両脇に等間隔で並んでいる。
まどかが体を少し鳳乱にすり寄せルト、彼はその肩を抱いた。
「大丈夫だ。ここで扱われる生物、微生物は光や温度にとても敏感だから、どうしてもこういう環境にならざるを得ない。……さあ、ルイはどこか……」
鳳乱は青白く光るドアの横に点灯している部屋番号に目を走らせながら奥へ進んだ。目当ての部屋を見つけると、ボタンを押す。
少し間があり、ボタンの横の小さなプレートが緑色に光ると、声が聞こえた。
「すぐに行くから、ちょっと待っててくれ」
鳳乱はまどかの肩を柔らかな手つきで二、三度撫でさすった。
緊張しているように見えたのかもしれない。
すぐに、しゅう、と開いた扉から、詰め襟の、強いて言えば白衣のような服を着た男性が姿を現した。
背丈は鳳乱と同じくらいか。怜悧で繊細な雰囲気のある、痩せぎすの人だった。濃い栗色の髪を一つに後ろでまとめ、目尻の下がり気味の目元はとても色気があり、右の泣きぼくろがさらに彼の魅力を引き立てていた。
彼は心から嬉しそうな笑みを顔に浮かべ、「鳳乱! 久々だな!」と言いながら、しかと鳳乱の体に抱きついた。鳳乱もまどかの肩から手を放して、友の抱擁に応えた。
それから二人は短く、笑いを交えて言葉を交わし、それが途切れると鳳乱はまどかを側に引き寄せた。
「ルイ、これが僕の……大事な人。まどか。金目まどかだ」
ルイは優しい眼差しでまどかを見つめると、手を差し伸べた。
「ルイ・イルマです。よろしく」
艶のある声だった。
まどかはそのかたちの良い手を取り、同時にハッとなって鳳乱を見上げた。
「ど、どうした?」
その表情が彼の予想しなかったものだったのだろう。鳳乱は動揺して訊ねた。
手を握ったまま、ルイも怪訝な顔をしている。
「……上から読んでも下から読んでも……イルマ、ルイ?」
まどかは首を傾げて鳳乱に言った。
「ぶっ」
最初に吹き出したのはルイだった。
「そうだよなあ、その通りだ」
「初対面でそれ言うか? まどか」
鳳乱も半ば呆れ、半ば楽しんでいる面持ちでまどかを見下ろす。
ルイはもう一度まどかに微笑み、再び鳳乱と話した。
それから、彼の腕時計に視線を落とすと、慌てた様子でまどかに言った。
「まどかさん、今実験の途中ですぐに戻らなきゃ行けないんだけど、僕の母は、実は日本から来たんだ。彼女はもう他界したんだけど、君に一つだけ大切なことを伝えておく。僕の母がいつも言っていたこと。それはイリア・テリオにいると、日本の記憶がどんどんなくなっていくこと。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』は、知ってる?」
まどかは、彼の早口な話についていこうと、慌てて首を縦に振った。
「ファンタージエンにいると、現実の世界の記憶がだんだんなくなっていく、それと同じことがここでも起こるって。だから気をつけて。記憶を出来るだけ守るんだ。人に話すのもいい、書き記すのもいい。とにかくここにいる間はそのことを頭に入れておいて。……感動は薄れる、思い出は色あせる、記憶は消え去る」
彼は至極真面目な顔つきで話し終わると、鳳乱の方に向き直り、もう一度抱擁した。
そして、「ちょっとバタバタして申し訳ないけど、またいずれ近いうちに」と再びドアの向こうへ消えてしまった。
まどかはこの短い面会の名残にしばし呆気にとられていたが、鳳乱が再び肩を抱いて促したので、現実の世界に戻ってきた。
街へ行くのに、バーシスから出ているシャトルを利用した。
街の建物のほとんどが恐ろしく高層だったが、それでも隙間無く建っているわけではなく、広々としたオープンスペースや公園なども在り、ビルの合間にぽっかりと空を見せていた。
街全体に清潔感と秩序があった。道を行く人々の表情は皆には満ち足りている。
宙を飛んでいる、見たこともない型の車や、不思議なデザインの服を着ている人たちをシャトルの中から見ていたが、それもしばらく眺めていると、非現実的なこの光景もやがて現実味を帯びてきた。案外すぐに慣れるものだ。
中心部へ行くにつれ、道の数も人通りも多くなる。三十分程乗って、大聖堂の前で降りた。ドーム型の屋根が、長い間外気によって酸化した青銅色で、他の建物に比べると、この大聖堂だけ時代に取り残された印象だ。
「美しいドームだろう」
鳳乱が頭を反らせて見上げる。
「うん」
何故かは分からないけど、懐かしい気がした。
大聖堂の前には噴水のある開放的な広場があり、そこには青いベンチが並んでいる。大きな木が植えてあり、ベンチの上にえんえんと広がった枝には、鳥の翼のような葉が生い茂っている。
芝生の上を、夕刻の、今日最後のエクスピダルの陽の下で散歩を楽しんでいる人もいれば、のびのびと寝転んでいる人もいた。
大聖堂から団体が出て来るのは、ここが観光名所的な存在なのか。
「さっきのルイの話で、この大聖堂を思いだしたんだ。昔、まどか達のようにやはりこのイリア・テリオに迷い込んだ他の星のものが、恐らく職人か、または建築家か、が自分の世界の記憶が無くなりつつあることに気がつき、技術をまだ覚えているうちにこの大聖堂を造り上げた、と言われている。ま、一部の噂だが」
鳳乱はそっとまどかを脇に抱き寄せた。たちまち彼の香りに包まれる。
「気にしてるんだろ。ルイの話。まあ、気にするな、という方が無理だろうが……」
まどかは鳳乱の顔を見上げて、出来るだけ気丈に言った。
「私は大丈夫よ。後でみちるたちに話さなきゃいけないけど。でも、今日は鳳乱がごはんを作ってくれるんでしょ。早く買い物に行こう?」
それを聞いて、彼は少しホッとしたようだった。
まどかは鳳乱の腕に自分のを絡め、店の並ぶ大通りへ足を向けた。
しかし、『大丈夫』と言ったものの、やはり脳裏にルイの言葉がこびりついていた。
ーー感動は薄れる、思い出は色あせる、記憶は消え去る……。
大量に買い物をしたため、帰りは『無人タクシー』で戻った。『個人タクシー』は知っているが、『無人タクシー』は始めてだ。
漆黒の流線型のそれは、やはり地面から浮いていて、全てが白っぽい街中街中に対してとても目立つ代物だった。
「タクシーは目立った方が便利じゃないか」
まどかの感想に対しての鳳乱の答えがこれだった。確かに。
車内の白い滑らかなシートに体が沈んだ。
「ピースがあればいつでもこれ、乗れるから」
そう言って鳳乱は使い方を教えてくれた。
『ピース』は、初日にミケシュから貰った小さなスティックだ。IDであり、部屋の鍵であり、財布である、と初日に獅子王から説明はあった。じゃあ、落としたら大変じゃない。と言ったら、このピースを一番最初に稼働させた人間のエネルギーをそれは覚え、認識するのだと言う。
まるでその人の『一部』のように。だから落としても他人には使えないそうだ。
タクシーの中は向かい合わせに三人ずつ、六人席だ。中央に小さな丸テーブルがあり、これに行き先を入力してピースを窪みに差し込む。ピースが無ければ動かないし、乗り逃げも出来ないらしい。
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