ELYSIUM

久保 ちはろ

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Part 25-2

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昨夜の今日で、ここにいるのは変な気分だった。
 ルイの部屋の下にある、Dr.リウの診療所で働いていると、いやでも彼のことが頭に浮かんでくる。
 思いだすな、と言う方が無理だ。
 Dr.リウは患者さんのために調合するいくつかの薬草を買いに行き、まどかは留守番だった。
 軽く掃除をして、施術で使う、洗濯したタオルを畳んでいると、ルイの言葉が脳裏に蘇った。
『獅子と兄弟じゃないって……マジ、嬉しい』
 あの時の彼は、サプライズプレゼントを手にした子供のような顔だった。頬まで赤くして。
(そんなことが重要なのかな)
 まどかはくすりと笑う。すると、また次の声が再生される。
『愛してるとか、好きとか言って欲しいのか?』
 バカね。欲しいに決まっているじゃない。
 まどかは、あの時言えなかった気持ちを胸中で呟く。
 でも、それは彼の気持ちとして。ただの道具としての言葉なら、いらない。
 いや………欲しいかな、やっぱり。どんな意味がそこに含まれていようと。私は彼を好きなんだから。
 でも、言われたら、絶対になにか大きな過ちを犯してしまいそう。あのとき、物欲しそうに首を縦に振らないでよかった。

 彼と寝れば何か吹っ切れると考えていたが、それは全くの逆効果だった。
 吹っ切れるどころかその彼の気配は、気がつけば漂う霧のように私のまどかに纏わりつき、いつもそこにあった。
 肌を滑る指の感触。彼の舌が背中をなぞった跡はシャワーでは流しきれずに、ちりちりとまだ肌を焦がす。
 彼が唇で触れた場所全てが点々と熱を帯び、そこからじわじわと溶けていくような気がした。
『おまえ、いつ帰るの……』
 もちろん、彼のその質問に答えられたわけだが、本能的に、言ってはいけない気がして、はぐらかした。
『行けたら……なるべく見送りに行くからさ……』
 やっぱり言わなくて、よかった。
 見送りになんて来て欲しくない。見送りに来られたら……彼の顔を見たら、絶対に帰れなくなる気がする。
 そんなことは彼にとって迷惑極まりないことだろうし、自分もみじめな思いはしたくない。結局受け入れられることはないのだから。
 だから、とにかく帰る日を彼に知られてはいけない。

「ごめんなさいね、夕方だから混んでたのよ……でも、間に合ってよかったわ。エレオさん、まだね?」
 軽く息を弾ませて戻ったDr.リウが、持っていた篭を机に置いた。
 まどかも篭の中の小さな袋を取り出しながら、ラベルが貼ってあるそれぞれの瓶の中に開けたり、ストックとしてキャビネットに収めたりと手伝う。
「あと四ヶ月後にはお別れって、考えただけでも寂しいわ」
 彼女は手を動かしながら言った。
「私もです。Dr.リウにはこの短期間で本当にたくさんのことを教えていただいたし、いろいろ気付かせていただきました」
「あらあら、気付いたのは自分でしょ」
 まどかは、Dr.リウのこの柔らかな笑みが好きだ。
「あの……イルマ教官には話さないでいただきたいんです。私が帰ること……」
 彼女の顔から笑みが消え、驚いたように目が丸くなる。
「あら、そういえばもうここ二、三ヶ月以上彼に会っていませんよ。今度顔を見せに来きなさい、って言っておいて頂戴。……それにしても、帰ることをルイ君に秘密にしておくのは、あなたにとっては必要なことなのね? それなら私は何も言いませんよ」
 彼女は空になった篭をキッチンへ片付けに行った。戻って来るとまどかを呼び寄せて、手を取った。
「あなたくらいの若い人には楽しいことも辛いこともいっぱいあるわ。でもそれは付きものなのね。私くらいになると、それは流れの一つとなっていい意味でも悪い意味でもゆるゆると流れて行ってしまうから。そして、追いかけることはしなくなるわ」
 彼女は眉尻を下げて微笑む。
「それでも、ルイ君はやさしい人よ」
「ええ、わかります………」
 だから、一層、つらい。

 まどかは渇望していた。ルイと肌を合わせてから、その感情がまどかを支配している。
 女が、男に対してこんな気持ちになるのは、変だろうか。
 まどかはルイという花に引き寄せられる小さなミツバチだ。広げられた花びらの中へ誘い込まれ、花粉に咽びながらも飽きるまで甘い蜜に酔う。いくら飲んでも、飲んでも……体中蜜でべたべたになってもまだ足りない。
 渇きは癒えない。もっともっと、と丸い体を花の奥へと潜り込ませる。まるで、溺れるように。
 そんな絵を頭の中で描いて、まどかは獅子王の部屋で一人、窓枠に肘をつく。真っ暗な宇宙(そら)に視線を投げる。
 帰るまでにあと一ヶ月を切っていた。
 やはり最後に鳳乱ときちんとお別れをしようと、まどかは休みを取ってゼルペンス行きの船に乗った。
 山頂での事件からそれなりに時間が経った。今ならきちんと鳳乱の前に立ってさよならを言えるはず。
 ルイには鳳乱との別れの夢を見た、と言ったが、そんなのは、嘘だ。
 夢なんか見なかった。

 船を降りて懐かしい広場に立った。
 遅い午後の、熱を含んだ空気が肌に纏わりつく。じわっと体中の毛穴が開く感じも懐かしい。それでも埃っぽい乾いた風に吹かれれば汗はすぐに退いた。でも、手の平の嫌な汗はひくことはなかった。
 まどかの背後にあの火山がある。存在感と言うよりは「威圧感」を、まどかはひしひしと背で感じた。
 正面からみちるが近づいて来る。まどかはショルダーバッグを掛け直すと親友に歩み寄った。
「久しぶり。元気?」
 まどかは努めて明るい声を出したつもりだったが、みちるは少し眉をひそめた。
「まどかは……あんまり元気そうじゃないわね。ちょっと顔色悪いわよ。やっぱり有吉、呼んだ方がいいんじゃない」
「いや……有吉はもう私に呆れて顔も見たくないだろうし。この前、怒らせちゃったんだよね……」
 二人は、昔何度も行き来した広場を横切る。
「何でアンタたち、ていうかまどか。アンタはどうなってんの? 獅子王も出て行っちゃったんでしょ。なら、有吉を怒らせた原因は彼じゃないわね。大体あの有吉が爆発するなんてどうせ男がらみしかないんだから。ねえ、話してよ」 
 みちるはもともと学生の頃から何かにつけて、どんなくだらない話題でも男女関係のいざこざに持ち込む傾向があったが、それは今も少しも変わっていなかった。そんな彼女の変わらない部分が、微笑ましくもあった。
 まどかは、鳳乱の幼馴染みであるイルマ・ルイのこと、そして獅子王が出て行ったいきさつを、多少脚色して、だがなるべく忠実に話した。
 話を聞き終わったみちるは、内容を頭で整理するように一呼吸置いて、訊ねた。
「で、今はそのイルマって人と一緒に居るわけ」
「ううん、研修で教室の前に立つ彼の顔を見るだけ。ああ、一回だけパルスにメッセージがきたけど」
 ルイと一晩過ごした後は、以前と全く変わらぬ関係、というより関係そのものが無くなってしまった。
 まどかは彼の望み通り獅子王と別れた。
 そして、鳳乱の夢を見なくなった。彼の元に行く理由も無くなった。
 彼とは求めるがままに体を合わせた。そして、お互いがお互い、心と体に折り合いを付けた。
 その後、一度だけ来たメッセージは『大丈夫?』、それだけだった。
 彼に噛まれた耳の小さな傷は、小さなかさぶたになり、いつの間にか剥がれた。それが剥がれたあとは綺麗なものだった。
 『大丈夫です』、それだけ返信した。
 それでお終いだった。
「じゃあ、こっちの世界に残るかもしれないって言うのは、別にその人のためではないのね?」
 二人はベンチに腰を下ろした。バッグから水のボトルを出し、彼女にも勧めた。
「正直、私はここでやっていける自信がある。ただ、その自信はどこからくるのか分からない」
 まどかは肩をすくめて、微笑し、言葉を継いだ。
「私はここでやりたいこと、出来ることを見つけた。Dr.リウにも会えた。私は、一人なら大丈夫。簡単に答えは出てる。ここに残るって」
「一人なら……?」
 みちるは怪訝な顔をした。
「うん。一人なら。教官が私の近くに居なければ。彼が近くに居ると、辛いから。いくらこっちが好きでも、私を必要としてない人の側に居るのは辛いから、だから残るのに躊躇する。もし、彼が私を必要としてくれたら、それはそれでまた簡単に答えは出るんだけどね……あ、私が残ってもみちるたちはちゃんと帰れる式を、フーアが出してくれたわ。だから、私が残ることであなたたちに迷惑はかけない」
「用意周到ね。ま、それは基本よ、まどか。私たちが無事帰れることが保証されているのなら、私は何も言わないわ。私ももし、日本にやり残したことがなかったならここにいたかも。気分がそういう気分だったら。そんな気分になるってことは、答えが出たようなもんでしょ。女って感情で生きてるところ、あるもんね」
 ただ……、彼女は眉根を寄せた。
「むしろあんたがその男から逃げ惑っているように見えるのは、私の気のせいじゃないと思う。彼に受け入れてもらいたいと思いながら、結局彼を避けているのはあんたの方だと思うけど。気を引く……駆け引きなの? それとはまた違うのかな? まあ……とにかく、そんなあんたたちの妙な関係が、上手くいくことを祈っているわ。タイムリミットまでにね。それは、本当よ」
「ありがとう」
 みちるは立ち上がった。
「じゃあ、今夜は私たちの古巣で寝てよ。シーツとか新しいのに換えておいたから。私は同僚たちと宿舎で寝なきゃいけないのよ」
 彼女は親指で、自分の後ろをくいっと指した。
「えー、明日、一緒に山に行ってくれるんじゃないの?」
「いや、オレがいく」
「え?」
 新しい声に振り向くと、有吉がベンチの横に立っていた。
「まどかは嫌だって言ってたけどね、私が呼んだの。フェアじゃないもの。二人で起こした諍いはやっぱり二人で仲直りしないと。一人で傷ついていても、傷つけた負い目に悩まされるよりもね。ダメだったらダメでもいいのよ。でも、仲直りのチャンスはお互い一度は与えるべきだわ」
 彼女は、あんたたちは大丈夫よ、とウィンクをすると去って行った。
 背中が、カッコ良かった。そんな背中を見たのは長い付き合いでも初めてだった。
 有吉は、今までみちるが座っていた場所へ腰掛けた。
「……こっちに残るって決めたの?」
「……決めてない……」
 まどかは、足元に視線を落として答えた。
「じゃあ、帰るって決めたの? おい、人と話すときは目を見ろよ。失礼だろ」
 確かに。顔を上げたまどかは、有吉の真剣な目を見た。
「……決めてない……」
「どうするの?」
 相手はたちまち呆れ顔になる。
「……直前に決めようと思う。朝起きてその日が雨だったら帰る、とか、庭に三羽小鳥が下りて来たら残る、とか。私、結構運命論支持者で、刹那的に生きて来たから。多分、その日にもサインがあると思うの。それで、決める。もう考えても答えがでないんだもの……いや、十分に考えたからこそ、決断は運命に任せるっていうのかな……」
 何それ、と言って彼は空を仰いだ。
「気分ってこと?」
「そうじゃないの。サインをちゃんととらえられるか。『ここにいろ』というサインをね。それはある程度自分に準備ができていないと気がつかない種類の。気がつかなければ、ここに居る必要が無いってことになるのよ」
 まどかも頭を反らせて、空を見た。
 薄い雲が、茜色に染まっていた。つがいだろうか、鳥が羽を羽ばたかせ、西日を追って黒い点になって行った。
「私が帰らなくても、それに対応する式は出来てるから。フーアが出してくれたの」
「もうそこまで手を回したの」
「私、無責任なことはしたくなかっただけよ。私のせいでみんなに迷惑かけたくないの」
「そういうところ、全然変わってないな。……おまえ、もしかして直前にイルマ・ルイが止めてくれるとか期待してるの? あの、映画の『卒業』のベンジャミンとエレーン気取り?」
 まどかは再び視線を落とし、首を振った。
「それはないの。私たちが帰ることは長官にも、Dr.リウにもフーアにも口止めを頼んだもの。教官は帰ることを絶対に知らされない」
「おまえ、周到だな」
 有吉は、さらに呆れたように目を見開いた。
「何よ。私はなるべく帰ろうと思って周りを固めているんじゃない。そんな顔で私を見ないでよ。それとも……帰らなくてもいい?」
 彼は大きな溜め息をつく。
「別にいいよー……、って。おまえずるいよ。オレがおまえに今まで一度だって『ダメだ』って言ったことあるかよ」
「そう言う有吉だってずるいよ。いつも私に決めさせて。ある意味、相手に何か委ねる行為って、思いやりがあるようでそうじゃないよ。いつも有吉が『どうしたいか』っていう自分の主張だけはするけど、『なんでか』っていうあなたの気持ちは全く聞かせてくれない。私を連れて帰るって言うけど、じゃあどうして? 有吉が私に感じていることとか気持ちとか、一度も私に言ったことが無い。連れて帰るって、それは有吉にとってただの義務? 仲間としての連帯感?」
「逆ギレはやめてくれよ。おまえがオレのこと全然考えてくれてないってわかったよ。オレがおまえを連れて帰りたいって、ちょっと考えれば分かることだろうが。どうしてオレがおまえを連れて帰りたいか教えてやろうか? でも、それを言ったらおまえが困るだけだって、オレは分かってるから言わねえんだよ」
 目の前が真っ暗になるとはこのことだろうか。本当に一瞬、目の前に立つ彼の姿が闇に包まれ見えなくなった。まどかは二、三度瞬きをした。
 俯いた、彼の姿が再び視界に浮かび上がった。
「ごめんなさい……喧嘩しに来たんじゃないのに。有吉に会ったらきちんと話そうって、そう思っていたのに。私はやっぱり有吉に甘えてばっかり……」
 有吉は拳を作って、パンチするように軽くまどかの頬にあて、にやりと笑う。
「会ったらって、会うつもり無かったくせに。まあ、甘やかしてたのはオレだからな。自業自得。それに喧嘩する程仲がいい、ていうじゃん。オレたち今までこんなにお互いの感情ぶつけることなかったから、やっと近づけたって言えるかもな。それなのに、おまえは他の男が好きなんだもんなぁ。っていうか、他の男に気があるから、オレに心開けるようになったのか? そしたら皮肉だな」
「恋してたのは、鳳乱の時だってそうだわ。相手が変わったからって、私が変わるわけじゃないよ」
「いや、全然違う。おまえは今、戦闘態勢に入ってるって感じ。もがきながらも、狙いを付けたものに矛先向けて。狩猟能力全開って。鳳乱の時は、あいつはおまえを守ろうと、ただ包み込もうとしていた。おまえはあいつの前では小さな可愛い女だった。でも今は何かが違う。一皮剥けたってカンジ。もう一押しすりゃいいのに、でも、なぜかそこで尻込みしてる。おまえらしいけど。初戦じゃしょうがねえけどな」
 彼は目に憂いを宿したまま、微笑んだ。
「私なりに、努力はしてるの」
 強がりではなく、本当だった。これだけは有吉に分かって欲しかった。
「知ってるよ……。明日、行くんだろ、鳳乱のところ。オレも行っていいよな。ていうか、オレ抜きで行くなよ」
「うん」
 二人はその後もしばらくそこに座ったまま、黒くなって行く森の影と、空の、茜色のコントラストを眺めていた。

 日が昇って間もなく。
 有吉とまどかはジャングルの入り口にいた。ジャングルはまだ起きたばかりで、ひんやりとした空気が木々の間に漂っていた。
「キマイラ、呼ぶ?」
 リキやラオが私の声を覚えているか自信が無かったが、有吉に問うように見上げた。
「そうだね」
 彼はおもむろに指をくわえると鋭い口笛を吹いた。なんだかその横顔に獅子王の面影を見た。
「来るの……?」
 半信半疑でまどかは彼の顔に視線を留めた。まあ見てろよ、自信ありげに彼は顎をしゃくる。
 うちわのお化けのような葉の下から、がさがさとキマイラが一頭顔を出した。続いて後ろからもう一頭。
「うわ、有吉すごい」
 近づいて来た二頭のキマイラには大きさの違いはほとんどなかった。
 一頭が尻尾を振りながらまどかに近づくと、片足でまどかのお腹のあたりを仕切りに掻きながら濡れた鼻で顔の周りをフンフンにおいを嗅ぐ。
「リキ?」
 彼の顔を両手で挟む。ふわふわの手に指が沈む。
「大きくなったねー。もう立派な男の子だね」
「覚えてるもんだな、さすがに『名付け親』は」
 彼はリキの頭を撫でる。
「でもなー、リキ。このオネーチャンはもうすぐ帰っちゃうんだぞー」
「べっ、別にそんなことを言わなくてもいいのに」
「せっかく来たんだから、みんなにお別れして行けよ。周りを固めるならさ」
 にっ、と有吉は意地悪く歯を見せた。
「もう行くわよ。早くサドルつけてよ」
 おお怖いオネーチャンだね、と彼はおどけながらも、言われた通り仕度を整えた。
 葉の隙間から射込む金色の斜線光は美しい。ラオに股がる有吉の背中が光の中を通る度に白くなるのを見ながら、進んだ。
 寒い。ジャングルの奥に入るにつれて悪寒が強くなっていくのがわかった。腕にぷつぷつと鳥肌がたっていた。それでも汗は噴き出していた。
ーーこういうのって、何だっけ……自律神経のバランスが崩れてるって習った……心拍数が上がっている? アドレナリンの分泌?
 リキはそんなまどかの異変に気付くことも無く、ラオと同じテンポで進む。
 光が強すぎる。目眩がして、とうとうまどかは倒れるようにしてリキの首にしがみついた。リキは異変に気がつき、立ち止まる。
 クゥーン……リキが首を回して鼻を鳴らした。
 それを聞いたラオも立ち止まり、体ごと振り向いた。
「おい!」
 まどかの不調ぶりを目の当たりにした有吉は駆け寄り、横に並んだ。
「大丈夫か?」
 彼は手を伸ばして、まどかの背をさすった。
 カタカタと歯が鳴る。
「だめ……気持ち悪い…………」
 崩れるようにリキから降りると、よろけながら木の下で体を折って、吐いた。
 後には、痙攣し、少し痛む胃の感触が残った。
 手の甲で口元を拭い、ラオの横に立つ有吉の元に戻った。彼は心配そうにまどかを見守っている。
「私、やっぱりこれ以上無理だわ……」
「うん……」
 まどかは再びリキの背に乗り、キマイラの向きを変えて、今来た道を戻り始めた。
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