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受けてる私の拡大編

第53話 きら星はづき、大物感伝説

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 私のゴボウ料理がレストランで出るようになる……!!
 大々的に発表したものの、なんだかまだふわふわしている私なのだ。

 それに、実際に始まるのはもうちょっと先。
 これからはお料理について会議があったりするみたいだし、私は出席しないとだし。

 あとは近々期末テストも迫ってて、トライシグナルのみんなが私に勉強を教えに来てくれるし!
 盛りだくさんなのだ。

「だけど、ダンジョン配信だけがここに入ってない……。配信者としてやっておかないと」

 責任感というやつだ。
 うんうん、私もビッグになったもんだなあ。
 ……なんて思いながら、コラボ料理の企画会議前にちょっとだけダンジョンに潜ることにした。

 ここは、レストランの会社にほど近いところにある裏路地。
 小さいダンジョンが発生しているのだ。

 私がトコトコやって来たら、個人配信者らしき人たちがハッとした。

「ま、まさかあなたは……」

「飛ぶ鳥落とす勢いの女子高生配信者、きら星はづきさん!!」

「ほ、本物だあ」

 私はめちゃくちゃかしこまった。

「ど、ど、ど、どうも……。その、よ、よろ、よろしくお願いします」

「この状況で腰が低い!」

「ほ、本物だあ」

「そ、その、ちょっと仕事、前に、時間に余裕ができたからダンジョンに潜って行こうかなって……」

「仕事の合間にも配信を……!?」

「勤勉だなあ……」

 そんなに持ち上げないでえ。
 ひとまず、ツブヤキッターで配信するよ、と連絡を入れる。
 枠を立てたら、ワーッとお前らが集まってきた。

 この人たち、常に誰かいるな……!!
 いや、私に注目してくれるっていうのは嬉しいんだけど!

 せっかくなので、個人勢の人たちと一緒にダンジョン配信することにした。
 このライブ感がダンジョン配信だよね……!

「お前らー! こんきらー! これからレストランコラボの会議なんだけど、遅刻しないように早く出たら三時間前についちゃったので、ダンジョン潜ります!」

※『こんきらー』『こんきらー』『遅刻しないように行動できてえらい』『隙間時間でダンジョンに潜る』『ダンジョン三時間で終わるでござるかぁ?』

「時間来たらすぐ帰ります!」

 そして私の周りでは、個人配信者の人たちが興奮気味になんか配信している!

「なんと今回はサプライズでコラボが実現です!」

「あの大物配信者の! なんとなんと! きら星はづきさんと!!」

「凄いことになっちゃいました!!」

 ひええええ、持ち上げないでー!!
 でもみんな、私と一緒に配信できるのがすっごく嬉しそうだ。
 ついこの間デビューしたような私が、思えば遠くまで来てしまったなあ……。

「はづきさん、どうぞどうぞ」

「このダンジョンはですね!」

「あ、はい、はい、はい」

 私が恐縮しながら彼らについていくと、コメント欄が妙に盛り上がっている。

※『はづきっちが姫扱いで笑った』『そりゃもう、今をときめく有名人でカワイイ女の子で』『しかもめちゃくちゃ腰低いもんな』『個人勢、ガチ恋するなよ……』

 何を心配しているのか。

 ダンジョンで現れるモンスターは、オルクというムキムキで下顎から牙が突き出したモンスター。
 なんとなくイノシシっぽい感じ。
 棍棒を振り回して襲いかかってくる。

 これを、個人勢の人たちがうわーっと武器を振り回して迎撃している。
 いい勝負!
 オルクはめちゃくちゃ強いみたい!

※『はづきっち観戦中?』『お手並み拝見というわけだな』たこやき『王者の風格を感じる』

「いやいやいやいや! 私が邪魔しちゃうのも良くないから!」

※もんじゃ『同接数が強さを決める世界で、オルクに苦戦するということは……。皆まで言うまい』

 何が言いたいんだもんじゃー!
 よく分からないけれど、個人勢の人たちが苦戦しているので、私は加勢に入った。
 今日は、会議する会社の近くにあった高級スーパーの……。

「お高いゴボウ!! いつもの三倍くらいの値段がしました!」

 ストレージから取り出されたゴボウは、その瞬間、まるでダンジョンに出現した太陽のように輝いた。

『ウグワーッ!?』

 オルクたちが目を押さえて後退する。
 小さいオルクは少しずつ消滅を始めてたりするんだけど……?
 な、何が起こってるの!?

「チャーンス!」

「行くぜ!」

「とどめだよ!」

 ここで、個人勢の人たちがオルクを倒した。
 やった!

「お疲れ様です! すごいすごい!」

 オルクたちに謎の隙が生まれたら、すぐに逆転してしまった。
 できる人たちだなあ!
 私がぴょんぴょん飛び跳ねながら手を振ったら、三人とも凄く嬉しそうにした。

※『アカン』『これは好きになっちゃうだろ』『本心から屈託ない称賛を投げるの本当に強い』おこのみ『飛び跳ねたら揺れちゃうでしょ!』

 結局ダンジョンは、三人にキャリーしてもらって、私はたまにゴボウを出してモンスターの目を潰したり光の中に相手の魔法を飲み込んだりするくらいだった。

※『さらっと新しい戦い方をしてる』『魔法無効化とか当たり前に使うな』『まさにはづきっちにゴボウだな』『二つの組み合わせが伝説になってる』

 楽しちゃったなあ……。
 なんだか悪いなあ。

「二時間でダンジョン突破できた!」

「新記録だな!」

「はづきさんのお陰だよ。サポート本当にありがとうございます!」

 なんか物凄く感謝してくる!

「あ、いえいえ! 私、ちょっとゴボウを振り回しただけで……。皆さんがキャリーしてくださったお陰ですから……。本当に皆さん強かったです!」

 三人がまた凄く嬉しそうな顔になった。

※おこのみ『人が恋に落ちる瞬間を見てしまった』たこやき『撮れ高ァ』

 コメント欄がなんだかまた騒がしい。
 私は会議の時間が迫っていることもあり、三人に別れを告げてダンジョンを出るのだった。

 いい人たちだったなあ。
 これからも頑張って欲しい。

※『あの三人の同接確認した?』『おう。みんな二桁台前半だったな』『俺たちは姫で麻痺してるが、この人が異常なだけだからな』

 異常ですと!!

※『はづきっちが異常呼ばわりに反応したぞ!』『コメントは流せ流せ』『ちくちく言葉やめて下さい! はづきっちはチタニウム合金のように繊細なハートを持っています!』『くっそ頑丈』

「誰がチタンのハートか!」

 コメントに突っ込みつつ、私はコラボ会議の場所まできら星はづきの姿のままで行ってしまうのだった。
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