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第二部:彷徨編

49・俺、困ってる商人を助ける

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 町に入る際、オルトロスは大丈夫かなと思ったけど、パーマネンスの呪法でしっかりこの世界に固定されているみたいである。
 まあこのままでもいいだろう!!

 ということで、商人の町に入った。
 西部劇っぽい町というのは言い得て妙で、空気が乾いており、なんか枯れ草の塊みたいなのが風に吹かれて転がっていく。
 あちこちは半開放型の家みたいなのが多くて、横の建物なんかまんま西部劇の酒場だ。

「おう、旅人さんかい? 町に入るには金がいるが……よくもまあ、そんな女ばかりのメンツでここまでやって来れたもんだな。なんだ、でかい犬を連れてるのか? もふもふしてていい毛並みで、ほう、面構えもいい。四つの目がこっちを見て……四つ……四つ……!?」

 入り口のところにいた兵士っぽい男が目を剥いた。

「なんで首が二つあるの……!」

「オルトロスというモンスターなんだ。でもよく懐いててかわいいぞ。ほーらフタマタ!」

「わんわん!」

 フタマタは立ち上がり、俺に抱きついた。
 おーおー、なんと可愛いやつなのだ!!
 俺がフタマタの背中をわしわしと撫でていると、兵士は正気に戻ったようだ。

「そ、そうか。飼い慣らされてるんだな。あまり中で騒ぎを起こすなよ? ま、そいつがいたお蔭でここまでの物騒な旅路をやって来れたんなら納得だ。ここは商人の町。金が物を言うところさ」

「なるほどー。もしかしてあなたもお金で雇われた?」

「そう言うことだ。俺も旅の傭兵だったんだが、この町の兵士業は金払いが良くてな。こうして時々アルバイトしに来てる」

 なるほど。
 町の守りも金で解決するわけだ。
 まさに商人の町。

 中に入ってみると、それなりの賑わいだった。
 露店みたいなものがあちこちに並び、買い物客が行き交っている。
 商人の町だけど、普通の人も住んでるんだなあ。

「旅の準備をしなくちゃだけど、旅費が無いのよね」

 ここでラムハから衝撃の告白が!

「無いってどうして」

「戦争の途中で抜けてきたでしょ。あれで国からもらえる報奨金を受け取れてないの。準備金だけだったもの。まあ、でも残ってたら王国に色々利用されてたかもしれないわね」

「ああ。俺たちは自由を買ったのだ」

「カッコイー!」

 ルリアが歓声を上げた。

「ですが、遊牧民ならぬ皆さんはお金が無いと困るでしょう? どうするんですか」

 ここで現実的なことを言うのはカリナだ。
 さりげなく遊牧民マウントをしてくる。

「はーい。ここは現実をよく知っているお姉さんからの提案です」

 挙手したのアミラ。
 最年長はイクサなのだが、一番お姉さんぶっている。
 自分のキャラに忠実だ……!

「お金がないなら稼げばいいじゃない」

「どこかのマリーアントワネットみたいだけど、確かに!」

「日向、その比喩は俺にしか通じないと思うなー」

 とりあえず、アミラが言ったことはとても現実的で、最良の方法だ。
 よし、では稼ぐとしよう。

「俺たちがお金を稼ぐなら……?」

「ウェイトレス!」

「遊牧!」

「家事代行!」

 ルリアとカリナとアミラの提案は期待しないほうがいいようだな……!
 ラムハを見たら、彼女も笑いながら肩をすくめた。
 ノーアイデアということかー。
 そういえば彼女は記憶喪失だもんなあ。
 自分の適性とかわかんないよな。意外と女神様とかな。

「オクノ、何を悩む必要がある」

 ここで意外なところから助け舟が出た。
 イクサだ。
 もう、こいつが何を言うのか分かったぞ。

「戦って稼げばいい」

「だよなー。お前はそれ一本だもんな……! でも、今回はかなり的確な意見だと思う。それで行こう!」

 ここで、日向が首を傾げた。

「でも……。町中で戦うお仕事って何があるかなあ」

「そりゃあ日向、ここは日本じゃないんだから戦う機会なんかいくらでもあるだろ。あと、商人の町って言うけどここに留まって商売してるわけじゃないから……」

 俺の話が終わる前に、砂漠側の入り口からどやどやとたくさんの人とラクダがやって来たのだった。




「もうだめだあ……おしまいだあ……」

 なんか、ターバンを巻いた商人の男ががっくりと項垂れてる。
 商人たちの中で、この人だけほとんど手ぶらだ。

 ここに商売のにおいを嗅ぎ取る俺だぞ。

「どうしたんですかね。あ、これ水ですどうぞ」

 近くのお店で買ってきた水を商人に差し出す。

「あっ! こりゃあどうも。ごくごくごく!! うまーい! 生き返りますなあ!」

 一息で飲み干した。
 年齢的には三十歳くらいかなあ?
 褐色の肌をした口ひげの人だ。

「で、どうしたの」

「ああ、旅の人、聞いてくださいよ」

「うんうん」

 俺は彼の前にあぐらをかいて座った。

「オクノくん、変に物怖じしないところあるよね」

「潔いわよねー」

 女子たちの囁きが聞こえてくる。
 これは営業チャンスなのだ。俺の乏しいコミュ力を総動員して立ち向かうべき時なのだ。

「聞かせてくださいよ」

「おお、聞いてくれますか! あのですね、今の砂漠、妙に砂蟲のやつらが活性化してて、僕の荷物がみんなやられちまったんです! せっかく貴重な宝石を海賊から仕入れたって言うのに! これじゃあ一文無しですよー!!」

 一文無しと聞いて、女子たちがガックリした。
 だが、俺は貴重な宝石という言葉を聞き逃していなかったぞ。

「ほうほう、砂蟲が宝石を食べたの? 砂蟲って宝石を食べるモンスターなの?」

「いや、やつらは肉を食べるんで、石ころなんか腹の中に転がしてるだけだと思うんですけどね。僕のラクダもやられちゃって」

「なるほど……。その砂蟲をやっつけて宝石を取り返せれば、あなたはお金を得られるわけ?」

「そうですねえ。ですが、砂蟲は砂に潜っていて、なかなか見つけにくいですよ。それに強いモンスターです! 今回の砂蟲は特にでかくて強い! 生半可な傭兵じゃ太刀打ちできないでしょうねえ。ああ、どこかに強い人はいないものか」

 商人の人は嘆いた。
 俺は彼の肩をポンポンと叩く。

「はっ」

 俺は彼に向かって微笑み、親指で自らを指差した。

「ええっ! ま、まさかあなたが引き受けてくれるんですか!? しかし僕は今文無しで」

「成功報酬でいいよ……!」

「是非お願いします……!!」

 俺と彼は、ガッチリと固い握手を交わしたのだった。

「僕の名はイーサワです。一応、多少は呪法の心得があるんですが……いかんせん、腕っぷしがダメダメで。ですが、あなたが手伝ってくれるならやれるかも……いや、やれますよ、やってみせますよ!」

「その意気だぞ! やってやろう!」

 よし、雇い主確保だ!
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