上 下
60 / 181
第二部:彷徨編

60・俺、オルカたちに技を継承する

しおりを挟む
「じゃあ仲間になるってことでよろしい?」

「うーむ。真正面から来られると俺は弱いんだよな……。お前、本当に裏表無い性格だろ」

「よく言われる気がする。俺が口に出さないのはエッチな欲望だけだぞ」

 俺は胸を張った。
 しかしこの場に居合わせた女子が、けらけら笑う。

「オクノくん、お尻とかじーっと凝視してるもんねー」

「そうねえ。お姉さんの場合はふとももとか? 欲望に正直なのはいいことだと思うわ」

「ハッ……! じゃあ、オクノさんがわたしの首筋をよくじーっと見ているのは……」

 馬鹿な!
 俺の欲望がだだ漏れだっただと……!?
 助けを求めるようにラムハを見た。
 主に彼女の胸部辺りを見た。

「ね? 分かりやすいでしょう? オクノは隠し事できないから、裏を疑う必要はないわ」

 ラムハがわざと、胸の下で腕組みをした。
 うおお、強調されている!!
 俺がヒートアップしていると、勝手に傭兵団への入団交渉が進んでいった。

「もちろん、報酬もお約束しますよ。その時の実入りと、オルカ氏にグルムル氏の働きによります。今は船を失って無職のおじさんなんでしょう」

「無職のおじさん言うんじゃねえ! 俺はまだ三十四だ!」

「おじさんだ」

「おじさんよねえ」

「おじさんですね」

 女子たちの集中攻撃を受けて、オルカが愕然とする。

「こ……こんな無遠慮な口撃は受けたことがねえ」

「キャプテン。あなたには今、権威がありませんからね。確かに無職のおじさんです」

 この副長リザードマン、本当に容赦がないな。
 ノータイムでオルカにとどめを刺しに行ったぞ!

 オルカが沈没したので、この副長グルムルが交渉窓口になった。

「入団しましょう。キャプテンは捻くれているのでああ言っていますが、心は決まっていますから」

「ご決断ありがとうございます」

 イーサワとグルムルが固い握手を交わす。
 新しい仲間が二人増えたぞ。

 ちなみに日向は一人だけ、フタマタをいじりながらぶつぶつ言っていた。

「どーせ、私は多摩川くんがそういう目を向けない色気の無い女子ですよーだ。や、まあそんな目で見られたら見られたでセクハラなんだけど」

「わおん」

 俺にはフタマタが、そういうとこだぞ、と言っているように聞こえた。




「グルムルの武器は槍なの?」

「ええ。私は三叉矛の使い手です。扱いとしては槍になるでしょうね」

「あたしと被ってる!」

 ルリアが衝撃を受けた。
 槍使いと槍使いで被ってしまったぞ。
 だが、別に傭兵団なんだから被ってもいいじゃないか。

「あとは、水の呪法が使用できます」

「なるほど。じゃあ俺が閃いた呪法技を使いこなせるかもしれないな!」

 俺はグルムルの手を握る。
 おお、ひんやりしっとりしてて気持ちいい。

「今から技を継承する」

「継承と言いますと」

「グルムルに技を覚えてもらうんだ」

「技と言うと、一部の達人のみが習得するというあれですか。光栄です」

 無表情な顔でそういう事言うので、本気なのかお世辞なのかさっぱり分からない。
 とりあえず、呪法技ミヅチと幾つかの槍技を継承させた。
 以下ステータスだ。


名前:グルムル
レベル:47
職業:リザードマン戦士

力   :132
身の守り:190
素早さ :131
賢さ  :76
運の良さ:32

HP498
MP115

槍30レベル
水の呪法12レベル
✩槍
・足払い・二段突き・風車
☆槍呪法技
・ミヅチ
★水の呪法
・油地獄・コールレイン

 強い。
 普通にめちゃくちゃ強い。
 特に種族の適性なのか、身の守りが高いのだ。
 賢さも結構いい線行ってるなあ。
 ステータス的に、壁要員と言う感じだろうか。

「オルカー」

「なんだよ」

 面倒くさそうにオルカがやって来た。

「技を継承しようと思うんだけど、オルカの得意な武器ってなに?」

「継承? なんだそりゃ」

「キャプテン、これは凄いものですよ。私が技を使えるようになりました」

「ほう! 継承ってのはお前……オクノが俺たちに技を伝えるものなのか?」

 飲み込みが早い。

「そういうこと。一応こうして握手とかをする必要があってな」

「あら、胸には触らなくていいの?」

 俺が説明していると、ラムハが茶々を入れてきた。
 スーッとオルカが遠ざかる。

「ち、違うぞ! そういう行為じゃない! 逃げるなー!? ラムハこらー!?」

 ラムハはくすくす笑いながら逃げていった。
 いつもクールなラムハが珍しい……!
 だが、彼女に継承するときは触らせてもらったりしているからな……!
 端的に言ってラムハの話は事実なので何の弁解もできない!

「気を取り直してっと。オルカの武器は剣と銃?」

「おう。牙の銃。俺にしか扱えないじゃじゃ馬だ」

「ちょうどいいぞ。俺は銃の技を閃いているので継承できる」

 俺が言うと、オルカが目を剥いた。

「何だと!? お前も銃を扱えるってのか!? 噂じゃ、こいつは古代人の血を引いている奴しか扱えないって話だったが……まさかお前も?」

「それは無いと思うけどなあ」

 とりあえず、オルカと握手して技を継承した。
 剣の技も閃いておかないといけないな。



名前:オルカ
レベル:60
職業:海賊

力   :160
身の守り:124
素早さ :196
賢さ  :83
運の良さ:122

HP605
MP240

剣40レベル
銃33レベル
風の呪法17レベル
✩剣
・巻き打ち・飛燕剣・稲妻突き
・ディフレクト・ベアクラッシュ
☆銃
・反応射撃・集中射撃・曲射
★風の呪法
・コールウインド・アイスジャベリン・ウインドバリア
・ライトニング


 イクサに匹敵するくらい強いんだが?
 そして、最初から3つの剣技を習得していた。
 この世界だと、技を持っている人間は達人らしい。
 つまり、オルカは剣の達人ということになる。

 そして風の呪法!
 オルカもおそらく、呪法技を使える素質があるぞ。
 
 しかし……さすがに名前にキャプテンはついてなかったか。
 キャプテンは称号だったんだな。

「強いのか?」

 何も言ってないのに、強者のにおいを嗅ぎ当ててイクサがやって来た。

「ほう……。若造、やるなお前」

「俺は強い」

 いきなり剣を抜くイクサ。
 それを見て、オルカの目が光った。

「そいつは……。一見して質実剛健な設えながら、刃紋の見事さ、うっすらと纏う魔力、そして柄に刻まれた飛龍の魔力紋……。宝剣リージルか!! 実在していたとはな!」

「知っているのかオルカ!」

 あまりにもオルカが詳しいので、俺はびっくりしたぞ。

「キャプテンはお宝マニアでもあるのです。それらしいアイテムが出てくると解説してくれると思いますから楽しみにしていて下さい」

「グルムルも自分の元上司を便利アイテム扱いしているような……」

 いやあ、だがまさか、イクサが普段からぶんぶん振り回している剣、凄い業物だったんだなあ。
 全然気づかなかった。
 ステータス欄にも出てこないんだもの。

 あ、普通はステータスに武器は表示されないのか。

「何を言っているのかは分からんが、俺はこの剣を辺境伯から譲り受けたのだ。刃こぼれしないので重宝している。さあ、手合わせ願おう」

「いいぜ、身の程ってものを教えてやるよ若造」

 ニヤリと笑ったオルカが剣を抜く。
 刀身が反ったサーベルだ。
 こいつもなんとなく、ぼんやり光ってるような。

「あれはキャプテンが、海賊ブブッチャーを倒した時に手に入れた魔剣です。名前は忘れましたが」

「なるほど」

 イクサとオルカの試合が始まった。
 直線的な動きながら、まったく迷いが無く、超反応で牽制だろうと誘いの剣だろうと打ち返すイクサ。
 円の動きで、幻惑的な剣を使うオルカ。こっちは年の功って感じだ。
 しかも、フェイントに隠れて結構やばい攻撃がガンガン飛んでくる。
 これで、他に銃も使うってんだからとんでもないな。

 だが、剣においてはイクサが強すぎた。
 あらゆるフェイントが通じない。
 フェイントのはずなのに、既にそこに踏み込んでいて弾き返してくる。

 牽制の攻撃だろうが弾かれて、強制的に隙を作られる。
 誘うとその瞬間には致命的な場所まで踏み込まれている。

 あれ、剣でイクサに付き合うのは駄目だな。
 俺みたいにプロレスでやりあうとか、変則的な戦い方で応じないと勝負もさせてもらえない。

 物凄い勝負なので、俺たち以外にも街の人たちがどんどん集まってくる。
 嵐のようなイクサの攻撃を、オルカがしのぎ、反撃する。
 これをイクサが片っ端から弾く。

 だが、徐々にオルカが押されてきた。

「化け物かこいつ!」

 オルカがやけくそ気味に笑った。

「ふんっ」

 イクサが最後に、剣を振り回した。
 明らかに大ぶりに見えるのに、そいつは的確に、オルカのサーベルを弾き飛ばした。

「参った……! とんでもねえ奴だな若造め!! アドバード海を見渡しても、お前みたいな凄まじい使い手はいねえぞ!」

 オルカが手を挙げる。

「うむ。お前は強いな」

 イクサは剣を収めると、唇の端を歪めた。
 こいつは戦闘民族なので、強い奴と戦えると嬉しいのだ。
 しかしまあ、大概だとは思ってたがイクサは化け物だな!
 俺はよくこいつとやり合って生きてたもんだ。

「オクノ」

 イクサがいきなり話しかけてきた。

「なんだなんだ」

「さっきの試合の最中で技が生えてきたのだが」

「技は生えないだろ……。なんか技を覚えた奴の中で、習熟すると技が派生するみたいだからそれかな? どれどれ」

 イクサのステータスも確認だ。

名前:イクサ
レベル:70
職業:魔剣士

力   :173
身の守り:108
素早さ :285
賢さ  :  3
運の良さ:141

HP595
MP109

剣53レベル
体術46レベル

才能:剣技
✩体術
・カウンター
✩剣
・飛翔斬・真空斬・裂空斬
・円月斬・十六夜・望月
・ベアクラッシュ・ディフレクト・月影の太刀


 月影の太刀?
 まあ、月関係の技といえばイクサらしいが……。
 すごく強そうな予感がする。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:901pt お気に入り:4,184

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:681pt お気に入り:1,554

異世界のんびり散歩旅

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,202pt お気に入り:745

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,002pt お気に入り:33

場違いで何が悪い?(ホントの無双をお見せしよう)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:141

処理中です...