ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
149 / 181
第四部:送還編

149・俺、混沌の裁定者と決戦する

 混沌時空とでも言うのか、そんな空間へ飛び込んだホリデー号。

『そうそう、ここです。わたくし、お兄様が封印された後に混沌の裁定者が出てきて、ここに引きずり込まれたのです』

「待て、妹よ。俺は倒される前の前の段階で、カオスディーラーを異次元に押し込んだはずだが?」

『五花武のように、彼の力の媒介となる者がいたのです。わたくしはそれに「女神様、凄いサプライズ案件があるんですが」と魅力的な言葉で騙され、この空間に……』

 俺はいぶかしんだ。

「誘い込まれてホイホイ乗ったのでは?」

『それ以上はいけません、英雄オクノ。わたくしの名誉というものが』

 図星らしい。
 そして、当たり前みたいな顔をして、ホリデー号の上では邪神メイオーとその妹、月の女神ハームラが談笑している。

「どうしてハームラ様がここにおられるのですか?」

 ラムハが戸惑い気味に尋ねた。

『応援です。わたくしも、混沌の裁定者には恨みがありますから。ちなみに他の神々がこの戦いに参加できないのには理由があるのです。質問される前に答えます。彼らは皆、お兄様に敗れて肉体を失っています。わたくしは妹だったので戦わなくて、そのおかげで無事でした』

「サラッと重要な設定が明かされたな?」

 つまり、神々はメイオーに対抗するにも、混沌の裁定者を倒すにも、人間の手を借りなければならくなっているというわけだ。

 だから創造神キョードウではないかと思われる吟遊詩人は、それっぽく俺を運命的に導こうとしたのか。

「ううー、居心地が悪い……。元々、長い間私と一体だった方だけど、巫女でなくなった私としてはどういう顔をしてハームラ様と顔を合わせればいいか……」

 ラムハが珍しく悩んでいるな。

「巫女じゃなくなったのか」

「私はオクノの妻になったでしょう。巫女は神に身を捧げるものなので、独り身でなくてはいけないの!」

「なるほど……! ……って、ええっ!? いつのまに俺の奥さんに!?」

「同意の上で契りを結んだらそうなるのは、ハームラ教団では当たり前のことよ」

「そんな教義知らんかった。だけど俺としてもそこら辺は構わないのでいいよ!」

「良かった!」

「ラムハ一人だけ抱きつくなんてずるいー!! オクノくんあたしもあたしもー!」

「お姉さんも! そうねえ、実質私もオクノくんのものなわけだし!」

「仲間はずれは許しません! わたしも行きますよ! とーう!」

「うおーっ」

 四人の女子にのしかかられて、大変な俺である。

「何やってんだ」

 ミッタクが呆れ顔でこれを見ている。

『これこれ、元わたくしの巫女であったラムハ。わたくしの前でいちゃいちゃしないように……。イラッと来ます』

「この女神も大概駄目だな!?」

 こんな緊張感の欠片もない状態で、俺達は混沌時空的なものをふらふら彷徨う。
 時々、俺が空間に闘魂を注入して、混沌が船を侵食しようとするのを防いでいる。

「どこらへんに混沌の裁定者がいるんだ?」

「オクノ、こいつは混沌そのものだぞ。つまりだ。この空間の全てが混沌の裁定者とも言える。オレ達がやることは、この空間を定義することだ。お前らもだ。全員でイメージしろ。明確なイメージが、この混沌に形を与えることになる」

 メイオーが説明する。
 なるほど、イメージ。

 明確な形がない混沌の裁定者に、形を与えるというわけか。

 ならば、どんな形にするか……。

 俺が考えたのは、普通に五花だった。
 やっぱり悪いやつって言えばこうだよな。

 俺の近くで、イクサも珍しく何か考えている。
 こいつの思い描くイメージってどんなんだろうなあ。

「よしっ」

 何か思いついたようで、目を開けるイクサ。

「イクサ、どんなの考えたの」

「悪そうなやつだ」

「なるほど」

 分かりやすいと言えば分かりやすい。
 その他、仲間達もイメージを固めたらしい。

「それ、混沌が定義されるぞ。混沌の裁定者に形が生まれる……!」

 メイオーが指し示すのは、ホリデー号の衝角の先にある空間。
 そこへ、周囲の混沌が集まっていく。

『なんということだ、なんということだ。僕に形を与えようとは、傲慢に過ぎる』

 聞き覚えのある声が響き渡る。
 形を得つつある混沌が口を利いているのだ。

『僕を一度は封印した神。僕の手で変えられた女神。そして僕をぶった男がそこにいる……! 混沌をぶつとか、常識がないのか君は……!!』

 最後の声に怒りが籠もった。
 こいつ、まだ根に持っていたか……!

 だが、どうやらこれは、条件が揃っているから混沌の裁定者に形を与えられたようだ。

 メイオーもハームラも俺も、それぞれのやり方で混沌の裁定者を認識している。
 普通の人間だと、認識もできないっぽい。

 だからこそ、認識してる奴のイメージに合わせることで、誰もが混沌の裁定者を見られるようになるのだ。

 それは、瑠璃色の翼を持った骸骨のような怪物だった。
 その中心部に、五花武が収まっている。

 骸骨のあちこちから、虹色の羽毛みたいなものが無数に生えて、風もないのに揺れ続けている。

 これが混沌の裁定者。

 世界を滅ぼそうとする、異世界から来た神だ。
 そして俺達が与えた、倒すべき敵の形。

『やれやれ、不本意だが始めるとしよう。この僕が、再び世界の形を変えていくためには君達という障害を取り除かねばならないのだから』

 随分言ってることが分かりやすくなった。
 形を与えられたせいだろう。

 そして、アッと思う。

「みんな、混沌の裁定者の言葉には耳をかさないようにな。こいつ、多分五花の要素を取り込んでるので、普通に洗脳してくるぞ」

 仲間達が、ゲッ、という顔になった。

 俺は、くっついている女子たちを剥がして地面に立たせる。

「では、組めるものは陣形! そうでないものはめいめい、遊撃! オクタマ戦団、アターック!!」

 俺の号令とともに、戦いは始まった。

 非戦闘要員は船底に押し込んで、みんなめいめいに集まる。

「日向、陣形の指揮は任せた」

「分かった!」

 すっかり頼もしくなった日向が応じて、仲間達に指示を出していく。
 ちなみに陣形は明良川も使えるのだが、こいつに任せるのは怖いのでやめておくのだ……。

「オクノ。オレ達の仕事は最前線だぞ。いや、実に楽しいな! 仲間とやらとともに戦うなぞ、初めての経験だ!」

 メイオーは愉快そうに笑いつつ、混沌の裁定者に立ち向かう。

『現われよ、七勇者よ。一人欠番、二名を足して、八勇者よ』

「あたしが欠番扱いになってる! でも、あんなんに都合よく使われるくらいなら欠番でいいなあ」

 明良川が素直な感想をぶちまけた。

 俺達の目の前で、混沌の裁定者が七勇者とヘラクレスオオカブト怪人とスズメバチ怪人を召喚する。
 おお、みんな白目を剥いて、正気ではない。

 一度混沌の裁定者を受け入れると、魂まで奴のおもちゃになってしまうのだな。

「クラスメイトに攻撃するなんてできないわ! ……なーんて言うわけないでしょー! あたしが生き残るのが一番じゃオラァ!!』

 明良川が変身した。
 髪が炎の色になり、背中から炎で編まれた翼が生まれる。
 あ、こいつ、蛾がモチーフのやつだ!

 復活した熊川が、明良川目掛けて突っ込む。
 こいつを、真っ向から炎の翼で受け止めて弾き飛ばす明良川。
 怪獣大決戦である。

「ほう、こいつらがお前の仲間だった連中か? 愉快なことになってるなあっ! そおらっ、バルカンパンチッ!!」

 メイオーが繰り出した、爆発する連続パンチがクズリの姿をした七勇者をぶっ飛ばす。
 その横では、イクサが四腕の巨人剣士と切り結──「月影の太刀!」『ウグワーッ!!』あっ、終わった!!

「一度見せた太刀筋は通用せん」

 新しい技を出すかも知れなかったのに。
 なんか、一歩目の動きが見たことあったから、そこで即座に仕留めたっぽいな。
 実にガチンコな戦いをする男、イクサなのである。

 俺はと言うと、ザリガニっぽい見た目で槍を持った、懐かしい相手とのバトルだ。
 槍を小脇に受け止め、前進しながら頭を掴んで……。

「ヘッドバット!」

『ウグワーッ!!』

 飛び散るカニ味噌!
 仰け反ったザリガニの喉元を掴んで、

「喉輪落とし!」

『ウグワワーッ!!』

 そいつは爆発した。
 何かリニューアルはされてるんだろうが、元のままの耐久力ではこんなもんだろう。

 メイオーも、クズリ怪人に馬乗りになり、爆発パンチをボコボコに叩き込んで『ウグワーッ!!』文字通り粉砕した。

「おいおい、カオスディーラー。てめえの尖兵じゃあ俺達にゃ通用せんぞ。お前が、かかってこいや!」

 おおーっ、煽るメイオー。
 それを見て、カオスディーラーが笑った。

『実に、実に苛立たしい男だ! お前のような野蛮な神が、この僕を馬鹿にするなど許すまじき所業! そうだね、一人ひとりならそうでもないだろうが、ならば彼らも力を合わせたらどうだろう? そう、彼らを混ぜわせて、一人の勇者とする……!!』

 混沌の裁定者の目の前に、巨大な血の色のボールが出現する。
 それから、倒された七勇者の体が次々に生えてきた。

 うわあ、なんじゃあれキモチワルイ。

 一体のモンスターとなった七勇者は、俺達目掛けて咆哮を上げる。

 ここで、俺は思ったのだった。
 六人全員生えてるってことは、もしかしてももうみんな倒されてた……!?
感想 92

あなたにおすすめの小説

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。