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第四部:送還編
152・俺、メイオーと別れる
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「メイオーインフェルノ!!」
『ヤメロー! ヤメロー! ウグワーッ!!』
混沌の裁定者の断末魔とともに、混沌時空に亀裂が入った。
メイオーが使った、メイオーインフェルノの衝撃が加わったのと、空間の主になっていた混沌の裁定者が倒されたからだろう。
「世界が崩れるぞ! みんな、ホリデー号に戻れー!」
俺が号令を下すと、わらわらと船に戻っていく団員達。
シーマは一瞬、名残惜しそうに俺達を見ていたが、すぐにメイオーのもとに走っていった。
砕けていく時空に、メイオーが降りてくる。
「いやあ、せいせいしたぜ。これでようやく、本当の戦いを初められるなあ」
ニヤニヤ……ではなく、大変すがすがしい笑顔を浮かべている。
心底、戦いが楽しいんだなこいつは。
「オクノ。じきに世界は、終わらない戦乱に包まれる。殺し、殺され、憎み、憎まれ。人と人が争い、人と魔が争い、魔と魔が争う! 素晴らしい世界が訪れるのだ! オレが手を下す必要はない。オレが地上にいるだけで、世界はそのように変わる! 止めに来るがいい。お前を待っているぞ」
「うへえ、プロレス技ばっか使うのになんで邪神なんだろうと思ってたら、そういうことか。あんた、存在そのものが戦争発生装置なのかあ」
「そういうことだ。それからシーマ」
「なんですかな、メイオー様」
「まさか、お前が里心を出すとはなあ。オレの使い魔も日々成長しているということだ! オレは嬉しいぞ。だからな、子の成長を喜ぶのが親というものだ」
「は、はあ」
「察しの悪い奴だな。お前はお前が成長できる場に行け! オレのもとには、シン・コイーワとキー・ジョージがいる! お前の代役も作っておくわ! ほれ、行け! 行かないならばこうだぞ!」
メイオーが、シーマをひょいっと担いだ。
「ひえーっ! メイオー様、一体何をーっ!!」
「オクノ、受け取れ!! オレからの餞別だ! 時期が整えば、シーマがお前をオレの元へと誘うだろう! 楽しみにしている!」
メイオーは言うなり、シーマをすごい勢いで投げつけてきた。
おっ、これはキャッチしないと死ぬやつじゃん!?
「ブロッキング!」
俺はシーマを受け止めると、衝撃を殺した。
うほー、ブロッキングの上からでもビリビリ来る。
めちゃくちゃな馬鹿力だな!
そして、メイオーは崩れ行く足場の上で、笑いながら俺達を見送る。
その横に、倒したはずのシン・コイーワが現れる。
そしてもう一人、知的な感じのメガネ男子が出現した。キー・ジョージか。
「おお……お役御免となってしまったのじゃ……! じゃが、なんかめちゃくちゃに働かなくて良くなったせいか、晴れやかな気分じゃのう……」
俺の小脇に抱えられながら、シーマがスッキリした感じで呟くのだった。
『さようなら、お兄様! 次会う時は決戦なのですね……! オクノさん、今回も英雄コールの時と同じ、後がない状況ですよ。お兄様はフレンドリーなので分かりあえそうに見えますが、あの人、最後は絶対に戦いに辿り着きますので、相互理解した後に全力ドッカンバトルが待ち受けています。倒すしかありません』
ハームラが説明をしてくれる。
聞くほどにどうしようもないくらい戦いの神だな、メイオー。
何かのために戦うのではなくて、戦うために戦うのだな。
混沌時空は完全に消え、王国には青空が戻ってくる。
昼間だったんだな!
ホリデー号がふわふわ飛んできて、王国の港に着水した。
港町の風景からもわかるが、空が元通りになったことで、人々は闘いが終わったことを知って喜んでいる。
あちこちから歓声が聞こえるな。
ちなみにその歓喜はぬか喜びで、すぐさま戦争が起こるのだ。
本当にこの世界、災難続きだなあ。
まあ、俺がいた地球も広い目で見るとずーっと戦争してるから一緒か。
「あのー、ハームラ様。いつまでいらっしゃるんですか」
俺の隣にいつまでも月の女神がいるので、ラムハがおずおず聞いてきた。
言外に、そこは私の場所なんですけど、と言っている気がする……。
いや、俺をチラチラ見てるから言ってる。そう言ってる。
『安心なさい、ラムハよ』
ハームラはとても女神らしい、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
『すぐに神の世界へと戻ります。具体的には、今混沌の裁定者から分離された魂が物凄い数で冥府に落ちていったので、冥神ザップさんや冥府の方々が大パニックになっている可能性があります。わたくし、月の軍勢を引き連れてお手伝いに行くのですが、この時、混沌の裁定者が飲み込んでいた異界のとんでもない魂が妨害を仕掛けてくるかもしれないのです。ということで、皆さんに護衛をお願いし、冥界でひと仕事終えたら帰ります』
「すぐじゃないじゃないですかー!」
ラムハが心底困った顔で叫ぶ。
うん、凄く長そう。
『そうですか? 神の感覚だとすぐなんですけどー』
「ハームラ様! 私、ちゃんと人間に戻ったから、寿命があるんです! その、オクノの赤ちゃんを産むにもリミットがあってですね?」
ちらちら俺を見てくる。
かわいい。
俺は自らラムハの隣に移動して、ぎゅっとした。ラムハもぎゅっと抱きついてくる。
なんたる幸福感……!!
『あっ、女神の前でいちゃいちゃするなんて罰当たりな』
なんで罰当たりなんだよ!?
『ともかくそういうことです。この仕事を引き受けられるのは、この世界でオクタマ戦団しかいません。お引き受け願えますか?』
「これ、引き受けなかったら冥府が大混乱になるやつでしょ」
俺が聞くと、ハームラは返答せずに大変よい笑顔になった。
この女神めえ。
「しゃーない。次の仕事は冥界下りだな! すぐってわけじゃないでしょ? ちょっと休む暇くらいください」
『もちろんです、英雄オクノよ。ああ、それと一つだけアドバイスがあります』
「なんです?」
『冥府の仕事が終わるまで、これ以上子どもは作らないようになさい。新しい命を宿した人は、その間は冥界下りができませんから』
「はい?」
新しい命と聞いて、俺は首を傾げた。
ハームラが、こちらを眺めてプンプンしている女性陣を指差す。
具体的には、アミラとルリアとカリナがいて……。
「三人いて、候補が二人いるけど」
『あの若い子にはまだ手を出してないのですか? 真面目ですねえ。あ、彼女です』
月の女神の指先から、ビームが出た。
それがルリアのおへそ辺りを直撃する。
「あっつー!? おへそ焦げる!?」
「なん……だと……?」
『彼女は戦力外ですねえ。注意してくださいね……』
「なん……だと……!?」
その途端、船底からうちの両親がスポポーンと飛び出してきて、ルリアを抱き上げてくるくる回る。
こ、こいつらーっ!
「そ、そんな……先を越された」
衝撃で震えるアミラ。
「こ、こういうのって、私からっていうのがパターンでしょ……この泥棒猫ーっ!」
ラムハが涙目になってじたばたする。
「子どもができたんですか? ルリアに? ルリアがお母さんになるんですか? ええー。やれるんですかあ?」
カリナが素で煽ってきた。
いきなりの状況に戸惑っていたルリアが、「やーれーまーすーぅー!!」とめっちゃくちゃムキになって反論した。
しかし、そうかあ。
ルリアのうんのよさを舐めていた。
あれ、ルリアが望んでるなら百発百中の可能性があるってことだな。
うん、心当たりがありすぎる。
おかげで戦力を一人失った。
注意します。
「なあに、わしが正式に加入したのじゃ。大船に乗ったつもりでおれ」
シーマが笑いながら、俺の胸板を小突くのだった。
送還編 → 伝説編
『ヤメロー! ヤメロー! ウグワーッ!!』
混沌の裁定者の断末魔とともに、混沌時空に亀裂が入った。
メイオーが使った、メイオーインフェルノの衝撃が加わったのと、空間の主になっていた混沌の裁定者が倒されたからだろう。
「世界が崩れるぞ! みんな、ホリデー号に戻れー!」
俺が号令を下すと、わらわらと船に戻っていく団員達。
シーマは一瞬、名残惜しそうに俺達を見ていたが、すぐにメイオーのもとに走っていった。
砕けていく時空に、メイオーが降りてくる。
「いやあ、せいせいしたぜ。これでようやく、本当の戦いを初められるなあ」
ニヤニヤ……ではなく、大変すがすがしい笑顔を浮かべている。
心底、戦いが楽しいんだなこいつは。
「オクノ。じきに世界は、終わらない戦乱に包まれる。殺し、殺され、憎み、憎まれ。人と人が争い、人と魔が争い、魔と魔が争う! 素晴らしい世界が訪れるのだ! オレが手を下す必要はない。オレが地上にいるだけで、世界はそのように変わる! 止めに来るがいい。お前を待っているぞ」
「うへえ、プロレス技ばっか使うのになんで邪神なんだろうと思ってたら、そういうことか。あんた、存在そのものが戦争発生装置なのかあ」
「そういうことだ。それからシーマ」
「なんですかな、メイオー様」
「まさか、お前が里心を出すとはなあ。オレの使い魔も日々成長しているということだ! オレは嬉しいぞ。だからな、子の成長を喜ぶのが親というものだ」
「は、はあ」
「察しの悪い奴だな。お前はお前が成長できる場に行け! オレのもとには、シン・コイーワとキー・ジョージがいる! お前の代役も作っておくわ! ほれ、行け! 行かないならばこうだぞ!」
メイオーが、シーマをひょいっと担いだ。
「ひえーっ! メイオー様、一体何をーっ!!」
「オクノ、受け取れ!! オレからの餞別だ! 時期が整えば、シーマがお前をオレの元へと誘うだろう! 楽しみにしている!」
メイオーは言うなり、シーマをすごい勢いで投げつけてきた。
おっ、これはキャッチしないと死ぬやつじゃん!?
「ブロッキング!」
俺はシーマを受け止めると、衝撃を殺した。
うほー、ブロッキングの上からでもビリビリ来る。
めちゃくちゃな馬鹿力だな!
そして、メイオーは崩れ行く足場の上で、笑いながら俺達を見送る。
その横に、倒したはずのシン・コイーワが現れる。
そしてもう一人、知的な感じのメガネ男子が出現した。キー・ジョージか。
「おお……お役御免となってしまったのじゃ……! じゃが、なんかめちゃくちゃに働かなくて良くなったせいか、晴れやかな気分じゃのう……」
俺の小脇に抱えられながら、シーマがスッキリした感じで呟くのだった。
『さようなら、お兄様! 次会う時は決戦なのですね……! オクノさん、今回も英雄コールの時と同じ、後がない状況ですよ。お兄様はフレンドリーなので分かりあえそうに見えますが、あの人、最後は絶対に戦いに辿り着きますので、相互理解した後に全力ドッカンバトルが待ち受けています。倒すしかありません』
ハームラが説明をしてくれる。
聞くほどにどうしようもないくらい戦いの神だな、メイオー。
何かのために戦うのではなくて、戦うために戦うのだな。
混沌時空は完全に消え、王国には青空が戻ってくる。
昼間だったんだな!
ホリデー号がふわふわ飛んできて、王国の港に着水した。
港町の風景からもわかるが、空が元通りになったことで、人々は闘いが終わったことを知って喜んでいる。
あちこちから歓声が聞こえるな。
ちなみにその歓喜はぬか喜びで、すぐさま戦争が起こるのだ。
本当にこの世界、災難続きだなあ。
まあ、俺がいた地球も広い目で見るとずーっと戦争してるから一緒か。
「あのー、ハームラ様。いつまでいらっしゃるんですか」
俺の隣にいつまでも月の女神がいるので、ラムハがおずおず聞いてきた。
言外に、そこは私の場所なんですけど、と言っている気がする……。
いや、俺をチラチラ見てるから言ってる。そう言ってる。
『安心なさい、ラムハよ』
ハームラはとても女神らしい、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
『すぐに神の世界へと戻ります。具体的には、今混沌の裁定者から分離された魂が物凄い数で冥府に落ちていったので、冥神ザップさんや冥府の方々が大パニックになっている可能性があります。わたくし、月の軍勢を引き連れてお手伝いに行くのですが、この時、混沌の裁定者が飲み込んでいた異界のとんでもない魂が妨害を仕掛けてくるかもしれないのです。ということで、皆さんに護衛をお願いし、冥界でひと仕事終えたら帰ります』
「すぐじゃないじゃないですかー!」
ラムハが心底困った顔で叫ぶ。
うん、凄く長そう。
『そうですか? 神の感覚だとすぐなんですけどー』
「ハームラ様! 私、ちゃんと人間に戻ったから、寿命があるんです! その、オクノの赤ちゃんを産むにもリミットがあってですね?」
ちらちら俺を見てくる。
かわいい。
俺は自らラムハの隣に移動して、ぎゅっとした。ラムハもぎゅっと抱きついてくる。
なんたる幸福感……!!
『あっ、女神の前でいちゃいちゃするなんて罰当たりな』
なんで罰当たりなんだよ!?
『ともかくそういうことです。この仕事を引き受けられるのは、この世界でオクタマ戦団しかいません。お引き受け願えますか?』
「これ、引き受けなかったら冥府が大混乱になるやつでしょ」
俺が聞くと、ハームラは返答せずに大変よい笑顔になった。
この女神めえ。
「しゃーない。次の仕事は冥界下りだな! すぐってわけじゃないでしょ? ちょっと休む暇くらいください」
『もちろんです、英雄オクノよ。ああ、それと一つだけアドバイスがあります』
「なんです?」
『冥府の仕事が終わるまで、これ以上子どもは作らないようになさい。新しい命を宿した人は、その間は冥界下りができませんから』
「はい?」
新しい命と聞いて、俺は首を傾げた。
ハームラが、こちらを眺めてプンプンしている女性陣を指差す。
具体的には、アミラとルリアとカリナがいて……。
「三人いて、候補が二人いるけど」
『あの若い子にはまだ手を出してないのですか? 真面目ですねえ。あ、彼女です』
月の女神の指先から、ビームが出た。
それがルリアのおへそ辺りを直撃する。
「あっつー!? おへそ焦げる!?」
「なん……だと……?」
『彼女は戦力外ですねえ。注意してくださいね……』
「なん……だと……!?」
その途端、船底からうちの両親がスポポーンと飛び出してきて、ルリアを抱き上げてくるくる回る。
こ、こいつらーっ!
「そ、そんな……先を越された」
衝撃で震えるアミラ。
「こ、こういうのって、私からっていうのがパターンでしょ……この泥棒猫ーっ!」
ラムハが涙目になってじたばたする。
「子どもができたんですか? ルリアに? ルリアがお母さんになるんですか? ええー。やれるんですかあ?」
カリナが素で煽ってきた。
いきなりの状況に戸惑っていたルリアが、「やーれーまーすーぅー!!」とめっちゃくちゃムキになって反論した。
しかし、そうかあ。
ルリアのうんのよさを舐めていた。
あれ、ルリアが望んでるなら百発百中の可能性があるってことだな。
うん、心当たりがありすぎる。
おかげで戦力を一人失った。
注意します。
「なあに、わしが正式に加入したのじゃ。大船に乗ったつもりでおれ」
シーマが笑いながら、俺の胸板を小突くのだった。
送還編 → 伝説編
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