召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
9 / 196
ワンザブロー帝国編

第9話 膝枕とは極楽な

しおりを挟む
 さて、道行く途中で、俺は力尽きてぶっ倒れたようだ。
 よくよく考えれば、現代人であり、運動がそこまで得意なわけでもない俺が、連続する緊張感の中で罠の突破とモンスターの撃破なんかをやったわけで。
 これはどうやら、かなりのストレスだったようだ。

 どこまで行っても荒野なんだもんな。
 この世界、塔の外側がヤバいでしょ。

 ついに俺は歩き疲れてぶっ倒れ、なんか自宅でポチポチとスマホゲーをしている夢を見た……気がする。
 枕が大変弾力があり、ほんのり温かくていつまでも頭を載せていたい……。

「……はっ!」

 俺は覚醒した。

「あっ、ようやく目覚めました!」

 目の前には、俺を覗き込んでいる女の子の顔がある。
 これは大変カワイイ。

「突然倒れて、これは死んじゃった!? と思ったら、ぐうぐう寝てるんですもん。マナビさんって結構疲れやすかったりするんです?」

「あ、あー、ルミイか! あれ、なんで俺はルミイの顔を見上げてるの?」

「そりゃあもちろん、わたしが膝枕してあげているからです。パパにも褒められるんですよー。筋肉と脂肪がすごくバランスがよくて寝心地がいいって! でも、わたしが膝枕してると、ママが走ってきてパパを蹴っ飛ばすんですよねー」

「いきなりルミイの家庭の情報が流れ込んできた……! というか、これ、膝枕? ルミイの? うおおお」

 俺は興奮した。
 生まれて初めて、女の子に膝枕をされている。
 これは凄いことではないだろうか?

 ルミイの顔から視線を外せば、空は夕暮れ。
 周囲は荒野。

 滅びの塔の姿はどこにも見えない。
 かなりの距離を歩いてきたのだ。

 どれだけの間、ルミイに膝枕してもらったんだろうと考える。
 太陽が二つとも傾きかけているので、そろそろ夕方……。

「太陽が二つ!?」

 俺は慌てて起き上がった。
 空を確認する。
 オレンジ色の太陽と、青白い太陽が一つずつ。

「確かに二つある……」

「青い方は魔力の星エーテリアですね。大昔、魔法皇帝と呼ばれた凄い魔法使いが、世界の外の魔力を集めて空に浮かべたんです。あれが魔法使いたちに無尽蔵の魔力を提供するとか言ってて、それで魔法使いは世界を支配しました」

「魔力を星に……! とんでもないことをするもんだ」

「はい! でも、ママが小さい頃よりも、星はずいぶん暗くなったって言ってます。だから魔法帝国たちはみんな慌てて、どうにかしようとしてるんだって」

「ほうほう……。この世界、今まさに異変が起こっているんだな。どれ、ヘルプ機能!」

 俺は力を使い、エーテリアを指さした。

『魔力集積・供給装置エーテリアです。千年以上に渡る運用で、その機能に障害が生じています。具体的には、あと三年で機能停止、落下します』

「うおお」

 凄い事実が判明してしまった。
 いきなり吠えた俺に、ルミイがきょとんとする。

「あ、でもマナビさんですし、何をしてもおかしくないですもんね」

「俺に対する理解度が凄く深くなってる。出会ったばかりなのに」

 理解のある女子は存在したのである。
 いきなり召喚された異世界だが、俺はここでもルミイさえいればやっていけるかも知れない。

「よしっ」

 俺は立ち上がった。

「まずは、今夜寝られる場所を探そう。それからルミイの故郷まで行こう」

「えっ! わたしを送ってくれるんですか!」

「ああ。ルミイはここまでさらわれて来たんだろう? だったら、俺がこの力で助けてあげるよ。膝枕のお礼だ」

「うわーっ! ありがとうございますーっ!!」

「うおおお!! だ、抱きついてきた! 圧倒的柔らかさと暖かさ! 世界にはこんな素晴らしいものが存在していたのか……!!」

 俺のモチベーションはマックスだ。
 今なら世界を敵に回しても戦えそうな気がする。

 いや、実際、世界の一角であるワンザブロー帝国を敵に回しているわけなんだが。

 いきなり処刑装置みたいな塔に送り込まれれば、敵に回すのも当然と言えるだろう。

「ル、ルミイ。とても名残惜しいが、今夜の宿泊先を探そう」

「あっ、そうですね!」

 パッと離れるルミイ。
 おお、あの柔らかさが名残惜しい……。

「ヘルプ機能」

『魔法探知遮断処理を行った集落がここに存在します』


 俺の視界に矢印が現れた。
 それが、一見して何もない荒野の一角を指し示す。

「こっちか」

「こっち? 何もないみたいです?」

「ああ、そういう風に見えるかもしれないけど、魔法探知を遮断してあるそうだ」

「ああー。探知魔法は穴があるって聞きますからねえ。精霊魔法なら、精霊にお願いして直接見てもらえるのに……。あれあれ? どうしてわたしにも見えないんだろう」

 首をひねるルミイを連れて、俺は矢印の場所へ。
 一歩踏み出すと、風景が変わった。

 そこは、石と金属で作られた人工の空間だった。

 すぐ横に男が立っていて、呆然と俺たちを見つめている。

「ヘルプ機能。どうしてルミイに分からなかったんだ?」

『魔法探知遮断と、視覚をごまかす魔法が同時に掛かっていました。この種の魔法としては最大規模です。これよりも大きな規模の範囲への行使は不可能でしょう』


 空間を見回す。
 広さは、小学校の体育館くらい。

 なるほど、大きな町なんかはこの魔法で隠すことができないわけか。

「なんだ、お前たちは!」

 呆然としていた男が、慌てて武器を取り出した。
 槍かな?

「待て。俺たちは敵ではない。ワンザブロー帝国に滅びの塔へ投げ込まれたので、塔をぶっ壊して出てきたところなんだ」

「敵ではないと言われて、誰が信用を……って、滅びの塔を!? ぶっ壊した!? ハア!?」

 声が大きい。
 だが、男の叫び声はこの空間中に聞こえたようだ。

 あちこちにある建物から、人間や人間じゃないのや、男や女が顔を出す。

「た、確かに滅びの塔が崩壊していた! あれはエーテリアからの魔力供給が絶たれたせいじゃないのか!?」

「人為的に破壊しただと!? あの強固な守りを誇る塔を!?」

「大型弩弓でも傷一つつかなかったのに!」

「内側から圧倒的な力で壊しでもしないと、不可能だ!」

 おお、たくさん出てきた!
 彼らは皆、一見して一般人ではなかった。
 武装をしており、目つきは鋭い。

「あんたたちは?」

「我々はワンザブロー帝国レジスタンス。魔法使いたちによる世界の支配を止めるため、立ち上がった有志だ!」

 今夜の宿は確保できそうだと、俺は思った。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

『レベルMAXの引退生活』 〜追放先でダラダラしていたら、いつの間にか世界最強の聖域になっていました〜

小林 れい
ファンタジー
「働いたら負け」と言って追放された最強聖女、成層圏で究極のニート生活を極める 〜神々がパシリで、寝顔が世界平和の象徴です〜 「お願いだから、私を一生寝かせておいて」 前世でブラック企業の社畜として命を削ったヒロイン・ユラリア。異世界に転生し、国を救う「聖女」として崇められるも、彼女の願いはただ一つ――「もう一歩も動きたくない」。 しかし、婚約者の第一王子からは「働かない聖女など不要だ!」と無情な婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。 「え、いいんですか? 本当に休んでいいんですね!?」 喜びに震えながら、ユラリアは人類未踏の死の荒野へと引きこもる。だが、彼女の「怠惰」を極めるための魔力は、いつしか世界の理(ことわり)さえも書き換えていった。 神龍王を巨大な「日除け」に。 料理の神を「おやつ担当の給食係」に。 妖精王を「全自動美容マシーン」に。 「面倒くさい」を原動力に開発された魔導家電や、異世界の娯楽(ゲーム)。挙句の果てには、地上を離れ、邸宅ごと空へと浮かび上がる! 地上の元婚約者が、聖女を失った王国の没落に泣きつこうとも、成層圏に住む彼女には豆粒ほどにも見えない。 神々さえもパシリにする史上最強のニート聖女が、夢の中でも二度寝を楽しむ、贅沢すぎる究極の休日が今、始まる!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

ドラゴネット興隆記

椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。 ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-

ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。 第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。 スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。 迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。 空間を切り取り収納できる『空間魔法』。 思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。 少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか? 『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※カクヨム様にも掲載中です。

処理中です...