召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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ワンザブロー帝国編

第11話 割り込み攻撃とは驚きな

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 人間の動きというやつは、スケルトンと比べると自由……と思いきや。
 案外規則的なものだ。

 めいめい勝手に放たれる武器の攻撃や魔法は、お互いにぶつかり合って俺に届くことはない。
 だからちょっと冷静な連中同志で、ちょっとタイミングを合わせて攻撃してこないといけないわけだ。

 そして、規則的な攻撃には癖があるので、これを覚えると回避も容易。

 つまり……。
 対レジスタンスのチュートリアルは、すぐに作業ゲーと化したのである。

「スケルトンよりは強い……。強い……? 喰らってないからわからないなあ」

 レジスタンスの攻撃をかいくぐりながら、俺は首をひねるのだ。

「マナビさん、完全に余裕ですね! 慣れちゃいました? 慣れたときほど危ないって、パパが言ってました!」

「ルミイのパパはいいこと言うなあ……。確かに、作業だと思って気を緩めていると死ぬかもわからないね。だが……こう……こいつらはスケルトンと違って追いかけてくるんだ。つまりキリがないぞ」

 問題がはっきりしてしまった。
 俺たちはここに、休憩をするためにやって来た。
 だが、レジスタンスの頭がおかしく、休むどころではなくなってしまった。

 これはよろしくない。

「レジスタンスを何人か倒した方がいいな」

「そうですね。敵の首を取れってパパとママが言ってました」

「そういうところでバーバリアンとエルフの意見が合うんだ!? ルミイとしてはどうなの」

 レジスタンスの剣や槍、ハンマーと言った攻撃を躱しながら質問を投げる。
 ふわふわハーフエルフな彼女は、やはり繰り出される攻撃をひょいひょい避けながら「うーん」と唸った。
 チュートリアルモードに慣れてきたね。

「わたしは、あんまり好きじゃないですねえ。戦わなければ生き残れないですけど、無駄な争いは無い方がいいです」

「だよな。じゃあ戦闘力を奪うだけにしよう」

 俺はハンマーを振り回すやつの顎をぶん殴り、武器を奪った。
 これをちょっと使ってみて、扱い方をなんとなく把握する。

「俺の体が振り回される程度に重いが、なんとかなるな。ヘルプ機能」

『ゲイルハンマー。風の魔力が付与された両手持ちの武器です。外見以上に軽量化されており、合言葉の呪文、「吹き荒れよ風」を唱えることで周囲に猛烈な風を巻き起こします』

「オーケー。吹き荒れよ、風! はい、ルミイは俺に掴まって!」

「はいい! うひゃー!! すっごい風です!!」

 ぶおおっと吹きすさぶ風が、レジスタンスをなぎ倒していく。
 なるほど、これを使うと仲間を巻き込むから、使用者はただのハンマーとして振り回してたんだな。
 宝の持ち腐れである。

「これは俺がありがたく使わせてもらおう。うん、レジスタンスがここで及び腰になるんだな。これはもう勝ったも同然では?」

「マナビさあん、慢心は禁物ですよう」

「そうだったそうだった」

 俺は笑いながら、チュートリアルを終えようとした。
 その時だ。

 レジスタンスが潜む建造物の天井が、突然破れた。
 降り注ぐ、きらめく何か。

「ヘルプ機能!」

『ソード・ヴァルキュリア。ツーブロッカー帝国の召喚者、“戦乙女の主”のスローゲインによる攻撃です』

「召喚者!? 俺と同じヤツか! 吹き荒れよ、風!」

 ゲイルハンマーを発動させて、降り注ぐ何か……恐らくは剣を跳ね除ける。
 だがこいつは、なんと風を切り裂きながら俺に迫ってくる。
 ヤバいヤバい!

 慌てて伏せて、刃をやり過ごす。

「あひいー! マナビさん助けてえー!」

「おおっ、ルミイの情けない悲鳴でちょっと冷静になれた。ありがとう」

「嬉しくないお礼ですぅーっ!」

 降り注ぐ刃の法則性を見つけたいところだ。
 俺はこれに注視した。

 ここはチュートリアル空間だからして、死んでも死なない。
 レジスタンスを盾にしながら、刃の動きを確認する。

 とりあえず分かったこと。
 人間の体程度なら、五、六人を一気に切断、貫通する。
 触れたら死ぬ。

 防御魔法を使ったレジスタンスがいたが、魔法ごと叩き切られていた。
 駄目だこりゃ。

 防御しようと思ったら、ルミイ以外は死ぬな。
 では、回避はどうか?

 どうやら刃は、対象を決めるとそれを追尾してくるようだ。
 だが、レジスタンスのようにお互いに気を使うということができない。

 俺が、複数の刃の標的になるように動き、それらが追ってくる軌跡を被せてやると……。
 追突して落下、消滅する。

 ふんふん。
 弱点は見つけた。

 それに、鋭く正確な動きをするから、どの刃が襲ってきているかを確認できれば回避はできる。
 シビアだが、やれるな、これは。

 ところで、対レジスタンス用に展開したチュートリアルモードだが、そこに予想外の相手が紛れ込んできた。
 これ、チュートリアルというか、未来予測機能ではないか。

 俺の能力とは、本当にチュートリアルモードなのか?
 いや、ヘルプ機能も無茶苦茶強いんだが。

 何度かチャレンジするうちに、刃の癖を読み切った。
 スローゲインとやらが俺を認識してないからかも知れないが、自動追尾してくる刃は相殺させつつ回避が可能だ。

 そして練習している間に、レジスタンスが全滅したな……。
 文字通りの全滅で、一人も生き残ってない。

 召喚者というのはこれほど恐ろしい力を持っているのか。
 剣呑剣呑。
 近寄らんとこ……。

「あうあああー! マ、マナビさあああん! もうだめですーっ!」

「大丈夫、大丈夫だから! あとあんまり大声で叫ぶと、本番じゃ気付かれるから!」

 むぎゅうっとしがみついてくるルミイを連れて、建物の影に隠れる。

『チュートリアルモードを終了します』

 どうやらここで、状況はクリアらしい。
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