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ワンザブロー帝国編
第33話 便利な敵とはここでお別れか
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「こんにちは、魔神戦士カオルンさん」
「おおっ。やっぱりお前、ストライアスが言っていた通りだったのだ! 名乗ってもいないのにカオルンのことを知ってたのだなー」
うんうん頷くカオルン。
ふーむ。
ルミイより一回り小さくて、頷くたびに尻尾がぴょこぴょこする。
これはカワイイ。
「カオルンさん、積もる話はあると思うが、今はほら、邪魔者がいるだろ」
「ああー、スローゲインなのだなー。あれは何度かやり合ってるけど、手数が多すぎてカオルンでは本体までたどりつけないのだ」
「あっ、カオルンさんスローゲインと戦ったことが? じゃあ話は速いので、二人でここで仕留めよう。俺があいつのソード・ヴァルキュリアが当たらないところを進むので、後ろから来れば勝てるよ」
「本当なのだ!? 楽ちんなのはカオルン大好きなのだー!!」
「あひー、物騒な相談がされてます!! というかマナビさん、なんでいきなりその訳の分からない人と打ち解けてるんですかー!」
「そりゃあもう、ちょっと言葉をかわしたらめちゃくちゃ話が通じそうな相手だからだよ」
異世界パルメディアに召喚されて、ルミイと同じくらい話しやすい相手なのだ。
ルミイとはじっくり分かりあった感じだが、カオルンは言語を通じずにスパッと分かり合ってる気がする。
逆を言えば、突然敵対することになってもおかしくないわけだが。
そしてスローゲインくん。
ここまで便利に働いてくれたが、そろそろお別れだ。
「では任せるのだ! なんか便利な人!」
「その呼び名はあんまりなので、俺のことはマナビと呼びたまえ。“ヌルゲー”のマナビだ」
「わかったのだマナビ! あと、そっちのハーフエルフの人もついてくるのだ!」
「あひー! わ、わたしもですかあ!?」
「そっちはルミイだ。俺の大切な大切な仲間だぞ……。主に俺のモチベーションの九割久分を担当してくれている」
「ほぼ全てなのだ……!! わはははは! 二人とも面白いのだー! ストライアスに教えてあげるのだ!」
「ヘルプ機能、ストライアスとは」
『第十七代ワンザブロー帝国皇帝です』
「このお嬢さん、皇帝の懐刀か!」
これで、カオルンとの交渉は終了。
結果は上々だ。
チュートリアルでは対応できない領域なので、一発勝負である。
ゲームというのは時折こういう緊張感があると、ピリッと引き締まる。
「そしてここからは、いつものヌルゲーフェイズだ。チュートリアル!」
チュートリアル世界に戻る。
カオルンがユニット化した。
ふむ、やっぱりこの世界にやってこれるのは、俺とルミイだけらしい。
「あー、なんかずっとドキドキしっぱなしで変な汗かいてますー。お風呂入りたーい」
「ルミイがいつでもお風呂に入れる世界を目指して俺は頑張るよ……!」
「マナビさんがすっごくいい笑顔してます!」
「その時にはまたご一緒させてください……」
俺のモチベーションがもりもりと湧いてくる。
さあ、元気にスローゲインへ挑もう。
こちらからあいつに向かって突き進むのは、初めてのことだろう。
さて、突き進んでくるソード・ヴァルキュリアの動きはこれまでになく単調。
真っ直ぐ行くと、順列になった剣は相殺し合わなくなるから……。
「ルミイ、ここは俺とくっついてだな」
「はーい!」
むぎゅっとくっついてくるルミイ。
ふわふわローブの下のムチムチがたいへんよく分かる。
いやあ、やる気がどんどん湧いてくるわ!
で、ルミイを招き寄せた理由は簡単。
「ゲイルハンマー!」
風を起こして、俺たちを真横へ移動させる。
すると、ソード・ヴァルキュリアがこれを追って軌道を変えた。
そこで、後列にいたはずの剣が我先に飛び出そうとして、前列の剣と衝突、相殺された。
これこれ。
ソード・ヴァルキュリアにはある程度の自立意志がある。
だからこそ、功を焦るという行動が発生する。
あえて、後列にいるやつにチャンスがあるように動くことで、多数のソード・ヴァルキュリアが俺を狙うことになるのだ。
ここにルミイをくっつけることで、剣の標的を散らすことができるようになる。
つまり、向こうの照準がぶれる。
そうなれば、さらに飛び込んできた剣同士が衝突することで……。
「わーっ、全然剣が降ってこない道ができました!」
「な? これを俺は安全地帯と呼ぶ。スローゲインがもうちょっと、能力に驕らずに研鑽を続けてたらこの戦法はできなかっただろうなあ。あいつの敗因は、強すぎたことだよ」
ゲイルハンマーの突風で、俺たちの軌道をジグザグにしながら突き進む。
姿勢の修正は、ルミイが精霊魔法を使ってやってくれる。
どんどん近づく、スローゲイン。
やつの顔が驚きと恐怖に歪むのが見える。
お前にも恐怖という感情があるんだなあ。
慌てて、スローゲインは周囲一帯に無数のソード・ヴァルキュリアを展開した。
まるで、ハリネズミ状の小型城塞みたいになっていく……。
その隙間を、紫色の風が貫いた。
突風としか言いようがない速度で、カオルンが突っ込んだのだ。
彼女の両手から、紫の光が剣の形に伸びている。
おっ、スローゲインが左右から袈裟懸けにされて……。
「ウグワーッ!!」
これは死にましたなあ。
同時に、ソード・ヴァルキュリアの全てが光になって消滅した。
いやあ、強いねカオルン!
勝ちのための一手を、確定で埋めてくれる感じだ。
チュートリアルは終了。
さあ、勝ちに行くとしようか。
「おおっ。やっぱりお前、ストライアスが言っていた通りだったのだ! 名乗ってもいないのにカオルンのことを知ってたのだなー」
うんうん頷くカオルン。
ふーむ。
ルミイより一回り小さくて、頷くたびに尻尾がぴょこぴょこする。
これはカワイイ。
「カオルンさん、積もる話はあると思うが、今はほら、邪魔者がいるだろ」
「ああー、スローゲインなのだなー。あれは何度かやり合ってるけど、手数が多すぎてカオルンでは本体までたどりつけないのだ」
「あっ、カオルンさんスローゲインと戦ったことが? じゃあ話は速いので、二人でここで仕留めよう。俺があいつのソード・ヴァルキュリアが当たらないところを進むので、後ろから来れば勝てるよ」
「本当なのだ!? 楽ちんなのはカオルン大好きなのだー!!」
「あひー、物騒な相談がされてます!! というかマナビさん、なんでいきなりその訳の分からない人と打ち解けてるんですかー!」
「そりゃあもう、ちょっと言葉をかわしたらめちゃくちゃ話が通じそうな相手だからだよ」
異世界パルメディアに召喚されて、ルミイと同じくらい話しやすい相手なのだ。
ルミイとはじっくり分かりあった感じだが、カオルンは言語を通じずにスパッと分かり合ってる気がする。
逆を言えば、突然敵対することになってもおかしくないわけだが。
そしてスローゲインくん。
ここまで便利に働いてくれたが、そろそろお別れだ。
「では任せるのだ! なんか便利な人!」
「その呼び名はあんまりなので、俺のことはマナビと呼びたまえ。“ヌルゲー”のマナビだ」
「わかったのだマナビ! あと、そっちのハーフエルフの人もついてくるのだ!」
「あひー! わ、わたしもですかあ!?」
「そっちはルミイだ。俺の大切な大切な仲間だぞ……。主に俺のモチベーションの九割久分を担当してくれている」
「ほぼ全てなのだ……!! わはははは! 二人とも面白いのだー! ストライアスに教えてあげるのだ!」
「ヘルプ機能、ストライアスとは」
『第十七代ワンザブロー帝国皇帝です』
「このお嬢さん、皇帝の懐刀か!」
これで、カオルンとの交渉は終了。
結果は上々だ。
チュートリアルでは対応できない領域なので、一発勝負である。
ゲームというのは時折こういう緊張感があると、ピリッと引き締まる。
「そしてここからは、いつものヌルゲーフェイズだ。チュートリアル!」
チュートリアル世界に戻る。
カオルンがユニット化した。
ふむ、やっぱりこの世界にやってこれるのは、俺とルミイだけらしい。
「あー、なんかずっとドキドキしっぱなしで変な汗かいてますー。お風呂入りたーい」
「ルミイがいつでもお風呂に入れる世界を目指して俺は頑張るよ……!」
「マナビさんがすっごくいい笑顔してます!」
「その時にはまたご一緒させてください……」
俺のモチベーションがもりもりと湧いてくる。
さあ、元気にスローゲインへ挑もう。
こちらからあいつに向かって突き進むのは、初めてのことだろう。
さて、突き進んでくるソード・ヴァルキュリアの動きはこれまでになく単調。
真っ直ぐ行くと、順列になった剣は相殺し合わなくなるから……。
「ルミイ、ここは俺とくっついてだな」
「はーい!」
むぎゅっとくっついてくるルミイ。
ふわふわローブの下のムチムチがたいへんよく分かる。
いやあ、やる気がどんどん湧いてくるわ!
で、ルミイを招き寄せた理由は簡単。
「ゲイルハンマー!」
風を起こして、俺たちを真横へ移動させる。
すると、ソード・ヴァルキュリアがこれを追って軌道を変えた。
そこで、後列にいたはずの剣が我先に飛び出そうとして、前列の剣と衝突、相殺された。
これこれ。
ソード・ヴァルキュリアにはある程度の自立意志がある。
だからこそ、功を焦るという行動が発生する。
あえて、後列にいるやつにチャンスがあるように動くことで、多数のソード・ヴァルキュリアが俺を狙うことになるのだ。
ここにルミイをくっつけることで、剣の標的を散らすことができるようになる。
つまり、向こうの照準がぶれる。
そうなれば、さらに飛び込んできた剣同士が衝突することで……。
「わーっ、全然剣が降ってこない道ができました!」
「な? これを俺は安全地帯と呼ぶ。スローゲインがもうちょっと、能力に驕らずに研鑽を続けてたらこの戦法はできなかっただろうなあ。あいつの敗因は、強すぎたことだよ」
ゲイルハンマーの突風で、俺たちの軌道をジグザグにしながら突き進む。
姿勢の修正は、ルミイが精霊魔法を使ってやってくれる。
どんどん近づく、スローゲイン。
やつの顔が驚きと恐怖に歪むのが見える。
お前にも恐怖という感情があるんだなあ。
慌てて、スローゲインは周囲一帯に無数のソード・ヴァルキュリアを展開した。
まるで、ハリネズミ状の小型城塞みたいになっていく……。
その隙間を、紫色の風が貫いた。
突風としか言いようがない速度で、カオルンが突っ込んだのだ。
彼女の両手から、紫の光が剣の形に伸びている。
おっ、スローゲインが左右から袈裟懸けにされて……。
「ウグワーッ!!」
これは死にましたなあ。
同時に、ソード・ヴァルキュリアの全てが光になって消滅した。
いやあ、強いねカオルン!
勝ちのための一手を、確定で埋めてくれる感じだ。
チュートリアルは終了。
さあ、勝ちに行くとしようか。
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