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スリッピー帝国編
第41話 最高のスパイスは空腹から
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悲鳴をあげ、のたうち回りながら焼けていく若い人たちを横目に、魔導カーをトコトコと走らせる。
彼らが目立ってくれるお陰で、俺たちは注目されないな。
ラッキーだ。ツイてるぞ。
「むっ、臭くなってきたのだ」
「ゴミ置き場が近いのかもしれないな。いいぞいいぞ」
俺に妙案あり!
到着したのは、瓦礫が積み上げられた場所だ。
あちこちが今にも崩れそう。
少し向こうには生ゴミなどがまとめられている。
「木を隠すには森からというのだが、瓦礫の中に魔導カーを隠せばわからないのではないか」
「あっ、確かにそうですね! そうしましょう!」
そういうことになったのだった。
三人で、せっせと瓦礫を使ったカモフラージュを施す。
すぐに魔導カーは、それと分からなくなった。
ひと仕事終えた俺たちは、また元のところに戻ってくる。
「ええと、ヘルプ機能によると、さっきのところが入り口広場で、あそこを経由しないと都市の中に入れないんだと」
「ええーっ! じゃあ、そんなところでさっきの人たちは暴れてたんですか! 迷惑ですねえ」
「ああ。俺たちはそういう迷惑な連中を静かにしたんだからいいことをしたのだ」
「自分の力で魔法すら使ってこなかったのだ。あいつらはたるんでるのだなー」
入り口広場は、何やら騒がしいことになっていた。
大量の若者たちが焼け死んでいるということで、都市の軍人が出動したらしい。
検分が行われている。
「何があったの?」
俺が聞いてみると、若い軍人はちらっと俺のタグを見た。
そしてすぐに会釈してくる。
「赤き平和団というたちの悪い活動家たちなんですが、こいつらが全滅しているんです。しかも自分たちのマジックボトルが誘爆し死んだようで……。バカなことをしたなあ」
「ははあ、それは物騒だ。マジックボトルに頼らず自分で魔法を使えば良かったのに」
すると、軍人は笑った。
「もしかして、田舎の方の出ですか? 都会では魔力電池を使って、機械化された魔法行使装置を使うのが一般的なんですよ。自分の魔力と呪文詠唱で魔法を使うのは、時代遅れですから」
「そうだったのか」
俺が驚いてみせたので、軍人は俺が田舎から上がってきた同僚なのだと勘違いしたようだ。
ちなみにこのマジックタグ、下士官の軍曹くらいの地位だったようで、だから若い軍人は敬語だったんだな。
「しかし面倒なことになります」
「なりますか」
「ええ。こいつらの親はそれなりに豊かな階級なんですよ。軍に抗議が来るなあ……」
「マジックボトルとか投げつけてくる迷惑な人たちだったのに?」
「それでもです。軍務についてない市民は、軍への理解が無いんですよ……」
若い軍人がため息をついてから、「あ、田舎じゃこういうことは無いですもんね。都会は大変なんですよ」とドヤってきた。
いい性格である。
だが、お陰で俺のことは怪しまれなかったようだ。
戻ってきた俺を見て、ルミイが「ほえー」と感心した。
「当たり前みたいな顔でスリッピーの魔法使いと話してましたよね!? どういう度胸ですか」
「あらゆる状況はくぐり抜けられるから、どんどん突っ込めるようになってきたんだ」
「はー、相手の勘違いも利用してましたし。マナビさんがどんどんこの世界に詳しくなってくる……」
「カオルンだったら一撃で切り捨てていたのだなー。あの男、ちょっと上から目線でムカつくのだ!」
カオルンが怒っているな。
きっとお腹が空いているのだろう。
「よし、じゃあ飯を食ってからこの都市の風呂を探すか」
「お食事! お風呂! 賛成ですー!!」
「カオルンはどっちでもいいのだなー」
ふふふ、カオルンめ、美味い飯とゆったりできる風呂の魅力をあまり知らんな?
俺とルミイの異世界旅は、基本的に風呂を巡る旅だぞ。
「またちょっといい?」
今度は女子二人を連れてさっきの軍人に声をかける。
「なんです? あっ……、めちゃめちゃにカワイイ女性を二人連れて……!!」
おっ、若い軍人の顔が悲しそうになった後、一瞬憤怒の形相に。
嫉妬や嫉妬や。
「まあな、田舎だからな」
「そ、そうですね。田舎ですからね……くっそ」
口に出てる口に出てる。
「ちょっと飯を食いたいんだけど、どっちに行けばいい?」
「ああ、それなら向かって左は工業地帯で、魔力電池を作ってます。職人たちが食事に来るから、大衆食堂が多いですよ。右手は山の手で、大学があります。活動家たちがひしめいてるんで危ないんですが、こっちにも学生食堂があってそこも量があって美味いです」
「おおっ、なんて有用な情報だ……。ありがとう」
「ありがとうございますー!」
ルミイも笑顔になってお礼をした。
若い軍人が、ハッとする。
「か、カワイイ……。人妻なのに見とれてしまう……」
フフフ、ルミイはまだ人妻ではない。
だが人妻にするのはいいな。してみせよう……!!
燃えてきたぞ。
俺は基本的に下心で動いている。
若い軍人に別れを告げ、分岐路に立つのだ。
そんな俺たちを、他の軍人も見送っていた。
「二人も奥さんが!?」
「片方若すぎないか? 犯罪では」
「待て、田舎者らしい。つまりスリーズシティの都市法に縛られていないんだ」
「くっそー、田舎者め……!! 俺もこの仕事が終わったら田舎に行くわ」
みんな俺のハーレム的(に見える)状況に夢中で、俺がそもそもスリッピー帝国の軍人ではないことまで思い至らない。
これこそ、年頃の男たちが興味のある話題を投げかけ、そっちに集中させて隠したい事を隠し通す技である。
俺も年頃の男なので、あいつらの気持ちは分かる……。
がんばれよ……。
「どっち行きましょうね! 大衆食堂と学生食堂ですか? わたし、お腹がペコペコなので量が多いほうがいいですねえ」
「食事をするのだ? カオルンはカロリーバー以外の食事は久しぶりなのだなー」
「ルミイはめっちゃ食べるけど、カオルンも食べる方?」
「うーん、ワンザブロー帝国の食事で美味しいと思ったことはあんまりないのだ」
「そうかそうか。では学生食堂でガッツリ食べてみて、己のキャパシティを知るといい。カオルンがスレンダーなのは、食事が楽しくないせいかも知れない」
「そうなのだ?」
三人で右の通りに向かうことにする。
こちらは、身なりがそこそこいい連中で溢れている。
俺たち三人は、一見して軍人っぽくない格好なので、そこまで浮いてない……気がするぞ。
「ルミイを見てみろ。あのドーンと張り出した胸とお尻、なのにキュッとくびれた腰回りに凄いふともも。あれは全てたくさん食べるから生み出された究極の美なのだ」
「たくさん食べてるのに腰は細いのだ?」
カオルンから根源的な質問が来たな。
「ルミイさんその辺どうなんでしょう」
「わたし、栄養がみーんな胸とお尻とふとももに行っちゃうんです」
「すごいすごい」
俺は感動した。
「なのだなー」
あっ、カオルンは分かってないな?
いいだろう。
まずは美味い飯を食って、カオルンにも食の喜びを教えようではないか。
俺たちは手近な食堂へと入っていくのだった。
彼らが目立ってくれるお陰で、俺たちは注目されないな。
ラッキーだ。ツイてるぞ。
「むっ、臭くなってきたのだ」
「ゴミ置き場が近いのかもしれないな。いいぞいいぞ」
俺に妙案あり!
到着したのは、瓦礫が積み上げられた場所だ。
あちこちが今にも崩れそう。
少し向こうには生ゴミなどがまとめられている。
「木を隠すには森からというのだが、瓦礫の中に魔導カーを隠せばわからないのではないか」
「あっ、確かにそうですね! そうしましょう!」
そういうことになったのだった。
三人で、せっせと瓦礫を使ったカモフラージュを施す。
すぐに魔導カーは、それと分からなくなった。
ひと仕事終えた俺たちは、また元のところに戻ってくる。
「ええと、ヘルプ機能によると、さっきのところが入り口広場で、あそこを経由しないと都市の中に入れないんだと」
「ええーっ! じゃあ、そんなところでさっきの人たちは暴れてたんですか! 迷惑ですねえ」
「ああ。俺たちはそういう迷惑な連中を静かにしたんだからいいことをしたのだ」
「自分の力で魔法すら使ってこなかったのだ。あいつらはたるんでるのだなー」
入り口広場は、何やら騒がしいことになっていた。
大量の若者たちが焼け死んでいるということで、都市の軍人が出動したらしい。
検分が行われている。
「何があったの?」
俺が聞いてみると、若い軍人はちらっと俺のタグを見た。
そしてすぐに会釈してくる。
「赤き平和団というたちの悪い活動家たちなんですが、こいつらが全滅しているんです。しかも自分たちのマジックボトルが誘爆し死んだようで……。バカなことをしたなあ」
「ははあ、それは物騒だ。マジックボトルに頼らず自分で魔法を使えば良かったのに」
すると、軍人は笑った。
「もしかして、田舎の方の出ですか? 都会では魔力電池を使って、機械化された魔法行使装置を使うのが一般的なんですよ。自分の魔力と呪文詠唱で魔法を使うのは、時代遅れですから」
「そうだったのか」
俺が驚いてみせたので、軍人は俺が田舎から上がってきた同僚なのだと勘違いしたようだ。
ちなみにこのマジックタグ、下士官の軍曹くらいの地位だったようで、だから若い軍人は敬語だったんだな。
「しかし面倒なことになります」
「なりますか」
「ええ。こいつらの親はそれなりに豊かな階級なんですよ。軍に抗議が来るなあ……」
「マジックボトルとか投げつけてくる迷惑な人たちだったのに?」
「それでもです。軍務についてない市民は、軍への理解が無いんですよ……」
若い軍人がため息をついてから、「あ、田舎じゃこういうことは無いですもんね。都会は大変なんですよ」とドヤってきた。
いい性格である。
だが、お陰で俺のことは怪しまれなかったようだ。
戻ってきた俺を見て、ルミイが「ほえー」と感心した。
「当たり前みたいな顔でスリッピーの魔法使いと話してましたよね!? どういう度胸ですか」
「あらゆる状況はくぐり抜けられるから、どんどん突っ込めるようになってきたんだ」
「はー、相手の勘違いも利用してましたし。マナビさんがどんどんこの世界に詳しくなってくる……」
「カオルンだったら一撃で切り捨てていたのだなー。あの男、ちょっと上から目線でムカつくのだ!」
カオルンが怒っているな。
きっとお腹が空いているのだろう。
「よし、じゃあ飯を食ってからこの都市の風呂を探すか」
「お食事! お風呂! 賛成ですー!!」
「カオルンはどっちでもいいのだなー」
ふふふ、カオルンめ、美味い飯とゆったりできる風呂の魅力をあまり知らんな?
俺とルミイの異世界旅は、基本的に風呂を巡る旅だぞ。
「またちょっといい?」
今度は女子二人を連れてさっきの軍人に声をかける。
「なんです? あっ……、めちゃめちゃにカワイイ女性を二人連れて……!!」
おっ、若い軍人の顔が悲しそうになった後、一瞬憤怒の形相に。
嫉妬や嫉妬や。
「まあな、田舎だからな」
「そ、そうですね。田舎ですからね……くっそ」
口に出てる口に出てる。
「ちょっと飯を食いたいんだけど、どっちに行けばいい?」
「ああ、それなら向かって左は工業地帯で、魔力電池を作ってます。職人たちが食事に来るから、大衆食堂が多いですよ。右手は山の手で、大学があります。活動家たちがひしめいてるんで危ないんですが、こっちにも学生食堂があってそこも量があって美味いです」
「おおっ、なんて有用な情報だ……。ありがとう」
「ありがとうございますー!」
ルミイも笑顔になってお礼をした。
若い軍人が、ハッとする。
「か、カワイイ……。人妻なのに見とれてしまう……」
フフフ、ルミイはまだ人妻ではない。
だが人妻にするのはいいな。してみせよう……!!
燃えてきたぞ。
俺は基本的に下心で動いている。
若い軍人に別れを告げ、分岐路に立つのだ。
そんな俺たちを、他の軍人も見送っていた。
「二人も奥さんが!?」
「片方若すぎないか? 犯罪では」
「待て、田舎者らしい。つまりスリーズシティの都市法に縛られていないんだ」
「くっそー、田舎者め……!! 俺もこの仕事が終わったら田舎に行くわ」
みんな俺のハーレム的(に見える)状況に夢中で、俺がそもそもスリッピー帝国の軍人ではないことまで思い至らない。
これこそ、年頃の男たちが興味のある話題を投げかけ、そっちに集中させて隠したい事を隠し通す技である。
俺も年頃の男なので、あいつらの気持ちは分かる……。
がんばれよ……。
「どっち行きましょうね! 大衆食堂と学生食堂ですか? わたし、お腹がペコペコなので量が多いほうがいいですねえ」
「食事をするのだ? カオルンはカロリーバー以外の食事は久しぶりなのだなー」
「ルミイはめっちゃ食べるけど、カオルンも食べる方?」
「うーん、ワンザブロー帝国の食事で美味しいと思ったことはあんまりないのだ」
「そうかそうか。では学生食堂でガッツリ食べてみて、己のキャパシティを知るといい。カオルンがスレンダーなのは、食事が楽しくないせいかも知れない」
「そうなのだ?」
三人で右の通りに向かうことにする。
こちらは、身なりがそこそこいい連中で溢れている。
俺たち三人は、一見して軍人っぽくない格好なので、そこまで浮いてない……気がするぞ。
「ルミイを見てみろ。あのドーンと張り出した胸とお尻、なのにキュッとくびれた腰回りに凄いふともも。あれは全てたくさん食べるから生み出された究極の美なのだ」
「たくさん食べてるのに腰は細いのだ?」
カオルンから根源的な質問が来たな。
「ルミイさんその辺どうなんでしょう」
「わたし、栄養がみーんな胸とお尻とふとももに行っちゃうんです」
「すごいすごい」
俺は感動した。
「なのだなー」
あっ、カオルンは分かってないな?
いいだろう。
まずは美味い飯を食って、カオルンにも食の喜びを教えようではないか。
俺たちは手近な食堂へと入っていくのだった。
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