召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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シクスゼクス帝国編

第78話 海水浴の終わりと海上都市イースマス

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「じゃあ、水着入手は第一目標として設定しておいて」

「ルミイを家に帰すのではなかったのですか」

「それは大目標だ。最後に達成できればいい。今のところの中目標として、水着入手を設定しておくんだ」

「了解しました。……当機能の分もですか?」

「当たり前だろう」

 俺はアカネルに微笑みかけた後、服をぽいぽいっと脱ぎ捨てた。

「あーっ、当機能の目の前にマスターのご子息が」

「俺も海で遊んできます」

 ビシッと敬礼した後、ルミイとカオルンに混じって遊ぶのである。
 うーん!
 裸の女子たちと水遊び!

 天国ですなあ。
 この異世界はいいところだあ。

「マナビさん、行きますよー! それーっ!」

「はっはっは、水を掛けてきたなー! 俺からもお返しだー!」

「きゃーっ」

「おお……揺れる、めっちゃ揺れる……」

「マナビー! こっちからも攻撃なのだー!」

「はっはっは、カオルンも健康的で実にいいなあ! その手に持ってるのは何だ。ナマコ? おいやめろ」

「うりゃ!」

「ウグワーッ!」

 俺は投擲されたナマコを喰らって吹っ飛んだ。
 このように楽しく遊んだ後、ワイワイと水から上がってくるのである。

 アカネルが砂浜に体育座りしてこれを眺めている。

「アカネルも一緒に遊べば良かったんですよー」

「当機能はマスターの世界の常識が反映されていますから、全裸で水遊びはちょっと」

「マナビは裸で遊んでたのだ?」

「マスターにはマスターの世界の常識は反映されていませんから」

「よく分からない話なのだ……!」

 哲学的な話になってるな。
 体についた潮水は、ルミイが呼び出した水の精霊の力で洗い流す。
 便利便利。

 風の精霊と火の精霊を組み合わせ、温風を吹かせて体を乾かす……。
 あれっ!?
 ものすごく便利じゃない?

 ルミイは当たり前みたいな顔をしてこれを使っているが……。

 俺は彼女の能力をあまり使ってもらわず、凄い縛りプレイをしてこの世界を駆け抜けてきたのでは無かろうか。
 ふと考えた。
 そして俺は考えるのをやめた。

 まあいいか。

「お二人とも。マスターが提案したのですが、水着を買って身につけ、晴れて堂々と水遊びをするということになっています。当機能も体育座りして皆様の遊ぶ光景を見せつけられているのは面白いものではありません。当機能は割りとアクティブなのです」

「あっ、アカネルがキレてる」

「キレてませんマスター」

「あいたっ。なんでチョップしてきたの」

「これが当機能の怒りです」

「怒ってるじゃん」

 だが、裸がよろしくないアカネルのために、水着は急務だな。
 ルミイとカオルンが、裸で遊ぼうとアカネルを誘っており、なんか彼女も気持ちが揺らいでいる光景が見えてたりするが……。

 まあよし。

 魔導バギーは再び走り出した。
 今回の運転は、海水浴で気分を良くしたルミイ。

 潮風を受けながら、車は砂浜を疾走するのだ。
 砂に足を取られずに走っていくの、なかなか凄い馬力だな、この車。

「この魔導バギーは疾走時、タイヤ周囲に超小型の結界を展開しています。そのため、陸上であればどこでも走ることが可能です。ごく短時間であれば水上を走ることも可能です」

「凄いじゃん。スリッピー帝国が改造してくれてたお陰か」

 ありがたい話だ。

 晴れ渡る空の下、海辺を走る気持ちよさよ。

「運転って楽しいものだったんですねえ! マナビさんと一緒にいると、運転は死と隣り合わせだったので全然楽しむ余裕がありませんでした!」

「大体敵から逃げる時とかだったもんなあ」

 ルミイはよく頑張ってくれた。

「ずっとこんな平和な運転ならいいんですけどねえ」

「ハハハ、あまり言ってると望まないモノを招き寄せちゃうぞ」

 俺がそう言った途端、潮風が生ぬるい風に変わった。
 生臭い。

 空がどんより曇ってくる。
 ルミイが悲しそうな顔になった。

「ほらあー!! マナビさんが言うからー!!」

「なんかすまんな……!!」

 目の前には、古びた都市の姿があった。
 ファンタジー的というよりは、1900年代半ばのアメリカの街みたいな見た目だ。

 あれがイースマスであろう。
 街の半分ほどが海に乗り出していて、なるほど海上都市だ。

 この都市の回りだけ曇っており、纏う空気まで全く違っていた。

「これは……何だろうな。俺の予想によると、こういうところは大体排他的なんだ」

「そうなんですねえ。確かに、バーバリアンの集落も幾つかあるんですけど、みんなよそ者が嫌いでした」

「地方の都市はそんなところが多いだろうな。よそ者なんか犯罪者かも知れないんだから、警戒するのは無理もない」

 都市の前でバギーを止め、少し考える俺である。

「よし、手土産を持っていこう。カオルン、頼まれてくれるか」

「なんなのだー?」

「この海の魚を獲って持っていこう」

「よしきたなのだ!」

「マスター、近くで獲れた魚はあまりお土産にならないのでは……」

 アカネルが心配しているようだな。

「安心するんだ。カオルンに任せておけば、絶対にとんでもないのを獲ってくる。ほらあ」

「獲れたのだ!!」

 バギーの頭上に影が差した。
 海に飛んでいったカオルンが、一瞬で巨大な魚をゲットしたのである。

 なんか手足が生えて、バタバタしているな。
 
 こいつをバギーの後ろにくくりつけ、引きずりながら都市に入っていくのだ。

 都市の入り口には、目と目の間がやたら離れている男が佇んでおり、じろりと俺を睨んだ。

「イースマスに入りたいのか……?」

「そうだ。挨拶代わりに手土産も用意してある」

「手土産……?」

 男は首を傾げた。
 やたらと生臭い。そして無表情で魚っぽい。

「あれだ」

 俺は、引きずってきた手足の生えた巨大魚を指さした。
 無表情な男はそれを見て、ゆっくりと、ポカーンと口を開いていった。

「ア……アームフィッシュ……。なんで陸上にいるの」

「捕まえた。街のみんなで食ってくれ」

 俺は笑いながら、彼の肩をポンポン叩いた。
 そして魚はそこに置いていく。

「こ……こんなものどうしたら……」

 男がオロオロしている。
 満足してもらえただろうか。
 さて、都市に入るにあたって、掴みはバッチリだろう。

 これから水着探しをするとしようではないか。
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