召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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凍土の王国編

第97話 お散歩から突然の求婚へ

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 どうやってルミイを連れ出したものか、あるいはバルクに認めさせた方がいいのか、等と考えながら王国の中を歩くと、毎日決闘を挑まれたりした。
 当然ながらその全てに勝ち、ガガンと比べると明らかにお粗末なので、中盤からはチュートリアルなしで軽々といなした。
 闘気のシステムはかなり理解できたぞ。

 本日も決闘を挑まれ、初手・闘気逆流にて勝利。
 相手が放った闘気をベストなタイミングでいなすと逆流し、使い手に大ダメージを与えるのだ。

「ウグワーッ!!」

 全身から血を吹いてのたうち回るバーバリアン青年。

「精進しろよ」

 俺は彼に優しく声を掛けた。
 健全な青少年ならば、ルミイを見てムラムラするのは当然である。
 ましてやあいつ、平気で素っ裸で森の泉とか入ってたんだろ。

 そこにいた青少年たちがみんなでルミイを好きになっちゃうのは仕方ない。
 性的な意味でも仕方ない。

 なので、俺も彼らには優しいのだ。

「大したもんだな。もう並のバーバリアンじゃ相手にもならん」

 帰る途中の俺に、ガガンが声を掛けた。
 決闘以来、割りと仲良くなったのである。

「ところでマナビ、お前、いつルミイを娶るんだ」

「それがな、考えてるんだ。バルクに認められるように何か試練を受けたほうがいいのか、それともどうしようかとな……」

「何を言ってやがる! それがオレをぶっ倒した男の言いようか! でたらめな戦い方でオレを翻弄したお前が、何を真人間みたいなことを言ってやがる!」

 ガガンが俺の肩をバシーンと叩いた。
 いてえ!
 だが、その言葉に俺はハッとする。

 そうだ……。
 俺はいつの間にか、常識にとらわれていたのだ。
 ルリファレラさんとか雰囲気が超エッチなので、彼女が考えるバルクに認めさせて結婚するやり方みたいなのに感化されていたのだ。

 俺はえっちなお姉さんに大変弱い。

 だが俺は目覚めた。
 俺が常識を気にしてどうするのだ。

「目が醒めたぜガガン……。ありがとうな!」

「いいってことよ! ……それでな、マナビ。折り入って頼みがある……」

「なんだなんだ」

「オレはお前に敗れ、ルミイに求婚する権利を失った。オレは失恋したんだ……! だが、この十年温めた恋心は簡単には消えはしねえ!」

「ルミイがむっちむちになる前から好きだったのか。筋金入りのルミイラブだなあ……」

「だから、頼む、マナビ! ルミイとの恋を忘れるような恋をオレはせねばならん! そうでなくては、バーバリアンの戦士として生きてはいけない! つまり女の子紹介してくれ!!」

 俺は雷に撃たれたような衝撃を感じた。
 ガガン……!!
 この男、潔くルミイを諦めるのだ!

 まさしくBSS(僕が 先に 好きだったのに)という状況なのに、なんという男らしさであろう。
 俺、こういうヤツ大好き。

「分かったぞガガン。先約で、なんか女神を見つけて連れてかなきゃいけない仕事があるんだが、その次にお前の事を考えよう」

「ほ、本当か!! オレはお前に何もしてやれないが……。ああ、いや!」

 ガガンが肥大化した腕をバシーンと打ち合わせた。
 金属がぶつかりあうような音がしたな!

「お前の旅の護衛にオレを連れて行け!」

「なにい!」

「バーバリアンはな、武者修行の旅に出る事が推奨されてる。ここ最近は、各国が乱れていたので、王国を守るために武者修行はみんな控えてたんだ。だが、この間のことでシクスゼクスが大きく力を落とし、セブンセンスも内戦を始めたらしく国力が落ちてる」

「そうだなー」

「だからオレがついていく」

「そうなの? 俺、ルミイとお風呂入ったりするけど耐えられる……?」

 俺はそこが心底心配だったので尋ねてみた。

「うぐ……ぐぐぐ……!! た、た、耐える!! これも修行だ!! オレは考えてみれば、精神的に未熟だったからお前に敗れた! お前の煽りに乗ってしまった!」

「確かに。ではNTRによって脳を破壊されながらついてくるがいい。だが寝取らせには絶対に目覚めるなよ……!」

「お前は難しいことを言うな」

 とにかく、こう言う形でガガンとかなり仲良くなった。
 こうなれば、オクタゴンの嫁探しもある。

 いつまでも凍土の王国にいるわけにはいかないだろう。
 俺は強硬手段に出るぞ。

 宮殿……という名のでっかいログハウスにやって来た。
 高床式で、下が倉庫になってて、さらに四階建てだ。

「おーい、ルミイ!」

「あっ、その声はマナビさん!」

 四階からニュッと顔を出すルミイ。

「助けてください! とっても退屈なんです! パパが外に出たら駄目って言うんですー!」

「一回さらわれたもんな。だけど安心しろルミイ!」

 俺は両手を広げて、腰を落としてどっしり構えた。

「さらいに来たぞ!!」

「やったあ!」

 ルミイは部屋の中で飛び上がって喜び、ひょいっと窓枠を超えてきた。
 そして、風の精霊を纏いながら、ふわーっとこっちに落ちてくる。

 俺がそれをキャッチするのだ。
 うおーっ!!
 カオルンやアカネルを超える重量感!!

 出るとこ出てるとやっぱり重いな!
 引っ込むところは引っ込んでるけど。

「意外! マナビさん、わたしを抱えても立ってるじゃないですか!」

「チュートリアルを繰り返すと、その中で得た筋力とかはそのままになるっぽいな……。そう言えば、自宅でスマホポチポチしてたときよりも全身の筋肉が一回り大きくなった気がする……。腹も引っ込んだし」

 日本にいた頃の俺は、餓鬼みたいな体型だったものな!
 運動しないで不健康な飯ばかり食ってたし。

 だが、今の俺は違う……。
 チュートリアルを繰り返し、うちの女子たちにも恥ずかしくないようなムキムキに仕上がりつつあるのだ!

「ルミイがこんなに喜んで……。くっ……。やはりルミイはお前に預ける……。だからオレにも女の子を紹介してくれ……」

「あ、ガガン! マナビさん、ガガンとすっかりなかよしになったんですね!」

「そうだぞ。そしてガガンを旅に連れて行って、こいつの彼女を探す。とりあえずここからセブンセンス行くだろ。あそこでオクタゴンのステディも同時進行でだな」

「マナビさん楽しそうですね! 目的ができちゃいましたか」

「できちゃったのだ。それと、決闘で勝ったのでなんか俺はルミイに求婚できるっぽいのだが」

「ふむふむ」

 何がふむふむだ。
 求婚と聞いてもなんですかそれ、食べれるんですかみたいな顔をしているな、このハーフエルフ。

「結婚しよう」

「いいですよ」

「ハハハ、まあそんないきなりな話じゃな……。……? …………?」

「マナビ、マナビ、しっかりしろ」

 ガガンが俺の尻をパーンと叩いた。

「ウグワーッ!!」

 俺は衝撃で飛び跳ねて、ルミイを投擲した。
 その後、俺はダッシュしてルミイをキャッチした。

「あひー! な、なんですかいきなりー!!」

 い、今こいつ、結婚しようって言ったら「いいですよ」って返したのか!?
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