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凍土の王国編
第102話 落ち着かない、から結婚式へ
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始まってしまった!
結婚式である。
凍土の上に砂みたいなのがばらまかれ、そこに絨毯的なものが敷き詰められた。
椅子が幾つも用意され、俺はなんかゴテゴテした服を着せられて上座に座ることに。
他の女子がいない!
俺が一人で座っているのではないか。
『おう、俺様が来たぞ』
俺がちょっと不安になっていたら、ペンダントからオクタゴンが実体化した。
なんかタキシード姿になっているではないか。
髪の毛も整えられており、いつものギーク青年っぽさがない。
オクタゴンの出現に、式場に詰めかけたバーバリアンたちがどよめいた。
「あれが新郎に手を貸したという邪神……!!」
「見た目じゃ分からないな」
「だけど新郎と一緒でめちゃくちゃに強いんだろ、あれ」
バーバリアンが学習している!
人は見た目ではない。
見た目で大体判断できる要素も多いが、こと、戦闘能力は見た目で判断すると死ぬのである。
オクタゴンはその典型的なタイプだろう。
この世界で最強の三人の一人だからな。
ちなみに邪神登場において、エルフたちが一番劇的な反応を示した。
落ち着いた感じの年配っぽいエルフが次々ぶっ倒れ、若いのはなんか真っ青になった。
精霊を通じて人間よりも深く世界を理解しているそうなので、オクタゴンを深く理解してしまったのではないか。
正気度を削られるぞ。
『しかし、まさかマナビがゴールインしてしまうとはなあ。ま、俺様、絶対そうなるだろうって睨んでたけどな。だがお前の偉いところは、鈍感系ではなかったことだ。鈍感だといつまでも一緒にいられはするが、いけすかない男に女を取られる可能性が出てくる』
「その危機は何度か陥ったぜ」
『よく潜り抜けたな。そしてここがゴールでスタート地点だぞ兄弟』
「ああ。ここから気合を入れ直さないとな兄弟」
やっぱりこいつがいると落ち着く。
同格で喋れるやつは少ないからなあ。
落ち着いた俺が、オクタゴンとおしゃべりしながら待っていると、宮殿一階の倉庫から大きな太鼓が持ち出されてきた。
これを、ムキムキマッチョが手にした巨大なバチで、ドーンッ!!と叩く。
太鼓の横に立つのは、王弟のマスキュラーだ。声を張り上げる。
「国王バルク陛下! ルリファレラ妃殿下! おなりー!!」
他に二人くらい側室の人たちの名前が呼ばれたな。
ムキムキの肉体に、毛皮とアクセサリーを付けたバルクと、ドレスをまとったルリファレラと他の奥さんたちが現れた。
彼らは俺の横に座る。
バルクがじーっとオクタゴンを見た。
「お前、見た目通りの大きさじゃないな?」
『よく分かるな。これは俺様の本体の指先だ。その指先に、詰め込めるだけ本体の情報量を入れてこっちに来ているんだ。俺様はオクタゴン。お招きいただきありがとう、凍土の王バルクよ』
「うむ。まさか外なる神が参列してくれるとはな。蛮神バルガイヤーも驚いておられることだろう。ようこそ、オクタゴン」
二人は握手を交わした。
ルリファレラはうんうんと頷いている。
彼女もオクタゴンがとんでもないことは知っているのだが、顔合わせは済ませているし、この神の人となりをよくわかっているので全く恐れていない。
知っているということは強いのだ。
「マナビくん、なかなか衣装が決まっているじゃない。君だって結構鍛えられているんだから、胸を張って座ってたらいいのよ」
「いやあ、人前で堂々とするというのが、悪意なしには難しい性分でして」
俺が人前で堂々としていたのは、大体大衆を煽る時だったからな。
こうやって式の主役の一人として座るのは初めてなのだ。
あまりにも勝手が違う。
他の奥様方とも挨拶などし、世間話をした。
そうこうしていると……。
ドーン! ドーン! ドーン! と太鼓が打ち鳴らされる。
「新婦の入場! 盛大な拍手を!!」
マスキュラーが叫んだ。
バーバリアンたちが、ウオオオオーッ!と叫ぶ。
意識を取り戻したエルフたちが、色とりどりの精霊を舞わせて場を盛り上げる。
お祭りである。
王族の結婚式とは、こういう娯楽に乏しい世界においての一大イベントなのだ。
バーバリアンもエルフも、本気で楽しんでいる。
よくよく見れば、遠くには大量の肉を同時に焼ける肉焼き機などが設置されているではないか。
式が終わったらめちゃくちゃに肉を焼くつもりだな。
これはカーニバルだ。
とか思ってたら、うおーっ!! という歓声が突然起こってびっくりした。
『マナビ、お前、嫁の晴れ姿を見逃すやつがあるか。こっちだこっち』
オクタゴンに肩を叩かれた。
さっきバルクたちが出てきたところから、きれいなドレスをまとった女子たちが出てくるじゃないか。
黒髪を結い上げて、スカートが大きく膨らんだ緑のドレスを纏ったアカネル。
なんかこっちに流し目して、ちょっと頬を赤くして笑うのだが、めちゃくちゃドキドキする。
自称機械だが、絶対お前人間だろ。
ピンクの髪をお団子にしたカオルンは、不思議そうな顔をして赤いふりふりのドレスを着ていた。
動きにくいのだー、とか思ってるんだろうな。
で、俺の顔を見たらちょっと笑顔になった。かわいい。
最後に、青い髪を編み込んでからくるっとまとめたルミイ。
真っ白で豪奢なドレスと、きらびやかな冠を被っている。
ちらちらっ、ちらっと俺を見てる。
落ち着きなされルミイ……!!
だがめちゃくちゃ可愛い。
ここで俺、ハッと気付く──!!
「ま、まさか三人と俺が同時に結婚することに!?」
『お前は今頃何を言っているんだ』
「バーバリアン式は一度にやれるならやってしまうんだぞ? いつ新郎が戦いで死ぬかも分からんからな」
「みんな綺麗で可愛くて良かったわねえ」
オクタゴン、バルク、ルリファレラは知っていたのか!
ぐわあああ騙された。
女子三名は、俺の隣にずらっと並んで座った。
真隣がルミイで、次がカオルンで、アカネル。
なんかアカネルがルミイと「後で席代わってください。当機能もマスターの隣にいたいです」「オーケー! ご飯食べ始めたらね!」なんて話をしている。
カオルンは相変わらず、「一体これはなんなのだー?」とか言っているのだ。
ここで、王弟マスキュラーが太鼓の横から戻ってきた。
でっぷりした体を揺すりながら、彼はスーッと息を吸い込んだ。
「これより!! 王女ルミイと、外より来た戦士マナビの結婚式を行う! 同時に! 戦士カオルンと学者アカネルと戦士マナビの結婚式を行う! 一同拍手!!」
うわーっと凄まじい拍手が巻き起こった。
そして、バーバリアンやエルフたちはいつの間にか花束みたいなのを手にしており、これを空に投げ上げる。
すると風の精霊が踊って、花束がバラバラになった。
色鮮やかな様々な色の花が、空から舞い降りてくる。
こ、これが凍土の王国の結婚式かあ。
「庶民の結婚はもっと質素だ。これは、お前と我が王国が同盟を結んだという証でもあり、俺の娘ルミイが新たな人生の旅立ちを迎えるという儀式でもあるのだ」
「ははあ……」
「お前の責任は重大だぞ。ちゃんとやれよ新郎」
バルクが俺の肩をパーンと叩いた。
いてえ!
ちなみにガガンは、バーバリアンたちの中に混じっており、男泣きにおいおいと泣いている。
完全に失恋したからである。
他にも何人かおいおい泣いてるな。
ルミイは本当に、王国の男たちの憧れだったのだなあ。
こうして式は始まる。
終わればウキウキドキドキの初夜だぞ、とか最初は思っていたのだが、あまりに式の規模や演出が凄いので、俺は完全にそれどころではなくなってしまったのだった。
くそう、チュートリアルするの忘れてた……!
結婚式である。
凍土の上に砂みたいなのがばらまかれ、そこに絨毯的なものが敷き詰められた。
椅子が幾つも用意され、俺はなんかゴテゴテした服を着せられて上座に座ることに。
他の女子がいない!
俺が一人で座っているのではないか。
『おう、俺様が来たぞ』
俺がちょっと不安になっていたら、ペンダントからオクタゴンが実体化した。
なんかタキシード姿になっているではないか。
髪の毛も整えられており、いつものギーク青年っぽさがない。
オクタゴンの出現に、式場に詰めかけたバーバリアンたちがどよめいた。
「あれが新郎に手を貸したという邪神……!!」
「見た目じゃ分からないな」
「だけど新郎と一緒でめちゃくちゃに強いんだろ、あれ」
バーバリアンが学習している!
人は見た目ではない。
見た目で大体判断できる要素も多いが、こと、戦闘能力は見た目で判断すると死ぬのである。
オクタゴンはその典型的なタイプだろう。
この世界で最強の三人の一人だからな。
ちなみに邪神登場において、エルフたちが一番劇的な反応を示した。
落ち着いた感じの年配っぽいエルフが次々ぶっ倒れ、若いのはなんか真っ青になった。
精霊を通じて人間よりも深く世界を理解しているそうなので、オクタゴンを深く理解してしまったのではないか。
正気度を削られるぞ。
『しかし、まさかマナビがゴールインしてしまうとはなあ。ま、俺様、絶対そうなるだろうって睨んでたけどな。だがお前の偉いところは、鈍感系ではなかったことだ。鈍感だといつまでも一緒にいられはするが、いけすかない男に女を取られる可能性が出てくる』
「その危機は何度か陥ったぜ」
『よく潜り抜けたな。そしてここがゴールでスタート地点だぞ兄弟』
「ああ。ここから気合を入れ直さないとな兄弟」
やっぱりこいつがいると落ち着く。
同格で喋れるやつは少ないからなあ。
落ち着いた俺が、オクタゴンとおしゃべりしながら待っていると、宮殿一階の倉庫から大きな太鼓が持ち出されてきた。
これを、ムキムキマッチョが手にした巨大なバチで、ドーンッ!!と叩く。
太鼓の横に立つのは、王弟のマスキュラーだ。声を張り上げる。
「国王バルク陛下! ルリファレラ妃殿下! おなりー!!」
他に二人くらい側室の人たちの名前が呼ばれたな。
ムキムキの肉体に、毛皮とアクセサリーを付けたバルクと、ドレスをまとったルリファレラと他の奥さんたちが現れた。
彼らは俺の横に座る。
バルクがじーっとオクタゴンを見た。
「お前、見た目通りの大きさじゃないな?」
『よく分かるな。これは俺様の本体の指先だ。その指先に、詰め込めるだけ本体の情報量を入れてこっちに来ているんだ。俺様はオクタゴン。お招きいただきありがとう、凍土の王バルクよ』
「うむ。まさか外なる神が参列してくれるとはな。蛮神バルガイヤーも驚いておられることだろう。ようこそ、オクタゴン」
二人は握手を交わした。
ルリファレラはうんうんと頷いている。
彼女もオクタゴンがとんでもないことは知っているのだが、顔合わせは済ませているし、この神の人となりをよくわかっているので全く恐れていない。
知っているということは強いのだ。
「マナビくん、なかなか衣装が決まっているじゃない。君だって結構鍛えられているんだから、胸を張って座ってたらいいのよ」
「いやあ、人前で堂々とするというのが、悪意なしには難しい性分でして」
俺が人前で堂々としていたのは、大体大衆を煽る時だったからな。
こうやって式の主役の一人として座るのは初めてなのだ。
あまりにも勝手が違う。
他の奥様方とも挨拶などし、世間話をした。
そうこうしていると……。
ドーン! ドーン! ドーン! と太鼓が打ち鳴らされる。
「新婦の入場! 盛大な拍手を!!」
マスキュラーが叫んだ。
バーバリアンたちが、ウオオオオーッ!と叫ぶ。
意識を取り戻したエルフたちが、色とりどりの精霊を舞わせて場を盛り上げる。
お祭りである。
王族の結婚式とは、こういう娯楽に乏しい世界においての一大イベントなのだ。
バーバリアンもエルフも、本気で楽しんでいる。
よくよく見れば、遠くには大量の肉を同時に焼ける肉焼き機などが設置されているではないか。
式が終わったらめちゃくちゃに肉を焼くつもりだな。
これはカーニバルだ。
とか思ってたら、うおーっ!! という歓声が突然起こってびっくりした。
『マナビ、お前、嫁の晴れ姿を見逃すやつがあるか。こっちだこっち』
オクタゴンに肩を叩かれた。
さっきバルクたちが出てきたところから、きれいなドレスをまとった女子たちが出てくるじゃないか。
黒髪を結い上げて、スカートが大きく膨らんだ緑のドレスを纏ったアカネル。
なんかこっちに流し目して、ちょっと頬を赤くして笑うのだが、めちゃくちゃドキドキする。
自称機械だが、絶対お前人間だろ。
ピンクの髪をお団子にしたカオルンは、不思議そうな顔をして赤いふりふりのドレスを着ていた。
動きにくいのだー、とか思ってるんだろうな。
で、俺の顔を見たらちょっと笑顔になった。かわいい。
最後に、青い髪を編み込んでからくるっとまとめたルミイ。
真っ白で豪奢なドレスと、きらびやかな冠を被っている。
ちらちらっ、ちらっと俺を見てる。
落ち着きなされルミイ……!!
だがめちゃくちゃ可愛い。
ここで俺、ハッと気付く──!!
「ま、まさか三人と俺が同時に結婚することに!?」
『お前は今頃何を言っているんだ』
「バーバリアン式は一度にやれるならやってしまうんだぞ? いつ新郎が戦いで死ぬかも分からんからな」
「みんな綺麗で可愛くて良かったわねえ」
オクタゴン、バルク、ルリファレラは知っていたのか!
ぐわあああ騙された。
女子三名は、俺の隣にずらっと並んで座った。
真隣がルミイで、次がカオルンで、アカネル。
なんかアカネルがルミイと「後で席代わってください。当機能もマスターの隣にいたいです」「オーケー! ご飯食べ始めたらね!」なんて話をしている。
カオルンは相変わらず、「一体これはなんなのだー?」とか言っているのだ。
ここで、王弟マスキュラーが太鼓の横から戻ってきた。
でっぷりした体を揺すりながら、彼はスーッと息を吸い込んだ。
「これより!! 王女ルミイと、外より来た戦士マナビの結婚式を行う! 同時に! 戦士カオルンと学者アカネルと戦士マナビの結婚式を行う! 一同拍手!!」
うわーっと凄まじい拍手が巻き起こった。
そして、バーバリアンやエルフたちはいつの間にか花束みたいなのを手にしており、これを空に投げ上げる。
すると風の精霊が踊って、花束がバラバラになった。
色鮮やかな様々な色の花が、空から舞い降りてくる。
こ、これが凍土の王国の結婚式かあ。
「庶民の結婚はもっと質素だ。これは、お前と我が王国が同盟を結んだという証でもあり、俺の娘ルミイが新たな人生の旅立ちを迎えるという儀式でもあるのだ」
「ははあ……」
「お前の責任は重大だぞ。ちゃんとやれよ新郎」
バルクが俺の肩をパーンと叩いた。
いてえ!
ちなみにガガンは、バーバリアンたちの中に混じっており、男泣きにおいおいと泣いている。
完全に失恋したからである。
他にも何人かおいおい泣いてるな。
ルミイは本当に、王国の男たちの憧れだったのだなあ。
こうして式は始まる。
終わればウキウキドキドキの初夜だぞ、とか最初は思っていたのだが、あまりに式の規模や演出が凄いので、俺は完全にそれどころではなくなってしまったのだった。
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