召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
132 / 196
フィフスエレ帝国跡編

第132話 旅の途中とロマンとママ力

しおりを挟む
 たくさんの荷馬車が用意され、一斉にフィフスエレとの国境を目指す。
 こんな集団と一緒に行動するのは初めてだなあ。

 護衛とは言ったけれど、彼らルサルカ教団にも自衛の能力はある。
 アンデッドがたくさんいるし、夜になれば司祭のレッサーヴァンパイア、ドミニクが起きてくる。
 こいつが強いらしく、夜間ならガガンともいい勝負できるようなのだ。

 夜はおまかせでいいな。

「さすがにガツガツしている当機能も、馬車の中はどうかと思います。もっとロマンチックなところに到着したら致しましょう」

「アカネルはいきなり何を言っているんだ。あ、ナニか」

 単純明快だった。
 奥さんたちの最後発であるアカネルは、出遅れを取り返したい。
 だが、最初の夜はちゃんとしたお宿を使いたい。

 複雑な機械……乙女心である。
 もうこの人、機械じゃないでしょ。
 この間聞いてみたら、「当機能、普通にマスターの赤ちゃんを産めますからね! 任意のタイミングで妊娠できますから!」

 なんてとんでもないことを言っていた。
 恐ろしい女だ。

 だが、俺の旅が続く間は自重するらしい。
 身重になったら旅についてこれないもんな。

「カオルンはどこでもいいのだ! マナビ、したいのだ?」

「わたしもそんなに気にしないですねー。あ、じゃあカオルンといっぺんにしちゃいます? マナビさんとすると結構疲れてお腹減るんですよねえ」

「うわーっ、二人共積極的に!!」

「むきーっ」

 アカネルも暴れる。
 俺に割り当てられた荷馬車は大変賑やかなのである。

 ナルカが御者をしているのだが、車内の騒ぎを振り返って一言。

「みんな大事な戦力なんだから、しばらく大人しくしててもらえないかい? あたしが頼める立場じゃないってのは分かってるんだけどさ、ほら、信者の命が掛かってるから……」

「アッハイ」

 大人しくなる俺とルミイとアカネル。
 ナルカは間違いなく、とっても真面目なのである。

 なお、カオルンは特に大人しくならない。

「なるほど、カオルンの力が必要なのだなー。じゃあ、カオルンは早く寝て早起きして、ドミニクの手伝いをするのだ!」

 そう言うなり、荷物から毛布を取り出してくるまり、ぐうぐうと眠り始めてしまった。
 行動が早い!

「物わかりがよくて助かるね……! 頼むよ、みんな」

 荷馬車はルサルカ教団の持ち出しだし、俺たちがありつく食事もルサルカ教団のものだ。
 つまり、俺たちは宿と飯で雇われているのだから、ここは雇い主の頼みを聞いておく方が良かろう。

 俺の場合、ナルカだから言う事を聞くというのもある……。
 下心があるからだぞ。
 一発目でチュートリアル世界に入り込める女子。明らかに相性バッチリ。

 仲良く(意味深)なりたい。
 アカネルとアカシックレコードの前で、これでラストと告げてしまったので、最後のチャンスでもある。
 我ながら、まさかたくさんのヒロインに囲まれることになるとはなあ。

 うんうん。

「マナビさんがまたエッチなことを考えてますよ。わたしには分かりますからねー」

「マスターは常にエッチなことばかり考えてません?」

 俺のことをよく理解している二人なのだ。
 さてさて、日暮れころにフィフスエレとの国境に到着した。

 相変わらず、見渡す限りの森だ。
 ここに夜間入り込むのは危なかろうということで、国境線にて夜を明かすことになる。

 焚き火で肉を焼いたり、スープを作ったりしてみんなで飲み食いするのだ。
 ウトウトしているカオルンを起こして、飯にやってきた。

 暗くなってきたので、ドミニク司祭も棺から出てきたようだ。

「やあ皆さん、昼間は護衛ありがとうございました」

「セブンセンスは平和になったから、何もなかったけどな」

「それもまた、皆さんのお陰です。さらにはこの護衛まで引き受けていただき、本当にありがたい限りです」

 俺が知る創作のヴァンパイアを見回しても、ドミニク司祭ほど腰が低くて人間できてる人はいないな……。
 彼と、今後の予定について話し合う。

 明日の朝から森を超えて、フィフスエレを横断する。
 そこでバーバリアンたちと合流し、一旦シクスゼクスまで行ってしまう、と。

 ルサルカ・バーバリアン・エルフ連合軍なら、普通にシクスゼクスの魔族兵団より強いらしい。
 シクスゼクスを蹂躙しながらイースマスに到着したら、そこにルサルカ教団の街を建設すると。

 バーバリアンも補給を行い、アビサルワンズの有志が戦力に加わる。
 これで再びシクスゼクスを横断してフィフスエレ攻撃を行う。

 こういう作戦だ。
 あちらはドラゴンを召喚している。
 しっかり体勢を整えねば戦えまい、という話なのだ。

 ちなみに、俺はチュートリアルを発動すればまあ勝てるだろうと踏んでいる。
 それでも、バーバリアン王バルクこと俺のお義父さんがそれを許さないわけだ。

「パパも頑固ですからねー。マナビさんに全部頼っちゃったら負けだーって思ってるんじゃないかなあ」

「やはり。そんな感じの人だよなあれは」

「ママは全然オッケーって言ってるんですけどねえ」

「やっぱりな。そんな感じだよなお義母さんは。たまーに俺を誘惑してくる……」

「ママは男心を惑わしてきますからね! マナビさんにはわたしがいますからね!」

「うむうむ……。ルミイがベストマッチだと思います。あと、俺は鍛錬がまだ足りないので二人がかりは勘弁して下さい」

 俺もルミイのママこと、ルリファレラさんはちょっと怖いからな!
 精力的に圧倒されてしまいそうだ。

 こっくりこっくりするカオルンに、スープを飲ませたりする。

「美味しいのだ~」

「カオルン、寝ないでちゃんと食べるんだ。食べたら寝ていい」

「美味しいのだ~」

「あー、こぼれた」

「マナビさんがカオルンのママみたいになってますね」

「マスターの意外な一面ですね……! カオルンと一夜を過ごして母性愛に目覚めてしまった……?」

「マナビさんママ……略してママビさんですね! いいですねー。わたしも甘やかされたーい」

 好き勝手言うなあ君たちは。

「マナビ、小さい子に食べさせるやり方はこうだよ! よく見てな!」

 ここでナルカ。
 テキパキとした動作で、半分寝ているカオルンに見事にスープを全部平らげさせ、そのまま抱っこして馬車に連れて行ってしまった。
 あれはかなりレベルの高いママ動作である。

 戻ってきた彼女を、俺たち三人で称える。

「凄い。ママ力が高い」

「ナルカママですね! 略してママカです!」

「母性愛が強い。あまりにも強力なライバルです!」

「うるさいよあんたたち!?」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...