134 / 196
フィフスエレ帝国跡編
第134話 三人称視点・その男、化け物につき
しおりを挟む
クルトは今年成人したばかりの青年で、優れたネクロマンサーとしての才能があるとして、ルサルカ教団でも将来を嘱望されていた。
彼は聖女ナルカに憧れており、いつか彼女の隣に立って、異教徒たちとの戦いを繰り広げることを夢見ていた。
ルサルカ教団は、信者自らが前線に立つことは少ない。
奇跡の一つである、アンデッド作成術を用いて、契約した先祖たちの死体をアンデッド化し、彼らと交渉して戦場に立ってもらうのだ。
その中で、自ら前線に出るナルカの存在は目立っていた。
死の魔眼。
相手の死、そのものを見ることができる、女神ルサルカの祝福である。
これを得たナルカは、どんなアンデッドよりも強い存在となった。
殺せるのならば、神の使徒であろうと殺してしまうだろう。
強大な力を持ちながら、聖女ナルカは驕ることをしない。
弱者に優しく、そして気高く。
魔眼を眼帯で覆っていても、残る瞳の力は強く、見るものを魅了する。
戦場に立つ、それは美そのものだった。
そんな偉大な彼女の隣に立ちたい。
気高く強い、聖女ナルカの隣に立ち……いつかは、彼女にとっての特別な人になりたい。
クルトはそう考えたいた。
いたのだが……。
「なんだ……!? なんだあの男は!?」
ぬぼーっとした覇気の無い男であり、魔力も闘気も持っていないらしい。
魔法文明時代で言うならば、無能の民というやつだ。
奴隷にしかなり得ない。
ルサルカ教団では、アンデッドと人間がともに働くため、奴隷という地位がないのが幸いか。
それを狙って逃げ込んできたのかと、最初は思った。
しかし、その男、なんと偉大なるヴァンパイアとなったドミニク司祭に気に入られ、神殿で歓談などしているではないか。
あろうことか、今度は聖女ナルカを連れて法国の都へ侵入するという。
なんということをするのだ!
無能が、最高司祭や聖女をたぶらかすなんて!
「あいつは邪神が派遣した刺客に違いない……! みんな騙されているんだ……!!」
優れたネクロマンサーである自分が、何故か侵入のメンバーに選ばれず、男が連れてきた、これまた魔力も闘気もない娘がメンバーとなった。
ここにも恣意的な選択を感じる。
無能の民が集まったところで何ができるのか。
きっと彼らは失敗し、聖女ナルカだけが無事にもどってくるだろう。
クルトはそう考えていた。
ところが……。
数日後、都がやたらと騒がしくなったのである。
大きな争いが起こったらしい。
これまで何百年も、ルサルカ教団は戦い続けてきた。
だが、現状を変えることはできなかった。
それが、たった一人の無能の民である男が侵入しただけで、何が起こったというのか。
端的に言えば、全ての元凶であった技巧神が倒された。
倒したのはあの無能の男だ。
「何をどうやった!? どういうインチキを使ったんだ! いや、例えインチキができたとしても、神を倒すなど不可能……!!」
男は瞬く間に、ルサルカ教団にとっての救世主となった。
さらには、男と盟友だという邪神を名乗る罰当たりまで現れた。
この罰当たりな男を見ると、なんだか自分が狂気に陥るような感覚になっていくので、目は合わせていない。
罰当たりはあろうことか、ルサルカ様ともっと仲良くなり、あわよくば結婚したいなどと言っていた。
なんということを言うのか!
信者として許してはおけぬ!
クルトは激高した。
彼は影から、罰当たりと無能の男を誅するべくアンデッドを率いて襲うことにした。
まずはこの罰当たりからと、後ろから襲撃を仕掛けようとしたところで……。
全てのアンデッドが、男に向かって跪いた。
クルトは一瞬で全戦力を失った。
「どうしたんだ、アンデッドたち! あいつはルサルカ様を貶めた神敵だぞ!! 俺たちが倒さなくちゃいけないんだ!」
アンデッドたちは応えない。
彼らは何かを直感的に理解したのだ。
「みんな、まるであいつを、ルサルカ様に並ぶ神か何かみたいに……。そんな、まさか……」
クルトには理解できなかった。
そして理解できぬまま、ルサルカ教団はセブンセンス法国を旅立つことになる。
戦いは終わっても、生と死を巡る価値観は容易には分かりあえない。
だが、シクスゼクスの果ての地に、ルサルカ教団の死生観を理解してくれる民がいるという。
それは、罰当たりな男が連れてきたカエルのような者たちなのだ。
彼の地を目指し、教団は旅立った。
「なぜ我々が……? まだ騙されているんじゃないのか! それに、どうしてナルカ様が無能の男と同じ馬車に……」
クルトの中には、まだ怒りが燻っていた。
魔力も闘気も持たず、神の加護を受けているようにも見えないあの男。
罰当たりはどうも不気味だから放っておくとして、この無能の男だけはどうにかせねばならない。
可能ならばこの旅の中で……。
そう考えていた矢先、教団の馬車群は襲撃に遭った。
フィフスエレ帝国横断などという、とんでもないデタラメを行ったためである。
アンドロスコルピオという、上半身は人間、下半身が巨大なサソリという魔獣が、次々に現れて襲いかかってくる。
「くそっくそっ! なんてことだ! だから俺は反対だったんだ! よそ者の言葉に乗らず、俺たちはセブンセンスで正義の戦いを続けているべきだったんだ……! これでは、貴重なアンデッドが失われてしまう……! 何もかも、あの無能のせいだ!!」
恨みの言葉を思わず吐く。
そんな彼の頭上に、木々を飛び移りながら移動してきていたアンドロスコルピオが襲いかかった。
「キシャーッ!!」
「う、うわーっ!!」
ネクロマンサーはアンデッドを生み出し、強化し、行動させる力を持つ。
だが、己の身を守る能力に乏しい。
クルトがアンドロスコルピオに対抗する手段などなく、サソリの尾と手にした武器によって、あえなく殺されてしまう……ものと思われた。
「任せるのだ!」
駆け込んできたのは、無能の男が連れていた小柄な少女。
彼女の腕から、銀色の光が出現、刃となった。
それがアンドロスコルピオの武器と尾を切断し、さらに本体をも切り裂いた。
跳躍する少女。
彼女の背中から光る銀色の翼が生えた。
「う……美しい……!」
空を飛び回る少女。
両手から生み出した銀光の刃が、アンドロスコルピオを屠っていく。
「まるで天使だ……! そんな彼女が、どうしてあの無能と……!」
無能の男を思い出す度に、ときめきが腹立たしさに変わる。
もう呪いであった。
だがクルトの呪いは次の瞬間、晴れることとなる。
「うわーっ! 大型スコルピオだーっ!!」
馬車の前の方から悲鳴が聞こえた。
出現したのは、見上げるような巨大なスコルピオ軍団。
立ち向かうのは、なんと無能の男一人。
鎧も身につけず、無手である。
「死ぬ気か!? いや、あいつが死ぬならちょうどいい……」
クルトはほくそ笑んだ。
そんな彼の思いを裏切るように、無能の男の大活躍が始まる。
彼は首に巻いていた布を展開する。
それが刃になった。
男に従うように、ゾンビホースの一頭が寄り添った。そこに男が飛び乗る。
両手を自由にしているというのに、ゾンビホースは男の意を汲んで立ち回る。
刃が閃き、アンドロスコルピオたちが悲鳴をあげる。
通常のスコルピオでは相手にならぬと踏んだのか、巨大スコルピオが襲ってきた。
巨大スコルピオたちは、たくさんの武器を男めがけて叩きつけてくる。
全方向からの攻撃だ。
回避もできず、圧倒的質量は受け止めることすら許さないだろう。
クルトは男の死を確信した。
しかし男は死ななかった。
なぜなら。
「ね、寝転んだ!?」
戦場で男は、馬と素早く別れて仰向けに寝たのである。
大胆不敵!
彼の鼻先で、アンドロスコルピオたちの武器がぶつかり合う。
「だが、あれでは移動はできまい! 潰されて死ね!」
だが!!
移動はできるのである!
男は仰向けに寝たまま、スーッと滑るように動いた。
そして巨大スコルピオの一体を寝た姿勢のまま駆け上がると、装甲の隙間を的確に布の刃で切り裂く。
「な……なんだあの動きは!! キモい!!」
この一瞬のキモい動きの後、巨大スコルピオは全身から体液を吹き出しながら崩れ落ちた。
その時には既に、男は他のスコルピオの股の間にいた。
寝転びながら、信じられない速度で動き続けているのである。
巨大スコルピオは、股下に高速で潜られる経験などしたことがなかった。
反応が遅れる。
そこを、腹下から一直線に切り裂かれ、倒された。
続く巨大スコルピオは、地面スレスレをジグザグに迫ってくる仰向けの男にパニック状態である。
武器をでたらめに振り下ろし、仲間の通常スコルピオを潰す。
男には当たらない!
仰向けの男は、突然寝たまま跳躍した。
布の刃が閃き、巨大スコルピオの首が飛ぶ。
男はスコルピオの背中に着地し、そこから駆け下りながら、走り寄ってきていたゾンビホースに乗った。
低速・不規則な軌道から、突然高機動な騎馬戦に移行だ。
アンドロスコルピオたちは、男の動きについていけない。
次々に刃を叩き込まれ、スコルピオは倒れていった。
その時には、ナルカも残るスコルピオを片付けている。
「まあ楽勝だったな」
「マナビ、また気持ち悪い動きに磨きがかかったな……。あれはあたいの死の魔眼でも捉えられなかったよ……。なんだい、あれ」
「尻移動だ。あと、ルサルカラバーも頑張ってくれたな! よしよし」
「ぶるる」
クルトには何も理解できなかった。
だが、一つだけ実感したことはあるのだ。
「ば……化け物……!」
無能の男あらため、尻で移動する化け物。
それはこの男、コトマエ・マナビに対する正しい認識と言えたのだった。
彼は聖女ナルカに憧れており、いつか彼女の隣に立って、異教徒たちとの戦いを繰り広げることを夢見ていた。
ルサルカ教団は、信者自らが前線に立つことは少ない。
奇跡の一つである、アンデッド作成術を用いて、契約した先祖たちの死体をアンデッド化し、彼らと交渉して戦場に立ってもらうのだ。
その中で、自ら前線に出るナルカの存在は目立っていた。
死の魔眼。
相手の死、そのものを見ることができる、女神ルサルカの祝福である。
これを得たナルカは、どんなアンデッドよりも強い存在となった。
殺せるのならば、神の使徒であろうと殺してしまうだろう。
強大な力を持ちながら、聖女ナルカは驕ることをしない。
弱者に優しく、そして気高く。
魔眼を眼帯で覆っていても、残る瞳の力は強く、見るものを魅了する。
戦場に立つ、それは美そのものだった。
そんな偉大な彼女の隣に立ちたい。
気高く強い、聖女ナルカの隣に立ち……いつかは、彼女にとっての特別な人になりたい。
クルトはそう考えたいた。
いたのだが……。
「なんだ……!? なんだあの男は!?」
ぬぼーっとした覇気の無い男であり、魔力も闘気も持っていないらしい。
魔法文明時代で言うならば、無能の民というやつだ。
奴隷にしかなり得ない。
ルサルカ教団では、アンデッドと人間がともに働くため、奴隷という地位がないのが幸いか。
それを狙って逃げ込んできたのかと、最初は思った。
しかし、その男、なんと偉大なるヴァンパイアとなったドミニク司祭に気に入られ、神殿で歓談などしているではないか。
あろうことか、今度は聖女ナルカを連れて法国の都へ侵入するという。
なんということをするのだ!
無能が、最高司祭や聖女をたぶらかすなんて!
「あいつは邪神が派遣した刺客に違いない……! みんな騙されているんだ……!!」
優れたネクロマンサーである自分が、何故か侵入のメンバーに選ばれず、男が連れてきた、これまた魔力も闘気もない娘がメンバーとなった。
ここにも恣意的な選択を感じる。
無能の民が集まったところで何ができるのか。
きっと彼らは失敗し、聖女ナルカだけが無事にもどってくるだろう。
クルトはそう考えていた。
ところが……。
数日後、都がやたらと騒がしくなったのである。
大きな争いが起こったらしい。
これまで何百年も、ルサルカ教団は戦い続けてきた。
だが、現状を変えることはできなかった。
それが、たった一人の無能の民である男が侵入しただけで、何が起こったというのか。
端的に言えば、全ての元凶であった技巧神が倒された。
倒したのはあの無能の男だ。
「何をどうやった!? どういうインチキを使ったんだ! いや、例えインチキができたとしても、神を倒すなど不可能……!!」
男は瞬く間に、ルサルカ教団にとっての救世主となった。
さらには、男と盟友だという邪神を名乗る罰当たりまで現れた。
この罰当たりな男を見ると、なんだか自分が狂気に陥るような感覚になっていくので、目は合わせていない。
罰当たりはあろうことか、ルサルカ様ともっと仲良くなり、あわよくば結婚したいなどと言っていた。
なんということを言うのか!
信者として許してはおけぬ!
クルトは激高した。
彼は影から、罰当たりと無能の男を誅するべくアンデッドを率いて襲うことにした。
まずはこの罰当たりからと、後ろから襲撃を仕掛けようとしたところで……。
全てのアンデッドが、男に向かって跪いた。
クルトは一瞬で全戦力を失った。
「どうしたんだ、アンデッドたち! あいつはルサルカ様を貶めた神敵だぞ!! 俺たちが倒さなくちゃいけないんだ!」
アンデッドたちは応えない。
彼らは何かを直感的に理解したのだ。
「みんな、まるであいつを、ルサルカ様に並ぶ神か何かみたいに……。そんな、まさか……」
クルトには理解できなかった。
そして理解できぬまま、ルサルカ教団はセブンセンス法国を旅立つことになる。
戦いは終わっても、生と死を巡る価値観は容易には分かりあえない。
だが、シクスゼクスの果ての地に、ルサルカ教団の死生観を理解してくれる民がいるという。
それは、罰当たりな男が連れてきたカエルのような者たちなのだ。
彼の地を目指し、教団は旅立った。
「なぜ我々が……? まだ騙されているんじゃないのか! それに、どうしてナルカ様が無能の男と同じ馬車に……」
クルトの中には、まだ怒りが燻っていた。
魔力も闘気も持たず、神の加護を受けているようにも見えないあの男。
罰当たりはどうも不気味だから放っておくとして、この無能の男だけはどうにかせねばならない。
可能ならばこの旅の中で……。
そう考えていた矢先、教団の馬車群は襲撃に遭った。
フィフスエレ帝国横断などという、とんでもないデタラメを行ったためである。
アンドロスコルピオという、上半身は人間、下半身が巨大なサソリという魔獣が、次々に現れて襲いかかってくる。
「くそっくそっ! なんてことだ! だから俺は反対だったんだ! よそ者の言葉に乗らず、俺たちはセブンセンスで正義の戦いを続けているべきだったんだ……! これでは、貴重なアンデッドが失われてしまう……! 何もかも、あの無能のせいだ!!」
恨みの言葉を思わず吐く。
そんな彼の頭上に、木々を飛び移りながら移動してきていたアンドロスコルピオが襲いかかった。
「キシャーッ!!」
「う、うわーっ!!」
ネクロマンサーはアンデッドを生み出し、強化し、行動させる力を持つ。
だが、己の身を守る能力に乏しい。
クルトがアンドロスコルピオに対抗する手段などなく、サソリの尾と手にした武器によって、あえなく殺されてしまう……ものと思われた。
「任せるのだ!」
駆け込んできたのは、無能の男が連れていた小柄な少女。
彼女の腕から、銀色の光が出現、刃となった。
それがアンドロスコルピオの武器と尾を切断し、さらに本体をも切り裂いた。
跳躍する少女。
彼女の背中から光る銀色の翼が生えた。
「う……美しい……!」
空を飛び回る少女。
両手から生み出した銀光の刃が、アンドロスコルピオを屠っていく。
「まるで天使だ……! そんな彼女が、どうしてあの無能と……!」
無能の男を思い出す度に、ときめきが腹立たしさに変わる。
もう呪いであった。
だがクルトの呪いは次の瞬間、晴れることとなる。
「うわーっ! 大型スコルピオだーっ!!」
馬車の前の方から悲鳴が聞こえた。
出現したのは、見上げるような巨大なスコルピオ軍団。
立ち向かうのは、なんと無能の男一人。
鎧も身につけず、無手である。
「死ぬ気か!? いや、あいつが死ぬならちょうどいい……」
クルトはほくそ笑んだ。
そんな彼の思いを裏切るように、無能の男の大活躍が始まる。
彼は首に巻いていた布を展開する。
それが刃になった。
男に従うように、ゾンビホースの一頭が寄り添った。そこに男が飛び乗る。
両手を自由にしているというのに、ゾンビホースは男の意を汲んで立ち回る。
刃が閃き、アンドロスコルピオたちが悲鳴をあげる。
通常のスコルピオでは相手にならぬと踏んだのか、巨大スコルピオが襲ってきた。
巨大スコルピオたちは、たくさんの武器を男めがけて叩きつけてくる。
全方向からの攻撃だ。
回避もできず、圧倒的質量は受け止めることすら許さないだろう。
クルトは男の死を確信した。
しかし男は死ななかった。
なぜなら。
「ね、寝転んだ!?」
戦場で男は、馬と素早く別れて仰向けに寝たのである。
大胆不敵!
彼の鼻先で、アンドロスコルピオたちの武器がぶつかり合う。
「だが、あれでは移動はできまい! 潰されて死ね!」
だが!!
移動はできるのである!
男は仰向けに寝たまま、スーッと滑るように動いた。
そして巨大スコルピオの一体を寝た姿勢のまま駆け上がると、装甲の隙間を的確に布の刃で切り裂く。
「な……なんだあの動きは!! キモい!!」
この一瞬のキモい動きの後、巨大スコルピオは全身から体液を吹き出しながら崩れ落ちた。
その時には既に、男は他のスコルピオの股の間にいた。
寝転びながら、信じられない速度で動き続けているのである。
巨大スコルピオは、股下に高速で潜られる経験などしたことがなかった。
反応が遅れる。
そこを、腹下から一直線に切り裂かれ、倒された。
続く巨大スコルピオは、地面スレスレをジグザグに迫ってくる仰向けの男にパニック状態である。
武器をでたらめに振り下ろし、仲間の通常スコルピオを潰す。
男には当たらない!
仰向けの男は、突然寝たまま跳躍した。
布の刃が閃き、巨大スコルピオの首が飛ぶ。
男はスコルピオの背中に着地し、そこから駆け下りながら、走り寄ってきていたゾンビホースに乗った。
低速・不規則な軌道から、突然高機動な騎馬戦に移行だ。
アンドロスコルピオたちは、男の動きについていけない。
次々に刃を叩き込まれ、スコルピオは倒れていった。
その時には、ナルカも残るスコルピオを片付けている。
「まあ楽勝だったな」
「マナビ、また気持ち悪い動きに磨きがかかったな……。あれはあたいの死の魔眼でも捉えられなかったよ……。なんだい、あれ」
「尻移動だ。あと、ルサルカラバーも頑張ってくれたな! よしよし」
「ぶるる」
クルトには何も理解できなかった。
だが、一つだけ実感したことはあるのだ。
「ば……化け物……!」
無能の男あらため、尻で移動する化け物。
それはこの男、コトマエ・マナビに対する正しい認識と言えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
竹取物語異聞〜30歳まで独身でいたら赤ん坊になって竹の中にいたけど、絶対に帰りません〜
二階堂吉乃
ファンタジー
21XX年。出生率が0.5を切った日本では、異次元の少子化対策として「独身禁止法」が施行された。月出輝夜(30)は、違反者の再教育VRビデオを視聴中、意識を失う。目覚めると竹の中で赤子になっていた。見つけたのは赤髪赤目の鬼で、その妻は金髪碧眼のエルフだった。少し変わった夫婦に愛情深く育てられ、輝夜は健やかに成長する。15歳の時にケガレと呼ばれる化け物に襲われたところを、ライオン頭の男に救われたが、彼は“呪われた王子”と呼ばれていた。獅子頭のアスラン王子に惹かれていく輝夜。しかし平穏な日々は続かず、輝夜を迎えに魔王が来る。『竹取物語』+『美女と野獣』のSFファンタジー昔話です。全27話。
剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!
月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。
不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。
いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、
実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。
父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。
ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。
森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!!
って、剣の母って何?
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。
役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。
うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、
孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。
なんてこったい!
チヨコの明日はどっちだ!
【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした
シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。
下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。
『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。
今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。
これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!
ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。
越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。
長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~
灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。
その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。
魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。
首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。
訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。
そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。
座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。
全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。
ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる