召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終末の王編

第174話 連続デートからの取られる言質

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 カオルンと帝都をデートするのである。
 ここはまあまあサイバーパンクみたいな都市なので、通行人や魔導カーを眺めながら、喫茶店の軒先でケミカルな色合いの炭酸飲料を飲むのである。

「こうしてると、全然緊急事態に見えないのだー」

「そりゃな。戦争中でも生活があるだろ? 戦争だーって全部経済を止めてたら、そもそも戦争を続けられないんだ。だから銃後っつーかな、街ではまあまあ普通の暮らしして金を回してる方がいいわけだ」

「なるほどなのだなー。カオルン、最近は人間がどうやって暮らしてるか興味あるから、見ること聞くこと全部面白いのだ!」

「そりゃあいいことだ」

「いいことなのだ!」

 うんうん頷きながら、ケミカルドリンクをずびずびーっとストローで飲むカオルンなのだった。
 俺は切り札だということなので、とにかくやることが無い。

 オクタゴンと達人とアカネルをスリッピー帝国の対策本部に引き合わせたことで、やることは大体終わったのだ。
 ユーリンもちょこちょこ顔を出して、会議に参加しているらしいしな。

 その日は一日中、カオルンと街をぶらついて終わった。
 用意された宿に戻ってくると、ルミイが帝国の女子たちに囲まれて何やらぺちゃくちゃお喋りしている。
 あれはなんだ。

 かと思うと、ナルカは地元の兵士から武器の扱い方を教えてもらっているではないか。
 おお、兵士の鼻の下が伸びている。
 ナルカは美少女だからな。

「あっ、マナビさーん!」

「マナビ、帰ってきたんだね」

「おうおう。で、何してるの二人とも」

「わたしはですね。精霊さんの声の聞き方を教えてました。魔法を使ってたということは、素養があるわけですし。精霊魔法が使えるようになったら色々便利ですもん。それに精霊魔法のためには、街の中に緑を植えないといけないですから、帝都に森ができちゃったりするかもですよ」

「おおっ、エルフとしての活動も行えるわけか。なるほどなあ。で、ナルカは?」

「聞いておくれよ。この魔導銃でも死の線を狙えることが分かったんだよ。使いこなしてあたいの腕の延長みたいにできれば、戦いが有利になるからね!」

「新たに死を与える手段を身につけるかあ。みんな先に進んでいる」

「カオルンはマナビと一日中デートしてたのだ!」

「な、なんですってー!」

 ルミイが立ち上がった。
 そしてカオルンにうわーっと掴みかかり、「なんで教えてくれないんですかー! もういいです明日はわたしがデートします!!」とか宣言しているのだ。
 はっはっは、俺は大忙しだなあ。

 ちなみにアカネルは対策本部に詰めていて、そこでヘルプ機能を用いて大活躍している。
 既に首相のベストールの右腕扱いされているらしく、本部に詰めた幕僚たちからの信頼も篤い。

「アカネルが天職を見つけてしまった」

「アカネル、当機能もマスターとデートしたいーって叫んでましたよ」

「天職と自分がいたい場所は重ならないもんだな」

 頑張ってくれ、アカネル!
 その後、明日のデート内容をルミイと話し合うことになり、宿の美味い飯をガツガツ食べていたら、満腹になったルミイが眠そうにし始めたので、結局話し合うことなく終わりになった。

「マナビマナビ!」

「むっ! お誘いですかな! 受けて立つぞ!」

 ということで、デートの続きの気分で夜もカオルンと盛り上がる俺なのであった。
 朝になると、外が騒がしい。

 なんだなんだと、カオルンと二人で窓から身を乗り出す。
 すると、既に外にいたルミイがこれに気付いたらしい。

「あーっ! ふ、二人とも裸で! わたしがたくさん食べて寝てる間にいいことしたんですね! うらやましい!!」

「天下の往来でそんなこと叫ぶな」

 いそいそと服を身につけつつ往来を眺めるのである。
 すると、魔法使いっぽい連中がスイーっと空を飛びながらやって来るところだった。

 魔法師団が来たな。
 これで、魔導王対策本部のススス連合が勢ぞろいしたというわけだ。

 イースマスのス、フォーホースのス、スリッピーのスでススス連合だ。
 セブンセンスの神官戦士団も加われば、スススス連合だな。

 帝都は大盛りあがり。
 これから魔導王に挑むぞ、という気運が高まっている。
 だが、アカネルを除く俺たちは基本的に個人戦力の集まりなので、お声はかからないのだ。

 後を連絡役の兵士がついてくるけども。

 本日はルミイとデートということで、ひたすら飯を食った。
 横のテーブルで飯を食う兵士に、今はどうなってるのかを聞いてみた。

「どうよ」

「あっはい、今確認します」

 彼が持っているのは、魔導通信機。
 超小型の魔導石が内蔵されている。

 しばらく向こうとやり取りをした後、端的に状況をまとめて教えてくれた。
 彼の顔が真っ青になっている。

「フ、フリズドライが復活したそうです。現在、ワンザブロー帝国方面から凍結が迫ってきていると。ススス連合はセブンセンス神官戦士団の到着を待たず、作戦行動に移ります」

「ほうほう」

「これより、フリズドライを魔精霊フリズドライと命名。魔精霊撃破作戦が開始されます」

「燃えるシチュエーションじゃん。なぜ俺は蚊帳の外なのか」

「さあ……」

 一般兵士に聞いても分からんことだったな……!

「すまんすまん、気にするな。飯を食え、飯を。蚊帳の外だろうが、俺は勝手に行くし、多分連中が、俺の出番ではないと判断しているんだろう」

「あれですよう。マナビさんが次のバーバリアン王になると約束してくれればそこに加われるんですよ? あそこ、各国の首脳会議みたいになってますから」

「そっかー。だが自由を手放したくはない……」

「赤ちゃんできたら自由じゃなくなりません?」

 俺の脳に電撃が走る──!
 そうだった。
 あれだけ楽しく夜の生活を楽しんでるから、普通にジュニア誕生は時間の問題である。

 そうなれば自由に旅をして回るわけにもいかないな。

「仕方ないなあ……。じゃあ国王補佐くらいの地位なら引き受けるから……」

 ルミイの目がギラリと光った。

「精霊の皆さん! 聞きましたか! パパとママに届けてください! 言質を取りました!」

「な、なにぃーっ!!」

 俺がうっかり口にした話は、精霊を通してあっという間にバーバリアンとエルフたちに伝わってしまったらしい。
 なんということだ。

 少ししたら、オクタゴンがニヤニヤしながら迎えに来た。

『やっと責任ある立場になる覚悟が決まったか、兄弟。守るものがあるのはいいぞ』

「くっそー」

 かくして、対策本部の首脳に名を連ねることになる俺なのだった。
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