俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
53 / 337
19・安楽椅子冒険者、久しぶりに動く

第53話 やっぱりいた、邪悪な魔導書!

しおりを挟む
 一階の清掃を終えて、昼。
 なかなか順調なペースだ。

「ナザル、ここはちょっと魔導書を読んでサボってもいいんじゃないか」

「うーん、そうかも知れない。あまり早く終えるとアーガイルさんが僕を誘いに来るからな……」

 一泊するくらいの感じで行こう、ということになった。
 午後はのんびりタイム。

 リップルは存分に魔導書を読み漁り……もちろん、その中には不用意に書を開いたものに呪いを掛けたり、攻撃魔法を放ってくる代物もあったが、その全てをプラチナ級冒険者は一蹴した。

「古代の魔法は確かに凄いんだけど、そもそも人が積み上げて到達できるレベルだからね。現代の魔法にも受け継がれているんだ。だから私は仕組みさえ分かれば全ての魔法的な罠を解除できる……」

「リップルが踊っている怪しい動きはともかく、本当にプラチナ級なんだなって納得したよ」

「はっはっは、尊敬したまえ。……いや、そもそも出会ったばかりのナザル少年は私を尊敬してた気がする……」

「いかに能力的に優れた人でも、色々と人間的な荒を見せられるとね……」

「それを言われると弱い」

 自覚があるのがリップルのいいところではある。
 さて、夕方になり、僕らは書庫から外に出てキャンプを張った。
 管理人がこれを見に来て、中庭で天ぷらを揚げる僕らに大層びっくりしていたのだ。

 魔導書庫はカタカナのコの字型をしており、そこに包みこまれる形で枯れた噴水のある中庭が存在しているのだ。
 なお、正面は細い通路と壁がある。

「魔導書庫の中庭で揚げ物をするなど、前代未聞ですな……。ですが確かに燃えるものは一切無いし風も無いので問題がない……」

「ご一緒されますか」

「揚げ物は久しく食べていませんねえ……」

 管理人も加えて、三人で天ぷらを食べた。
 いやあ、山菜の天ぷらは常に美味い。
 あとはこれだ。
 練り物の天ぷら。

 アーランは岩山を隔てたところが海であり、そこで様々な海産物も捕れるのだ。
 そしていわゆる雑魚……。
 そのままでは美味くない魚の肉だけを落とし、すり身にして塩で味付けをして練り物を作ったりもする。

 これは子どもたちのおやつでもあり、大人にとって酒のつまみでもある。
 アーランでは比較的ポピュラーな食べ物だ。

 日本のかまぼこほど洗練されてはいないが、まあ練られて固まった魚肉はぷりぷりして美味い。
 これに衣をつけて揚げるのだ。

「練り物を揚げるのかい!? 新しい発想じゃないか。一体どうなってしまうんだ……」

「練り物はわっしもよく食べますが、揚げるなんてそんな……。思いつきもしなかった」

「まあ見ててくれ。こうしてたっぷりの衣を纏った練り物が、サクサクに揚がって……。召し上がれ!」

「どーれ……。おほー」

 リップルが目を見開いた。

「サクッとかじったら中がもっちもちだよ! こりゃあ美味しいねえ! 衣にも味がついてる」

「塩とハーブを混ぜたからね。贅沢を言えば醤油を作りたい」

「ショウユ?」

 この世界には存在しないものだよ……!
 都市国家群の南方に行けば、魚醤はありそうだ。
 今度買い付けに行くかなあ。

「いやはや、本当に美味しいものをご馳走になってしまいました。それに一階の清掃を終えて無傷とは、あなた方は腕の良い冒険者です」

 管理人さんがニコニコした。

「明日もがんばってください。賄賂ではありませんが、美味しい天ぷらをごちそうしていただいたので、わっしからは国に良く言っておきますんで」

「それはありがたい!」

 うまい飯は食べさせておくものだなあ。
 こうして僕らは火の後始末をしてから眠り、朝になった。
 さあ、清掃の再開だ。

 二階に入ると、床に血の跡が残っていた。
 ああ、ここで前任の魔法使いが死んだんだな。

 それだけの危険がある書庫というわけだ。
 注意深く扉を開く。

「あー、扉が開くのと同時に飛び出してくる魔導書があるねえ」

 リップルが不思議な構えになった。
 僕は足元に油を撒き、身を投げだした。

「任せた」

「任された」

 油でつるーっと滑って屋内へ。
 僕の頭上に浮かぶ魔導書が、前方に向かって目に見えるほど濃厚な呪詛を放ってきた。
 キャロティのガンドの、桁違いに濃厚なやつだ。

 これはリップル目掛けて殺到し、しかし安楽椅子冒険者は真っ向から呪詛を受け止める。
 片手~。

「普段は詠唱しないで魔法を使ってるんだから、手を使うってことはよっぽどだよ」

 指がワキワキ動いて、呪詛を解体していく。
 あれ、指先で呪印を描いているんだな。
 それで魔法をバラバラにして意味のない魔力の流れにしてしまう。

 いやあ、噂には聞いていたが、リップルは化け物だねえ。
 魔導書はそれを意に介さず、次々に呪詛を放ってくる。
 これは呪いの魔導書か。

 僕が本の裏側に回っても、魔導書はこちらに気を割かない。
 いや、割けないでいるんだな。
 リップルが片手で、あらゆる呪詛を解体しながらじりじり近づいてくる。

 魔導書、呪詛をマシンガンみたいにぶっ放す。
 それに必死で、そこから一歩も動けない。

 僕は立ち上がり、魔導書を後ろからパタンと閉じた。

『もがーっ!?』

 魔導書がじたばた暴れる。
 これを紐でぐるぐるっと巻いた。
 よしよし……。

「ナイスだねナザル。そこで魔導書を閉じられる度胸のある男はなかなかいないよ」

「いやあ、表紙には呪文が書いてないんだもん」

「鋭いなあ。魔導書は開かないと呪文がどこにもないから無力なんだ。ということで、しまっちゃおうね」

 ジタバタ暴れる魔導書を、しっかりと本棚に戻した。
 すると、スーッと大人しくなる。

「死んだ魔法使いは、多分この本を引き抜いてしまったんだろうねえ。それで呪詛の魔導書が目覚めた。きちんと素養がないと、魔導書を読むのは自殺行為なんだよ」

「つまり、あの魔導書みたいなのが何冊もあるってこと? 本当に怖いところだなここは!」

 だが、この書庫の前で人が死んでいたということは、裏を返せば他の場所で魔導書は引き抜かれていないということだった。
 呪詛の魔導書はちょっと高級な見た目で、金で箔押しされていたから興味を惹かれるはわかる。

 売れると思っちゃったんじゃないかな。
 魔が差したら死んだんだよな。
 いやあ……欲は己を殺すね。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...