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20・魚醤の噂
第57話 都市国家到着! 陽気な南国なのだ
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なんだか風に乗って音楽が聞こえてきた。
思わず踊りだしたくなるリズムだ。
コゲタの尻尾も、ピコピコと踊りだしている。
「ご主人ご主人! 音、なに!」
「これかあ。これはきっと、ファイブショーナンから聞こえてくる音楽なんだろうなあ」
かの都市国家は海沿いに存在していると聞く。
周りに森や山などの、音を吸収してしまうものが無いんだろう。
だから、ファイブショーナンで奏でられた音がここまで届く。
案外近いのかもな。
しばらく歩いていくと、ようやく音楽の正体が知れた。
大きな砂浜のようなところで、たくさんの人々が歌ったり踊ったりしているではないか。
みんな一様に日焼けし、露出度の高い格好をしている。
ファイブショーナンの人々で間違いあるまい。
「あの、今日は何かの祭りですか」
近くで踊っていたお姉さんに聞いてみた。
ウェーブヘアで、なかなかメリハリのあるボディの女性だ。
「あら、旅人さん? これはね、お祭りなんかじゃないの。巡回してくれていた兵士のみんなが帰ってきたから、無事の帰還を祝う踊りなのよ!」
「無事の帰還を祝う……!?」
よく見ると、楽器を奏でている者たちは武装していたり。
なるほど、兵士だ。
つまりこの国、何かのきっかけがあると歌ったり踊ったりしまくるってこと?
一通り歌い終わったようで、彼らは楽器を回収して砂浜を海に向かって歩いていく。
海に……?
彼らの行き先を見ると、なんと海の中に道ができている。
今は干潮で、浅瀬が道になっているのか!
その先に、島があった。
あれがファイブショーナン!
都市国家というか島国じゃないか!!
「ご主人~」
「おっ、コゲタは興味津々か。行こう行こう」
「わん!」
道を行くと、まるで海の中を歩いているようだ。
不思議な気分だな。
入国チェックなどは無く、そのままスルッと島国の中に入り込めた。
無防備な国だ……。
「……いや、これは、明らかにみんな僕のことを気にしていない。僕の肌色が彼らと似た感じなので、仲間だと思われているのではないか……?」
ファイブショーナン人は、褐色の肌の他は、髪や瞳の色が実にカラフルだ。
色々な土地の人間、種族の血が混じり合っているらしい。
最後に生き残ったのは、この日焼けできる遺伝子だったというわけね。
案外、僕のルーツもここなのかも知れない。
コボルドも珍しくは無いようで、街のあちこちで楽器の手入れをするコボルドの姿がある。
あるいは、漁師たちに混じって網の手入れをしている。
コボルドが安全に暮らせているところはいいところだ。
僕はファイブショーナンがちょっと気に入ってしまった。
今、遺跡の国アーランは都市国家群ファイブスターズと冷戦状態にあるのだが……。
この国にはそんな緊張感など欠片もない。
あちこちに屋根だけがある楽器置き場らしきところがあり、そこに打楽器や弦楽器が収められている。
この国の人々はここからめいめい楽器を取り出し、演奏したい時に演奏して暮らしているようだ。
誰かが演奏すると、通りかかった人が歌ったり踊ったりする。
気が済むとすぐに演奏も歌も踊りも辞めて解散する。
自由な国だ……。
ちょうど目の前で、演奏を終えたおじさんがいた。
僕は彼に、今回の旅の目的を話すことにする。
「魚醤を買いに来たんですよ。どこに売ってるんですか?」
「魚醤を買いに……? もしかして、あんた旅人かい!? 驚いた。あの厳しい入国審査をよくくぐり抜けたねえ!」
「入国審査!?」
そんなものありませんでしたが。
いや、僕が現地人だと思われてスルーされただけで、本来はあったらしい。
「コボルドまで連れてるから、てっきり島の人間だと思った……だけど、よく見たら知らない顔だな。まあいいや。ついてきな」
おじさんは仕事があるらしいが、僕の道案内をするのを口実に、今日は仕事しないことに決めたらしい。
自由だ。
彼に案内されるままにファイブショーナンを歩き回るが、あちこちにヤシの木が生えている。
そしてそこここに、果樹園のようなものがある。
「国でヤシの木や果樹を育ててるんですか?」
「ありゃあ自然に生えてるんだ。だから何もしなくても、魚だけ釣ってれば暮らせるんだよな、この国は」
「とんでもなくお気楽な国だった……」
裸で寝転がっていても、スコールに降られない限りは体を壊さないし、そこら中に果物が実っている。
さらに、魚だってよく捕れるらしい。
なるほど、パラダイスだ。
この土地で暮らしていると、向上心とか危機感とかが無くなってしまうだろうな……。
唯一の弱点が、鉱物の資源が存在しないことなんだそうで。
確かに、島の中で金属をほとんど見かけなかった。
木と、動物の骨と、そして土。
そういう素朴なものでできた国だった。
「ここだよ。おーい! 旅人だ! 魚醤を買いに来たんだってよ!」
到着したのは、辛うじて屋根と壁がある露店みたいな場所。
なんと店の奥で、店主らしきおばさんがハンモックで昼寝していた。
なんと自由なんだ……。
「え? 買い物……? 物々交換? えっ、お金? お金払うの!?」
びっくりして飛び起きるおばさん。
瓶に詰まった魚醤を快く売ってくれた。
さてはこの国、通貨が無いのかと思ったら。
ちゃんと貝殻を使った貨幣が存在していて、外国の金属を使った硬貨はより高い価値があるものとして扱われているらしい。
そして国は硬貨を集めて、鋳溶かして必要な金属の器具を作る。
こういう民間で、僕が持ってきたアーラン硬貨を見ることはめったに無いようだ。
それはそれとして。
手に入れたぞ、魚醤!
半透明な瓶の中に、ぎっしりと黒い液体が詰まっている。
そこに、コルクっぽい栓がされていた。
ほとんど香りがない。
つまり、瓶は密閉されているのだ。
今から料理に使うのが楽しみだ……!!
さて、あとは……。
この国の偉い人と、魚醤の仕入れに関する商談をしたいところなのだが。
まずは味見だよな!
思わず踊りだしたくなるリズムだ。
コゲタの尻尾も、ピコピコと踊りだしている。
「ご主人ご主人! 音、なに!」
「これかあ。これはきっと、ファイブショーナンから聞こえてくる音楽なんだろうなあ」
かの都市国家は海沿いに存在していると聞く。
周りに森や山などの、音を吸収してしまうものが無いんだろう。
だから、ファイブショーナンで奏でられた音がここまで届く。
案外近いのかもな。
しばらく歩いていくと、ようやく音楽の正体が知れた。
大きな砂浜のようなところで、たくさんの人々が歌ったり踊ったりしているではないか。
みんな一様に日焼けし、露出度の高い格好をしている。
ファイブショーナンの人々で間違いあるまい。
「あの、今日は何かの祭りですか」
近くで踊っていたお姉さんに聞いてみた。
ウェーブヘアで、なかなかメリハリのあるボディの女性だ。
「あら、旅人さん? これはね、お祭りなんかじゃないの。巡回してくれていた兵士のみんなが帰ってきたから、無事の帰還を祝う踊りなのよ!」
「無事の帰還を祝う……!?」
よく見ると、楽器を奏でている者たちは武装していたり。
なるほど、兵士だ。
つまりこの国、何かのきっかけがあると歌ったり踊ったりしまくるってこと?
一通り歌い終わったようで、彼らは楽器を回収して砂浜を海に向かって歩いていく。
海に……?
彼らの行き先を見ると、なんと海の中に道ができている。
今は干潮で、浅瀬が道になっているのか!
その先に、島があった。
あれがファイブショーナン!
都市国家というか島国じゃないか!!
「ご主人~」
「おっ、コゲタは興味津々か。行こう行こう」
「わん!」
道を行くと、まるで海の中を歩いているようだ。
不思議な気分だな。
入国チェックなどは無く、そのままスルッと島国の中に入り込めた。
無防備な国だ……。
「……いや、これは、明らかにみんな僕のことを気にしていない。僕の肌色が彼らと似た感じなので、仲間だと思われているのではないか……?」
ファイブショーナン人は、褐色の肌の他は、髪や瞳の色が実にカラフルだ。
色々な土地の人間、種族の血が混じり合っているらしい。
最後に生き残ったのは、この日焼けできる遺伝子だったというわけね。
案外、僕のルーツもここなのかも知れない。
コボルドも珍しくは無いようで、街のあちこちで楽器の手入れをするコボルドの姿がある。
あるいは、漁師たちに混じって網の手入れをしている。
コボルドが安全に暮らせているところはいいところだ。
僕はファイブショーナンがちょっと気に入ってしまった。
今、遺跡の国アーランは都市国家群ファイブスターズと冷戦状態にあるのだが……。
この国にはそんな緊張感など欠片もない。
あちこちに屋根だけがある楽器置き場らしきところがあり、そこに打楽器や弦楽器が収められている。
この国の人々はここからめいめい楽器を取り出し、演奏したい時に演奏して暮らしているようだ。
誰かが演奏すると、通りかかった人が歌ったり踊ったりする。
気が済むとすぐに演奏も歌も踊りも辞めて解散する。
自由な国だ……。
ちょうど目の前で、演奏を終えたおじさんがいた。
僕は彼に、今回の旅の目的を話すことにする。
「魚醤を買いに来たんですよ。どこに売ってるんですか?」
「魚醤を買いに……? もしかして、あんた旅人かい!? 驚いた。あの厳しい入国審査をよくくぐり抜けたねえ!」
「入国審査!?」
そんなものありませんでしたが。
いや、僕が現地人だと思われてスルーされただけで、本来はあったらしい。
「コボルドまで連れてるから、てっきり島の人間だと思った……だけど、よく見たら知らない顔だな。まあいいや。ついてきな」
おじさんは仕事があるらしいが、僕の道案内をするのを口実に、今日は仕事しないことに決めたらしい。
自由だ。
彼に案内されるままにファイブショーナンを歩き回るが、あちこちにヤシの木が生えている。
そしてそこここに、果樹園のようなものがある。
「国でヤシの木や果樹を育ててるんですか?」
「ありゃあ自然に生えてるんだ。だから何もしなくても、魚だけ釣ってれば暮らせるんだよな、この国は」
「とんでもなくお気楽な国だった……」
裸で寝転がっていても、スコールに降られない限りは体を壊さないし、そこら中に果物が実っている。
さらに、魚だってよく捕れるらしい。
なるほど、パラダイスだ。
この土地で暮らしていると、向上心とか危機感とかが無くなってしまうだろうな……。
唯一の弱点が、鉱物の資源が存在しないことなんだそうで。
確かに、島の中で金属をほとんど見かけなかった。
木と、動物の骨と、そして土。
そういう素朴なものでできた国だった。
「ここだよ。おーい! 旅人だ! 魚醤を買いに来たんだってよ!」
到着したのは、辛うじて屋根と壁がある露店みたいな場所。
なんと店の奥で、店主らしきおばさんがハンモックで昼寝していた。
なんと自由なんだ……。
「え? 買い物……? 物々交換? えっ、お金? お金払うの!?」
びっくりして飛び起きるおばさん。
瓶に詰まった魚醤を快く売ってくれた。
さてはこの国、通貨が無いのかと思ったら。
ちゃんと貝殻を使った貨幣が存在していて、外国の金属を使った硬貨はより高い価値があるものとして扱われているらしい。
そして国は硬貨を集めて、鋳溶かして必要な金属の器具を作る。
こういう民間で、僕が持ってきたアーラン硬貨を見ることはめったに無いようだ。
それはそれとして。
手に入れたぞ、魚醤!
半透明な瓶の中に、ぎっしりと黒い液体が詰まっている。
そこに、コルクっぽい栓がされていた。
ほとんど香りがない。
つまり、瓶は密閉されているのだ。
今から料理に使うのが楽しみだ……!!
さて、あとは……。
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