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25・御前スイーツ
第74話 第二王子、昇天(比喩)
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まずはそのまま揚げたてを召し上がっていただく。
サクッとした歯ざわりと、ふんわりした生地のマリアージュをお楽しみください。
「まあ……! まあまあまあ!」
「美味しい! 甘くて美味しいわ!」
奥方と娘さんがもう凄いテンションになっている。
横においておいたお砂糖たっぷりのお茶も進んでいるようだ。
個人的には、甘いお菓子に甘いお茶というのはいかがなものかと思うのだが?
いや、渋いお茶を好んで飲むのは日本人ばかりだとは聞くしな。
この世界の人々も、お茶には甘味を入れて飲む。
甘いと甘いで甘味が被ったりしないのだろうか?
「おお、なかなかのものだな。温かい甘味というのは新鮮だ。美味い」
デュオス殿下がほっこりとしていらっしゃる。
隣で、受付嬢エリィがホッと胸をなでおろしていた。
別に美味しくなくてもこの人が僕らを罰することはないと思うなあ。
いや、不味いものなんか絶対に食べさせない自信があるが。
「ところで、寒天は……」
デュオス殿下が本題に触れてきた。
そうだな。
成人男性にとってはドーナッツよりも、爽やかな寒天菓子こそが本命であろう。
「こちらに……。アーランには果実が少ないため、ハーブを甘くした清涼系の寒天菓子です」
「なにっ!? し、新作なのか!? ううっ、なんということだ。なんということなのだ」
なんとフクザツな表情をするのか。
井戸水を満たしたピッチャーから、菓子を収めた容器を取り出す。
僕はこれを恭しく差し出し、シェフが用意した皿の上にプルンッと載せた。
鮮やかな黄色に輝く、爽やかな香りの寒天である。
殿下はハァハァと荒い息を吐きながら、これに匙を差し入れた。
そりゃあ、抵抗もなくスッと入ります。
匙の上で震える、透き通った透明な寒天。
彼はこれを口に運び、目を閉じて天を仰いだ。
「素晴らしい……」
なんかツツーッと一筋の涙が流れてる。
そこまで感動する?
いや、感動するんだろうな。人のツボってのはわからないもんだ。
「気に入っていただけて幸いです。では近隣から素材を買い付ける資金を……」
「いいだろう。おい」
「はっ」
侍従の人が部屋を出ていき、しばらくしてから何枚かの札を持ってきた。
「私の印を押してある。王家の信用手形だ。これを使うがいい」
「ええっ!?」
エリィがめちゃくちゃに驚いている。
それはそうだろう。
これってつまり、僕の支払いを王家が肩代わりしてくれるということに他ならない。
ある意味、青天井の資金を融通してくれるということになる。
まあ、料理の材料以外買ったら捕まると思うけど。
僕は手形を受け取って、大切にしまっておいた。
それはそれとして。
「あっ、こちらのドーナッツにですね、この寒天をこのようにざく切りにいたしまして。これを載せて食べる味変が。ちょっとふやけるので食感の変化も……」
「まあ! まあまあまあ!」
「なんということでしょうなんということでしょう」
ノリのいい奥方と娘さんだなあ。
これを見て、殿下は眉をひそめた。
「寒天はそのままで食べるのが一番だと言うのに」
「まああなた。試しもせずに仰るのですか? 何事も否定から入ってはいけませんよ。だって、わたくしたち、毒見なしでできたてを食べられるのはとても貴重なのですから」
「そうですよお父様! ぜひ! ぜひ食べるべきだわ!」
「む、むう」
なんか殿下が押されているな。
そして殿下も、ドーナッツに寒天を載せて食べた。
「ああ、これもまた悪くない」
感動のレベル的には普通くらいっぽいな。
やはり素の寒天か。
寒天王子……。
「ナザルさん、今シツレイなこと考えたでしょ」
「めっそうもない」
こうして僕は仕事を終えて、第二王子の一家を大いに満足させたのだった。
デュオス殿下からは寒天の新作を、御婦人方からは、ドーナッツの新作をご依頼いただいた。
「これはもう、冒険者などやっている場合ではないな……」
「ナザルさん!? まあ、王家の方々への粗相はありませんでしたけど、今のは問題発言ですよー!」
「するする。仕事もやるから。だが、料理もやる。両方やる……」
「両立できます? 大変そうですけど」
エリィが心配する気持ちも分かる。
だが無理ではないのだ。
なぜなら、どちらもモチベーション高くやれる、僕の趣味みたいなものだからだ。
そう!
今の人生の僕は、趣味に生きている!
その後、出ていく前にシェフたちとミーティング。
今回作ったメニューのレシピを教えた。
「寒天はじきにアーランにも流通すると思うから。これ、僕の手持ち分からいくらか渡しておくので」
「助かります! ではこちら、王家で使われている茶葉です」
「いいんですか、いただいちゃって」
「殿下から、手形だけではあなたの働きに応えられぬとの仰せがですね。ですので茶葉をお持ちください。とても香りがいい茶葉ですので……」
「では、ありがたくいただきます!」
これは……。
作れちゃうか? 紅茶ゼリー……!!
茶葉を刻んでドーナッツに混ぜ込むのもいい。
無限の可能性が広がっていく……。
「ナザルさん、なんだか遠くに行ってしまったような気がしましたが、よく見ると全然近くにいるんですよね。不思議なポジション……」
「ずっと好きなことやってるだけだからね」
さらばお城よ!
得たものは大きかった!
サクッとした歯ざわりと、ふんわりした生地のマリアージュをお楽しみください。
「まあ……! まあまあまあ!」
「美味しい! 甘くて美味しいわ!」
奥方と娘さんがもう凄いテンションになっている。
横においておいたお砂糖たっぷりのお茶も進んでいるようだ。
個人的には、甘いお菓子に甘いお茶というのはいかがなものかと思うのだが?
いや、渋いお茶を好んで飲むのは日本人ばかりだとは聞くしな。
この世界の人々も、お茶には甘味を入れて飲む。
甘いと甘いで甘味が被ったりしないのだろうか?
「おお、なかなかのものだな。温かい甘味というのは新鮮だ。美味い」
デュオス殿下がほっこりとしていらっしゃる。
隣で、受付嬢エリィがホッと胸をなでおろしていた。
別に美味しくなくてもこの人が僕らを罰することはないと思うなあ。
いや、不味いものなんか絶対に食べさせない自信があるが。
「ところで、寒天は……」
デュオス殿下が本題に触れてきた。
そうだな。
成人男性にとってはドーナッツよりも、爽やかな寒天菓子こそが本命であろう。
「こちらに……。アーランには果実が少ないため、ハーブを甘くした清涼系の寒天菓子です」
「なにっ!? し、新作なのか!? ううっ、なんということだ。なんということなのだ」
なんとフクザツな表情をするのか。
井戸水を満たしたピッチャーから、菓子を収めた容器を取り出す。
僕はこれを恭しく差し出し、シェフが用意した皿の上にプルンッと載せた。
鮮やかな黄色に輝く、爽やかな香りの寒天である。
殿下はハァハァと荒い息を吐きながら、これに匙を差し入れた。
そりゃあ、抵抗もなくスッと入ります。
匙の上で震える、透き通った透明な寒天。
彼はこれを口に運び、目を閉じて天を仰いだ。
「素晴らしい……」
なんかツツーッと一筋の涙が流れてる。
そこまで感動する?
いや、感動するんだろうな。人のツボってのはわからないもんだ。
「気に入っていただけて幸いです。では近隣から素材を買い付ける資金を……」
「いいだろう。おい」
「はっ」
侍従の人が部屋を出ていき、しばらくしてから何枚かの札を持ってきた。
「私の印を押してある。王家の信用手形だ。これを使うがいい」
「ええっ!?」
エリィがめちゃくちゃに驚いている。
それはそうだろう。
これってつまり、僕の支払いを王家が肩代わりしてくれるということに他ならない。
ある意味、青天井の資金を融通してくれるということになる。
まあ、料理の材料以外買ったら捕まると思うけど。
僕は手形を受け取って、大切にしまっておいた。
それはそれとして。
「あっ、こちらのドーナッツにですね、この寒天をこのようにざく切りにいたしまして。これを載せて食べる味変が。ちょっとふやけるので食感の変化も……」
「まあ! まあまあまあ!」
「なんということでしょうなんということでしょう」
ノリのいい奥方と娘さんだなあ。
これを見て、殿下は眉をひそめた。
「寒天はそのままで食べるのが一番だと言うのに」
「まああなた。試しもせずに仰るのですか? 何事も否定から入ってはいけませんよ。だって、わたくしたち、毒見なしでできたてを食べられるのはとても貴重なのですから」
「そうですよお父様! ぜひ! ぜひ食べるべきだわ!」
「む、むう」
なんか殿下が押されているな。
そして殿下も、ドーナッツに寒天を載せて食べた。
「ああ、これもまた悪くない」
感動のレベル的には普通くらいっぽいな。
やはり素の寒天か。
寒天王子……。
「ナザルさん、今シツレイなこと考えたでしょ」
「めっそうもない」
こうして僕は仕事を終えて、第二王子の一家を大いに満足させたのだった。
デュオス殿下からは寒天の新作を、御婦人方からは、ドーナッツの新作をご依頼いただいた。
「これはもう、冒険者などやっている場合ではないな……」
「ナザルさん!? まあ、王家の方々への粗相はありませんでしたけど、今のは問題発言ですよー!」
「するする。仕事もやるから。だが、料理もやる。両方やる……」
「両立できます? 大変そうですけど」
エリィが心配する気持ちも分かる。
だが無理ではないのだ。
なぜなら、どちらもモチベーション高くやれる、僕の趣味みたいなものだからだ。
そう!
今の人生の僕は、趣味に生きている!
その後、出ていく前にシェフたちとミーティング。
今回作ったメニューのレシピを教えた。
「寒天はじきにアーランにも流通すると思うから。これ、僕の手持ち分からいくらか渡しておくので」
「助かります! ではこちら、王家で使われている茶葉です」
「いいんですか、いただいちゃって」
「殿下から、手形だけではあなたの働きに応えられぬとの仰せがですね。ですので茶葉をお持ちください。とても香りがいい茶葉ですので……」
「では、ありがたくいただきます!」
これは……。
作れちゃうか? 紅茶ゼリー……!!
茶葉を刻んでドーナッツに混ぜ込むのもいい。
無限の可能性が広がっていく……。
「ナザルさん、なんだか遠くに行ってしまったような気がしましたが、よく見ると全然近くにいるんですよね。不思議なポジション……」
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さらばお城よ!
得たものは大きかった!
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