俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
173 / 337
59・ツーテイカーぐらし

第173話 報告会とソーセージ

しおりを挟む
「で、どうなんだ具合は」

 街をぶらついて適当に入ってみた店に、なんとベンクマンがいた。
 えっ、僕、もしかして誘い込まれてた?

「いやあ、いるなんて思わなくて……」

「俺は何人かいる影武者の一人だ。お前がいそうな店には大体俺がいる。で、どうだったんだ? 報告をしろ」

「はあ。いや、成果自体はかなり凄いのができましたよ。めちゃくちゃウマいかき揚げです。キノコの美味さを最高に表現できたと思います」

「ほう……。ここで作れるか?」

「もちろんです」

「どれ、料理法を見てやる」

 後ろに立ってるぞ。
 やりづらいなあ!
 だが、この影武者だというベンクマンが料理方法を覚え、本物に教えるんだろう。

 この黒幕さんは今頃、誰も知らない地下の城で報告を待っているに違いない。

「このようにキングキノコをですね。ザクザクに切って衣に混ぜてシュワーっと揚げる……!」

「ほお……! ごほん! おほん!」

 影武者氏、素が出そうになって慌てて咳払いした。
 どうやらこれ、上から魔法を被って変装しているらしい。
 飼い主氏は何も教えてくれないだろうが、きっと一人ひとりが襲撃者を返り討ちにできるレベルの腕利きだ。

 後ろに立たれているのに、全く気配がしない。
 ちなみに、揚げ物のいい香りが漂った瞬間にブワッと気配が出てきた。
 ごくりと唾を飲む音がした。

 なお、他にも店の料理人さんがおり、彼は穴が空くほどの集中力でじーっと僕の料理を見ている。

「うちにある材料でできるな……。あの、こいつをうちで出していいんですか?」

 料理人さんは影武者氏に聞く。

「ああ、構わん。広めてやれ」

 影武者氏、鷹揚な仕草で告げる。
 その後、かき揚げがじゅわーっと揚がったので、「おおーっ」とどよめく二人なのだった。
 素が出てるよ、素が!!

 なお、蕎麦は流石に品切れだったので、かき揚げをカットしてスープに入れて食べてもらった。

「うっま」

「うめえー」

 もう演技を忘れた影武者氏。
 キングキノコのかき揚げを貪るように食べ尽くすと、用意された酒をぐっとあおり……。

「では報告してくる」

 そう告げて、彼は去っていった。
 その背中がベンクマンのものから、全く別人のものに変わる。

「あの人、盗賊ギルドの幹部だったりするんですかねえ?」

「喋ったら俺が殺されちゃうよ」

「あ、そうですねすみません」

「いやあ、でもちょっといい料理を教えてもらっちゃったな。そっか、キングキノコの違った食感を一気に食べられるやり方ってこうなんだな! お礼と言ってはなんだけど、なんか食ってく?」

「あっ、じゃあ地元の名物料理みたいなのがあれば……!」

 本日、コゲタは宿に置いてきている。
 飼い主氏がアララちゃんと一緒に、この世界のドッグラン的なところに連れて行ってくれているらしい。
 僕はこの国の散策をしているところだったので、名物がいただけるなら嬉しい。

「そうだなあ……。ツーテイカーと言えばキノコなんだが、それ以外ならソーセージだ。よっしゃ、ソーセージ盛り合わせを作ってやるぞ!」

 すでに火を通してあるものを、温め直すわけだ。

「生のソーセージをすぐ茹でて食うのが美味いんだけどさ。でもそれってこの時間だともう悪くなっちまうからさ。明日は朝イチで来てくれよ。最高の白ソーセージを食わせてやるから」

「あ、それはありがたい!」

 なお、温め直したとは言え、多種多様なソーセージ盛り合わせは大変美味しかった。
 腸詰めごと食べるのではなく、ナイフで引き裂いて、中身をフォークで食べるのだ。
 腸が分厚くて、食用じゃないんだなあ……。

「すげえ美味いんですけど、その、腸ごと食えるのとか無いんですか?」

「腸ごと? あるよ? 薄い腸を使えばそのまま食えてパリっとしてて美味い。だけどこれも足が早いからさあ……。朝イチで来てくれ」

「了解です。冷凍技術が無いとどうしてもそうなるよなあ。こっちもどこかで見つけ出して一般化したいよなあ……」

 晩飯に、パリッとしたソーセージによく冷えたビール……。
 食べたい!
 だがこの世界では現状、無理だ。

 ソーセージはアーランでも全然再現可能だろう。
 これを夕食にできるようにすべきなのだ。

 今のところは、一度火を通して肉の中の雑菌を殺してから保存……。
 それでも、その日の内に使い切ってしまう。
 薄い腸だと、破れてしまうからすぐ食べるのだろう。

 うーむ……。

「ソーセージ食いながら難しい顔してるなあ。うちの特製の漬物、食う?」

「あっ、食べます。あー、酸っぱくて美味いですねえー」

「でしょ? あんま葉野菜作ってない国だからさ。地下で育つヒョロヒョロの野菜をこうやって漬け込むわけ」

 恐らく発酵の段階で、ビタミン類なんかが生まれているんだろう。
 この国は、あらゆる食事にこの酸っぱい漬物が付く。
 僕の生前で言えば……ドイツっぽい国だな。

 僕が考えながらソーセージを食べていたら、料理人氏は厨房に戻って行ってしまった。
 とは言っても、ここから見える厨房だ。
 鼻歌なんかしながら、キノコをザクザク切っている。

 いやあ、手さばきは流石だなあ。
 僕なんて素人もいいところだ。

「おーい! 衣の成分教えてくれ! 頼むー!」

「この国だと、パンに使う粉と……あれば卵ですかねえ」

「あ、卵! 卵はある! そっか、卵を使うのか。高級料理だねえ……!」

 料理人氏はニヤニヤ笑いながら、勢いよく卵を割り、粉と混ぜてかき混ぜた。
 実に楽しそう。
 かき揚げを油に放り込んだ辺りで、彼は歓声をあげている。

 あれは何油なんだろうなあ……。
 この国、案外油が採れる食材が手に入りやすいのかも知れない。

 僕の散策はまだ続きそうなのだった。

 
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波
ファンタジー
小さい時から、様々な召喚獣を扱う召喚士というものに、憧れてはいた。 そして、遂になれるかどうかという試験で召喚獣を手に入れたは良い物の‥‥‥なんじゃこりゃ!? 個人的にはドラゴンとか、そう言ったカッコイイ系を望んでいたのにどうしてこうなった!? これは、憧れの召喚士になれたのは良いのだが、呼び出した者たちが色々とやらかし、思わぬことへ巻き添えにされまくる、哀れな者の物語でもある…‥‥ 小説家になろうでも掲載しております。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...