俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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68・大雪だ

第201話 外が真っ白だった

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「顔が寒い……」

 ハッと目覚めると。
 隣にコゲタがいるのでぬくぬくなのだが、むき出しの僕の顔がなかなか寒くなっていた。
 この気温は尋常ではない。
 起き上がって窓をちょっと開く。

 ガラス窓なんてものは高級なお屋敷にしか無い。
 こういう普通の宿は、跳ね上げ式の鎧戸である。
 僅かな隙間から光が差し込んできている板を持ち上げると……。

「うおっ!」

 真っ白な光景が目に飛び込んできた。
 尋常な白さではない。
 見渡す限り全てが白く、それが朝日に照らされてキラッキラに輝いているのだ。

 雪だった。
 昨夜のうちに降り積もった雪が、アーラン中を覆っていたのである。

「んおーご主人あさー?」

「朝だなあ。コゲタは寒くなかった?」

「おふとんあったからへいきー」

 起き上がったコゲタが、もそもそとベッドから降りている。
 抜け毛防止で、コゲタもパジャマを着ているのである。
 夏場は床にゴザを敷いたりしているのだが、流石に秋から冬になるとね。

 僕もコゲタが隣りにいたほうが、生きている湯たんぽみたいにぬくいので助かる。

「うーん……うん!? そと、しろい!!」

 朝はのんびりモードなコゲタが、一瞬で目を覚ましたようだ。

「ご主人! ご主人! そとしろい!」

「今年も雪が降ってきたなー」

「ゆきー! そといきたい!」

「よし、朝飯を食ったら行こうなー」

 ということで、井戸水で二人で顔を洗ってシャキッとするのだ。
 井戸の水は常に一定の温度だから、冬はほどほど暖かくていいな。

「おお寒い寒い! 雪が一気に降ってきたねえ。こりゃあ、街は今日一日、雪かきでてんやわんやだよ」

 もこもこに着込んだおかみさんが出てきて、スープを作ってくれた。
 朝のスープというのは、乾き物や野菜の切れっ端を一気に煮込んだ簡単なやつが主である。
 だが最近のアーランは食生活が豊かになったので、ここに乾燥キノコが投入されたりする……!!

 うおお、キノコからでる凄まじい旨味よ!
 スープが大変美味い。

 パンをつけて食べても、旨味のあるスープがを丸ごと食べる気分になれてとてもよい。
 これとソーセージを焼いてもらってから、それを食べて出かける……。

 んっ!?
 ソーセージ!?

「おかみさん、ソーセージがある」

「一気に市場に出回り始めたのさ。あらかじめ燻してあるから、保存が効くらしいじゃないか。ありがたいねえ……。便利なものがどんどん増えていくよ」

「アーランの食生活は明らかに豊かになったよねえ。僕も毎日が楽しいよ。宿の食事まで改善するとは……」

 コゲタはスープにパンを浸して、ぱくぱくぱくーっと一気に食べている。
 スープもごくごくだ。
 よく食べるなあ。

「ゆきであそぶの! げんきつける!」

「そうか! それは大事だなあ」

 そうこうしていると、飼い主氏とアララちゃんも降りてきた。

「コゲター! そとであそぶ!」

「アララあそぶー!」

 うわーい! と盛り上がるコボルドたちなのだった。

「恐らく街のコボルドたちも、今日は仕事にならないんじゃないかな。みんな雪遊びが大好きだからね」

 飼い主氏、詳しい。
 コボルドを労働力で使っている人々も、こんな日は仕事を諦めるんだそうだ。
 コボルドの本能には逆らえない。

 それに、雪で身動きが難しい日なんか、仕事どころじゃないだろう。
 今日はアーラン全体がサボってるんじゃないかなあ。

 ということで、アララと飼い主氏の食事が終わるのを待って、出かけることにした。

「わーっ!」

「わはー!」

 コゲタとアララちゃんが駆け出していく。
 アララちゃんなんか真っ白な毛並みなのに、着せられてる上着も白いから雪に紛れてしまうぞ。
 あー、転げて遊んでる。

「あれは汚れが凄く落ちやすい布なんだ。ちょっとゴワゴワしてるけどね。実はツーテイカーでは、ペットのコボルド用の服を開発している」

「そ、そんなものを!! なるほど、コボルドが汚すの前提で、何度も洗って使える服ってわけか」

 コゲタは子供用の古着を使っているのだが、洗えるコボルド衣装があるならそれでもいいのかも知れない。
 おお、雪合戦を始めた。
 他のコボルドもワーッと集まってくる。

 色々な犬種がいるなあ!
 ポメラニアン、ヨークシャーテリア、チワワ、でかいのはハスキーとシェパードか。オーストラリアン・キャトル・ドッグに、ランカシャー・ヒーラーまでいる。
 そして近所の子供達も集まってきて、コボルドと混ざってわーっと雪合戦だ。

 元気で大変よろしい。
 手先は人間の方が器用なので、子供が雪玉をガンガン生産し、コボルドたちがこれを使って投げ合う。
 白熱した戦いだなあ。

 飼い主氏と僕以外にも、コボルドの雇い主のおじさんや、子供達の親もこの光景をニコニコしながら眺めている。
 今日は全員、仕事はお休みなのだ!
 大雪で仕事どころじゃないからね。

 途中、大人たちは気がついたように、木の板何かを使って雪かきを始めた。
 道にある雪くらいは取り除いておかないと、滑って危ないからだ。

 僕と飼い主氏も参加し、ふうふう汗を流しながら作業を終えた。
 近所のおばさんたちが、温かいお茶を淹れてくれて僕らに配る。
 いやあ、ありがたいなあ……。

 コボルドや子供達も集まってきて、みんなで健闘を称え合いながらお茶を飲む。
 平和な光景だ……。

 さて、今日一日は、大雪でお休みになったアーランを巡ってみるとしようかな。

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