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70・南国に魚介類を食べに行こう
第210話 知識神、カレーのお告げをする
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「知識神様、知りたいことがあります」
『うむ、お前は私を必ず必要とするだろうと睨んでいた。何なりと言うがよい。ただしその見返りとして……』
「布教せよと」
『話が早い。だが、私も物わかりがいい方の神だ。個人主義が発達した異界より転生してきた魂であるお前に、私を信仰しろとは言わぬ』
「言わないんですか。思った以上に物わかりがいい……」
『そうだろうそうだろう。そしてこういう話をしたら、お前は何気に義理堅いのできちんと私の頼みを聞いてくれると思ったのだ』
「頭がいい。さすが知識神だなあ。では、僕がお願いしようとしていることは既に把握していらっしゃる?」
『うむ。カレーなるもの、サウザンド大陸でも再現するべく、彼の地最大の帝国が数百年の間追い求めている。だが悲しいかな、サウザンド大陸にはカレーを再現できる素材が生息していないし、定着せぬのだ』
「なんですって!!」
僕以外にカレーを再現しようとする存在がいたというのか!
「それはもしや、僕のような転生者がもととなって……?」
『いかにも。私と同様、知の世界樹と繋がるギフトを得た存在。魔導王を倒した最強の転生者よ。あと良く分からない変な転生者もいたが。だが、そのような超越的な者たちにも、生えていないものは何ともできない。彼らが残した宿願の一つがカレーの再現であった。これこそが、サウザンド大陸では不可能なものなのだ』
「随分でかい話になってきたぞ……。つまり……もしや、僕のいるノーザンス大陸こそが約束されたカレーの地……?」
『いかにも。砂漠地帯に生える黄金のハーブカレーコ、ワンダバーの氷の中に根付くにんにく、アーラン第五層に封印されたマサラガラム。この三つを集めたときにカレーは誕生するだろう……』
「全部身近なところにあるぞ……!! というか、砂漠地帯のカレーコってカレー粉なんです?」
『それだけで八割カレーになる』
「なんですって」
本当に約束されたカレーの地だった、ノーザンス大陸。
というか、次々に美味いものが見つかるここ、かなりのグルメ大陸だぞ。
『こと、食に関しては全世界で最も美味なる食材が揃う土地がこのノーザンス大陸。月の女神がちょっとつまみ食いするために作り上げた大地であり、我々神もちょいちょいここに来ては、人間たちが作る捧げ物を食べたものである。その文化は魔導王の台頭とともに失われた』
「なんと! つまり、美食は本来、ノーザンス大陸にあまねく広がっていたと」
『いかにも。だが、それらは永遠に失われた。人々は美しき食を失い、素材を茹でて塩やハーブをそのままかけて丸ごとかじるだけの食生活に堕した。スープも適当に食物を切って湯で煮込んで塩とハーブを振るだけ……』
「おお……なんという悲しさ。まさに文明の終焉、アポカリプス」
『捧げ物もまた貧しくなった。知識を重んじる余裕を失い、私は一部の魔法使いや指導者たちにのみ信仰される存在となった。正直、他の神よりちょっといい捧げ物を得られてはいる。得られてはいるが……。やはりそこまで美味しくはなかった』
なんと悲しそうな事を仰るのだ。
こころなしか、知識神の放つ輝きもしょんぼりして見えた。
だが次の瞬間。
知識神は激しく輝き始める!
『だが、時代は変わった! お前だ! お前が現れたのだナザル! ひょんなことから、食への情熱を取り戻し、次々に美味いものをこの世界に生み出していく男、お前が食の砂漠となっていたノーザンスに降り立ったのだ!』
ま、まさか神々もまた、僕が次々に日本の食を再現していくことを楽しみにしていたとは……。
「では……必ずや、美味しいカレーを捧げてみせましょう」
『頼む、頼むぞ……! それから、米を手に入れたときもカレーライスとやらを作るがいい……』
「お任せあれ」
こうして、知識神の導きを得た僕はにんにくを除く二つのハーブの在処を知ったのである。
にんにくもあれ、味と香りは似ているものの、本質的には全く違う植物らしい。
まずは近場で、殿下から許可をもらっての第五層探索。
次に冬の内に砂漠の王国でカレーコのゲットだな。
どうやらこのカレーコ、砂漠の王国ですら存在に気付いていないまさに幻のハーブらしい。
必ず見つけてやるぞ……!
というところで、顔をぺたぺた触られて目が醒めた。
なんだなんだと思ったら、コゲタが同じハンモックに登ってきて、僕の顔を触っているのである。
「ご主人おきたー!」
「起きました起きました。どうしたコゲタ」
「なんかね、ご主人がすごーくとおくにいったかんじがした!」
鋭い!
僕の魂は肉体を離れ、知識神のいる高みまで達していたのである。
そこで大いなるお告げを受けた。
お告げと言うかもう普通に異世界パルメディアの食の歴史を語ってもらって、僕が希望の星だとかそういう話をされていたのだが。
知識神にシンパシーが湧いてしまった。
喜ばせたい、あの神様。
よし、やるぞやるぞやるぞ!
僕がカレーの材料を集めた頃には、シーフードもアーランに入ってくるだろう……。
「よしコゲタ、アーランに戻るぞ! 南の島に行く前に、やらなきゃいけないことがどっさりできた!」
「わん! コゲタてつだう!」
うんうん、僕ら二人でカレーを復活させようじゃないか。
『うむ、お前は私を必ず必要とするだろうと睨んでいた。何なりと言うがよい。ただしその見返りとして……』
「布教せよと」
『話が早い。だが、私も物わかりがいい方の神だ。個人主義が発達した異界より転生してきた魂であるお前に、私を信仰しろとは言わぬ』
「言わないんですか。思った以上に物わかりがいい……」
『そうだろうそうだろう。そしてこういう話をしたら、お前は何気に義理堅いのできちんと私の頼みを聞いてくれると思ったのだ』
「頭がいい。さすが知識神だなあ。では、僕がお願いしようとしていることは既に把握していらっしゃる?」
『うむ。カレーなるもの、サウザンド大陸でも再現するべく、彼の地最大の帝国が数百年の間追い求めている。だが悲しいかな、サウザンド大陸にはカレーを再現できる素材が生息していないし、定着せぬのだ』
「なんですって!!」
僕以外にカレーを再現しようとする存在がいたというのか!
「それはもしや、僕のような転生者がもととなって……?」
『いかにも。私と同様、知の世界樹と繋がるギフトを得た存在。魔導王を倒した最強の転生者よ。あと良く分からない変な転生者もいたが。だが、そのような超越的な者たちにも、生えていないものは何ともできない。彼らが残した宿願の一つがカレーの再現であった。これこそが、サウザンド大陸では不可能なものなのだ』
「随分でかい話になってきたぞ……。つまり……もしや、僕のいるノーザンス大陸こそが約束されたカレーの地……?」
『いかにも。砂漠地帯に生える黄金のハーブカレーコ、ワンダバーの氷の中に根付くにんにく、アーラン第五層に封印されたマサラガラム。この三つを集めたときにカレーは誕生するだろう……』
「全部身近なところにあるぞ……!! というか、砂漠地帯のカレーコってカレー粉なんです?」
『それだけで八割カレーになる』
「なんですって」
本当に約束されたカレーの地だった、ノーザンス大陸。
というか、次々に美味いものが見つかるここ、かなりのグルメ大陸だぞ。
『こと、食に関しては全世界で最も美味なる食材が揃う土地がこのノーザンス大陸。月の女神がちょっとつまみ食いするために作り上げた大地であり、我々神もちょいちょいここに来ては、人間たちが作る捧げ物を食べたものである。その文化は魔導王の台頭とともに失われた』
「なんと! つまり、美食は本来、ノーザンス大陸にあまねく広がっていたと」
『いかにも。だが、それらは永遠に失われた。人々は美しき食を失い、素材を茹でて塩やハーブをそのままかけて丸ごとかじるだけの食生活に堕した。スープも適当に食物を切って湯で煮込んで塩とハーブを振るだけ……』
「おお……なんという悲しさ。まさに文明の終焉、アポカリプス」
『捧げ物もまた貧しくなった。知識を重んじる余裕を失い、私は一部の魔法使いや指導者たちにのみ信仰される存在となった。正直、他の神よりちょっといい捧げ物を得られてはいる。得られてはいるが……。やはりそこまで美味しくはなかった』
なんと悲しそうな事を仰るのだ。
こころなしか、知識神の放つ輝きもしょんぼりして見えた。
だが次の瞬間。
知識神は激しく輝き始める!
『だが、時代は変わった! お前だ! お前が現れたのだナザル! ひょんなことから、食への情熱を取り戻し、次々に美味いものをこの世界に生み出していく男、お前が食の砂漠となっていたノーザンスに降り立ったのだ!』
ま、まさか神々もまた、僕が次々に日本の食を再現していくことを楽しみにしていたとは……。
「では……必ずや、美味しいカレーを捧げてみせましょう」
『頼む、頼むぞ……! それから、米を手に入れたときもカレーライスとやらを作るがいい……』
「お任せあれ」
こうして、知識神の導きを得た僕はにんにくを除く二つのハーブの在処を知ったのである。
にんにくもあれ、味と香りは似ているものの、本質的には全く違う植物らしい。
まずは近場で、殿下から許可をもらっての第五層探索。
次に冬の内に砂漠の王国でカレーコのゲットだな。
どうやらこのカレーコ、砂漠の王国ですら存在に気付いていないまさに幻のハーブらしい。
必ず見つけてやるぞ……!
というところで、顔をぺたぺた触られて目が醒めた。
なんだなんだと思ったら、コゲタが同じハンモックに登ってきて、僕の顔を触っているのである。
「ご主人おきたー!」
「起きました起きました。どうしたコゲタ」
「なんかね、ご主人がすごーくとおくにいったかんじがした!」
鋭い!
僕の魂は肉体を離れ、知識神のいる高みまで達していたのである。
そこで大いなるお告げを受けた。
お告げと言うかもう普通に異世界パルメディアの食の歴史を語ってもらって、僕が希望の星だとかそういう話をされていたのだが。
知識神にシンパシーが湧いてしまった。
喜ばせたい、あの神様。
よし、やるぞやるぞやるぞ!
僕がカレーの材料を集めた頃には、シーフードもアーランに入ってくるだろう……。
「よしコゲタ、アーランに戻るぞ! 南の島に行く前に、やらなきゃいけないことがどっさりできた!」
「わん! コゲタてつだう!」
うんうん、僕ら二人でカレーを復活させようじゃないか。
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