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89・水田の中心で収穫を叫んだ油使い
第271話 遺跡の中の経済圏
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来たぞ!
夜這いが!
くそっ、こんな時に凄まじいスケールのモテ期が来るとは!!
予想通り、張っておいた油地獄の罠に嵌まってアップアップしていたので、引き上げて帰らせた。
「玉の輿とか欠片も可能性が無いのでお帰りなさい」
「えーん」
六人くらい女子が帰っていった!
貞操観念はどうなっているんだ。
いや、これは職人たちが我が娘を嫁がせようと仕組んだのだろう。
恐ろしい連中だ。
間違いなく味方なのだが、あわよくば身内になろうと狙っていやがる。
第四層に居を構えるのは考えた方がいいな……。
僕はその夜のうちに、第三層に作られた村へ向かった。
町と村の間くらいのサイズだ。
ここに、第三層で働く人々の家族が住んでいる。
ちょうど第三層の中央にある形だ。
ここからならば、三層のあらゆる場所へ向かうことができる。
そして……。
第三層というのは、その半分が僕の息がかかった畑なのである!
オブリーとか大豆とかにんにくとかピーカラとか、カレーコとかマサラガラムとかが育てられているぞ。
なので、僕が深夜に訪れたというのに……。
「あーっ! あなたはナザルさん!!」
起きてきた宿の主人は飛び上がって驚き、
「どうぞどうぞ! 一番いいお部屋を用意しますから! おい、起きろ! ナザルさんだ! ナザルさんが我が宿に泊まってくださるぞ!」「えっ、ナザルさんが!?」「まともな作物を全て第一層と第二層に取られて、ほそぼそと暮らしていた第三層に一大美食産業の作物を授けてくださったあのナザルさんか!!」
泊まっていた人々まで起きてきて、僕を大歓迎するのである。
「ウワーッ! 落ち着け落ち着け!! 大げさ過ぎる!!」
「何が大げさなもんですか。あなたは我々の救世主なんだ。我々に仕事と誇りを与えてくれた!!」「そうだ! 誇りは何よりも重い!」「私達の精神的指導者なんです!」
大変なことになってきたぞ。
ということで、やたら広い成金っぽい部屋に案内されてしまったのだった。
ウワーッ!
キングサイズベッド!!
仕方ない。
好意を受け取ってここで寝ることにするか……。
僕は恐ろしくフカフカのベッドで、大の字になって寝るのだった。
朝である。
目覚めて少ししたら、勝手にルームサービスが来た。
監視されてる……!?
「第三層で採れる食材を使ったパンとスープです」
「ああ、これはどうも……!」
明らかに食べたことがある味がする。
これは、にんにくを効かせた鳥肉のスープと、パンとそれを浸ける用のオブリーオイルだ。
贅沢な朝食だなあ……!
アーランの最高級のホテルで出る朝食と同じレベルである。
もしかして第三層、こんないいものを食べてるのか?
サーブしてきたのはなんと宿の主人であり、彼は自慢げに告げた。
「第三層で最も美味い朝食ですよ! 我々だってそんなにしょっちゅうは食べられません! ですが、他でもないナザルさんだからこそお出ししたんです! パンは今朝焼いたばかりのもの! オブリーオイルは今朝絞ったばかりのもの! 鳥は昨夜締めて肉を寝かせて落ち着けてあります! にんにくも擦りたてですよ!」
「あまりにも凄い……!!」
「喜んでいただけて何よりです。それでナザルさん、なんでこちらにお越しになったんですか? 夕方くらいに一度ぶらぶらされてたようですが」
「聞いてくれ。実は水田の管理をしにやってきて、これから数ヶ月ほど遺跡の中で過ごすんだが」
「おお、ナザルさんがこちらに長居を!? 素晴らしい!! みんな喜びますよ!」
「うん、僕を慕ってくれるのはいいんだが……水田の職人たちが娘たちを僕に夜這いさせるのだ」
「あー、そりゃあいけません。ナザルさんと言えば婚約者のリップルさんがおられるのは周知の事実ですから」
「おいこら待て」
「美食の革命家と、かつての大英雄の夫婦。この間には何人も入り込むことはできませんよ。我々の間では常識です」
「いやだから違って」
聞いちゃいねえ!
だが、その話に乗っておけば誰かに迫られることも無くなるかも知れない。
僕はそんな噂に乗っておくことにした。
宿から外に出ると、待ち構えられているのではないかと思っていたが……。
村は全然日常をやっていた。
つまり、日々のルーチンワークをみんな真面目にこなしているのだ。
昨夜は完全なオフタイムだったから僕に注目したわけだ。
で、僕が近くを通りかかると会釈してくる。
完全に尊敬されてしまった。
僕が最初に雇った職人たちは、もっとずっとフラットだったように思うが……。
彼らの作る食材がアーランにおいて、その価値を認められて人気になるに従い、職人たちの地位や評判も上がっていたのだそうだ。
そして彼らが呼び寄せた家族や仲間たちは、まだ見ぬナザルという男について想像をたくましくし、ついには英雄視するようになってしまったと。
なんということだ。
遺跡が妙なところになってしまっている!
このような環境で数ヶ月を過ごせるかどうか……。
僕は唸りながら、第四層の水田に向かうのだった。
何はともあれ、仕事だ仕事!
夜這いが!
くそっ、こんな時に凄まじいスケールのモテ期が来るとは!!
予想通り、張っておいた油地獄の罠に嵌まってアップアップしていたので、引き上げて帰らせた。
「玉の輿とか欠片も可能性が無いのでお帰りなさい」
「えーん」
六人くらい女子が帰っていった!
貞操観念はどうなっているんだ。
いや、これは職人たちが我が娘を嫁がせようと仕組んだのだろう。
恐ろしい連中だ。
間違いなく味方なのだが、あわよくば身内になろうと狙っていやがる。
第四層に居を構えるのは考えた方がいいな……。
僕はその夜のうちに、第三層に作られた村へ向かった。
町と村の間くらいのサイズだ。
ここに、第三層で働く人々の家族が住んでいる。
ちょうど第三層の中央にある形だ。
ここからならば、三層のあらゆる場所へ向かうことができる。
そして……。
第三層というのは、その半分が僕の息がかかった畑なのである!
オブリーとか大豆とかにんにくとかピーカラとか、カレーコとかマサラガラムとかが育てられているぞ。
なので、僕が深夜に訪れたというのに……。
「あーっ! あなたはナザルさん!!」
起きてきた宿の主人は飛び上がって驚き、
「どうぞどうぞ! 一番いいお部屋を用意しますから! おい、起きろ! ナザルさんだ! ナザルさんが我が宿に泊まってくださるぞ!」「えっ、ナザルさんが!?」「まともな作物を全て第一層と第二層に取られて、ほそぼそと暮らしていた第三層に一大美食産業の作物を授けてくださったあのナザルさんか!!」
泊まっていた人々まで起きてきて、僕を大歓迎するのである。
「ウワーッ! 落ち着け落ち着け!! 大げさ過ぎる!!」
「何が大げさなもんですか。あなたは我々の救世主なんだ。我々に仕事と誇りを与えてくれた!!」「そうだ! 誇りは何よりも重い!」「私達の精神的指導者なんです!」
大変なことになってきたぞ。
ということで、やたら広い成金っぽい部屋に案内されてしまったのだった。
ウワーッ!
キングサイズベッド!!
仕方ない。
好意を受け取ってここで寝ることにするか……。
僕は恐ろしくフカフカのベッドで、大の字になって寝るのだった。
朝である。
目覚めて少ししたら、勝手にルームサービスが来た。
監視されてる……!?
「第三層で採れる食材を使ったパンとスープです」
「ああ、これはどうも……!」
明らかに食べたことがある味がする。
これは、にんにくを効かせた鳥肉のスープと、パンとそれを浸ける用のオブリーオイルだ。
贅沢な朝食だなあ……!
アーランの最高級のホテルで出る朝食と同じレベルである。
もしかして第三層、こんないいものを食べてるのか?
サーブしてきたのはなんと宿の主人であり、彼は自慢げに告げた。
「第三層で最も美味い朝食ですよ! 我々だってそんなにしょっちゅうは食べられません! ですが、他でもないナザルさんだからこそお出ししたんです! パンは今朝焼いたばかりのもの! オブリーオイルは今朝絞ったばかりのもの! 鳥は昨夜締めて肉を寝かせて落ち着けてあります! にんにくも擦りたてですよ!」
「あまりにも凄い……!!」
「喜んでいただけて何よりです。それでナザルさん、なんでこちらにお越しになったんですか? 夕方くらいに一度ぶらぶらされてたようですが」
「聞いてくれ。実は水田の管理をしにやってきて、これから数ヶ月ほど遺跡の中で過ごすんだが」
「おお、ナザルさんがこちらに長居を!? 素晴らしい!! みんな喜びますよ!」
「うん、僕を慕ってくれるのはいいんだが……水田の職人たちが娘たちを僕に夜這いさせるのだ」
「あー、そりゃあいけません。ナザルさんと言えば婚約者のリップルさんがおられるのは周知の事実ですから」
「おいこら待て」
「美食の革命家と、かつての大英雄の夫婦。この間には何人も入り込むことはできませんよ。我々の間では常識です」
「いやだから違って」
聞いちゃいねえ!
だが、その話に乗っておけば誰かに迫られることも無くなるかも知れない。
僕はそんな噂に乗っておくことにした。
宿から外に出ると、待ち構えられているのではないかと思っていたが……。
村は全然日常をやっていた。
つまり、日々のルーチンワークをみんな真面目にこなしているのだ。
昨夜は完全なオフタイムだったから僕に注目したわけだ。
で、僕が近くを通りかかると会釈してくる。
完全に尊敬されてしまった。
僕が最初に雇った職人たちは、もっとずっとフラットだったように思うが……。
彼らの作る食材がアーランにおいて、その価値を認められて人気になるに従い、職人たちの地位や評判も上がっていたのだそうだ。
そして彼らが呼び寄せた家族や仲間たちは、まだ見ぬナザルという男について想像をたくましくし、ついには英雄視するようになってしまったと。
なんということだ。
遺跡が妙なところになってしまっている!
このような環境で数ヶ月を過ごせるかどうか……。
僕は唸りながら、第四層の水田に向かうのだった。
何はともあれ、仕事だ仕事!
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