異世界ドM戦記 ~僕は美少女にどつかれて無双する~

あけちともあき

文字の大きさ
41 / 75
Mと漫遊編

第四十一話:ドMと姫と宿場町

しおりを挟む
 エリザベッタ様のおかげで見逃してもらったというか、僕と新聞屋と聖王国の大戦争にならずに済んだ感じ。
 なんか、僕たちってあれかしら。
 指名手配みたいになってきてる?
 まあいいや。

「街道は随分揺れるのねえ」

 ガタゴトいう荷馬車に揺られながら、エリザベッタ様は楽しそう。
 見るもの聞くもの珍しいんだから当然だろう。
 女子供だけで旅をしてる僕たちを、カモだと思って盗賊がやってきたけど、エリザベッタ様と目が合って全員死んだりした。
 その他、動物はエリザベッタ様に見られても、目を合わせないと死なないみたい。
 僕たちが連れてる馬がずっと生きてるもんね。
 人間を即死させることに特化した能力なのかもしれない。

「ふっふっふ、滑稽な連中だったっす! まるで人がゴミのように! 倒れていったっすなあ」

「あんまりご飯が美味しくなる光景じゃなかったよねえ」

 盗賊が襲ってきた件を思い出しながら、干し肉とかをかじる。


 あの時、僕たちは大変不用心な感じで見晴らしの悪い岩場の間の道を通っていたんだ。
 そこへ、盗賊たちがやってきた。

 岩山の上から馬で駆け下りてきて、髭面のいかつい男の人が僕たちの馬車を取り囲んだのだ。

「おう、馬ぁ止めろ!! いやあ、俺達は運がいいなぁ。ガキだけでここをちょろちょろ通ってる奴がいるとはなあ」

「あっ、盗賊だ。初めて見たなあ」

 僕が御者席から感想をいうと、その盗賊の人はむっとした。

「ああん? なんだそのでかい態度は! 大人に対する礼儀ってやつを教えてやろう!」

「ノーセンキューです!」

「ガキが!!」

 盗賊がナイフを抜いて切りかかってきたので、

「すまないが髭面は帰ってくれないか!!」

 叫びながら僕のカウンターが炸裂!

「あふん……」

 盗賊の人はそのまま膝から崩れ落ちた。

「こ、このガキ抵抗を……!」

「いや待て、こ、こいつ今何をやりやがったんだ!?」

 ちょっと警戒した感じになる盗賊の人たち。
 そこへ、お昼寝をしていたエリザベッタ様が顔を出した。

「どうしたの? なんだか騒がしいけど町についたの?」

「! おお! 上物がいるじゃねえ……アバー!!」

 ちょうど正面にいた盗賊が、エリザベッタ様と目があってしまって、そのまま目と耳と鼻と口から凄い量の血を吹いて死んだ!
 これはもうパニックものだ!

「ど、どうしよう……!? 思わず見ちゃったけど……」

 一度見てしまうと、姫さまの好奇心は止まらない。
 視線を動かさないように努力しているんだけど、思わずチラッと横を見てしまって、そこにいた盗賊を五孔から噴血って感じで殺しちゃう。
 うん、好奇心旺盛な性格と、やっちゃダメって思うともっとやっちゃう性格と、この致命的な能力の組み合わせ!

「え、別にいいんじゃないっすか? どうせ社会のダニっすよ!」

 新聞屋が適当に煽る。

「まあ、僕も特に興味とか無いし……。この人達に付き合っても楽しいことないしね」

 僕だってだいたい同じ気持ちだったので、エリザベッタ様の凶行に全面的に賛成することにした。
 ここにブレーキ役はいないぞ!!

「それじゃあ」

 エリザベッタ様、なんか罪悪感とかが吹き飛んだ顔をしてにっこり。
 僕の手を借りて荷馬車から降りると、恐れおののく盗賊たちに向かって振り返った。
 次の瞬間、あたり一面から血の噴水が空高く上がり、すぐに静かになったわけだ。

「おおー……。見事に全員死んだっすなあ」

「その、私、今になって罪悪感がひしひしと。やっぱりこれってやっちゃいけなかったんじゃないかな」

「まあやっちゃったものはしょうがないですよ。でも、街でこれやったら大変なことになりますよね」

 盗賊団一つを壊滅させて、そして今に至るわけなのだ。
 僕たちは聖王国を抜けて、適当な小さい宿場に泊まった。
 エリザベッタ様の頭からフードを被ってもらって、目をつぶって歩いてもらう。
 僕と新聞屋が手を引いて誘導する感じだ。

「えっ、子供だけで旅をしてるのか。不用心だなあ。この辺りには凶悪な盗賊団が出てくるようになってるんだ。もともとはイリアーノと遊牧民の戦争を当て込んだ傭兵だったんだが……」

「えー、こわいっすねえー。盗賊団なんて物騒っすー」

 新聞屋が超棒読みでぶりっ子してる。
 まあ、見た目は可愛い女の子なので、僕たちを出迎えてくれた宿の人は丁寧に盗賊団の脅威を語って聞かせてる感じだ。

「うんうん、全く物騒なんだぞ。そういうわけで気をつけるんだぞ。……ゴホンゴホン」

 宿の人の目線が新聞屋の胸とかお尻ばかりをチラチラしている。
 隠してるつもりかもしれないけどバレバレだぞ。
 新聞屋、ようやく君を女子として評価してくれる人が出てきたぞ!! よかったね!!

 で、そんな宿の人が僕たちの泊まる部屋を用意してくれたんだけど。

「ひゃっほーい! ふかふかのベッドっすー!!」

 ぼすん、とベッドに新聞屋が飛び込んだ。
 用意してもらったのは、真っ白なシーツが敷かれた、とっても上等な部屋だったのだ!

「これは不自然に立派な部屋だね!!」

「んんー? どうしたっすか張井くん、あっしの魅力でこの部屋をゲットしたのが気に入らないっすかあ? ふふふー。ミリキのある女はこうして男を惹きつけてしまうっす! はーっはっはっは! 困ったものっすなあ!」

「うわあ、調子にのってるぞこのタヌキ!」

「どちらにしても、宿に泊まるのは初めてだから楽しみだわ。お食事はどうするの?」

「部屋に運んでもらおうかなーと」


 僕たちが泊まることになった部屋は、宿の三階にある大きなものだった。
 見晴らしがとてもよくて、町の外の風景と、ちょっと離れた海が見える。
 なんちゃってオーシャンビューだ。

「エリザベッタ様、視線を下に降ろすと大惨劇なんで上だけ見ましょう」

「ええ、き、気をつけるわね。チラッ」

「うわあー!! じいさまが突然五孔噴血して死んだー!!」

「ぎゃわー!? エリザベッタ様本当にあんた辛抱がきかない子っすね!?」

 エリザベッタ様が幽閉されたのは、エカテリーナ様を束縛するためだけじゃなかった事を確信した僕たちである。
 うむ、とんでもない人を野に解き放ってしまったのかもしれないと、一緒に旅をして一週間目くらいで思う。
 まあいいか。


 夕食前にお湯が運ばれてきたので、新聞屋とエリザベッタ様がお風呂なのだ。
 僕は強硬に、

「女子だけでは不用心なので僕がこの場に残って君たちを見守るべきだ!」

 と主張したんだけど、ゼロ距離からの新聞屋の土魔法連打を食らって外に弾き飛ばされてしまった。
 壁がちょっと破けたけど仕方ないよね。

『HPがアップ!』
『HPがアップ!』
『精神がアップ!』
『精神がアップ!』
『魔力がアップ!』

「洗うたびに思うっすけど、エリザベッタ様はもっと肉を食うべきっす! 胸とか尻とかもっと大きくするっすよ! 腰回りとかは……う、羨ましくなんかないっすぞ!?」

「きゃはは、くすぐったい! アミは胸もお尻もふんわり柔らかで大きくて素敵ねえ。あら、お腹周りにこれくらいお肉が付いている方が殿方は好きなのじゃなくって?」

「ほひょははは!? く、くすぐったいっすー!!」

 ああちくしょう! うらやましいなあ! 今すぐ乱入したいぞ!
 僕がじりじりしながら壊れた壁から首だけだして唸ってると、近くでギシッと音がした。
 そっちを見ると、なんだか黒覆面の男の人たち。

「あれ、この階の外のお客さん?」

 この階は今、僕たちの貸切状態のはずだけど。
 僕が疑問を発したら、その人たちはものも言わずに僕に向かって、手にした棍棒を振り下ろしてきた。
 当然のように跳ね返す。

「すまないけど、男の人に殴られて喜ぶ趣味はないんだよね!! お姉さんをつれてきなさい!!」

 僕は叫びながら、壁の破片を撒き散らしつつ【全体カウンター】!
 男の人たちはものも言わずに吹っ飛んでいった。

「ななな、何があったっすか!?」

 扉が開いて、湯気がモワーっと出てきた。
 窓をあけてるかもだけど、部屋の中にちょっと湿気がこもりそうだよね。
 それはそうと、うひょー!!

「ありがたやありがたや」

「ぎょえーっ!? き、きさま見たなーっ!!」

 バスタオルなんていういいものはないので、体を拭く布で最小限だけ前を隠した新聞屋。
 これはとても良い物を見たぞ!!
 生きていてよかった!
 今日は最良の日だ!!

「死ねえ!! ”岩石の大斧ロックバルディッシュ”!!」

 新聞屋は最近、威力範囲の狭い土魔法を工夫してるらしい。
 これもその一撃だね。
 見事に僕の頭に炸裂すると、そのまま床が砕けて僕は二階に頭から落っこちた。

『HPがアップ!』
『精神がアップ!』
『魔力がアップ!』
『愛がアップ!』

「あらあら、アミ、どうしたの? 顔が真っ赤よ?」

「なんでもないっす! っていうかエリザベッタ様出てきたらダメっすよ!?」

 うーむ……。
 いいものを拝んでしまった。
 多分、この世界に来たばかりの頃より育ってる気がするぞ!
 物凄くドキドキした!
 女子とは魔物だね……!

「ぼ、ボウズ大丈夫か……? 上から落ちてきたが……」

「あっはい、お構い無く!」

 そんな風にして夕食に突入するのだけど、さっきの襲撃者はここからが本番になるのである。
 あと、僕的に大変なことも……!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...