外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

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5・神々のから騒ぎ

第47話 両替、開眼

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「じゃあ、こっち!」

 ミスティが適当に一人を指さした。

「はあ? あんた適当に決めたでしょー!?」

「いや、いいんだ。ミスティが選んだなら間違いない!」

 俺は迷わず、逃げる戦神信者を追いかけ始めた。

「あ、ちょっとあんた! んもー!! なんであの女の言うこと信じるわけよ!」

 王女様が不満げに後を追いかけてくる。
 ゴウがすぐ、横に並んだ。
 ミスティもホイホイついてきて、アンナも一緒になる。

「ウーサーはいっつもあたしのこと信じてくれるもんねー」

 小走りで走ってるから、割と余裕がある俺たち。
 こうやってお喋りもできる。

「そりゃもう。俺はいつもミスティの味方だし」

「うっふっふ、嬉しいこと言ってくれるじゃん!」

 うわー、走りながら脇腹突くのやめて欲しい。

 追いかけられている信者は、チラチラ後ろを振り返りながら青くなっている。

「な、なんで俺だけ追いかけてくるんだよー!! ちょっと洒落にならねえよ! おい、みんな! 助けてくれーっ!!」

 何か叫んでる。
 これは、彼を助けるために過激派が出てくるかな……?

 淡い期待を抱いていたら、近くの建物から何かが飛んできた。

『おっ! やばいぞ、避けろ!』

 イサルデが叫んだ。
 俺は咄嗟にミスティを抱き上げて、全力で後ろに下がる。

 王女様が光の翼を大きく広げて、自分の前に盾のようにかざした。
 ゴウが身構え、唯一立ち止まるのが遅れたアンナは……。

「あれっ!? 皆さん!? みなさ~ん!?」

『仕方ないやつだなあ!』

 飛び出したイサルデが人間サイズになり、アンナの襟首を捕まえて跳び上がった。

「あひゃーっ」

 アンナの悲鳴が遠ざかっていく。
 その直後、爆発が起きた。

「ウグワーッ!?」

 逃げていた戦神の信者が、爆発に巻き込まれてしまった!
 あれは死んだな……。

「蛇だったわ! 姫見たんだから。建物の上から蛇がぴょーんと飛んできて、それが爆発したわ!」

「露骨に十頭蛇じゃん! 追いかけよう!」

 王女が不敵に笑う。

「当然! 姫に爆発するものを投げつけたんだもの。目にもの見せてやるわ! 自分がザコだって教えてやらなくちゃ!」

 飛び上がる王女様。
 その後ろに、ゴウが掴まった。

「ちょ、ちょっとゴウ! 重いんだけど!」

「殿下だけだと色々心配ですからね」

「心配ってどういうこと!? 姫は無敵なんだけど! あーもう、重い! 汗臭い! ゴウきらいー!!」

 そうは言いながら、振りほどく様子もなく一緒に飛んでいく二人。
 仲がいいんだなー。

 ミスティがこれを見上げてニッコリしている。

「ライバルかと思ってたけど違ったね……。あたしは安心しちゃったよ」

「まだ気を抜くの早いからね!? 両替!!」

 地面にばらまいた魔法の針を変化させる。
 見張り塔!

 どんどん盛り上がっていく見張り塔。俺たちは屋根の上に乗っている形になる。
 蛇が投げ込まれた建物の上に飛び降りたら、見張り塔を針に戻して回収。

「便利便利!」

「もっと便利になるぞ! 色々覚えてきたから!」

 屋根の上を見渡すと、あちこちで爆発が起きているのが見える。
 爆発する蛇がそこらじゅうに仕込まれているのか。

「ちょっと! 爆発ばっかりで見つけられないんだけど! 姫、こういう嫌がらせだいっきらいなんだけど!!」

 王女様が別の意味で爆発寸前だ。
 ゴウはもう屋根の上に降り立ち、連なる建物を駆け回りながら実行犯の姿を探している。

 敵は完全に身を隠しているようだった。
 これは見つけにくそうだ……。

 だから、こう言う時はミスティの出番だって決まっているのだ。

「ミスティ、どこにいそう?」

「いやあ、そう言われても分からないけど……あ、でもなんとなく、ここ」

 彼女が指さしたのは、俺たちの足元だった。
 俺は躊躇なく、ここに補修材の瓦礫の山を作り出す。
 とんでもない重量が出現したので、屋根がぶち抜かれた。

 着地場所には藁を作る!
 見張り塔、瓦礫、藁! これで色々片付くな。

 建物の中は真っ暗だ。
 俺は即座に、黄色い板を作った。
 戦場を確認に行ったあの時、夜目が効くようになるアイテムとして手渡されたやつ。

 あの後値段を聞いて、構造を確認しておいて良かった!
 ミスティに手渡し、二人で黄色い板を顔に掛けて周囲を見回す。

 たくさんの人影があって、みんな驚いているようだった。

「ど、どうしてここが……!?」「天井をぶち抜いてきた!」「なんだ、この瓦礫……!?」「うわーっ、藁が舞い上がる!!」

 バッチリじゃないか!
 ミスティの当てずっぽうは、信じられないくらい当たるのだ。
 それも多分、意識しないで選んだ適当な選択が大正解につながる。

「くそっ、降りてきたのはガキが二人だ! 口を封じろ!」

 襲いかかってきそうな気配!
 魔法の針を構える俺。

「ミスティも、ありったけ投げて!」

「両替ね! シンプルなやつでやるつもりでしょ」

「その通り! 行くぜ!」

「オッケー!」

 二人で息を合わせて、魔法の針を周りにばらまいた。

「両替!」

 魔法の針が金貨五枚に変わり、銀貨百枚に変わり、銅貨千枚に変わり、鉄貨一万枚に変わる!
 それが複数、周囲に撒き散らされたのだ。

 重い鉄貨の礫が、建物内を吹き荒れた。

「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」

 周辺にいた全ての相手、おそらくは過激派たちが、鉄貨に全身をぶん殴られて倒れていく。

「うわーっ、ものっすごい音がしたよ! 壁が破れてるし!」

 鉄貨が突き刺さった壁が抜け、光が漏れてきている。
 見渡す限り、立っている者はいなかった。

「両替!」

 全ての鉄貨を魔法の針に戻し、回収する。

「便利だねえ……」

「うん、どんどん便利になる。なんか、物事を知れば知るほど出来ることが増えていく」

『恐ろしい子……!』

 !?
 今、俺とミスティじゃない人の声がしたんだけど!?
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