「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

文字の大きさ
7 / 83
第一章

第7話 その名はゴブリンパンチ

しおりを挟む
『ゴブリンパンチ』

 冒険者の店にやって来た俺たちを迎えたのは、そう言う話題だった。
 あらゆる敵の攻撃を避けることで有名な冒険者が、ゴブリンパンチという技でボッコボコにされたらしい。
 彼は意識不明の重体らしいが、目下、話題はどうして彼がゴブリンのパンチを避けられなかったのかという事に集中していた。

「ゴブリンが話題みたいだ。今度の仕事はゴブリン退治だな!」

「ああ。俺もゴブリン退治でやらかしたから追放されたしな」

「くさい息はすごい技なのになあ……。実は私も一回喰らってみたい。騎士たるもの、経験は積んでおくものだと思う」

「エリカはすごいやつだなあ」

 俺たちが席につくと、ちょっと注目された。

「くさい息と大騎士様だぞ」

「あいつら無事だったのか」

「大したことない依頼だったんだろうよ」

 ちょこちょこと噂をされて、それだけだ。
 俺たちが依頼に失敗したら、もっと面白おかしく噂されたんだろうが、成功してしまったから話題にならないというわけなのだ。

「やっぱり、こうやって結果を示せば人の態度は変わるな。お祖父様の言っていた通りだ。大騎士フォンテインもこうやって世間の目を変えていったからな」

「おう。次も成功させてやろうぜ。そういうことで、ゴブリン退治か……」

 装備更新と宿泊で、報酬がそろそろ底をついた俺たちである。
 さっさと新しい仕事を見つけねばならない。

 今は俺もエリカと一緒に牛乳配達をしており、早朝のバイトで資金の目減りを防いでいる段階だ。
 冒険者たるもの、アルバイトではなく冒険で生計を立てたい……!

「ゴブリン、ゴブリン……」

 軽食の後、依頼が貼り出されている掲示板を見る。

「おや? ゴブリン退治をお探しかな?」

 すると俺たちに声がかけられたのだった。
 この声。聞き覚えがある。

 確か、イチモジのパーティにいた時、声を掛けてきたベテラン冒険者のものでは……。

「我々は今、パーティで組織を組み、計画的にゴブリン砦を攻めているんだ。第二次侵攻の参加パーティを求めているのだが、どうだい?」

 それは、ロードというクラスのベテラン冒険者だった。
 ロードというのは戦士の上級職で、戦闘力以外に指揮能力を持っているのだ。
 指揮した仲間の戦闘力が上がるという、なんか魔法みたいな能力なんだよな。

 もちろん、上級職どころかまだなんのクラスにもついていない俺には関係のない話だ。
 この男、イチモジのパーティを誘った時、そこに俺もいたはずなのに覚えてないのか。

「なるほど! じゃあみんなでゴブリンと戦うんだな! よし分かった! 協力しよう!」

 エリカの決断は、基本的に支持する俺だ。
 だが、このロードは信用できない。
 イチモジのパーティは捨て石にされて、レッドキャップに包囲されることになったもんな。

「よし、決まりだ。今日の昼から出発するぞ。君たちにはゴブリンの住む穴の一つを任せたい。なに、小さな穴だ。簡単に攻略できるさ」

 同じような物言いで、レッドキャップの巣窟に送り込まれたな。
 警戒、警戒だ。

「エリカ、気をつけろよ」

 ロードが去っていった後で、俺は彼女に告げた。

「あいつは他の冒険者を使い捨てにするタイプだぞ。俺は経験者だから詳しいんだ」

「そうなのか! だけど、目的地までは連れて行ってもらえるだろう? それに穴と言っていた」

「おう、ゴブリンの穴だな」

「例えばそこにくさい息をたくさん吐くとかしたらいいんじゃないか。つまり、私たちは数が少ないから、最初からくさい息を戦いに組み込めばいいんだ!」

「あ! なーるほどな!」

 以前の俺とは状況が違うのだった。
 パーティは俺とエリカの二人きり。
 しかも、エリカはくさい息を我慢するぞと公言している。

 吐き放題である。
 いや、そんなむやみやたらと吐くものではないけど。

「後は、ゴブリンパンチっていうのが問題かな? 私たちも遭うかな……?」

「技なら俺が喰らってコピーするから、むしろ願ったり叶ったりだ!」

「あ、そうか!」

 こうして、何の問題も無いことが判明したのだった。
 むしろ、ロードが指揮する冒険者の集団を上手く利用し、仕事をどんどんこなすのも手では無いだろうか。

 そうか、俺たちに欠けていたのは、こういう柔軟性だったのだな。
 エリカと一緒だと、自由になんでもできるからいいな。

 昼頃。
 俺たちは冒険者集団の中にいた。

 所持品は、お弁当ぐらい。
 松明は持ってないし、ましてや高価なランタンもない。

 他の冒険者達が、「こいつらゴブリンと戦うのに、照明器具が無いとか正気か」「やっぱりくさい息と大騎士様は違うよな」などと言っているのが聞こえた。
 確かに、ゴブリンの穴に入るならば照明は必要だろう。

 だが、今回の俺たちは穴の外で活動するので不要なのだ。
 というか金が無くて買えないのだ。

 さすがに哀れに思ったのか、とある冒険者のパーティがお古の松明と火口箱をくれた。

「ありがとう!」

「感謝だ!」

 俺たちが礼を言うと、彼らは曖昧な笑みを浮かべた。

「お前らみたいな初級冒険者が真っ先に死ぬんだ。そういうのをたくさん見てきたからな。仕事なんか失敗してもいい。生き残れば次があるんだぞ」

 含蓄のあることを言うではないか。
 冒険者には常識人もいるのだな、と俺は感心したのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽
ファンタジー
人気ダンジョン配信チャンネル『勇者ライヴ』の裏方として、荷物持ち兼カメラマンをしていた俺。ある日、リーダーの勇者(IQ低め)からクビを宣告される。「お前の使う『重力魔法』は地味で絵面が悪い。これからは派手な爆裂魔法を使う美少女を入れるから出て行け」と。俺は素直に従い、代わりに田舎の不人気ダンジョンへ引っ込んだ。しかし彼らは知らなかった。彼らが「俺TUEEE」できていたのは、俺が重力魔法でモンスターの動きを止め、カメラのアングルでそれを隠していたからだということを。俺がいなくなった『勇者ライヴ』は、モンスターにボコボコにされる無様な姿を全世界に配信し、大炎上&ランキング転落。  一方、俺が田舎で「畑仕事(に見せかけたダンジョン開拓)」を定点カメラで垂れ流し始めたところ――  「え、この人、素手でドラゴン撫でてない?」「重力操作で災害級モンスターを手玉に取ってるw」「このおっさん、実は世界最強じゃね?」とバズりまくり、俺は無自覚なまま世界一の配信者へと成り上がっていく。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...