「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

文字の大きさ
11 / 83
第一章

第11話 その名は青魔道士

しおりを挟む
 武器を研ぎに出し、幾日か。
 エリカはナイフベルトを買い、研ぎ上がったナイフを大量に装備できるようになっていた。

「ドルマと同じような技が使えないから、私は私で、できることをさがしておかないとな!」

「真面目だなあ。そこがエリカのいいところだな」

「そ、そうか!? やっぱり大騎士を目指す者として、日々研鑽を積まなければいけないからな! えいっ、えいっ!」

 投石とナタを振る練習だ。
 騎士は石を投げたりナタで切りつけたりしない気がするが、後々何かの役に立つかもしれない……。

「ところで、俺も渦潮カッターに磨きをかけたんだ。見てくれ」

「なんだって!? どんなだ!」

「ここにランタン用の油がある。こいつを高速で回転させて……」

「ま、まさか!」

「油カッター!!」

 高速回転する油がすっ飛んでいった。
 だが、威力は水分を使ったものよりも弱い。
 その辺りの石塀を浅く削って飛び散った。

「ただ、火がついた油を飛ばせるんで応用次第かもしれない」

「面白いなあ。いいなあ……」

「今はまだ、面白い技止まりだけどな。くさい息みたいな凄いのを、またラーニングできるんだろうか。だけどそう言う状況だと命が危なそうでなあ」

「なにっ、死ぬのはよくないぞ。死なないように行こう」

「そうしようそうしよう。ところで……。俺は自分の能力みたいなものが見えるんだが」

「なんだ、それ!?」

「分からん。だけど見えるんだ。で、俺の職業がずっとすっぴんというのだったんだが」

名前:ドルマ・アオーマーホウ
職業:青魔道士
所有能力:
・バッドステータスブレス
・渦潮カッター act2
・ゴブリンパンチ

「青魔道士って知ってる?」

「青魔道士……。お祖父様が話していたことがある。今の冒険者たちが忘れてしまった職業が幾つかあるって。自然を操る風水士、伝説のモンスターを呼び出す召喚士、野生に身を任せて人間を超えた強さを発揮するバーサーカー、竜のように飛翔して攻撃を繰り出す竜騎士、そして……モンスターの技を自在に使う青魔道士だ」

 エリカの目が真剣なものになった。

「そう言えばドルマの名前はアオーマーホウって……。これってつまり、青魔法ってこと……?」

「偶然でしょ……」

 俺の家は由緒正しい農民だぞ。
 そんな凄まじい能力を持ったやつが先祖にいたなんて話、聞いたこともない。

 だが、エリカは目をきらきら輝かせるのだ。

「すごい……すごいぞ! 伝説の青魔道士を私は仲間にしたんだ! やった! 大騎士への道を進んでるぞ! 私も頑張って、ドルマに負けないようにしないとな!」

 最後は他力本願ではなく、自分を鍛えるところに着地する辺りがエリカのいいところだ。
 こうして盛り上がった俺たちは、鍛冶屋で研いでもらった刃物を受け取った。
 すると、ゴブリンの槍がちょっとマシな柄にくっついているじゃないか。

「おお、これは!!」

 エリカが目を丸くすると、鍛冶屋のおっさんがウィンクした。

「たっぷり研ぎに出してくれたからな! こいつは穂先だけなら大したもんだったから、柄をオマケでつけてやったんだよ。なに、うちの弟子の習作だ。気にせず使ってやってくれ」

「ありがとう! 槍なんて、凄い文明的な武器じゃないか」

 俺も感激してしまう。
 こうして、俺たち二人は大幅なパワーアップを遂げた。

 俺の武器が手斧と槍。
 エリカの武器にナイフがたくさん増えたわけだ。

「槍はエリカが持っていなくていいのか?」

「うーん、なんだか私、それはドルマが持っていた方がいい気がするんだ。予感なんだけど……」

「エリカの予感か……。よし、従おう!」

「信じてくれるのか!?」

「エリカの言うことだからな……。俺は尊重することにしているんだ」

「ありがとう!」

 ガシッと固い握手を交わすのだ。
 装備も充実、気持ちも充実。
 だけど懐はちょっぴり寒くなってきた。

 次の仕事を探さねばならない。
 冒険者というのは、こうやってコツコツ仕事をしていって、そのうち名声が高まって有名になったり、途中で野垂れ死んだりするものなのだ。

 だが、エリカとともに冒険をするのはなかなか楽しい。
 俺はこのままでもいいかなと思っている。

 もうちょっと有名になって、もう少し高い報酬を得られるようになったら、引退して店でも開いてのんびりと……。
 そんな俺の平々凡々とした理想は、想像した直後に砕かれることになった。

 猛烈な勢いで、背後から馬車が走ってくる。

「うわー!」

 エリカが慌てて避けた。

「危ないな!」

 彼女を引き寄せる俺だが、すぐ目の前で馬車は横転した。
 辺りは騒然としている。
 静かだった街に、いきなり暴走馬車が現れ、勝手に転がったのだ。

「くっ! これまでか……! だが……!!」

 横転した馬車から、剣を手にした騎士っぽいおっさんが姿を現す。

「あっ、騎士!!」

 エリカが目をキラキラさせた。
 騎士大好きだもんな。

 だが騎士のおっさん、次の瞬間には血を吐いた。

「ウグワーッ!? き、貴様いつの間に……!」

 そう、いつの間にか、おっさんの背後には男が立っていた。
 角の生えた鎧を纏った、禍々しい槍を持つ男だ。
 その槍が騎士に突き刺さっていた。

「空から降ってきた……?」

「竜のように空から襲いかかる騎士……竜騎士だ……! この場所に、青魔道士と竜騎士、伝説の職業が二つもいる!」

「待てエリカ、感激するのは後にするんだ! ヤバそうだこれ!」

「ドルマは青魔道士なのに心配性だなあ」

「俺はエリカの謎の自信が怖い」

 果たして、俺の心配は間違っていなかった。
 横転した馬車から、ドレスの少女が恐る恐る這い出してきたのだ。

「ど、ドリトール! ドリトール、死んでしまったのか! うわーっ、おしまいじゃー! わらわを守る騎士はみんな死んでしまったー!!」

 青い髪を、ツインテールのロール髪にした少女が、絶望した顔で叫ぶ。

「ロッテ公女だな。お前に恨みは無いが、その生命をもらう」

 竜騎士は無感情に呟いた。
 今、目の前で陰謀が行われている予感。

 そして、俺の傍らにいるはずの相棒が怪しい動きをしてるんだが。

「ていっ!!」

「ぬうーっ!!」

 エリカが竜騎士にナイフを投げつけた!
 なんだかんだでエリカの腕はいい。
 ナイフは挑発的に、竜騎士の槍に当たったのだ。

 当たってしまったのだ。

「邪魔をするのか、貴様ら。恨みは無いが、邪魔者には死んでもらう」

 竜騎士がこちらを睨んだ。
 いけないいけない。
 俺は素早く、水袋と手斧を抜く。

「死んでもらう、じゃない! そこにいるのが公女だと言っていたな! つまり、守られるべき姫君だ! 未来の大騎士である私が守るぞ!!」

「エリカ、それは宣戦布告だよ……!」

 こうして、町中にて竜騎士との勝負が始まってしまうのだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽
ファンタジー
人気ダンジョン配信チャンネル『勇者ライヴ』の裏方として、荷物持ち兼カメラマンをしていた俺。ある日、リーダーの勇者(IQ低め)からクビを宣告される。「お前の使う『重力魔法』は地味で絵面が悪い。これからは派手な爆裂魔法を使う美少女を入れるから出て行け」と。俺は素直に従い、代わりに田舎の不人気ダンジョンへ引っ込んだ。しかし彼らは知らなかった。彼らが「俺TUEEE」できていたのは、俺が重力魔法でモンスターの動きを止め、カメラのアングルでそれを隠していたからだということを。俺がいなくなった『勇者ライヴ』は、モンスターにボコボコにされる無様な姿を全世界に配信し、大炎上&ランキング転落。  一方、俺が田舎で「畑仕事(に見せかけたダンジョン開拓)」を定点カメラで垂れ流し始めたところ――  「え、この人、素手でドラゴン撫でてない?」「重力操作で災害級モンスターを手玉に取ってるw」「このおっさん、実は世界最強じゃね?」とバズりまくり、俺は無自覚なまま世界一の配信者へと成り上がっていく。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...