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第二章
第26話 よく分からんままの撃破
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『オオオオオ……』
洞窟の奥から、嘆くような声が聞こえてきた。
「あれは、かつて人間であった女性の嘆きの声でしょうか! ああ、新曲の構想が湧き出してきます……!! メモ、メモ……ああ、壁に書きましょう!」
「モーザルは置いていくわね……」
「ああっ、待って、待って下さい!」
後ろで二人がもちゃもちゃしている間に、俺とエリカが猛烈な速度で進んでいるぞ。
「お、恐れというものを知らないの!?」
ビヨーネの声が聞こえる。
この声を聞いて、眠りの精霊は動き出したらしい。
ここまでで、眠りの精霊が反応する音について気付いたこと。
音楽や金属の音には過敏に反応して現れる。
人の話し声はそれほどではない。
木々のざわめきとか、動物の鳴き声と区別がついていないのかもしれない。
だが、洞窟の中にいると、話し声を人の声であると理解する、と。
「あー疲れたあ」
「ドルマどうしたんだ!」
「凄く頭を使った。こいつ、人の声だって分かると寄ってくるぞ」
「そうなのか! よし、来い! 私はここだぞ! ここだぞーっ!!」
『オオオオオオオオッ』
叫びながら、眠りの精霊が姿を現した……のだと思う。
俺もエリカも、前は見てないぞ。
「あっ、眠くなってきた」
「エリカ、気を確かにー!」
彼女を後ろに引きずると、ハッと目覚めた。
「いけないいけない、なんかすっごく眠くなった!」
「あっちを見たら駄目で、しかも近寄っても駄目だな。だとするとどうするか。こうするな」
俺はエルフの実を口に含んだ。
「バルーンシードショット!」
目をつぶったままぶっ放すぞ。
果実が壁に反射した音がする。
だが、心配はいらない。
バルーンシードショットは、標的の目の前で膨れ上がり、拡散するのだ!
弾ける音がした。
『オオオオーッ!!』
眠りの精霊の叫びが聞こえる。
動揺してる動揺してる。
バルーンシードショット、口から吹き出した物の量をめちゃくちゃに増加させてばらまく力があるようだ。
今回は、眠りの力に対抗するためにエルフが生み出した果実みたいなものを、眠りの精霊に叩きつけたのだ。
そりゃあ痛かろう。
「あっ、近づいても眠くない! 今だよ、今!」
エリカがそそくさと大きなナタ……グレイブソードとでも言うべき武器に果実をこすりつけた。
「よーし、行ってきます!!」
眠りの精霊へと駆け出すエリカ。
撒き散らされたエルフの果実を浴びながら、眠りの精霊にナタを叩きつけた。
おーっ、女の首がポーンと飛んだ。
「実体があったんだな」
「思い切りが良すぎるわ……! 永遠の眠りにつくのが怖くないの? どうして、近づけば眠りにつく相手を、今なら攻撃できるなんて思ったの!?」
ビヨーネが唖然としている。
不思議と、エリカは攻撃できるタイミングが分かるようなのだ。
後は、恐れを持たないで突撃できる。
……もしかして、騎士じゃなくて、伝説の職業バーサーカーとかだったりしない?
いや、俺だけは騎士だと信じねばな。
今は眠りの精霊を視認しても全く問題ないようだ。
エルフの果実がこの空間に満ちているせいか。
じゃあ、補充せねば。
俺はバルーンシードショットを連発する。
「ビヨーネ、魔法で攻撃してくれ」
「あ、ああ! 闇の精霊よ! 精神を削れ!」
ビヨーネの影から、黒い球体が飛び出してきて精霊にぶつかる。
すると、首が飛んだ女の形をした精霊が揺らいだ。
効いてる効いてる。
「だめ。抵抗されたわ。眠りの精霊は上位の精霊だから、私程度の魔法ではあの抵抗を貫けない……!」
ビヨーネは闇の球を次々放ちながら、悔しそうな顔をする。
後で聞いたのだが、精霊に実体はないため、直接殴るための工夫をしない限り物理攻撃は無効。
闇の精霊は精神を直接攻撃できるが、精霊は魔法へも高い抵抗力を持っているとか。
だが。
俺の能力は魔法ではないらしいし、物理かと言われるとそうでもないようなので問題なし。
「エルフの果実の水気なら、行けるな……。エリカ、しゃがむんだ!」
「ああ! 来い!」
ナタで攻撃を仕掛けていたエリカは、素早く身をかがめる。
俺の手のひらで、果実から絞り出した果汁が渦を巻き始めた。
「渦潮果汁カッター!」
眠りの精霊がバラバラになる。
そして形を保っていられなくなったようで、青いオーラみたいなものが物凄い勢いで消えていった。
跡には、骨のようなものがバラバラと落ちるだけだ。
「眠りの精霊、倒される! ドラマチーック!! これは恐らくですね! エルフに娶られた人間の女性なんですよ! ですが彼我の過ごす時間の流れは違う! 寿命の違う相手と永遠に添い遂げようとした意思を眠りの精霊が……」
「骨だ骨だ! ねえビヨーネ、これで解決?」
あまり興味がない話題だったのか、エリカは一切聞かない。
「あ、ああ。あっという間だった……。私たちでは近づくことすらできなかった相手なのに」
「多分な、俺はくさい息の効果か、バッドステータスに強い。で、エリカはなんか分からんが我慢できる」
「騎士だからな!」
俺の中でバーサーカー疑惑が持ち上がっているけどな……!
洞窟の外に出ると、やっぱりエルフ達は繭の中だった。
「一度眠りについた以上、何年も掛けて眠りを中和せねば目覚めないと思うわ。だが、私には見える。彼らの中の眠りの精霊が、弱く小さくなっているのを……」
つまり、勝利ということになる。
「よし! なんか不思議な相手だったけど、仕事が早く終わって良かったな!」
「ああ。報酬貰ってさっさと帰って飲み食いを……って、装備装備!」
「そうだった! あれ高いから忘れたら大変だ!!」
慌てて装備を置いた場所に戻っていく、俺とエリカなのだった。
洞窟の奥から、嘆くような声が聞こえてきた。
「あれは、かつて人間であった女性の嘆きの声でしょうか! ああ、新曲の構想が湧き出してきます……!! メモ、メモ……ああ、壁に書きましょう!」
「モーザルは置いていくわね……」
「ああっ、待って、待って下さい!」
後ろで二人がもちゃもちゃしている間に、俺とエリカが猛烈な速度で進んでいるぞ。
「お、恐れというものを知らないの!?」
ビヨーネの声が聞こえる。
この声を聞いて、眠りの精霊は動き出したらしい。
ここまでで、眠りの精霊が反応する音について気付いたこと。
音楽や金属の音には過敏に反応して現れる。
人の話し声はそれほどではない。
木々のざわめきとか、動物の鳴き声と区別がついていないのかもしれない。
だが、洞窟の中にいると、話し声を人の声であると理解する、と。
「あー疲れたあ」
「ドルマどうしたんだ!」
「凄く頭を使った。こいつ、人の声だって分かると寄ってくるぞ」
「そうなのか! よし、来い! 私はここだぞ! ここだぞーっ!!」
『オオオオオオオオッ』
叫びながら、眠りの精霊が姿を現した……のだと思う。
俺もエリカも、前は見てないぞ。
「あっ、眠くなってきた」
「エリカ、気を確かにー!」
彼女を後ろに引きずると、ハッと目覚めた。
「いけないいけない、なんかすっごく眠くなった!」
「あっちを見たら駄目で、しかも近寄っても駄目だな。だとするとどうするか。こうするな」
俺はエルフの実を口に含んだ。
「バルーンシードショット!」
目をつぶったままぶっ放すぞ。
果実が壁に反射した音がする。
だが、心配はいらない。
バルーンシードショットは、標的の目の前で膨れ上がり、拡散するのだ!
弾ける音がした。
『オオオオーッ!!』
眠りの精霊の叫びが聞こえる。
動揺してる動揺してる。
バルーンシードショット、口から吹き出した物の量をめちゃくちゃに増加させてばらまく力があるようだ。
今回は、眠りの力に対抗するためにエルフが生み出した果実みたいなものを、眠りの精霊に叩きつけたのだ。
そりゃあ痛かろう。
「あっ、近づいても眠くない! 今だよ、今!」
エリカがそそくさと大きなナタ……グレイブソードとでも言うべき武器に果実をこすりつけた。
「よーし、行ってきます!!」
眠りの精霊へと駆け出すエリカ。
撒き散らされたエルフの果実を浴びながら、眠りの精霊にナタを叩きつけた。
おーっ、女の首がポーンと飛んだ。
「実体があったんだな」
「思い切りが良すぎるわ……! 永遠の眠りにつくのが怖くないの? どうして、近づけば眠りにつく相手を、今なら攻撃できるなんて思ったの!?」
ビヨーネが唖然としている。
不思議と、エリカは攻撃できるタイミングが分かるようなのだ。
後は、恐れを持たないで突撃できる。
……もしかして、騎士じゃなくて、伝説の職業バーサーカーとかだったりしない?
いや、俺だけは騎士だと信じねばな。
今は眠りの精霊を視認しても全く問題ないようだ。
エルフの果実がこの空間に満ちているせいか。
じゃあ、補充せねば。
俺はバルーンシードショットを連発する。
「ビヨーネ、魔法で攻撃してくれ」
「あ、ああ! 闇の精霊よ! 精神を削れ!」
ビヨーネの影から、黒い球体が飛び出してきて精霊にぶつかる。
すると、首が飛んだ女の形をした精霊が揺らいだ。
効いてる効いてる。
「だめ。抵抗されたわ。眠りの精霊は上位の精霊だから、私程度の魔法ではあの抵抗を貫けない……!」
ビヨーネは闇の球を次々放ちながら、悔しそうな顔をする。
後で聞いたのだが、精霊に実体はないため、直接殴るための工夫をしない限り物理攻撃は無効。
闇の精霊は精神を直接攻撃できるが、精霊は魔法へも高い抵抗力を持っているとか。
だが。
俺の能力は魔法ではないらしいし、物理かと言われるとそうでもないようなので問題なし。
「エルフの果実の水気なら、行けるな……。エリカ、しゃがむんだ!」
「ああ! 来い!」
ナタで攻撃を仕掛けていたエリカは、素早く身をかがめる。
俺の手のひらで、果実から絞り出した果汁が渦を巻き始めた。
「渦潮果汁カッター!」
眠りの精霊がバラバラになる。
そして形を保っていられなくなったようで、青いオーラみたいなものが物凄い勢いで消えていった。
跡には、骨のようなものがバラバラと落ちるだけだ。
「眠りの精霊、倒される! ドラマチーック!! これは恐らくですね! エルフに娶られた人間の女性なんですよ! ですが彼我の過ごす時間の流れは違う! 寿命の違う相手と永遠に添い遂げようとした意思を眠りの精霊が……」
「骨だ骨だ! ねえビヨーネ、これで解決?」
あまり興味がない話題だったのか、エリカは一切聞かない。
「あ、ああ。あっという間だった……。私たちでは近づくことすらできなかった相手なのに」
「多分な、俺はくさい息の効果か、バッドステータスに強い。で、エリカはなんか分からんが我慢できる」
「騎士だからな!」
俺の中でバーサーカー疑惑が持ち上がっているけどな……!
洞窟の外に出ると、やっぱりエルフ達は繭の中だった。
「一度眠りについた以上、何年も掛けて眠りを中和せねば目覚めないと思うわ。だが、私には見える。彼らの中の眠りの精霊が、弱く小さくなっているのを……」
つまり、勝利ということになる。
「よし! なんか不思議な相手だったけど、仕事が早く終わって良かったな!」
「ああ。報酬貰ってさっさと帰って飲み食いを……って、装備装備!」
「そうだった! あれ高いから忘れたら大変だ!!」
慌てて装備を置いた場所に戻っていく、俺とエリカなのだった。
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