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第三章

第53話 ベヒーモス現る

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 風水士によって、ゴブリン革命家チームと引き合わされた。
 俺たちはなんだろうな?
 この仕事は冒険者ではなくない?

 だが、報酬はたっぷりと約束されているのだ。
 ゴブリンが人間のところから略奪した金銀財宝があるので、そこからもらえる予定だぞ。

『貴方の紹介ならば信用できるだろう。しかし、人間の協力者か……』

 そのゴブリンは人間くらいの身長があり、風水士と同じようなロード種のようだな。

『我々はゴブリン義勇同盟』

「ここでも義勇って出たぞ」

『暴君ジャガラを退位させ、賢王ジューベスを即位させんとする者たちである』

 詳しい話を聞いたら、この人達もまたゴブリン王家の連中らしい。
 ゴブリン王家は人間の世界と同様、幾つも家があって争っており、ジャガラはその中で市井から成り上がってきた傑物らしい。
 どうやら、親代わりに育ててくれたゴブリンジェネラルを殺されて、復讐の一念で今の立場についたとか?

『ヤツは兵士にするつもりでゴブリンを増やした』

『数は増えたが、増えすぎた。最初からヤツは、増やしたゴブリンを手駒として人間どもに復讐をするつもりだったのだ。そして人間どもはどういう手段を使ったかは分からないが、砦一つを壊滅させた』

 俺は目をそらした。

『もう放ってはおけぬ! ジャガラを放っておいては、人間どもとの全面戦争となろう。そうなれば、ゴブリン王国はどれほどの被害を被るか……!!』

 アベルはそれっぽく、うんうん頷いている。
 報酬を目の前で見たことで、この男のモチベーションは今までになく高いぞ。

「俺のジャンプに任せろ。一撃でジャガラを仕留めよう」

『おお……忌まわしき竜騎士の力を現代に得た男……! それがまさか味方になるとは』

 現代も何も、過去にゴブリンが遭遇した竜騎士はこの男だぞ。

『では、この計画は前倒しにできるな。ジャガラは戦意向上のため、今日から演説をしていてな……』

「よし、今日やろう!!」

 エリカが吠えた。

『……は?』

 唖然とするゴブリンたち。

「準備してたら対策されるかもしれないだろ。それに死ぬゴブリンが増えるかもしれないだろ。じゃあ今やろう、今!」

『お、おう』『言われてみれば……』『その発想はなかった』『神速過ぎる』

「やるのか! やらないのか! どっちなの!」

『やろう!』

「よし!」

 エリカがゴブリンたちとハイタッチした。
 完全にエリカ時空に呑まれたな。

 そういうことで、俺たちは即座に行動に移したのである。
 ちなみに風水士の姿が無いのだが、あいつはきっと人間の王国で暗躍してるだろう。
 騎士物語なら、絶対に悪役だよなあ。

 そして俺たち。
 ジャガラが演説を始めたところに、トコトコやって来た。

「じゃあ襲撃するぞ!!」

『声! 声が大きい!!』

 ゴブリンの人が慌てて声を抑えるように言うが、エリカの声のでかさは筋金入りだからな。
 襲撃、という言葉に、ゴブリンたちがざわざわする。

 そうそう、ゴブリンたちの言語、割りと俺たちと通じるんだよな。
 訛りがひどいので聞き取れないだけみたいだ。

 ということで、明確で聞き間違いの余地がないエリカの言葉は、ハッキリとこの場に響き渡ったのであった。
 ジャガラが慌てて、警備っぽいのを呼ぶ。

 だが、次の瞬間にはアベルがジャンプしている。
 俺もまた、エリカを抱え、背中にホムラをくっつけてジャンプだ。

「アベル! 俺だけに押し付けるな!」

「ジャンプのために余計な荷物はいらん」

「拙者を荷物扱いでござるか!? れでーでござるぞーっ!!」

 ホムラが怒った。

「よし、ドルマ、ここで離してくれ!」

「おう! 行け、エリカ!」

 解き放たれたうちのバーサーカーが、ジャガラに向かって飛びかかる。
 そこを迎え撃つのが、ゴブリンジェネラルだ。

『人間が!? どうしてここにいる!!』

「いるからいるんだぞ!!」

 エリカのグレイブソードと、ジェネラルの斧がぶつかり合う。
 その背後で、アベルがジャガラを突き刺していた。

『ウグワーッ』

「なんたるタフさだ! もう一発!」

『アヒェーッ!』

 巨体を揺さぶって転がりながら逃げていくジャガラ。
 すごい速度だぞ。

「俺からは逃げられんぞ! おいドルマ、足止めをしろ」

 俺の高さまで飛んできたアベルが、注文してきた。

「えっ、アベルから逃げられないのに俺が足止めしなきゃ逃げられるの?」

「早くやって!!!!」

「キレちゃった。じゃあミサーイル」

 放たれるミサイルの雨。
 ゴブリンの都市を破壊しながら降り注ぐ。

 それがジャガラを足止めし、アベルの槍が突撃……。

 ……前に、ゴブリン義勇同盟が駆け出してきた。

『ジャガラ! お前は王位にふさわしくない!』

『退位せよジャガラ! 何、嫌だ!? 天誅ー!!』

『天誅ー!!』

「話が早いなあ。あいつら、エリカに完全に感化されたな」

 アベルはタイミングをずらされ、スーッと地面に落ちていった。
 ゴブリン義勇同盟の攻撃が、次々とジャガラに突き刺さる。

『ウグワーッ!! わ、わしは復讐を……! 復讐をーっ!! ここで死ぬわけには……! 風車のお方よ、あなたからいただいた力をここで……! ここで使うぞーっ!!』

「なんか言ってる」

 風車って、風車の騎士のこと? 風車の魔王かな?
 俺が考察をしてると、なんかジャガラの巨体がさらに膨れ上がった。

 あっ、出てくるね?

 大きくなったジャガラが、ついに破裂した。
 その中から飛び出してくる、紫色の巨獣。
 伝説の魔獣ベヒーモスだ。

 あまりの急展開に、フリーズしていたゴブリンたちが、ここで我に返った。
 悲鳴が響き渡り、ゴブリンたちが逃げ惑う。

「さて、ここからは俺たち冒険者の得意ジャンルだな。なんかホッとしてる自分がいる」

 俺はジャンプを繰り返しながら、エリカを迎えに行くのだった。
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