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第四章

第58話 地底王国のプリンセス

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「ではタイムリープしてくる。過去に行ったら何が起こるか、うだうだ言っていても始まらないが、行けばなんか道ができるだろう。ということで」

 エリカとホムラを呼び集める。

「師匠、ご武運を!」

 カイナギオが見送る中、俺は宣言したのだった。

「タイムリープ!」

 一瞬で時を超える。
 そこは……。
 争いの真っ只中だった。

 バキューンバキューンと音が響き渡って、ウグワーウグワーとあちこちで聞こえる。

「この音はなんだろうな」

「あいた! なにか当たったぞ」

「各々がた、気をつけるでござる! なんか撃ってきてるでござるぞ!!」

 そこでは、小柄な見知らぬ格好の連中が、見覚えのある騎士たちと戦っていたのである。
 小柄な連中、角付き兜を被って、筒状の武器を装備している。
 顔には黒い布みたいなのを被せて、目だけがそこから覗いているな。

「ウオオーッ!! 姫を守れーっ! タリホー!!」

「ゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー!!」

「うわおー! みんな、がんばるのですー!!」

 ちっちゃくて、特別な兜をかぶったおさげの女の子が、ぴょんぴょん跳ねてるな。
 あれがお姫様かな?

「ドルマ! これってあいつらだ! 風車の騎士の軍勢だぞ!」

「ほうほう、風車の騎士の軍勢が、このちっちゃい連中を襲ってるのか。そしてあれが姫。となれば……」

「ああ! フォンテインナイツ! 故あって姫を助けに来たぞ! うおおー!!」

 エリカが手近な騎士を蹴り、ふっ飛ばした。「ウグワーッ!!」
 ここで取り出しました、エリカの新装備。

 グレイブソードの代わりに、ベヒーモスの角に取っ手を付けた、ナゾの打撃武器だ。

「ベヒーモール!!」

「あ、そういう名付けにしたでござるか! そら、投擲でござる!!」

 25回ヒット!「ウグワー!!」

「ホムラ、ふと思ったんだけど、忍術一回も使って無くない? あ、ミサーイル」

「ウグワー!!」

「忍術、拙者が物を投げるより弱いんでござるよなー。誤算でござったなー。いらなかったなー」

「ああ、そういう……」

「ウグワー!!」

 雑談をしながら、騎士たちをなぎ倒していく。

「タリホー!! よく分からんがすげえ味方が駆けつけてくれたぜ!!」

「助っ人に続けー!! タリホー!!」

 ちっちゃい連中はぴょんぴょん飛び跳ねながら勢いに乗る。
 エリカを先頭に、騎士たちにウワーッと襲いかかった。
 蹂躙である。

 戦況はちっちゃいのが完全に優勢になった。
 生き残った騎士たちが、ほうほうの体で逃げていく。

「ありがとうございますうー、謎の人間たちー!」

 おさげのお姫様が、トテトテと駆け寄ってきた。
 背丈的には、俺の腰くらいまでの大きさ。
 これは人間ではない種族だな。

「助けに上がりました、姫!! 私たちはフォンテインナイツです!!」

 エリカ、凄い勢いで戻ってきて、姫の前にスライディングでひざまずいた。

「おほー! こんな感じで礼を尽くされるの初めてなのですー!! わっちはですね、ドワーフ王国の姫アストゥルディンというのですよ。アディ姫と皆は呼ぶのですよ」

 ほうほう、ドワーフの姫か。
 ドワーフというのは、地の底に住んでいると言われている伝説の妖精だ。

 フォンテイン伝説に現れた姫とは、ドワーフの姫だったのか。
 これはどうやら、種族を超えたお話になってきたな。

 エリカは、種族なんて関係がない。
 王国の姫を守れるという事実に、完全に興奮してしまっている。

「私達フォンテインナイツが、姫を無事にお守りしましょう!! 騎士はそういうものなのです! 私はフォンテインナイツのリーダー、エリカです!!」

「そうなのです!? 突然現れてそんな事を言うのは信用できないのですが、あの騎士たちを本当に容赦なく蹴散らしたので信用するですよ!!」

「姫!」

「騎士エリカ!」

「騎士!? 全力でお守りします!!」

 なんか、姫とエリカがめちゃくちゃ固い握手を交わしている。
 通じ合ってしまったな。

「ありゃあ信用できるな! 裏表がねえや!」

 他のドワーフたちが横にやって来て、うんうん頷いていた。

「だろう? エリカは内心も全部口に出すからな。あれが彼女の全部だ」

「すげえなあ! 人間にもそんな気持ちのいいやつがいるんだな! おう兄ちゃん、さっきはありがとうな!」

 ドワーフの人たちが顔の布をぺろんとめくると、そこには髭面が出てきた。
 髭が無いのもいるな。これは女性か。

「なんのなんの。故あって味方したが、俺は人間でもモンスターでも分け隔てなく攻撃する……。そこについては信頼してくれていい」

「拙者も拙者も!」

 自分を指さしてジャンプするホムラ。
 これをドワーフたちが見て、

「おや、そっちにもドワーフが?」

「拙者は小さいでござるがドワーフでは無いでござるよー!?」

 慌てるホムラに、ドワーフたちがドッと沸いた。
 なんという気持ちのいい連中だろう。

 アディ姫は、うんうん頷きながら俺たちを見回した。
 ぺろんと布をめくると、その下にはなるほど、目が大きくて可愛らしい顔がある。

「大地の秘宝を奪った人間を追いかけてきたら、待ち伏せを喰らってどうなるかと思ったのです。だけど、そこにこんな助っ人が来てくれるなんて! キングベヒーモス様のご加護なのですー!!」

 キングベヒーモス?
 もしかしてベヒーモスって、地底だと神様だったりするわけ……?
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