「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

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第四章

第60話 君は風水士の才能がある

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「君は風水士の才能があるな」

『な、なんだいきなり!?』

 朝飯を並んで食いながら、ゴブリンの少年に話しかけると、彼はひどく驚いたようである。
 これが人間の一行なら彼は殺されていただろう。
 だが、これはドワーフの一行だ。

 ドワーフからすると、ゴブリンは自分たちと背丈が変わらない、緑色の肌の人々にしか見えない。
 不倶戴天の敵であるオークは滅ぼしたらしいしな。

 今日も向こうで、アディ姫がエリカにドワーフの勇ましい歴史を語っている。

「タリホーというのは、オークを狩る時に出す掛け声なのです! だから勇ましい言葉なのですよー!! わっちらドワーフは、飛空艇と戦車とガンでオークを狩り尽くしました! 相手の方が肉体的にも魔法の才能にも優れていましたが、わっちらには魔法よりも射程が長くて誰でも簡単に使えるガンと、魔法でも壊れない戦車と、魔法よりも早く高く跳ぶ飛空艇があったですからね!」

「凄いな! 魔法の力を技術で超えたのか!」

「それがドワーフですよー!」

「ドワーフ凄いな!」

 エリカがあまりにも素直に褒めるので、ドワーフ一同、ニッコニコになっている。

「なんて気持ちのいい連中だろうな!」

「こりゃあ仲間でいる間は徹底的にもてなさないとな!」

「お嬢ちゃん、俺の分も食え食え!!」

 エリカがモテモテだ。

『おいおい、なんでそっぽ向いてるんだ?』

「ちょっとエリカに悪い虫がつかないか心配で……」

『種族が違うじゃん! んで、なんだよ。俺に何の用なんだよ』

「おお、そうそう。君は才能があるはずだから、俺が色々教えよう」

『はずってなんだよ』

 こいつ、細かいことに気付くな。
 頭いいぞ。

「君は俺の仲間たちよりも絶対頭いいな。んじゃあ飯食ったら道を歩きながら教えよう。君は風水士っていう地形を利用する戦い方の才能があってな」

『は!? なんでそんなこと分かんの!?』

 これは少年も真顔で聞いてきた。
 ちなみにゴブリン、ロード種しか名前はなくて、しかも成人するまでは全員名無しらしい。
 ジャガラのみ、自称してるとか。

 なので、ロード種の少年には名前がない。

「君を風水士と名付ける」

『それ職業じゃねえの?』

「名は体を表す……。名乗っておくとなんとなくそれっぽくなるのだ」

 ドワーフの朝食である、なんかパリパリの生地で巻いた肉と野菜に甘辛いソースが掛かったやつを食い切る。
 俺は少年を連れ、ドワーフ一行の前に出た。

「見て覚えるんだぞ。これがランドシャークだ」

『うおーっ!? 地面が魚みたいな形になって飛び上がった!!』

「やってみろ」

『……ど、どうやるんだ』

「地形:ランドシャークとか言ってみろ。あと、なんか気合を入れて地面を動かそうとしてみろ」

『なんだよそれ!? ち……地形:ランドシャーク!! うおおお!! 動けえええええ!!』

 おお、素直素直。
 そして、少年が叫ぶと同時に、地面がゴゴゴゴゴ、と揺れ動いた。
 ピョイーンと地面から跳ねる、土の小魚一匹。

『あっ……』

 少年風水士がしょんぼりした。

「すげえ!」

 俺は感心し、めちゃくちゃ拍手する。
 ドワーフたちも、「オー」「すごい」「才能」とかどよめいている。

『いや、今のでいいのかよ……』

「いきなりの初挑戦で成功する辺り、とんでもないぞ。君は天才かなにかだな」

『だけど、お前……いや、あんたはもっと凄いじゃん』

「俺は覚えた瞬間にフルスペックで使えるんで」

『ヤバいヤツじゃん……』

「俺は敵の技を喰らって覚えるから、すぐさま使えた上で威力を発揮しないと死ぬんだぞ。練習できるだけ君はまだまだ幸せなのだ」

『マジかよ……』

 だが、そこから風水士の少年は素直になったのだった。
 彼に才能があるというのは間違いなかったようで、少しずつ地形の技をモノにしていった。

 これって絶対、俺と出会わなかったら才能が開花しなかったな。
 彼が風水士だと見込んで色々教えたら、その通りだったわけだ。

「教える技は、地形っぽいの三つだけな。ランドシャーク、ワールウインド、渦潮カッター。後は自分で研究して増やしてやってくれ」

『そっから先は放任かよ』

「俺が全部教えたら、君は俺と同じになっちゃうだろ。それは違うだろ。だから、俺は基礎しか教えないぞ」

「ドルマ殿、なんか弟子も二人目になると堂に入ってくるでござるなあ」

 ホムラが横で感心している。
 忍術よりも投げるほうが強いからと、せっかく学んだ忍術を一切使わない忍者。
 忍術の師匠はきっと嘆いていることであろう。

「おーいドルマー。遠くに騎士たちが守りを固めているのが見えたらしい。戦だぞ、戦。風車の騎士はいつ風車の魔王になるんだろうな! 早くぶっ倒したくて私はうずうずしてるぞ!」

「おお、エリカが興奮している。ステイステイ。まだ相手は人間だからな……。あ。人間でも構わないんだったっけ? そっかー」

「ドルマ殿がエリカ殿の思考を読み取っているでござるなあ」

『なんだよこいつら』

 だがこの様子を見て、アディ姫は「頼もしい!!」と大変満足の様子。
 
「秘宝が悪用されてしまわぬうちに、突撃するのですー!! 秘宝を取り戻せー!!」

 タリホー!! と鬨の声ときのこえをあげるドワーフ一同。
 これは勢いが止まるまい。

「少年、いきなり実戦だぞ」

『マジかよ……!!』

 ちょっと引いている、少年風水士なのだった。
 
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