「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

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第四章

第70話 バフルートとは一体

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 事が終わると、あちこちに隠れていたゴブリンがワーッと出てきた。
 そして人間である俺達が状況を打開したことを知り、混乱する。

「俺達が! 召喚士を倒した! ゴブリン諸君は助かったぞ!!」

 なので、俺がわかりやすく今どうなっているかを説明してあげたのだ。
 ワールウインドに乗せて声を広める。

 ゴブリン達は一斉にハッとした。
 分かりやすさとは正義である。

『人間が助けてくれたのか!』

 盛り上がるゴブリン達。
 その中で、ちびゴブリンが駆け寄ってきて、俺の前でぴょんぴょん飛び跳ねた。

『なんで助けてくれたんだ!』

「そりゃ君、人間もゴブリンも困ってたら助けていいのだ。今は戦争してるわけじゃないんだからな」

『そ、そうなのかあ!』

 ちびゴブリンが目を丸くした。

「まあ、また遠い未来に大変になったら、この俺、青魔道士とフォンテインナイツが助けに来るだろう……」

『青魔道士……! フォンテインナイツ……!』

 心に刻み込まれたな。
 ……もしかしてこのちびさん、将来のゴブリンのご老人だったりしない?
 するんだろうな。

 世界は繋がってるなー。

『青魔道士!』

 風水士少年が駆け寄ってきた。

『助かった。だけど、あの空を飛んでるヤツはなんなんだ』

「おう、さっきレーナがバフルートって言ってたな。ほら。空を飛んでる生き物って小さい鳥くらいしかいなかったじゃないか。多分、それの原因があれだ。一定以上でかい生き物が飛んでると、やって来て食っちゃうんだ」

『そんな化け物がいたのか……!!』

「いたのだ。今のところ、地上にいる限りは狙われないとは思うけど」

 それなら安心だな、という事になる俺達なのだ。
 だが、問題はそこではない。

『召喚士は他にも何人もいるんだ!』

 ゴブリン達から上がってきた驚くべき報告!

『風車の模様がついた鎧の奴が、召喚士を何人も連れきた!』

『召喚士が一斉にモンスターを呼んで暴れさせたんだ!』

 俺達が倒したのは、そのうちの一人に過ぎなかったらしい。
 これは、召喚士討伐をせねばなるまい。

 そしてあわよくば、魔竜バフルートもなんとかしたい。
 せっかくこっちの時代に飛空艇でやって来たのに、飛べないのはよろしくない。

 それに俺達の時代に、魔竜バフルートはいないのだ。
 あれはフォンテインナイツがやっつけるか何かしてしまったのではないだろうか?

「ドルマ! どうするんだ! あの竜を追うのか? それとも別の目的があったりするのか?」

 行動方針を失ったエリカが寄ってきた。

「うん、ここは召喚士を追おう。集団らしいぞ、あいつら」

「そうなのか! よし、分かった!」

 そう言う事になった。
 これを見ていたアベルが、

「フォンテインナイツの方向性を決めるのは、何気にこの男だな……」

 などと呟いているのだ。
 今回は金が絡まないので、アベルは実にやる気がなさそうだ。
 だが過去の時代に置き去りは困るし、敵が来たら戦わねば身に危険があるので、渋々戦闘に加わる。

 やる気があっても無くても、一定の戦闘力を発揮できる辺り、アベルはプロだよな。

「そう言えばアベル。竜騎士はジャンプして飛ぶけど、空を飛ぶ魔竜と何か関係が?」

「知らん。そういう金にならなそうなことは知らん」

 ドライ!
 竜騎士には色々伝承やらがありそうだが、アベルはそういうのを一切覚えてなさそうだ。
 闇の中だなあ。

「ゴブリンが……まるで人間と同じみたいに……」

 トニーが衝撃を受けている。
 人間社会で言われるゴブリンは、完全にモンスターだ。

 だが、ここから見えるゴブリン達は街を築き、召喚士の襲撃をまぬがれて、お互いの無事を喜び合っている。
 まるで人間のような仕草だからな。
 今までの常識に縛られていたトニーとしては、価値観が揺らぐような状況ではないか……。

「あっ、ここかあ」

「どうしたんだドルマ!」

「なんでもない……」

「そうか!」

 エリカに、ゴブリンも人間と同じようなものだと教え込んだのは、エリカの祖父……つまり未来のトニーだっただろう。
 順調に未来を確定させて行っているじゃいか。
 タイムリープ、奥深い。

 うんうん頷きながら、俺は飛空艇に戻った。

「ドルマさん! 飛空艇だとバフルートが反応するわよ!」

 レーナが慌てて駆け寄ってきた。

「ああ、それでいいんだ。未来に魔竜バフルートはいない。つまり、この時代で俺達が倒すのではないか」

「時代!?」

「つまりな、俺達はタイムリープを使ってこの時代に来ている。本当はもっと未来から来ていてるんだ。後はご想像におまかせする……。おーい、エリカ! アベル! ホムラ! 行くぞ!」

『俺も行くぞ!!』

「風水士少年もか。よし、こいこい」

「お、俺も! レーナ、行こう!」

 トニーがレーナとともに乗り込み……。
 飛空艇、フォンテイン・レジェンド号は、まさに伝説のパーティが初めて勢ぞろいした船となったのである。

 後世にフォンテインと伝えられる、トニー。
 トニーの孫でバーサーカーのエリカ。
 青魔道士の俺。
 竜騎士アベル。
 エリカの祖母で学者のレーナ。
 忍者のホムラ。
 風水士少年。

 フォンテインと六人の伝説の職業が揃った。
 これはなかなか感慨深い。

「俺の作戦を伝えよう。飛空艇で飛んで、召喚士達を探す。ちょいちょい襲撃してくると思うバフルートを追っ払い、最終的には退治する。これだ」

「穴だらけじゃないの!?」

 レーナがツッコミを入れた。
 逆に言えばレーナしかツッコミを入れない。

 彼女は「ええ……」と呟いて周囲を見回した。

「みんな、ドルマさんに感化されてない……?」

 これでいいのだ。
 恐怖に縛られていたら、一歩も先に進めなくなるからな。
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