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最終章

第80話 タイムリープの使い方

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『ひでえ目に遭ったぜ師匠! いきなり風車の騎士がやって来て、自分たちの軍勢ごとタイムリープしろって言ってきたんだ。俺は嫌だったんだけど、断ったら殺すって言うから……』

「問題ない問題ない。ここで風車の魔王の軍勢は粉砕するからな」

「ああ!! どっちにしろ倒すんだ! フォンテイン伝説最後の章が始まるぞ!!」

 エリカのテンションは最高潮だ。

『そ、そうか! 役に立てて嬉しいよ! 頼むぜ師匠! エリカさん!! ところでここはどこなんだ……? 見たことがあるような、無いような……。記憶にある世界と、微妙に光景が違うんだよ』

「うむうむ、時代が違うでござるからな。そのタイムリープなる技、お主とドルマ殿しか使えぬ。お主は未来にやって来たでござるよー」

「ホムラの説明が分かりやすい」

 わっはっは、と笑う俺達フォンテインナイツなのである。
 そんな事をしていたら、また魔王の軍勢がやって来た。

「カイナギオ、お前どれだけの数のやつをタイムリープさせたんだ?」

『あ、あいつの連れてる騎士団全部……。まさかやれると思ってなかったから』

 なるほど、それがタイムリープの威力というやつか。
 俺が飛空艇ごと移動できたんだから、大軍勢を時間移動させることができてもおかしくはないわけだ。
 これ、とんでもない力を持った技だな。

「邪魔だな」

 アベルが軍勢を見て、吐き捨てるように言った。
 そして、ジャンプする。

 軍勢到着前に、そのリーダー格みたいなやつのところにアベルが着地した。
 おっ、軍勢の動きに統制がなくなった。
 リーダー格が倒されたな。

 ぴょんぴょんとアベルが飛び回っている。
 あいつ、単体攻撃しかできないが、一撃の破壊力が凄いからな。

 当たれば人間サイズなら死ぬ。

「よし、私も行ってくる!」

「エリカが行くなら俺も行かねばならんな」

「あ、拙者も拙者もー」

『戦い好きな連中だ。だが、今回は我も同感だ。ゴブリン王国を荒らす薄汚いモンスターどもめ!』

『えっ、みんなで行くの!? 歩いて!?』

 そうだぞ。
 飛空艇だと王国を飛び越えてしまう。

「せっかく着地したんだから、魔王に会いに行こうじゃないか」

『あ、会ってどうするんだ!』

 カイナギオが聞いてくるので、俺はシンプルな答えを返した。

「やっつけるんだ。そうでなくても元の時代に戻してやらないとな。ああ、軍勢は邪魔だからここでできるだけ減らしていく」

 頷く仲間達。
 フォンテインナイツの方針は決定したのだった。

「いたぞ、フォンテインナイツだ!」

「我らの邪魔をする英雄気取りめ」

「風車の御方のお考えが分からん愚物め!」

「あの方は全ての時代の世界を統一しようとしておられるのだ」

「なんかいきなりそんな事いい出したよな」

 ワイワイと騒ぎながら襲いかかってくる軍勢。
 風車の魔王、ライブ感で生きてるな。

「それじゃあ、拙者はちょっと物を投げてくるござる!! 英雄気取りとか言われるのは割りと腹が立つでござるなあ!」

 プリプリ怒りながら、ホムラが敵の一角に向かう。

『頭数だけはいる。だが大したことはない』

 風水師が飛び上がった。
 空からやって来るモンスターと騎士を迎え撃つためだ。

 不思議と、エリカが飛び出さない。

「なんか……来る気がする。風車の魔王だ……!」

「ほうほう。じゃあ俺は露払いしておくよ」

 迫りくる軍勢に向かって、俺は歩みを進めた。

「イリュージョンアタック」

 俺が十人くらいに増える。
 そして、全員が違うポーズをするのだ。

「渦潮カッター!」
「ゴブリンパンチ!」
「ジャンプ!」
「バックスタブ!」
「ミサイル!」
「バルーンシードショット!」
「ワールウインド!」
「ランドシャーク!」
「ハウリングブラスト!」
「メガ・インパクト!」

 なんだ、全員違う技が使えるんじゃないか。

「「「「「ウグワーッ!!」」」」」

 消し飛ぶ魔王の軍勢。

『師匠すげえ! まるでたった一人の軍隊だ!』

 まさにまさにだ。
 自分でもこんな事ができるようになるとは思わなかった。

 一度にやると、強いもんだな。

『ラーニング!』

「おや?」

 いつもの音声が聞こえた。
 だが、何も新しい攻撃なんか喰らってはいない。
 一体何をラーニングしたって言うんだ。

名前:ドルマ・アオーマーホウ
職業:青魔道士
所有能力:
・バッドステータスブレス
・渦潮カッター act2
・ゴブリンパンチ
・ジャンプ
・バックスタブ
・ミサイル
・バルーンシードショット
・ワールウインド
・ランドシャーク
・タイムリープ
・イリュージョンアタック
・カウンターメテオ
・ハウリングブラスト
・メガ・インパクト
・アルテマ NEW!

「なあにこれ」

 不思議な技が増えた。
 使ってみようかな……なんて思ったらだ。

『おのれ! 私の軍隊を蹴散らすのはやめろ! これでは目的が果たせなくなるではないか!』

 ついに、フォンテイン伝説最後の敵が登場なのだ。

「来たあ!!」

 エリカがとても嬉しそうだ。
 俺も嬉しい。
 
「やっと来たな、風車の魔王! 待ってた」

 イリュージョンアタックな十人の俺が、拍手で彼を出迎えるのだ。

 姿を現したのは、風車の飾りがついた、まるで塔のような兜の男。
 以前に見たときよりも、二周りは体格が大きくなっており、真っ白で巨大な翼も生えている。

 なるほど、見るものが見れば神々しくも感じるだろう。
 俺にとっては、エリカをフォンテイン伝説から解放してくれる神様みたいなものだ。

 で、この神様はぶっ倒されることで役割を果たす。
 自然と、俺の拍手もボルテージを上げていくというものだ。

『な、なぜ拍手で出迎える!』

 戸惑う風車の魔王なのだった。
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