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第2章 いがみ合うふたり
2-5 見せている顔
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ルイーズの騎士訓練開始から1か月後。
ルイーズの婚約者モーガンは、姉の部屋で過ごし、ルイーズが帰ってくる時間に合わせてルイーズの部屋に移動していた。
「お帰り、ルイーズ待っていたよ」
「モーガン、待っていてくれたの! 会えてうれしいわ。あれっ、今日はどうしたの?」
「騎士の訓練は大変だろうと思って、励ましにきたんだよ」
「まぁ、そうだったの。大変だけど順調よ。すっかり剣も振れるようになったし、絶対に騎士になれる気がしてきたわ」
「そうか、良かった。それを聞いて安心したよ。ルイーズの顔を見るためだけに来たから、今日はもう帰るね」
「えっ、会ったばかりなのに、もう帰るの?」
「ああ。ルイーズも疲れているだろうから、じゃあね」
そう言って、ルイーズの部屋を出ていった婚約者。
ルイーズは、近くまで用事のあったモーガンが、ついでに伯爵家に立ち寄ったくらいにしか思っていなかった。
実際は、モーガンは少し前まで姉の部屋にいたのだ。
(まだ、話したいことはいっぱいあったのに……)
結局、ルイーズはいつものように独りで部屋にこもり、夕食の時間になっていた。
食堂の中には、食欲をそそるおいしそうな料理の香りが広がっていた。
思わずゴクッと唾を飲むルイーズ。
みんなが何を食べているのか気になり、キョロキョロと見回せば、すかさず姉にピシャリと言い放たれ、うつむいてしまう。
「ルイーズはどうしたの? 落ち着いて食べなさい。どうせ、あなたは細いから、それ以上要らないでしょう」
「あっ、……」
出かけたルイーズの言葉は、不愉快そうにルイーズをにらむ夫人に遮られていた。
「口答えしない。あなたの声は聞きたくないわ」
(この食事で以前は良かった。だけど、毎日体を動かしているうちに痩せてきた気がする……。でも、駄目だ。問題を起こさずに、あと5か月乗り切れば、この先は何とかなるはず。今だけ、あと少しの我慢……)
そうして今日も、ルイーズのパンとスープだけの食事は終わっていた。
****
騎士の訓練が終わると、エドワードはいつもすぐにルイーズの前からいなくなるけれど、ルイーズは、そんな彼の様子に全く興味もない。当たり前に、彼のことは何も聞いていない。
ルイーズは、帰ろうと思い休憩室を出ようとしたとき。彼女は、ブラウン公爵家のカーティスから声を掛けられた。
「ルイーズお疲れさま。良かったらチョコレートでも食べる? 前に渡したら大喜びしていたからね」
それを受け取った途端、飛び跳ねて喜ぶルイーズは、まるで子どものようだった。
「うれしいわ。すっごく大事にして食べるわね」
「いや、それ程のものじゃないと思うけど」
「それ程でもあるわよっ! わたしにはとっても貴重だわ、ありがとう」
カーティスは、話し掛けるきっかけを作りたくて、ルイーズにチョコレートを渡している。けれど、そんな心境は、鈍くてマイペースなルイーズに届くわけもなかった。
早く弟に食べさせたかったルイーズは、礼を伝えて、そのまま帰ろうとしている。
それを引き止めるように話し掛けるカーティス。
「そういえば、エドワードとは随分と仲が良いんだね。いつも2人でいるから、何かあるのかと思っているけど」
「何にもないわよ、あるわけないわね。わたしには婚約者がいるし」
「あっ……、そうだったのか。ルイーズに婚約者がいるのは、知らなかったな」
そう言いながら、カーティスは、はにかんで恥ずかしそうにした。
でも、そんなことは、全く気付いていないルイーズは、お構いなしに話を続ける。
「ふふっ、婚約者とは仲良しなのよ。それに引き換え、エドワードとはけんかばっかりよ。彼は、わたしの顔を見れば文句しか出てこないんだもん」
「へぇー、エドワードって、そんな性格だったかな。誰にでも優しいイメージなんだけど、意外と知らない一面もあるもんだな……。じゃあ、またあした」
(え? あのエドワードが誰にでも優しいって? わたしには、会った初日から優しさの、かけらもなかったわよ。もしかして、よっぽどわたしが嫌いなのかしら……)
エドワードは、ルイーズが騎士になろうとしていることを早々に諦めさせるはずだった。
それなのにルイーズは、一向に辞める気配はなく、それどころか、休むことなく毎日訓練にやって来ている。
訓練開始から、2か月たつ頃には、ルイーズは見かけ上では、エドワードと剣を交える練習ができるくらいにはなっていたのだ。
ルイーズの婚約者モーガンは、姉の部屋で過ごし、ルイーズが帰ってくる時間に合わせてルイーズの部屋に移動していた。
「お帰り、ルイーズ待っていたよ」
「モーガン、待っていてくれたの! 会えてうれしいわ。あれっ、今日はどうしたの?」
「騎士の訓練は大変だろうと思って、励ましにきたんだよ」
「まぁ、そうだったの。大変だけど順調よ。すっかり剣も振れるようになったし、絶対に騎士になれる気がしてきたわ」
「そうか、良かった。それを聞いて安心したよ。ルイーズの顔を見るためだけに来たから、今日はもう帰るね」
「えっ、会ったばかりなのに、もう帰るの?」
「ああ。ルイーズも疲れているだろうから、じゃあね」
そう言って、ルイーズの部屋を出ていった婚約者。
ルイーズは、近くまで用事のあったモーガンが、ついでに伯爵家に立ち寄ったくらいにしか思っていなかった。
実際は、モーガンは少し前まで姉の部屋にいたのだ。
(まだ、話したいことはいっぱいあったのに……)
結局、ルイーズはいつものように独りで部屋にこもり、夕食の時間になっていた。
食堂の中には、食欲をそそるおいしそうな料理の香りが広がっていた。
思わずゴクッと唾を飲むルイーズ。
みんなが何を食べているのか気になり、キョロキョロと見回せば、すかさず姉にピシャリと言い放たれ、うつむいてしまう。
「ルイーズはどうしたの? 落ち着いて食べなさい。どうせ、あなたは細いから、それ以上要らないでしょう」
「あっ、……」
出かけたルイーズの言葉は、不愉快そうにルイーズをにらむ夫人に遮られていた。
「口答えしない。あなたの声は聞きたくないわ」
(この食事で以前は良かった。だけど、毎日体を動かしているうちに痩せてきた気がする……。でも、駄目だ。問題を起こさずに、あと5か月乗り切れば、この先は何とかなるはず。今だけ、あと少しの我慢……)
そうして今日も、ルイーズのパンとスープだけの食事は終わっていた。
****
騎士の訓練が終わると、エドワードはいつもすぐにルイーズの前からいなくなるけれど、ルイーズは、そんな彼の様子に全く興味もない。当たり前に、彼のことは何も聞いていない。
ルイーズは、帰ろうと思い休憩室を出ようとしたとき。彼女は、ブラウン公爵家のカーティスから声を掛けられた。
「ルイーズお疲れさま。良かったらチョコレートでも食べる? 前に渡したら大喜びしていたからね」
それを受け取った途端、飛び跳ねて喜ぶルイーズは、まるで子どものようだった。
「うれしいわ。すっごく大事にして食べるわね」
「いや、それ程のものじゃないと思うけど」
「それ程でもあるわよっ! わたしにはとっても貴重だわ、ありがとう」
カーティスは、話し掛けるきっかけを作りたくて、ルイーズにチョコレートを渡している。けれど、そんな心境は、鈍くてマイペースなルイーズに届くわけもなかった。
早く弟に食べさせたかったルイーズは、礼を伝えて、そのまま帰ろうとしている。
それを引き止めるように話し掛けるカーティス。
「そういえば、エドワードとは随分と仲が良いんだね。いつも2人でいるから、何かあるのかと思っているけど」
「何にもないわよ、あるわけないわね。わたしには婚約者がいるし」
「あっ……、そうだったのか。ルイーズに婚約者がいるのは、知らなかったな」
そう言いながら、カーティスは、はにかんで恥ずかしそうにした。
でも、そんなことは、全く気付いていないルイーズは、お構いなしに話を続ける。
「ふふっ、婚約者とは仲良しなのよ。それに引き換え、エドワードとはけんかばっかりよ。彼は、わたしの顔を見れば文句しか出てこないんだもん」
「へぇー、エドワードって、そんな性格だったかな。誰にでも優しいイメージなんだけど、意外と知らない一面もあるもんだな……。じゃあ、またあした」
(え? あのエドワードが誰にでも優しいって? わたしには、会った初日から優しさの、かけらもなかったわよ。もしかして、よっぽどわたしが嫌いなのかしら……)
エドワードは、ルイーズが騎士になろうとしていることを早々に諦めさせるはずだった。
それなのにルイーズは、一向に辞める気配はなく、それどころか、休むことなく毎日訓練にやって来ている。
訓練開始から、2か月たつ頃には、ルイーズは見かけ上では、エドワードと剣を交える練習ができるくらいにはなっていたのだ。
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