【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

文字の大きさ
47 / 88
第4章 離れたふたり

4-2 当主が勧めるエドワードの縁談

しおりを挟む
 入れ替わりから戻り、救護室で仕事を終えたエドワード。
 彼は屋敷へ着くなり家令のマルロから、スペンサー侯爵家の当主の元へ行くように言われた。
 まあ当然だろう、と冷静に受け止め当主の部屋を訪ねる。


「今日、ルイーズ伯爵令嬢が重傷を負って救護室に運ばれたと聞いて、肝を冷やした。回復魔法師ヒーラー様から、きれいに治療できたと報告を受けひとまず安心したが、相手はお前だったんだろう。どうした?」

 顔を合わせるなりいきなり本題に入る当主。エドワードのことを1番知っている父としては、不思議でたまらないのだろう。
 ……そう思うと、エドワードは心苦しくなり、ひときわ真剣な顔を向ける。

「申し訳ありません、足を滑らせたせいで力加減を間違えてしまいました。それで、動揺してすっかり動けませんでした」

「いや、お前に無理を言っている私が悪いんだ。中間報告でも素質は全くないから、今年も女性騎士は出ないと聞いている。今日の出来事で、ルイーズ伯爵令嬢がおじけづいて訓練に来なくなれば、お前も、もう元の生活に戻れる」

「おそらくルイーズの性格だと、あしたも、しれっと来るでしょう。そんなことを気にするような性格ではありませんから」

「なるほどな。それならもうしばらく頼む。それと話はガラリと変わるが……、ビリング侯爵家の当主から、娘のパトリシア嬢との婚約を検討に入れてくれと言われた。向こうの当主は、お前のことを知っているから、無理にとは言ってきてないが……」

「父は、適当な返答をしていないでしょうね」
「ビリング侯爵は、昔からの友人だからな。申し訳ない、先に誤っておく。……パトリシア嬢と近々出掛けてくれないかと頼まれて、断れなかった」

「はぁぁーっ、またですか! この前の茶会で最後だと言ったはずですよ……」
「まあいいだろう。いつも言っているが、王女たちが嫌ならパトリシア嬢に決めても良いだろう。ビリング侯爵家は、うちと協同経営している事業もあるんだ。そろそろ、どっちを選ぶか真面目に考えろ」

「いや、まだ決めかねていまして」
「まさか、遊んでいるだけかと思っていたが、毎日連れてきていたルイーズ伯爵令嬢のことを気に入っているのか?」
「……いや。ルイーズとは何の関係もありませんから」

「それなら良かった。陛下から最近やたらとエドワードの婚約の話を持ち掛けられているからな。レベッカ王女の話を断って、我が家と交流もない伯爵令嬢を選ぶとなれば、王女が納得しないだろう」

 当主からそう言われて、エドワードは頭をポリポリかいて、その2人のことを考えている。だが、少しも気乗りしない様子だ。

(いくら俺を気に入っているとは言え、気位の高いレベッカ王女が俺の特性を知れば引くだろう。
 俺が直接触れれば、体の外も中も、何でも分かるからな……。結婚するとしても、回復魔法師ヒーラーであることは隠すのが賢明か……。
 パトリシア嬢ね……。悪い娘でないのは分かるが、めんどくさいな)


 釈然としない表情を浮かべるエドワードは、当主との話を終えて、自分の部屋へ戻った。

 だが、部屋に入るなり妙に違和感を覚える。

 見ているのは昨日までと同じ自分の部屋の景色。
 ……でも何かが足りない。そんな感覚が彼を襲っている。

 この1週間。彼は、入れ替わっていた期間も毎日、自分の部屋へ足を運んでいた。
 けれど、エドワードがここで過ごしていたときには、必ずルイーズが一緒だった。
 その存在がないこの部屋が、何となく自分をもの寂しくさせる。

 彼は晴れない気持ちのまま浴室で、しっくりしない感情を整えようとしていた。
 浮かない表情の彼は、浴槽の外に長い腕をだらりと伸ばし、湯につかりながら同じことばかりを考えている。
(あいつ、今頃何しているかな……)

 彼は、久しぶりに自分の部屋で長湯をして、シャツの上にガウンを羽織ろうとしたときだった。
「あ゛ー、あいつ何やってくれてんだよ!」

 今、彼が手に持っている高級シルクでできたガウン。その胸元には、金糸でスペンサー家の家紋である羽を広げた美しいアゲハちょう刺繍ししゅうされている。

 けれどその横に、くまの刺繍が銀糸で施されていたのだ。
 それは意外な程に上出来でかわいらしくもある。
 だが、なにぶん貴公子には不釣り合いな絵柄。

 異質過ぎて妙に存在感のある刺繍を、じーっと見ながらエドワードは、あしたルイーズに文句を言おうと心に決めていた。
 すっかり楽しそうな顔をしているエドワードは、結局そのガウンを羽織っている。
 他に同じガウンがあるにもかかわらず。

(信じられない……、俺のガウンにこんなものを描きやがって。俺のことを馬鹿にしているだろう。絶対にあしたここに連れてきて、解いてもらうからな)


 もう、彼女が訓練に来ることはないのだけれど。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月
恋愛
 リリアは侯爵令嬢。オスカーとは、婚約予定。あくまでも予定で、まだ結んでいません。オスカーは何故かリリアにだけ、威圧的な態度を取るらしい。嫌で仕方がないので、オスカーの兄とプレ婚約期のやり直し。 今が幸せなので、あなたのことは助けてあげられません。   ※ご都合主義満載 ※細かい部分はサラッと流してください。

【完結】一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
リュシエンヌ・ソワイエは16歳の子爵令嬢。皆が憧れるマルセル・クレイン伯爵令息に婚約を申し込まれたばかりで幸せいっぱいだ。 しかしある日を境にリュシエンヌは眠りから覚めなくなった。本人は自覚が無いまま12年の月日が過ぎ、目覚めた時には父母は亡くなり兄は結婚して子供がおり、さらにマルセルはリュシエンヌの親友アラベルと結婚していた。 突然のことに狼狽えるリュシエンヌ。しかも兄嫁はリュシエンヌを厄介者扱いしていて実家にはいられそうもない。 そんな彼女に手を差し伸べたのは、若きヴォルテーヌ公爵レオンだった……。 『残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました』『結婚前日に友人と入れ替わってしまった……!』に出てくる魔法大臣ゼインシリーズです。 表紙は「簡単表紙メーカー2」で作成しました。

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる

仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。 清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。 でも、違う見方をすれば合理的で革新的。 彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。 「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。 「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」 「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」 仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】エレクトラの婚約者

buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。 父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。 そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。 エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。 もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが…… 11万字とちょっと長め。 謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。 タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。 まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。

処理中です...