68 / 88
第5章 祝福されるふたり
5-8 大波乱の舞踏会⑤
しおりを挟む
会場に流れる曲が終わる共に、2人の優雅なダンスを終える。彼の顔を見て、満足げに笑うルイーズ。
ルイーズの動きを読んでいたエドワードに支えられ、彼女は、やりきった充足感で満たされている。
「これで、帰っても文句は言われないだろう。じじぃに挨拶をして、さっさと帰るぞ」
「まま待って。どどど、どうしよう。わたし、陛下と挨拶なんて……。そんなの、うまく出来ない」
「じじぃも、父も、俺には何も言ってこないから気にするな。……一番厄介なのは、むしろ……。何かを言いだす前に逃げるぞ」
真面目な顔で会場を見渡すエドワード。遠くを見やり、少し口角を上げたエドワードは、今がチャンスと動きだす。
早々に会場を立ち去りたいエドワード。
焦りの色が見える彼に連れられたルイーズは、陛下へ彼の婚約者だと紹介されている。
楽観的なルイーズも、この場の空気の重さにおののき、緊張でガチガチだ。
それに少し離れた所から、こちらを窺うようにレベッカ王女が2人を見ていた。
王女から、圧倒される威圧感を向けられるルイーズは、王女の視線に気付かない振りに徹する。
ルイーズは、これまで全く縁のなかった王族や宰相の視線が自分に集まり、居心地が悪くてしょうがない。
挨拶なんてしたことないし、と困惑の色が見える。
「陛下、婚約者を連れてきたので、紹介します」
至って淡々と話す彼は、陛下と握手をするために、右手をすっと前に差し出した。
陛下は、スペンサー侯爵家の人間として挨拶に来ているエドワードが、手袋をはめていないことに驚き、彼を凝視する。
そして、一度手を差し出しかけた後にピタりと止まり、もう一度エドワードの顔を見ている。
陛下は「エドワード様」に向けて、アイコンタクトを送るが、彼は全く表情を変えない。
「......」
陛下は何かを言いかける。
だがその言葉は、エドワードの隣にいるルイーズを見て、「ここで言ってはいけない」と、のみ込んでいた。
エドワードの手を握る陛下。
「まったく、もう……」と言いたげな顔をしたエドワードは、陛下の手を強く握り返す。少ししてから反対の手で2回手の甲に合図を送り、2人の交わした握手はとかれた。
その様子を、エドワードの父である宰相も目の当たりにし、ひどく驚いた表情をしている。
「本当にルイーズ嬢と婚約したのだな」
ルイーズの方に顔を向けた陛下へ、慌てて淑女の礼をしたルイーズ。
「はい。すぐにでも入籍したいところですが、3か月後の結婚式と同時に正式な夫婦になる予定です。面倒なのは嫌いだから、披露パーティーは考えていないので、陛下へ声を掛けることはないでしょう」
「そうか……。そうだエドワード、私の」
「断る。あんたたち2人から、王女と踊れと命じられるのはご免だ。この会場にいる間は、王宮の仕事中だと思って、今、陛下の手に触れたからな。だから、さっきの治療もそういうことだ。もし、レベッカ王女に何か頼まれていたとしても、今日のところは、一切聞き入れるつもりは俺にはない」
「ははっ。気付いていたのか」
「当たり前だ。レベッカ王女が俺たちと話した直後に、じじいのところに向かっているのが見えていたからな。俺はもう帰るから、この後は飲み過ぎるなよ」
うれしそうにしているエドワードは、これで全ての用事が済んでいた。
スペンサー侯爵家のエドワードが、婚約者と会場の中央で踊り、舞踏会への参加を会場中に印象付けると同時に、彼の婚約者が誰かを知らせていた。
そして、国王陛下への正式な挨拶も、今しがた終えた。
彼の頭の中は既に、ルイーズと2人きりになることでいっぱいだ。
この会話を、第3者に妨害されるとは、ここにいる者全てが予想していなかった。
ルイーズの動きを読んでいたエドワードに支えられ、彼女は、やりきった充足感で満たされている。
「これで、帰っても文句は言われないだろう。じじぃに挨拶をして、さっさと帰るぞ」
「まま待って。どどど、どうしよう。わたし、陛下と挨拶なんて……。そんなの、うまく出来ない」
「じじぃも、父も、俺には何も言ってこないから気にするな。……一番厄介なのは、むしろ……。何かを言いだす前に逃げるぞ」
真面目な顔で会場を見渡すエドワード。遠くを見やり、少し口角を上げたエドワードは、今がチャンスと動きだす。
早々に会場を立ち去りたいエドワード。
焦りの色が見える彼に連れられたルイーズは、陛下へ彼の婚約者だと紹介されている。
楽観的なルイーズも、この場の空気の重さにおののき、緊張でガチガチだ。
それに少し離れた所から、こちらを窺うようにレベッカ王女が2人を見ていた。
王女から、圧倒される威圧感を向けられるルイーズは、王女の視線に気付かない振りに徹する。
ルイーズは、これまで全く縁のなかった王族や宰相の視線が自分に集まり、居心地が悪くてしょうがない。
挨拶なんてしたことないし、と困惑の色が見える。
「陛下、婚約者を連れてきたので、紹介します」
至って淡々と話す彼は、陛下と握手をするために、右手をすっと前に差し出した。
陛下は、スペンサー侯爵家の人間として挨拶に来ているエドワードが、手袋をはめていないことに驚き、彼を凝視する。
そして、一度手を差し出しかけた後にピタりと止まり、もう一度エドワードの顔を見ている。
陛下は「エドワード様」に向けて、アイコンタクトを送るが、彼は全く表情を変えない。
「......」
陛下は何かを言いかける。
だがその言葉は、エドワードの隣にいるルイーズを見て、「ここで言ってはいけない」と、のみ込んでいた。
エドワードの手を握る陛下。
「まったく、もう……」と言いたげな顔をしたエドワードは、陛下の手を強く握り返す。少ししてから反対の手で2回手の甲に合図を送り、2人の交わした握手はとかれた。
その様子を、エドワードの父である宰相も目の当たりにし、ひどく驚いた表情をしている。
「本当にルイーズ嬢と婚約したのだな」
ルイーズの方に顔を向けた陛下へ、慌てて淑女の礼をしたルイーズ。
「はい。すぐにでも入籍したいところですが、3か月後の結婚式と同時に正式な夫婦になる予定です。面倒なのは嫌いだから、披露パーティーは考えていないので、陛下へ声を掛けることはないでしょう」
「そうか……。そうだエドワード、私の」
「断る。あんたたち2人から、王女と踊れと命じられるのはご免だ。この会場にいる間は、王宮の仕事中だと思って、今、陛下の手に触れたからな。だから、さっきの治療もそういうことだ。もし、レベッカ王女に何か頼まれていたとしても、今日のところは、一切聞き入れるつもりは俺にはない」
「ははっ。気付いていたのか」
「当たり前だ。レベッカ王女が俺たちと話した直後に、じじいのところに向かっているのが見えていたからな。俺はもう帰るから、この後は飲み過ぎるなよ」
うれしそうにしているエドワードは、これで全ての用事が済んでいた。
スペンサー侯爵家のエドワードが、婚約者と会場の中央で踊り、舞踏会への参加を会場中に印象付けると同時に、彼の婚約者が誰かを知らせていた。
そして、国王陛下への正式な挨拶も、今しがた終えた。
彼の頭の中は既に、ルイーズと2人きりになることでいっぱいだ。
この会話を、第3者に妨害されるとは、ここにいる者全てが予想していなかった。
11
あなたにおすすめの小説
義妹がやらかして申し訳ありません!
荒瀬ヤヒロ
恋愛
公爵令息エリオットはある日、男爵家の義姉妹の会話を耳にする。
何かを企んでいるらしい義妹。義妹をたしなめる義姉。
何をやらかすつもりか知らないが、泳がせてみて楽しもうと考えるが、男爵家の義妹は誰も予想できなかった行動に出て―――
義妹の脅迫!義姉の土下座!そして冴え渡るタックル!
果たしてエリオットは王太子とその婚約者、そして義妹を諫めようとする男爵令嬢を守ることができるのか?
何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました
海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」
「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。
姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。
しかし、実際は違う。
私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。
つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。
その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。
今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。
「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」
「ティアナ、いつまでも愛しているよ」
「君は私の秘密など知らなくていい」
何故、急に私を愛するのですか?
【登場人物】
ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。
ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
捨てられ聖女は、王太子殿下の契約花嫁。彼の呪いを解けるのは、わたしだけでした。
鷹凪きら
恋愛
「力を失いかけた聖女を、いつまでも生かしておくと思ったか?」
聖女の力を使い果たしたヴェータ国の王女シェラは、王となった兄から廃棄宣告を受ける。
死を覚悟したが、一人の男によって強引に連れ去られたことにより、命を繋ぎとめた。
シェラをさらったのは、敵国であるアレストリアの王太子ルディオ。
「君が生きたいと願うなら、ひとつだけ方法がある」
それは彼と結婚し、敵国アレストリアの王太子妃となること。
生き延びるために、シェラは提案を受け入れる。
これは互いの利益のための契約結婚。
初めから分かっていたはずなのに、彼の優しさに惹かれていってしまう。
しかしある事件をきっかけに、ルディオはシェラと距離をとり始めて……?
……分かりました。
この際ですから、いっそあたって砕けてみましょう。
夫を好きになったっていいですよね?
シェラはひっそりと決意を固める。
彼が恐ろしい呪いを抱えているとも知らずに……
※『ネコ科王子の手なずけ方』シリーズの三作目、王太子編となります。
主人公が変わっているので、単体で読めます。
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる