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第1章 (強制連行という名の)帰還
10. 疑念と不安
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クリスティーナはソレイユ達が出ていきアンネと精霊達だけになった部屋で後悔の念に押しつぶされそうになっていた。
私は何をしているのかしら。
あの子が今の私を見たらなんというのかしら。日本にいた頃の私の親友。もう名前も思い出せないけれど今でもたまに思い出す。
『相変わらず拒絶もせず、かと言って受け入れもせずに中途半端な態度。***はいつもそうよね!そんなだからいつも――』
……いや、辞めておこう。説教される気しかしない。
「クリスティーナ様、ハーブティーがはいりました。」
現実逃避で遠い過去にとんでいた私を現実に呼び戻したのはアンネの声と嗅ぎなれたお茶の香りだった。
この香りはレモンバームとカモミールね。
用事の前に気分を落ち着かせたい時や疲れた時、寝る前によくハーブティーを入れてくれていた。ハーブティーはクリスティーナが前世の記憶を元に作らせたのが始まりだった。
それまで薬としてや魔法研究の時の素材くらいしか使い道のなかったハーブは少し前まで雑草扱いされていたが今では王族までもがハーブティーを飲むまでになった。
詳しい話は割愛するがクリスティーナが隣国の皇后様をハーブティー等を使って救ったのがきっかけだったりする。この世界のハーブには魔力の影響かハーブティーにした時の効果が前世より高く下手な薬よりよく効く。その分副作用にもより注意が必要なわけだがそこはアンネだから問題ない。
早速出されたお茶に口をつけて違和感を感じる。
「……摘みたて?」
クリスティーナは驚きのままについ声に出してしまう。
そのつぶやきを聞き、そのつぶやきが意味する事に気づいたアンネの目に涙が溜まっていく。
「そこに驚かれるという事は我々の事も覚えているのですね…。」
やってしまったわ。まあ、いまさらだけれども。
この3年ゆるーい精霊達としか話してこなかったせいかしら。どうにも気が緩んでしまって令嬢モードに切り替わらないわ。前ならありえなかったわね。
以前の私の周囲の人間は一部を除いて全員、選民思想が強かった。私は常に気を張っていないといけなかった。そんな暮らしの中で気を抜けるのがソレイユの隣でお気に入りのハーブティーを飲んでゆっくりとする時間だった。
選民思想に染まりきったクリスティーナの両親や前国王などからするとハーブは庶民が薬代わりに使っている雑草という認識で王族の婚約者であるクリスティーナがそんなものを飲むなどありえないと思われていた。もしその人達に知られれば絶対に酷い目に遭い、ろくなことにならない。だからハーブティーだけでなく色々な物を我慢して暮らしていたのだ。
それでも前世で慣れ親しんだハーブティーをふとした時に飲みたくなるので2人きりの時にアンネにこっそりと入れてもらって飲んでいた。だが今は違う。確かに今この瞬間はアンネしかいないがそれは一瞬のことですぐにまた人がここに来るだろう。
クリスティーナはこの国がいい方向に変わっている事を感じて嬉しくなった。
そしてそれをアンネが見て嬉しそうに言った。
「ラナですよ、クリスティーナ様。この青薔薇宮には3年ほど前に陛下がクリスティーナ様の為に作ったハーブ園がございます。クリスティーナ様が目覚めたと聞き先程摘んでおくようにラナに言っておきました。」
ラナもここにいるの?私のいない3年の間に随分と変わったのね。
ラナとは以前クリスティーナが助けた少女でハーブに詳しかったから私の侍女と言う名目で公爵家で雇ってもらい秘密裏にハーブの研究をしてもらっていた子だ。
それにしてもお城で摘みたてのハーブティーが飲めるなんて本当に変わったのね。その上、青薔薇宮にハーブ園を建てるなんて前なら有り得なかったでしょうし………ん?ちょっと待って?
「青薔薇宮?この青薔薇宮って言った?ここは青薔薇宮なの?」
「はい。ハーブ園が出来ると同時に陛下が白百合宮のクリスティーナ様の部屋そっくりに青薔薇宮を改装され、部屋のもの全てをそっくりそのまま転移なさいました。」
「青薔薇宮はいつの間に王妃の宮じゃなくなったのかしら?」
「いいえ、変わっておりません。陛下がクリスティーナ様以外を娶る気は無いとおっしゃいまして。即位後すぐに移されました。」
「即位後すぐ…?アンネ、あなたの話だと3年前私が死んですぐに国王が変わって青薔薇宮の改装とハーブ園の建設を行なったという事になるんですけれど…。」
「はい。信じられないお気持ちも分かりますが真実です。私の話だけでは信じられないということでしたら夕食の時に他の者に聞いてみるといいかと思います。皆私と同じ事を言うでしょう。」
「……そうね、夕食の時に聞けそうなら聞いてみます。」
クリスティーナは嫌な予感をヒシヒシと感じていた。
いくらソレイユが即位し新国王になったとしてもそんなに直ぐに人の意識が変わるとは思えないからだ。全員が全員選民思想に染まりきっていた訳では無いが大臣達や父である宰相を筆頭に腐った奴はゴロゴロいたはずなのだ。クリスティーナは最悪の考えを無理やり押しやって気になる事を聞いてみた。
「アンネ、あなたは今のこの国をどう思いますか?」
*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
すごくお久しぶりです。
このお話を書くやる気みたいなのが唐突になぜか湧いたので少し更新再開します。
元々メモ帳の奥底で眠ってたやつなのでいろいろ思い出しながらですがマイペースに亀更新していきます。
そのため各話の文字数がバッラバラになる予感がひしひしとしております。
よろしくお願いします。
私は何をしているのかしら。
あの子が今の私を見たらなんというのかしら。日本にいた頃の私の親友。もう名前も思い出せないけれど今でもたまに思い出す。
『相変わらず拒絶もせず、かと言って受け入れもせずに中途半端な態度。***はいつもそうよね!そんなだからいつも――』
……いや、辞めておこう。説教される気しかしない。
「クリスティーナ様、ハーブティーがはいりました。」
現実逃避で遠い過去にとんでいた私を現実に呼び戻したのはアンネの声と嗅ぎなれたお茶の香りだった。
この香りはレモンバームとカモミールね。
用事の前に気分を落ち着かせたい時や疲れた時、寝る前によくハーブティーを入れてくれていた。ハーブティーはクリスティーナが前世の記憶を元に作らせたのが始まりだった。
それまで薬としてや魔法研究の時の素材くらいしか使い道のなかったハーブは少し前まで雑草扱いされていたが今では王族までもがハーブティーを飲むまでになった。
詳しい話は割愛するがクリスティーナが隣国の皇后様をハーブティー等を使って救ったのがきっかけだったりする。この世界のハーブには魔力の影響かハーブティーにした時の効果が前世より高く下手な薬よりよく効く。その分副作用にもより注意が必要なわけだがそこはアンネだから問題ない。
早速出されたお茶に口をつけて違和感を感じる。
「……摘みたて?」
クリスティーナは驚きのままについ声に出してしまう。
そのつぶやきを聞き、そのつぶやきが意味する事に気づいたアンネの目に涙が溜まっていく。
「そこに驚かれるという事は我々の事も覚えているのですね…。」
やってしまったわ。まあ、いまさらだけれども。
この3年ゆるーい精霊達としか話してこなかったせいかしら。どうにも気が緩んでしまって令嬢モードに切り替わらないわ。前ならありえなかったわね。
以前の私の周囲の人間は一部を除いて全員、選民思想が強かった。私は常に気を張っていないといけなかった。そんな暮らしの中で気を抜けるのがソレイユの隣でお気に入りのハーブティーを飲んでゆっくりとする時間だった。
選民思想に染まりきったクリスティーナの両親や前国王などからするとハーブは庶民が薬代わりに使っている雑草という認識で王族の婚約者であるクリスティーナがそんなものを飲むなどありえないと思われていた。もしその人達に知られれば絶対に酷い目に遭い、ろくなことにならない。だからハーブティーだけでなく色々な物を我慢して暮らしていたのだ。
それでも前世で慣れ親しんだハーブティーをふとした時に飲みたくなるので2人きりの時にアンネにこっそりと入れてもらって飲んでいた。だが今は違う。確かに今この瞬間はアンネしかいないがそれは一瞬のことですぐにまた人がここに来るだろう。
クリスティーナはこの国がいい方向に変わっている事を感じて嬉しくなった。
そしてそれをアンネが見て嬉しそうに言った。
「ラナですよ、クリスティーナ様。この青薔薇宮には3年ほど前に陛下がクリスティーナ様の為に作ったハーブ園がございます。クリスティーナ様が目覚めたと聞き先程摘んでおくようにラナに言っておきました。」
ラナもここにいるの?私のいない3年の間に随分と変わったのね。
ラナとは以前クリスティーナが助けた少女でハーブに詳しかったから私の侍女と言う名目で公爵家で雇ってもらい秘密裏にハーブの研究をしてもらっていた子だ。
それにしてもお城で摘みたてのハーブティーが飲めるなんて本当に変わったのね。その上、青薔薇宮にハーブ園を建てるなんて前なら有り得なかったでしょうし………ん?ちょっと待って?
「青薔薇宮?この青薔薇宮って言った?ここは青薔薇宮なの?」
「はい。ハーブ園が出来ると同時に陛下が白百合宮のクリスティーナ様の部屋そっくりに青薔薇宮を改装され、部屋のもの全てをそっくりそのまま転移なさいました。」
「青薔薇宮はいつの間に王妃の宮じゃなくなったのかしら?」
「いいえ、変わっておりません。陛下がクリスティーナ様以外を娶る気は無いとおっしゃいまして。即位後すぐに移されました。」
「即位後すぐ…?アンネ、あなたの話だと3年前私が死んですぐに国王が変わって青薔薇宮の改装とハーブ園の建設を行なったという事になるんですけれど…。」
「はい。信じられないお気持ちも分かりますが真実です。私の話だけでは信じられないということでしたら夕食の時に他の者に聞いてみるといいかと思います。皆私と同じ事を言うでしょう。」
「……そうね、夕食の時に聞けそうなら聞いてみます。」
クリスティーナは嫌な予感をヒシヒシと感じていた。
いくらソレイユが即位し新国王になったとしてもそんなに直ぐに人の意識が変わるとは思えないからだ。全員が全員選民思想に染まりきっていた訳では無いが大臣達や父である宰相を筆頭に腐った奴はゴロゴロいたはずなのだ。クリスティーナは最悪の考えを無理やり押しやって気になる事を聞いてみた。
「アンネ、あなたは今のこの国をどう思いますか?」
*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
すごくお久しぶりです。
このお話を書くやる気みたいなのが唐突になぜか湧いたので少し更新再開します。
元々メモ帳の奥底で眠ってたやつなのでいろいろ思い出しながらですがマイペースに亀更新していきます。
そのため各話の文字数がバッラバラになる予感がひしひしとしております。
よろしくお願いします。
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