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第4話
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いや、転生って。
俺まだ死んでないのに転生って。
「はい女神様ー!俺が死ぬのは問題ないのでしょうかー?」
「良い質問ね、迷子くん。
私が提案したのはあくまでも体験転生であって、本当の転生じゃないわ」
謂わゆる、臨死体験みたいなものかしら?
なんて女神は無邪気に言う。
「私はさっきも言ったけど管理する神であって、輪廻を司る神じゃないし、運命を司る神でもないの。
だから正直な話、あなたを本当の意味で転生させることは出来ないわけ。
で、も!」
「でも?」
「魂を移動することは出来るの。
貴方は貴方のまま、新しい世界で一から体験して、そしてその世界で死ぬ」
「え、死ぬの?」
「まぁ、そりゃ死なないと魂は肉体から分離出来ないからね」
おいおい、何だか突然物騒になってきたな。
俺が不安げに顔を歪めたせいか、女神は安心はさせるかのように微笑んだ。
「大丈夫よ、死んだって魂は生きてる。
その魂を私がここで仮死状態にしておいた貴方の身体に元に戻して、元の世界に送り届ける。
どう?貴方は男の子なら誰でも憧れるような魔法と剣の世界で、誰もが羨む女性と恋に落ちて幸せになるの。
そして、その間に私が貴方の元の世界を探して、転生期間が終わったら貴方を元の世界に帰す。
お互い、凄くウィンウィンな感じだと思わない?」
「まぁ、確かに」
女神から受けた提案は、確かに魅力的だ。
どうせここにいたって、俺は良い暇つぶしだと思われて元の世界を探してはくれないだろう。
数えるのも馬鹿らしいと言われた場所で、元の世界を俺1人で探すのはきっと不可能だ。
それならいっそ、死ぬわけではないんだし、転生しても良いのかもしれない。
妹さんが何度もプレイしていたゲームだ。だいたいの内容は把握している。
それに、悪役令嬢のクラリスは俺的にはどストライクで、そんな彼女と恋に落ちるなんて魅力的だ。
と、そこで俺は少しだけ疑問が沸く。
「いやちょっと待て、恋に落ちる前提なのか?」
「え?まぁ、不幸にならなければ何でも良いんだけどね。
けど私のシナリオ上、ヒロインが攻略相手と恋に落ちると強制イベントみたいな感じで婚約破棄されて没落しちゃうからさー」
そういえば、妹さんのプレイを見る限り、攻略対象が誰であれクラリスは必ず没落して不幸になっていた。
それを考えると、何とか彼女と恋をしなくてはならない。
「と、なると俺は王子のフランツに転生するってことか?」
「そうそう、話が早くて助かるわー!」
女神はニコニコと笑いながら、どれすの裾を持ちながら立ち上がった。
「音楽の才能溢れる王子は、ヒロインが音楽特性を伸ばすとフラグが立つ王道ルートよ。
もし貴方がクラリスの事を好きにならなくても、貴方の権力で守ってくれればそれでいいわ。
勿論、貴方には幾つかのチートも授けるし、異世界で上手く生活出来るようにしておいてあげる」
「それは、なにから何までありが」
とう。
そう言おうと思った瞬間、突然舌が痺れたように動かなくなった。
え、と思ったのもつかの間、身体の力がドンドン抜けて、掌からお茶のカップが音を立てて地面に落ちて割れた。
「言ったでしょ?
死なないと魂は分かれないって。
でも本当に死ぬわけじゃないから。ただの仮死状態。痛みもないはずよ。だから」
安心してお逝きなさい。
女神の微笑み。
視界が、グラグラ揺れる。
あぁ、なんだよ。
まだやるなんて言ってねーんだけど!
俺まだ死んでないのに転生って。
「はい女神様ー!俺が死ぬのは問題ないのでしょうかー?」
「良い質問ね、迷子くん。
私が提案したのはあくまでも体験転生であって、本当の転生じゃないわ」
謂わゆる、臨死体験みたいなものかしら?
なんて女神は無邪気に言う。
「私はさっきも言ったけど管理する神であって、輪廻を司る神じゃないし、運命を司る神でもないの。
だから正直な話、あなたを本当の意味で転生させることは出来ないわけ。
で、も!」
「でも?」
「魂を移動することは出来るの。
貴方は貴方のまま、新しい世界で一から体験して、そしてその世界で死ぬ」
「え、死ぬの?」
「まぁ、そりゃ死なないと魂は肉体から分離出来ないからね」
おいおい、何だか突然物騒になってきたな。
俺が不安げに顔を歪めたせいか、女神は安心はさせるかのように微笑んだ。
「大丈夫よ、死んだって魂は生きてる。
その魂を私がここで仮死状態にしておいた貴方の身体に元に戻して、元の世界に送り届ける。
どう?貴方は男の子なら誰でも憧れるような魔法と剣の世界で、誰もが羨む女性と恋に落ちて幸せになるの。
そして、その間に私が貴方の元の世界を探して、転生期間が終わったら貴方を元の世界に帰す。
お互い、凄くウィンウィンな感じだと思わない?」
「まぁ、確かに」
女神から受けた提案は、確かに魅力的だ。
どうせここにいたって、俺は良い暇つぶしだと思われて元の世界を探してはくれないだろう。
数えるのも馬鹿らしいと言われた場所で、元の世界を俺1人で探すのはきっと不可能だ。
それならいっそ、死ぬわけではないんだし、転生しても良いのかもしれない。
妹さんが何度もプレイしていたゲームだ。だいたいの内容は把握している。
それに、悪役令嬢のクラリスは俺的にはどストライクで、そんな彼女と恋に落ちるなんて魅力的だ。
と、そこで俺は少しだけ疑問が沸く。
「いやちょっと待て、恋に落ちる前提なのか?」
「え?まぁ、不幸にならなければ何でも良いんだけどね。
けど私のシナリオ上、ヒロインが攻略相手と恋に落ちると強制イベントみたいな感じで婚約破棄されて没落しちゃうからさー」
そういえば、妹さんのプレイを見る限り、攻略対象が誰であれクラリスは必ず没落して不幸になっていた。
それを考えると、何とか彼女と恋をしなくてはならない。
「と、なると俺は王子のフランツに転生するってことか?」
「そうそう、話が早くて助かるわー!」
女神はニコニコと笑いながら、どれすの裾を持ちながら立ち上がった。
「音楽の才能溢れる王子は、ヒロインが音楽特性を伸ばすとフラグが立つ王道ルートよ。
もし貴方がクラリスの事を好きにならなくても、貴方の権力で守ってくれればそれでいいわ。
勿論、貴方には幾つかのチートも授けるし、異世界で上手く生活出来るようにしておいてあげる」
「それは、なにから何までありが」
とう。
そう言おうと思った瞬間、突然舌が痺れたように動かなくなった。
え、と思ったのもつかの間、身体の力がドンドン抜けて、掌からお茶のカップが音を立てて地面に落ちて割れた。
「言ったでしょ?
死なないと魂は分かれないって。
でも本当に死ぬわけじゃないから。ただの仮死状態。痛みもないはずよ。だから」
安心してお逝きなさい。
女神の微笑み。
視界が、グラグラ揺れる。
あぁ、なんだよ。
まだやるなんて言ってねーんだけど!
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