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勇者、拾っちゃいました。
めっちゃキレてるやん(似非関西人)
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目の前に迫る氷の塊に、腕で庇うとか、体を縮めて衝撃に耐えるとか、そういった動作の全てを置き去りにして、瞬きも出来ず私は立ち尽くしてしまった。
冷たい風が肌を刺す。
そして、何かが爆発したような轟音と衝撃。
それだけで、私はよろめき、倒れそうになる。それを何とか踏ん張っても、更なる衝撃波が私を襲い、体はあっさり後ろに倒れてしまった。
こんなこと、映画やゲームの中でしか見たことない。自然と足が震えて、落ち着こうにも一向に力が入らない。
その事実に、ジワリと恐怖が這い上がった。
起きている事が、まるで理解できない。
トムに煽てられ、いい気になっていたけど、私には魔法のことなど全く理解出来ていなかった。
非現実だ。
目の前の出来事に、ついそう思ってしまった。
こんなこと起きるはずない、って。
私の、思いつきのようななんちゃってイマジネーション魔法では、本物には勝てないのだ。
思考が一瞬飛んだ私の目の前で、鮮やかな水色と、それを深くしたような柔らかな青い羽が目の前を覆った。
「あ、こら!ドラゴン!セラサクヤにはダメって言ったでしょ!!言ったでしょ!!」
「・・・・・・ギィヤー」
メリアローズのキーキーと癇癪を起こした声に、ドラゴンがそんな無理な事言われても感が漂う鳴き声で応える。
その呑気な会話に、私はやっと瞬き一つ体が動いた。
「い、生きて・・・・・・??」
震える掌をゆっくり、力を込めて握りしめる。爪が食い込むまで握りしめて痛みを感じ、その痛みにホッとした。
「あら、大丈夫?私の羽で守ってあげたでしょ?」
ほんの少し霜のついた羽を震わせ、気遣わしげな瞳でマリーナが私を覗き込んだ。
「一応、氷は真っ二つにしたからな。衝撃波はあったかもしれないが、怪我するほどでもないだろ」
こちらも、明るい水色の髪を少しだけ凍らせて、目の前のドラゴンから目を離さずにリノレイが言う。
首を少し横に振ると、私を庇ったであろうリノレイとマリーナを中心に、避けるようにして地面に大きな氷が生えていた。いや、生えているのではなくて、二つに裂けて埋まったのだろう。高さはゆうにリノレイの身長を越えていて、鋭利な断面に、寒さ以上にゾッする。
「もう!もう!!なによ!なによ!!私はセラサクヤを取り戻すのよ!」
ドラゴンの頭の上で足の蔓をニョロニョロしながら、メリアローズが泣き喚いている。
可憐な少女が泣いているのは、胸が痛くなる。
が、やってる事が可愛くないし、あと何故かメリアローズの蔓がドラゴンの首を絞め始め、苦しそうに首を掻いてるという地獄絵図で割とホラーだ。
そして突然。
「そこまでですよ、このバカ薔薇」
耳慣れた声が、森の奥から聞こえた。
その瞬間、数え切れないほどの薔薇の蔓がメリアローズとドラゴン、そしてリノレイとマリーナに襲い掛かった。
リノレイとマリーナは咄嗟に身を翻したけど、メリアローズとドラゴンは悲鳴をあげながらグルグル巻きにされ、あっという間に森の奥へ引き摺られて行ってしまう。
私はそれを、やっぱり指一本動かすことも出来ずに、ただ見ているしか出来なかった。
「大丈夫ですか、マスター。もう安心してください。私が助けにきましたから!」
目見麗しい姿を模った私の本が、爽やかな笑顔を浮かべて森の奥から姿を現した。
それは確かに私のトムではあったけど、私のトムはそんな爽やかな笑顔で笑うような奴ではない。
「めっちゃ、キレてる・・・・・・」
「あはは!それはもう!」
普段、大人しい人がキレた時は怖いというけど、大人しくない人がキレても、怖いというのを人生で初めて痛感したわ。
冷たい風が肌を刺す。
そして、何かが爆発したような轟音と衝撃。
それだけで、私はよろめき、倒れそうになる。それを何とか踏ん張っても、更なる衝撃波が私を襲い、体はあっさり後ろに倒れてしまった。
こんなこと、映画やゲームの中でしか見たことない。自然と足が震えて、落ち着こうにも一向に力が入らない。
その事実に、ジワリと恐怖が這い上がった。
起きている事が、まるで理解できない。
トムに煽てられ、いい気になっていたけど、私には魔法のことなど全く理解出来ていなかった。
非現実だ。
目の前の出来事に、ついそう思ってしまった。
こんなこと起きるはずない、って。
私の、思いつきのようななんちゃってイマジネーション魔法では、本物には勝てないのだ。
思考が一瞬飛んだ私の目の前で、鮮やかな水色と、それを深くしたような柔らかな青い羽が目の前を覆った。
「あ、こら!ドラゴン!セラサクヤにはダメって言ったでしょ!!言ったでしょ!!」
「・・・・・・ギィヤー」
メリアローズのキーキーと癇癪を起こした声に、ドラゴンがそんな無理な事言われても感が漂う鳴き声で応える。
その呑気な会話に、私はやっと瞬き一つ体が動いた。
「い、生きて・・・・・・??」
震える掌をゆっくり、力を込めて握りしめる。爪が食い込むまで握りしめて痛みを感じ、その痛みにホッとした。
「あら、大丈夫?私の羽で守ってあげたでしょ?」
ほんの少し霜のついた羽を震わせ、気遣わしげな瞳でマリーナが私を覗き込んだ。
「一応、氷は真っ二つにしたからな。衝撃波はあったかもしれないが、怪我するほどでもないだろ」
こちらも、明るい水色の髪を少しだけ凍らせて、目の前のドラゴンから目を離さずにリノレイが言う。
首を少し横に振ると、私を庇ったであろうリノレイとマリーナを中心に、避けるようにして地面に大きな氷が生えていた。いや、生えているのではなくて、二つに裂けて埋まったのだろう。高さはゆうにリノレイの身長を越えていて、鋭利な断面に、寒さ以上にゾッする。
「もう!もう!!なによ!なによ!!私はセラサクヤを取り戻すのよ!」
ドラゴンの頭の上で足の蔓をニョロニョロしながら、メリアローズが泣き喚いている。
可憐な少女が泣いているのは、胸が痛くなる。
が、やってる事が可愛くないし、あと何故かメリアローズの蔓がドラゴンの首を絞め始め、苦しそうに首を掻いてるという地獄絵図で割とホラーだ。
そして突然。
「そこまでですよ、このバカ薔薇」
耳慣れた声が、森の奥から聞こえた。
その瞬間、数え切れないほどの薔薇の蔓がメリアローズとドラゴン、そしてリノレイとマリーナに襲い掛かった。
リノレイとマリーナは咄嗟に身を翻したけど、メリアローズとドラゴンは悲鳴をあげながらグルグル巻きにされ、あっという間に森の奥へ引き摺られて行ってしまう。
私はそれを、やっぱり指一本動かすことも出来ずに、ただ見ているしか出来なかった。
「大丈夫ですか、マスター。もう安心してください。私が助けにきましたから!」
目見麗しい姿を模った私の本が、爽やかな笑顔を浮かべて森の奥から姿を現した。
それは確かに私のトムではあったけど、私のトムはそんな爽やかな笑顔で笑うような奴ではない。
「めっちゃ、キレてる・・・・・・」
「あはは!それはもう!」
普段、大人しい人がキレた時は怖いというけど、大人しくない人がキレても、怖いというのを人生で初めて痛感したわ。
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