異世界・魔法薬の魔女

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異世界、始めてみました。

生活問題

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 まるで葡萄のようなのに、林檎のみたいに真っ赤で、中身はメロン味。
 見た目と味が合ってないと思うのは、私が異世界人だからで、この世界では最もポピュラーな果物だとトムが教えてくれた。
 味は美味しいのに、複雑。まぁ、これからも食べ物には色々悩まされるだろう。
 何てったって、ザッとしか見てないけれど、この卓上の果物以外は食料は見つかっていない。
 皮まで食べられると聞いて葡萄?を摘みながらトムに話しかけると、トムはフワリと浮きながら私の側にやってきた。
「ねぇ、トム。今まで何の疑問も思わなかったけど、ここって水道どうなってるの?」
 さっき顔を洗った時は、いつも通り蛇口を捻ったら水が出たから何も思わなかったけど、よく考えたら不思議だ。
「この家は魔法の家です。マスターが水を欲していれば、自然と水が溢れ湧きだします。
 もしよければ、そこの暖炉に手をかざしてみては?
 マスターの意思によって、炎がでるはずです」
 言われた通りやってみると、暖炉に突然火がともり、元から置いてあった薪がパチパチと爆ぜる。
 思わず感嘆の声をあげると、トムは至って冷静に、けれど素晴らしいと褒めてくれた。ちょっとだけ、嬉しい。
「この家の魔法は、自然界に発生するものでしたら、なんでもマスターの意思によって生み出すことが出来ます。
 今のように調理の時に火を点けたり、お湯を沸かしたり水を流したり、髪を乾かすのに風を起こすことも可能でしょう」
「凄い、何でも出来るのね」
「まさか!これらは全てマスターが思いつかなければ出来ない事なんです。
 今、私が例えで言ったものは、既にマスターの中で発想があったからお伝え出来たものです」
「なるほど、つまりはイマジネーションってことか」
 そういえば、トムの姿云々もイマジネーションと言ってたっけ。
 私の発想次第で便利に使えたり、そうじゃなかったり。常に考えて行動しないと、いつまでたっても便利にならないってことか。
 そこまで考えて、納得した。考えないことは、文明の停滞であるわけだ。緩やかな破滅だと表現したコノハさんの言葉を思い出す。言い得て妙なわけだよ。
 「ん、ちょっと待って。トムは私の考えてることが分かるの?」
 さっきの言い方だと、トムには心の底まで読まれているような感じに聞こえた。
「とんでもない。私はマスターと契約したことで、マスターの記憶の知識と連動しただけです。
 マスターが忘れていても、知識は残ります。それを拾いあげ、お伝えしただけです」
「それってつまり、私が覚えてない知識もトムは分かるってこと?」
「理解すること、覚えること、実践すること、これらは全て違いますが、その全てがマスターの記憶に残っています。
 例えばマスターが覚えていない英単語でも一度その目で見ていれば、私はマスターにお伝えする事が出来ます。
 けれど、それは全てマスターが一度目を通す必要がありますので、見たことないものや聞いたことないものに関してはお伝え出来ません」
 つまり、トムの知識は私の過去の体験などから拾いあげたってわけか。
 どうりで話してもないスマホの形を知っていたわけだよ。
「さて、マスター。空腹が満たされたならコノハ女史に言われた召喚魔法を試してみては?」
「それもそうだけど、まずはその前にトイレ行ってくる」
 お食事中の人がいたら申し訳ないけど、生理現象だから仕方ない。
 家のトイレは所謂洋式だったけれど、そういえばこの流れた水は何処へいくんだろう?
 トイレから出た後にトムに尋ねたら、肥溜めですが?と返された。
 うん、そうですよね。うん。
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